シンゲン×リューム「親父、おや、じぃ……ッ!」 面影亭の二階、自室にあるライのベッドで、リュームは裸で自慰に耽っていた。 ただし、その小さな手が弄んでいるのは未成熟な生殖器ではなく、 「ふあ……、は、んっ……!」 菊座に挿入された中指が抜ける度に、リュームの口からは艶を帯た声が漏れる。 中指に薬指を加え、二本指を抜き挿しする速度が速くなる。 比例して息も荒くなり、その蒼い目は何も映していなかった。 もう一方の手はシーツを固く握り締め、絶頂が近いことを示している。 「はっ、はぁっ!ふぅぅぅ~~~~~~~~~~ッッッッッッ!!!!!」 より一層深く指を挿し込んだ瞬間、リュームは背を反らし、声にならない声で哭いた。 暫くそのまま固まった後、崩れるように布団に突っ伏す。 そのペニスは、精を吐いていない。 至竜の知識にはそういったものもあるのか、尻穴だけで昇りつめたようであった。 「ライぃ……」 ぽつりと、想い人の名を呟く。 決して結ばれてはならない存在。 自然と涙が溢れてくる。 それは結ばれない関係への悲しみか、或いは自身の体に対する嘆きか。 普段より覚醒度の低い意識の中、気配を殺した達人を知覚するのは難しかったろう。 「成程ねえ、そうやってご主人が留守の間に気持ちを処理してたって訳ですか」 すぐ真横から聞こえる軽薄な声。その持ち主は、 「シっ……、シンゲン!?いっ、何時からそこにいやがった!」 「菊を揉みほぐして指を埋めはじめた辺りからですかねえ。いやいや眼福眼福」 鬼界から喚ばれてきた武人はからからと笑う。 つまりほとんど最初から見られていた訳だ。 「泣かせるじゃありませんか。愛する人と暮らしながら想いを告げることも出来ず、隠れ自ら慰めるのみ。その健気さ!」 ベンベン、と三味線を鳴らす。一見からかっているようだが、目は真面目だ。 「ケーベツ、しないのか……?」 「してほしいんですか?」 「……」 普段はやんちゃなリュームの声がか細い。 そこから示される不安の大きさを、シンゲンは正しく理解していた。 「愛の形は人それぞれですよ。それより指なんかで足りるんですか?」 本当のことを言えば、指だけではとても足りなかった。ライ自身が欲しかった。 だがそれを言うわけにはいかない。 言葉にしてしまえばきっと、我慢できなくなる。 「自分のを貸して差し上げましょうか」 ぞくり、と背筋が粟立つのを感じる。 魅力的な提案ではあった。 しかしそれを受け入れてしまえば、きっともう気持ちに歯止めが利かなくなる。 今までの我慢が無に帰してしまう。 その迷いを読み取ったのか、シンゲンが少しばかり声を荒げる。 「ご主人にばらされたくなかったら、自分の言うことを聞いて貰いましょうか。尻を貸しなさい」 「し、仕方ねえな。今回だけにしてくれよ……」 言い訳を用意してくれた優しさに感謝と悔しさを感じつつ、四つんばいになって尻を差し出す。 「綺麗な穴ですねえ……。そのくせ、ほら」 「ひっ……!」 色素の沈着していないアナルに、シンゲンはいきなり指を二本突っ込む。 リュームのそれよりずっと太い指だが、特に引っ掛かることもなく根本まで埋まってしまう。 「あ、うぁ、うあぁぁぁぁ……!」 うめき声のような喘ぎ声がリュームの口から溢れる。 「いくらさっきしていたからと言ったって、いきなり指を二本も飲み込むなんて助平な穴ですよ。まったく」 「そん、な……こと……っ。ふあ、あ、んっ……!」 「おやおや、口では嫌がっていても、ってやつですか。かわいいオチンチンがひくひくしてますよ」 シンゲンの指摘通り、腸内で指が動く度にリュームのペニスは切なげに反応していた。 その先端からは既に先走りが溢れそうだ。 「これなら慣らす必要も無さそうですねえ」 シンゲンは着物の前を割り、褌を外してリュームの下に敷く。 