機界の新星、海を行く 1退屈は、トレイユを出ても変わらなかった。 「はぁ……海眺めててもつまんないわ」 あたしはもう何もかも諦めて、甲板を降りて仲間の待つ船室に向かった。 "機界の新星"と呼ばれるようになって以来、金の派閥から、将来のためにと簡単な仕事を任されることがちょくちょくある。今日も、その一環だ。 あたしの乗ってるこの船は、とある重要な召喚術資料を、海を挟んだ遠い町からトレイユまで運ぶ働きをしている。あたしがそれに付き合ってるのは、海賊やはぐれ召喚獣から船を守るため――つまり、護衛ってところかな。 派閥からの任務だから断るわけにもいかなかったけど、だいたいヒマになるのは予想ついてた。丸一日の船旅に、刺激なんてあるわけないもの。ヒマ潰しにと知り合いを同乗させたのは、ほんとせめてもの救いだったよ。 「自由騎士団にオファー出した時は半ば諦め半分だったけど、まさかほんとにあんた達が来てくれるなんて思ってなかったわよ」 「ははっ、それはおいらもさ」 「てっきり、身内絡みは駄目って言われると思ったんだけどね」 船室で愚痴をこぼすあたしを見守るように、弟のルシアンと友達のアルバが笑う。 二人とも、ギアン達との戦いで肩を並べた頼れる仲間。 知り合いと一緒なら多少はその退屈もまぎれるかと思って、リィンバウム 自由騎士団からアルバとルシアンに来てもらえるもらうよう頼んでみた。もちろん人選はあたし都合なんだけど、二人の強さはラウスブルグでの戦い以来パパには伝わってたから、護衛につけるには充分だってことで通してもらえたのだ。 が、その甲斐なし。話相手になってもらっておいてアレだけど、船がそもそも超退屈。ライもいないし……何か面白いこと起こらないかなぁ。 「――姉さん、召喚石握って詠唱するのやめようよ。何も起こってないよ」 「何よぉ、別に何かしようってわけでもないでしょ」 「あはは……まさか自分でひと悶着起こそうなんて……」 「なーにバカなこと言ってんの。いくらあたしでもそんな……」 ドーン!! 「ね、姉さん!?」 「ち、違う違う! あたしじゃないよ!?」 慌てふためくルシアンと、反射的に脇に置いてある大剣を握るアルバ。 さすがにアルバは気持ちの切り替えが早いな。音は、甲板の方からだ。 「……リシェル、ここでじっとしてて。甲板まで様子を見てくる。 行くよ、ルシアン!」 「あ……う、うん!」 おお、かっこいいじゃんアルバ。ライって先客がいなかったら、今ので不覚にもときめいてたかもしれない。 武器を持って駆けていく二人を見送った後、あたしはあくびひとつ挟んで部屋の隅に立てかけてあった杖を手に取る。――アルバ、ルシアン、まさかこの状況であたしが黙って待ってるとでも思ってたのかな。 ドーン!! 甲板から悲鳴も聞こえてきた。あれ、けっこう殺伐としてる? 海にだってはぐれ召喚獣はいる。サハギョとか小さい召喚獣ならまだしも、怪魚やロブスドラゴンのような巨大召喚獣が派閥の船を襲ったっていう報告もある。 だから派閥の船には普通、護衛のために顧問召喚師が――って、そういやそのためのあたしなんだっけ。 (……ちょっと真面目に振る舞った方がいいかな?) あたしは杖を投げ捨て、代わりに―― 「姉さん!言い忘れたけどおとなしく……」 慌ててルシアンが戻ってきた。あたしの性格を思い出したみたいだけど―― 「!? ね、姉さん、それ……」 「黙ってるわけにもいかないでしょ」 ルシアンを尻目にあたしは船室を飛び出していく。後ろの方で、あたしの性格をよく知ってる弟の『まずい……』っていう呟きが聞こえた。 (うわぁ、海賊か) 派閥の精鋭たちを片っ端から殴ってまわる男がいる。うちの男たちも情けないもんだと一瞬思ったけど―― 「オラオラ、どうした!骨のある奴ぁいねえのか!」 海賊の方から、ハンパなく強い匂いがする。武器も持ってないのに汗一つかかず、うちの連中をボコしていく姿は、並の格闘家顔負けの光景だった。 ヘタしたら、あのセイロンといい勝負するんじゃ? そんな男の前に、アルバが対峙する。