恋と女子は山あり谷ありでござる by流浪の剣豪カザミネ暇だな。 カシスは「調べものするからジャマしないように」と、朝から部屋にこもっているし、ガゼルはリプレの荷物持ち、ジンガはエドスの所で働いているときた。 「──用があるならドアから入れよ」 ぽつりとつぶやくと、天井から何かが落ちてくる。 「何言ってんの。シノビにとっちゃ天井裏が廊下みたいなもんよ」 夕陽色の服でことさらに目立つ自称シノビの少女、アカネだ。 「みんな出払っててだ~れもいないからさ。暇してるならたまにはアタシの相手してよ」 ふむ。どうせ一人でやることもなかったのだし、ちょうどいいかもしれない。 「いいぜ。退屈してたところだ」 ハヤトの了解を取ると 「じゃ、さっそく…」 と、いそいそと服を脱ぎ出すアカネ。 「お、おい!何してんだ!?」 「何って…クノイチの相手って言ったらひとつしかないでしょ」 上を脱ぎ捨てると、こちらにダイブしながら下も脱いで下着姿で飛びかかってくる。 『俺が襲われる方かよ』とか、『なんでシノビなのにブラとショーツなんだ』とかツッコミ所はいくつもあったがパニックになった頭では処理しきれない。 だが、アカネ自身に突っ込むのは最後の理性がなんとか押しとどめてくれたようだ。 「だあぁ!やめろって!俺は身持ち堅い方なんだぞ!」 「とか言いながらこっちはしっかりカタくなって──」 その頃、隣の部屋では。 「え~っと……これは確か……」 どすんばたん 「…………」 どすんばたん 「ああもう!うるさいわね!集中できないじゃない!」 調べ物が思うように進まない事もあって、カシスは苛立ちをつのらせながら隣人に文句を付けに部屋を出た。 再びハヤトの部屋。 「とにかくおとなしくしろ!」 危うく貞操を奪われる所を、何とか体を返して押さえ込む。 「いや~ん。アカネちゃん大ぴ~んち」 「そりゃこっちのセリ……フ……だ……」 唐突にハヤトの顔が青ざめる。 いつの間にやら戸口にカシスが立っていた。 「あ、いや……これはだな。その……」 現在の状況を確認してみよう。 アカネは下着姿で、それをハヤトが組み敷いている。しかもベッドの上。 必死に頭を巡らせても、この状況を説明できるほどハヤトは器用ではない。 「あ、アタシはこの辺でさいなら~」 脱ぎ捨てた服を手早く回収し、しゅっと天井裏に消えるアカネ。逃げた。 カシスは笑っている。天使のような笑顔だ。ただし敵対する悪魔を一瞬に殲滅するような。 「最低」 ぽつりとこぼすと虚空から飛び出た小悪魔の槍がハヤトを壁に縫い止めた。 そして笑顔のままハヤトの前まで歩み寄るカシス。 短く呪文を唱えさっと手を振ると、開いたサプレスへの穴から大悪魔が姿を現した。 大地を揺るがすほどの力を持つこの術に、カシスの魔力が加わればサイジェントの一区画をクレーターにして余りあるだろう。 「待て!お、落ち着けって!」 制止など聞く耳持たず。カシスは大きく振りかぶると 「バカああああああああああああああっ!」 悪魔の力を宿した鉄拳は壁を砕いてハヤトの体を塵のように吹き飛ばした。 「だああっ!もう限界だ!いい加減なんとかしやがれ!」 朝っぱらから真っ二つになるほどテーブルを叩いてガゼルがブチ切れる。 あれから一週間。カシスは必死に弁解し、何度も謝るハヤトをにべもなくあしらっていた。 ハヤトが謝るたびに不機嫌度が増していき、今ではすれ違うだけでも周囲に凍るようなオーラを放っている。 「何とかできるならとっくにやってるよ…。俺もどうすればいいのか…」 どれだけ謝っても聞いてくれないし、説明させようにも騒ぎの張本人は行方不明だし。 あそこで逃げた後、アカネは全く姿を見せなくなり、あかなべも閉まったままだ。 「あかなべなら開いてたぜ。シオンさんが戻ってたからよ」 ジンガの言葉に希望が。シオンさんならアカネの所在を知っているかもしれない。 他に打つ手がないハヤトは、藁にすがる思いで駆け出した。 「シオンさん、アカネがどこにいるか知りませんか?」 あかなべに着くや、店先を掃除しているシオンに尋ねる。 