「ご主人の布団を汚すわけにはいきませんからね。……いきますよ?」 「お、おう……。……ッ!お、おあ、あぁっ、は……ッ!」 今まで感じたことのないような圧迫感が内から襲ってくる。 全身から脂汗が滲み出る。 こんなのが出たり入ったりするなんて、死ぬんじゃないだろうか。 「お、おい。はっ、全部、入っ、たか……?」 「まだまだ、カリ首までしか入ってません、よっ、と」 ぱん。 「……ッッッッッッ!!!!!!!」 やおらリュームの尻にシンゲンの腰が打ち付けられる。 竿の長さをフルに使って結腸までを一気に貫くのは、初体験のリュームには少々辛かったかもしれない。 「げほッ!え゙ほッえ゙ほッ!!!!何……しやがる……!」 内臓を丸ごと持ち上げられるような不快感にえづきながら、涙目でシンゲンを睨む。 「何って挿れただけですよ。ほらほら、自分の方なんか見ないで黙ってご主人に犯される想像をしてなさい」 言われた通りに、ライに犯される自分を想像する。 腹の中を動き回っているのは変態無職のチンポじゃなくて大好きなライのそれで。 腰をおもいっきり掴んでいるのも変態無職の手じゃなくて大好きなライのそれで。 匂いだって、こうして布団に顔を押し付ければ、大好きな大好きなライの匂いがする。 気が付けば、泣きながらライの名を叫んでいた。 「ライ……!ライぃぃ……!!」 シンゲンがいつの間にか黙って、リュームの良い所を突くことにのみ集中していたことに、リュームは気付かない。 「あ…………ッ!駄目、だぁ……!……ラ、イぃぃぃぃぃぃッッッッッ!!!!!!!!」 咽と背筋を限界まで反らし、息をするのも忘れて褌の上に長い長い射精をする。 前立腺を圧迫されているためか、精液はとろとろと滴るようにしか吐き出されない。 却ってそれが快感を長引かせる。 シンゲンが射精していない肉杭を引き抜くと、リュームは全力で走った後よりもずっと荒い息をして崩れ落ちる。 腰が抜けると言うのはこのことかと考えながら、シンゲンに後始末をされる。 立ち上がることはおろか、指一本動かすのも億劫だ。 ふとシンゲンの股間に目をやると、未だ萎えず立ち上がっている。 (アイツ、出さなかったのか……) 「ごめんな……。気持ち良くなかったろ……」 思いの外大量の精液で汚れた褌をどうしようか考えていたシンゲンは、最初何の事か分からなかった。 「ああ、なかなか良い具合いでしたよ。むしろ出さないように堪えるのが大変なくらいで」 「でもよ……!」 「大丈夫ですよ」 何が大丈夫なものか。 自分の、男の体ではライを満足させる事は出来ないのではないか。 よしんば満足させられたとして、至竜で男の自分にはライの子供は産めない。 それならいっそ、リシェルやポムニット、アロエリ辺りとくっつけた方がライは幸せに決まっている。 そもそも義理とはいえ男同士の親子でそんな気持ちを打ち明けられるわけがない。 リュームは途切れ途切れに、時に泣きながら、そういった葛藤を吐露した。 或いはこれはシンゲンでなければ出来ない役目であったかもしれない。 立場上御使いに弱味を晒け出すわけにはいかず、ライの友人知人には尚の事相談できない。 そういった意味で、よそ者のシンゲンは適任であった。 リュームの葛藤を理解した上で、シンゲンはもう一度言う。 「大丈夫ですよ」と。 そして続ける。 「ご主人なら少なくとも拒絶はしないでしょう。それに、なぜご主人の幸せを貴方が決められるんです」 「…………」 「駄目でも自分でよければご主人の替わりになって差し上げますから。シルターンには少年愛がありますしね♪」 「…………ばーか」 リュームの顔に、笑顔が戻った。 オワリー 目次 |
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