お、これなら―― 「やあっ!」 「……っと、うりゃあっ!」 「く……!」 うわ、凄!アルバの絶対攻撃をかわして、見事なカウンターを返してる。 鬼憑き兵や魔獣化兵を相手に一歩も退かなかったアルバの体が揺れたってことは、その辺の兵士じゃ歯が立たないのは当然だ。 「負けないぞ……でえやあっ!」 「ぐ……っ、やるじゃねえか……!」 アルバも頑張ってる。海賊の方だって、あの大剣の一撃を手甲ではじくだけでも凄いけど、さすがにアルバの強烈な一撃を受けてよろめく。 海賊の男がアルバと間合いをおいた、ふとその時、 「アニキーっ! なーに手こずってんの!」 「黙ってろ! 集中させろや!」 派閥の船の隣につけてある海賊たちの船から、元気な声が飛んできた。ライに檄を飛ばす時のあたしの声に似てる気がしなくもない。 「よーっし、加勢するよー♪」 (!? いけない……!) 声の主の姿が見えた。銃を片手にアルバの方を狙っている。この状況で加勢されたらアルバといえどまずい。あたしは懐から召喚石を取り出し、銃を持つ海賊に狙いを定め、詠唱を―― 「アラ、そうはいかないわよ♪」 「え……!?」 背後から突然の声。振りかえった瞬間、鋭いナイフが空を切る音―― 「させないっ!」 ガキッ! 金属が削り合う音が耳をつんざく。あたしの目の前に割って入ったのは、いつもは頼りない弟の大きな背中だった。 「っとと、やるじゃない。アタシの攻撃を捌くなんてね」 海賊の一味か、細身の女――いや、男なのかな?短剣を片手に目を細め、ルシアンを見て笑う。ルシアンがちょっと引き気味の表情。 「ふふっ、じゃあ、こういうのはどうかしら?」 (え……!?) 目の前から男(ということにしておく)がふっと消える。 「く……!」 が、何もない所からふっと現れた男の斬撃をルシアンがブロックする。 あたしには全く見えなかった攻撃を――ルシアンも強くなったんだなぁ。 「行くぞ、てやあっ!」 「ひゅ――っ、やるじゃなーい♪」 短剣に負けず劣らずの鋭い剣撃を放つルシアンと、その攻撃を紙一重でかわす男。 なんだかんだ言ってルシアンも頼りになるとは感じてたけど、そのルシアンと対等に戦うこの男もただ者じゃなさそうだ。 「姉さん、ここが僕が何とかするから!」 「オッケー!」 トレイユの周りで、無法者の相手をすることは多かった。いち海賊なんて、あんな連中とたいして変わりないと思ってたけど、こいつらほんとに強い。 あたしはさっき杖の代わりに手にした相棒の銃――ラビットファイアを構えて海賊の船に立つ敵に向けた。 (――あ!?) あたしの銃と相手の銃が向き合う。もちろん、先に向けたのは相手の―― (あ……っ、危なっ……!) とっさに身をよじった拍子に、あたしのこめかみの横を弾丸が通り過ぎて行った。――マジで脳みそバラまかれるところだった。 (ふーん……売られたケンカはばっちり買ってやろうじゃないの……!) 改めて銃を向け、思いっきり引き金を引く。 「うわっ! 向こうもいい銃使ってるじゃん!」 テンションの高い声が聞こえてくる。あたしの銃弾をスレスレでかわして独り言とは――うーん、シャクに触る! あたしの威嚇射撃に反応してタルの後ろに身を隠す海賊。ふふん、それで隠れたつもりなら甘い甘い! ドスッ! 「ひえっ!」 タルをあたしの銃弾が貫く風穴を開ける。相手の反応からして多分当たってはなかったみたいだけど、"狙いうち"を極めたあたしの銃から逃げられると思わないでよね。 タルの後ろから敵が出てくる。近づいてみれば、それがあたしよりもひとまわり大きい女性だということがよく見えた。胸は小さいけど。 (よーっし、ふんづかまえちゃる!) 船のへりから身を退くその影を追って、あたしは海賊たちの船に飛び移った。 銃を構え、相手の動向からは意識をはずさない。敵の船だし、どう立ちまわったら有利かは相手の方がよく知ってる。 と、前方の木箱の影からさっきの影が姿を見せる。反射的にあたしはそっちに銃を向ける。 「ヤード! 今だよ!」 