「アカネさんが……また何か?」 いつも穏やかなシオンの口調が若干刺々しい。丸一週間店を放置されていたことで機嫌が悪いのだろうか。 話すのは恥ずかしいが、事情を説明しないわけにもいかない。 「そうですか。しばし待っていてください。アカネさんを探してきますので」 話を聞き終わると、ふっとシオンの姿がかき消えた。 「大変でござったな、誓約者殿」 店の奥からカザミネが出てくる。この人も帰っていたのか。 「拙者、修行中の身故たいしたことは言えぬが…言葉を聞いてくれぬのはまだ誠意が足りておらぬのではないでござろうか? やはり女子には誠意を持って接さねばいかんでござるからな」 「いや……二股かけてるカザミネに誠意とか言われても」 「な、なんと!心外でござる! 清楚可憐で豊満なカイナ殿、女盛りで美しく豊満なケルマ殿。 二人とも拙者にはもったいないほどの女性故、要領よく両者と付き合おうという拙者の心に嘘偽りなど──」 もはやどうでも良くなったカザミネの話を聞き流し、シオンが戻ってくるのを待つことにする。 そしてほどなく、風を巻いてシオンが戻ってきた。 アカネの襟首を捕まえて猫のようにぶら下げたまま。 「おいアカネ、今までどこ行ってたんだよ」 「あ、アタシも悪いと思ってさ!今までこれ作ってたんだよ!」 と、透明な液体の入った小瓶を手渡してくる。 「……何だこれ?」 「アカネちゃん特製の秘薬だよ。これさえ飲ませりゃ口では強情張ってても体は従順に──」 「アカネさん」 「ひゃ、ひゃいっ!」 割って入ったシオンの冷たい声で縮み上がるアカネ。 「とにかくお前からもあいつに説明してやってくれよ。俺が言っても聞きゃしないからさ」 「お、おっけー!行ってくる!」 シオンの脅威から逃れたいのか、アカネはすぐさまダッシュで去っていった。 ──30分ほどして 「ただいま~」 「早かったな。で、どうだった?」 「ダメだった」 あっけらかんと他人事のように言うアカネ。その首をひっつかんでガクガクと揺さぶりたい衝動を必死にこらえ、 「……ひとつ聞きたいんだけど、どういう風に説明したんだ?」 「ん?ちゃんと『アタシの方から誘ったんだよ』とか『クノイチの色仕掛けに引っかかるのは仕方ないよ』とか」 もうダメだ。やっぱりアテにしたのが間違いだった。 「すみません……。アカネさんに任せるべきではありませんでした……」 「いや、シオンさんのせいじゃないから」 そうは言いながらもがっくりと肩を落とし、 「とりあえずもう一度話をしてみるよ……。聞いてくれるかわからないけど」 もうこのままアルク河に飛び込んでもおかしくないくらいの落ち込み具合だ。 シオンはこっそり逃げようとしたアカネの影に苦無を打ち込み動きを縛ると 「老婆心ながらハヤトさん、伝えられることは弁明や謝罪だけではありませんよ」 それだけ言うと動けないアカネを引きずって店の中へ入っていった。 「アカネさん、さすがに今回は目に余りますよ。今日一日お仕置き部屋です」 「やだぁ~!かんべんしてお師匠~!」 そんな声が聞こえる頃、ハヤトもフラットに向けて歩き出していた。 ──その夜。カシスの部屋。 パジャマに着替えてころりとベッドに横になり、 「はぁ……。今日も、か」 あの時はついカッとなって殴り飛ばしてしまったが、少し考えれば事故──と言うかそのテの目的でやったわけでないのはすぐわかる。 ハヤトはいきなり押し倒すような性格ではないし、アカネの色仕掛けにひっかかる者もいないだろう。 そもそも二股かけるほど器用な人間なら、あんなお人好しになるはずもない。 しかし、だからといってすぐに許せるかというと答えはノーだ。 謝ってほしいわけじゃない。いいわけなど論外。 もっと言うことがあるだろうに、あのバカは。 考えるほどにどんどん陰鬱な気分になっていく。 「もう寝よ……」 ふと。ドアの下から何か出ている。 「……?」 二つ折りになっていたそれを開くと、ただ一言『待ってる』とだけあった。 今日も月が綺麗だ。 満月の下、屋根の上に座ってハヤトは待っていた。 「バカね。