女海賊がそう言った瞬間、背後から木箱の揺れる音がした。とっさに振り返ろうとしたが、その瞬間、 「よーっし!」 銃を持った女海賊が雨あられのように銃弾を撃ち込んできた。周囲の木箱やタルが揺れ、甲板が揺れたほどの乱れ撃ちだったが、あたしは横っ飛びでかわして甲板の上に転がる。 「契約に応えよ……!」 直後あたしの真上の空間が歪む。これはそう、タケシーの―― 「く……間に合って、ビットガンマー!」 咄嗟に胸元のサモナイト石を握り、召喚術をはじくガンマバリアを発動する。 直後、稲光があたしの目をくらませ、凄まじい轟音とともに天から降り注いだ。 強力な"ゲレゲレサンダー"の稲妻はあたしの頭の上三寸で止まり、バリアとの衝突で生じた火花が首筋を刺激する。 「うそぉっ!? 今のをしのぐなん――って、うひゃあっ!?」 驚く女海賊を不安定な体勢から狙撃する。かわされたけど、あたしはすぐに体勢を立て直してその影を追う。後ろの召喚術を使ってきた相手は後回しにして慌てて逃げる女海賊を追いかける。相手が3歩歩く間にこっちは5歩走ってる感じだ。追いつくまで時間はかからなかった。 「し、しっつこいなぁ、もうっ!」 女海賊が投具を抜いて振り返る。あたしは腰元の短剣を素早く抜き、当たっても死んだりしない程度に強く切りつけた。 投具で防御し後ろに飛び退き、その投具を流れるような動きで投げつけられる。 とっさに短剣をあげてはじいて体勢を崩されたが、同時にあたしは倒れるように、そばにあった木箱の陰に身を隠す。 (大丈夫、この体勢でも……!) 相手より早く、あたしは胸元の召喚石を握って詠唱、ビットガンマーを召喚して女海賊を狙い撃とうとする。銃に持ち替えようとした相手の動作が遅れ、仮に素早く持ち替えていたとしてもすぐにはあたしを撃ってはこれないはずだ。 「やばっ……!」 「いっちょいくわよー! 覚悟……」 「させません!」 後ろから召喚術の波動を感じた。さっきと同じように空間が歪む。 それは読んでた。あたしはビットガンマーへの命令をガンマバリアへと変更し、咄嗟に振りかかる稲妻の数々をはじき飛ばした。さっきよりもかなり余裕がある。 (よし、これで……) ビットガンマーを送還せず、矛先を女海賊に向けさせる。これで女海賊を痺れさせて動きを止め、召喚師は後で相手をする。上手くいってるはずだった。 背後に突然、巨大で不気味な気配が現れたのはその瞬間だった。 バチバチバチッ! 「くあ……っ……!?」 電撃で狙撃されたような感覚が全身を襲う。いや、これは電撃の"ような"感覚じゃなくて―― (これ、は……エレキメデスの……!?) 「ふふっ、とっておきだよ♪」 あたしがその正体に気付くと同時に、女海賊が得意げにつぶやいた。まさか銃使いの海賊が、エレキメデスなんて強力な召喚獣を操るなんて――強力な電撃に当てられて体が動かなくなり、がくりと膝をつく。魔力源を失ったビットガンマーが送還されていく姿を、あたしはただ見送るしかなかった。 「ヤード、とどめの一発お願い」 「もう充分でしょう。麻痺したこの体にこれ以上は……」 「ダーメ。見たでしょ、この子の器用さ。情けかけてたらきっととんでもないしっぺ返しくらうよ?」 「む……」 あたしの見えない場所で、召喚師が口をつぐんでいる。そっちを向こうにも、体が痺れてまったく動かない。 「やむを得ませんね――お嬢さん、悪く思わないで下さい」 「く……!」 召喚師の詠唱が耳に入り始める。身動きとれずそれを黙って聞き、強力な召喚術を受けるしかないこの状況は生殺しそのものだ。 必死に手を動かし、胸元の召喚石に手を伸ばそうとする。本当にゆっくりだがあたしの手は胸元の召喚石に近づこうとはする。が―― 「おーっと、もうダメだよ?」 「うあ……っ!?」 女海賊が長い銃であたしの手をグイッと甲板に押しつける。文字通りひざまずく姿勢にされたその瞬間、後ろから聞こえる詠唱が止まった。 「ソノラさん、離れて」 「あいよー♪」 女海賊が飛びのいた瞬間、禍々しい気配があたしを包む。これはサプレスの中でも凶悪な、パラ・ダリオの―― 「あぐあ……っ……!?」 凄まじい魔力の波動に全身が悲鳴をあげる。召喚師の魔力は想像以上に強く、その一撃であたしは甲板に崩れ落ちた。 「あっ……か……」 麻痺の重ねがけを受けたあたしの体は、指一本動かせなかった。甲板を滑る潮風が、甲板に倒れたあたしの口のすぐそばに塩を運んでくる。 ちょどその頃、どたどたという足音が耳に届く。 「よお、ソノラ。一旦引き揚げ――って、一人仕留めたのか?」 「へへー♪アニキはどうだった?」 「船が騒がしいから戻ってきたから、まだ決着がついてねえ。久々にすげえ奴が相手になったもんだ」 「アタシもよ。若い子だけど、とても侮れる相手じゃなかったわ」 海賊たちが戻ってくる。どうやら、ルシアンとアルバは無事ようだ。 ――ひとつ安心したところで、緊張の糸が一気に切れる。 「このお嬢さんはどうされますか?」 「ひとまず船室に運どけ。抵抗されないようにしておけよ」 「はいはーい♪」 そんな言葉が耳に届いたところで、あたしの意識はぷっつりと途切れた。 「――ってことで、体勢を整えて明日の朝にまたあの船を襲撃だ。いいな?」 「了解よ」 「わかりました」 そんな会話が上から聞こえてくる。どうやら真上の部屋で話を進めているようだ。 目が覚めたら、あたしは寝室のベッドに寝かされていた。短剣や銃、召喚石などは当然身ぐるみはがされていて、手は後ろに縛られてる。 こうなると、自分が捕われの身なんだなということをイヤでも実感する。 「で、アニキ、あの子はどうするの?」 「どうもしねえよ。目的を達成したら解放してやるさ」 さっきからちょくちょく話の中にあたしのことも挙がってるが、そんなに劣悪な処置をするような話は展開されてない。正直目を覚まして状況を把握した時は、どうされるものかとひやっとしたけど―― 「ねえ、あたしあの子に短剣で切りつけられて、まだ手がビリビリしてんだけど。ちょっと文句言ってきていい?」 「好きにしろ。あんまり手荒なことするんじゃねえぞ?」 「はいはい」 最後にそういう言葉が聞こえて、上の部屋が静かになる。話が終わって解散したか、最後にとたとたと足音が聞こえて静かになる。 やがて、部屋の外からあたしに近づく足音がひとつ。 「やっほー。調子はどう?」 元気な声とともに部屋に入ってきたのは、甲板で争ったあの女海賊だった。 「あたし、ソノラ。あなたは?」 「…………」 捕われてる身分で、思わずぷいっと顔をそらす。そんなムキになってるわけじゃないんだけど、なんだかこの状況でおとなしく相手に従うのは嫌だった。 「あははっ。あなた、あたしとおんなじ匂いするよね。使ってる召喚術もおんなじロレイラルだし、銃使いだしさ」 素っ気ないあたしに、上機嫌で話しかけてくるソノラ。こっちがいくら無言で返しても、構わずぽんぽんと話を展開する。 ――2分ぐらいかな。そんな空気が続いた頃、ソノラがちょっと声色を変える。 「ふふっ、強気なんだ。いいよ、そういうの。あたしも嫌いじゃないし」 「…………?」 ふと、あたしの眼に入ったソノラの表情がにんまりと揺れた。基本的に屈託のない笑顔なんだけど、今の言葉を放った一瞬から、何かが―― 「あたしさー、あなたみたいな気丈な子は大好きだよ。なんかこう……ほら、ついイジめてみたくなっちゃうんだけどさ♪」 「……ふんっ」 ちょっと意地悪な表情を見せてくる。からかってるだけなら付き合ったりしない。 「ほーんと頑固。ま、その方があたしとしては楽しいんだけど♪」 ふと、つかつかとソノラがあたしの方に歩み寄る。 ギシ――ッ 「っく……!?」 あたしの手を縛ってる縄の端を、ソノラが突然ぐいっと引く。その拍子に縄が手首に強く食い込み、おもわず声が出た。 「冗談だ、って思ってるでしょ。言っとくけど、あたしは本気だよ?」 そう言ってソノラは、ベッドの下に手を伸ばす。そしてそこからもう一本縄を取り出し、てきぱきと伸ばしてあたしの胸元に巻きつけた。 「よいしょっと♪」 「あぐ……っ……!」 軽い一声とともに、ぎしりと強い力で縄が締め付けられる。あたしの動きを封じるためじゃなく、明らかにあたしに痛みを加えるためだけの所作だ。 さらにあたしの背中を足で蹴り押し、あたしはベッドにつんのめるように屈伏させられた。背中から押し付けられる一方で縄は上に引っ張られていて、縄痕がつきそうなぐらいきつきつに胸が締め付けられる。 「ふふっ、どう?あなたって、そういう風に屈服させられるのってすっごく嫌なタイプでしょ♪」 「く……!」 振り返って見ると、上機嫌の笑顔がソノラの顔に張り付いてた。ただ、さっきまでの朗らかな笑顔とは違い、今の笑顔からはすごく攻撃的な企みがにじみ出ていて――受け入れたくないけど、すごく妖艶な笑顔だった。 「いい目してるじゃん。でも、いつまでそういう顔してられるかなー?」 ソノラはおもむろに、あたしの首に縄を巻きつけた。 「が……っ!?」 「大丈夫だよ、別に暴力振るおうってわけじゃないから。ただちょっと、場所を変えたくってさ」 ソノラは私の首に巻きついた縄のもう一端を持ってぐいっと引っ張る。首輪と同じ要領で、苦しいあたしはやむを得ず強引に立たされる形になった。 「はい、ついてきて」 マイペースに、だけど力任せに引っ張られ、なすすべなく引き連れられる。 やがて、薄暗い部屋に引きずり込まれ、ぐいっと目の前のベッドに押し倒された。 「ちょっと汚いところでごめんね。さっきのがあたしの部屋で、ここは倉庫だよ」 倉庫――確かに、周りを見たらそんな感じ。だけど、倉庫にベッドがあるのは―― 「あなたのために特別に運んでもらったんだよ?」 そう言ってソノラは、召喚石を取り出す。そしててっとり早く詠唱し…… バチッ! 「うああ……っ!?」 甲板で受けたのと同じ、エレキメデスの電撃と同じものだ。威力はあの時ほど強力じゃないけど、一気に体が痺れ自由を奪われる。 「手荒でごめんね。ちょっとのガマンだから♪」 あたしが動けなくなったのを確認すると、ソノラがあたしの手を後ろに縛ってた縄をぶつりと切る。そしてそそくさとあたしのコートを脱がせて、それを部屋の隅にひょいっと投げる。 「コート脱いだらずいぶん薄着じゃん。まあ、あたしはその方がラクでいいけど」 クスクスと笑いながら、ソノラはあたしの靴や手袋、帽子もはぎ取っていく。抵抗しようとするも体が上手く動かせず、文字通り、されるがままだ。 「これでよし、っと。あとは……」 倉庫のいろんなところを探り、何かを探すソノラ。戻ってきたソノラの手には、さっきまであたしを縛っていた縄よりも少し太く、頑丈そうな縄が握られていた。 「これをこうして、っと」 ソノラが縄を一本適当な長さに切り、同時にあたしをうつぶせに寝かせる。 一本の縄の橋であたしの片手を縛り、もう片方をベッドの隅にくくりつけた。 「う……!?」 「ふふっ、だいたいどうなるかわかったでしょ?」 同じように縄をあと3本用意するソノラ。一本はあたしのもう一本の手首に、もう二本はそれぞれあたしの足に――数秒後、あたしはうつぶせのままベッドに大の字に寝そべって、手足が全く動かせない状況になっていた。 「もうそろそろ動けるんじゃないかな?まあ、今さら遅いけどね」 「んっ……く……!」 両手両足を伸ばした状態で、縮めようとしても縄に固定されてそうはいかない。 確かに痺れはおさまってきたけど、こんな状況じゃもう身動きがとれない。 「さーてと、お楽しみはここからだよ。さっきも似たようなこと言ったけど、あたしあなたみたいな強気な子をイジめるの、大好きなんだ」 「ひゃ……っ!?」 舐めるようにソノラがあたしの太ももを指でなぞる。思わず高い声が出て手で口をふさぎそうになったが、手は固定されていて動かない。 「そうそう、いい声。……そういうの、い~っぱい聞かせてもらうよ♪」 抵抗どころか身動きひとつろくにとれないあたしの上で、主導権を握ったソノラが妖しく笑った。 つづく 目次 | 次へ |
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