あたしが気付かなかったら朝まで待ってたの?」 かけられた声の方に目をやると、屋根に出る窓からくせ毛がこちらをのぞいていた。 「さあな。まあ来てくれたんだからいいさ」 「はぁ……。それで、何の用?」 「話をしようと思って」 「話なら毎日してるじゃない。キミは謝ってばかりだけど」 「お前が応えてないからアレは『話』じゃないよ」 「じゃあ今度はあたしが応える気になるような話をしてくれるってことかな?」 少しだけ柔らかい口調で答えると、ハヤトの横に腰を下ろす。 「今日一日ずっと考えてたんだけど……俺、こういう事伝えるの苦手だから……。ちょっとこっち向いてくれ」 「何?」 呼びかけられ、反射的に顔が向く。 瞬間、唇を優しく塞がれる。それは長時間夜気にさらされて冷たくなっているが、暖かい。 長いような短いような時間が過ぎ、ハヤトの方からゆっくりと離れる。 「つ、伝わった、かな…?」 真っ赤になってぽりぽりと鼻の頭を掻く。どうやら自分からやっておきながら照れているらしい。 「その……俺の気持ちは変わんないからさ。他のコと何かあったりとかは絶対に──」 カシスは特大のため息をつくと 「はぁ……。キミってばホントに大バカね」 ふわりとハヤトの体を包み込む。 「遅すぎだよ。一週間も待たせてくれちゃって」 良かった。これで何とか元の鞘に収まってくれたようだ。 ハヤトも腕を回して柔らかく抱きしめる。触れた部分から暖かさが伝わってきて心地良い。 もう少しこの時間が続いてくれれば……。 ──そう言えば。 アカネがよこした物がポケットの中に。あの時返しそびれていた物だ。 アカネの説明は途中だったが、なにやら素直になる薬だとか何とか言っていたような気がする。 たまにはひねくれないで本音を聞かせてほしいな、などと思ってしまい それをこっそりと一口含むと、再び唇を重ねたときに流し込む。 「!」 カシスは唐突に侵入してきた異物を飲み込んでしまい、軽くむせ返る。 「けほっ……な、何、これ?」 と、見る間に目が潤み、頬が上気していく。 「や、やだっ……体がどんどん熱くなって……」 小刻みに荒い息を吐き、もじもじと腿をすり合わせる。 アカネのやつ、いったいどんな物入れたんだ…… こりゃヤバいことしたかな、と思っていると薬の効果か今度はカシスから唇を重ねてくる。 深く吸われ、割って入ってくるねっとりとした舌の感触に頭の回路がいくつか弾け飛んだ。 ちょっと待ってくれ。これじゃ理性が持ちそうにない。 そう考えるのは頭の片隅だけで、大部分は感情に忠実に動き始めていた。 気付いたときにはカシスのパジャマの前をはだけさせ、胸に手をあてがっていた。正直な手だ。 ──ダメだ!自制だ俺!意識を集中して自制を……。集中だ、集中…… 柔らかいな……って手に集中してどうする俺! ──ごめん、もう無理。 抵抗は最初から無意味だったのか、ハヤトの手はこねるように丁寧に胸を揉みしだき、こりこりと乳首を摘み上げる。 「んっ……はぁっ……」 キスの間から漏れる声が次第に艶を帯びていく。 唇を離すと胸に吸い付き、ちろちろと舌を使って焦らすように舐め回す。 「……ぁっ!ふぁぁっ!」 続いてショーツに侵入しようとするも、もうすでにパジャマに染みるほど濡れだしていた。 それならとショーツごとパジャマの下を引っ剥がす。 片足だけ引き抜くと、服を引っかけたまま両足をぐいっと押し広げて秘所を露わにする。 実際そういうのを見るのは初めてだったわけで、まじまじと観察したり。こうなってたのか。 「じろじろ見ないでよぉ……ひゃっ!?」 抗議が入る前にそこに口を付ける。まるで電気が走ったかのようにびくん、と痙攣するカシスの体。 ぴちゃぴちゃと水音を立てながら秘所をすすると、次第に嬌声が抑えられなくなってくる。 割れ目の間に舌をねじ込んで中をかき回し、最後に一番敏感な部分を擦るように舐め上げた。 「ひぁっ……!ああああっ!」 カシスはひときわ大きい声を上げて絶頂の快感に身を委ねた。 もう我慢できそうにない。 もはや限界近いハヤトはズボンをゆるめて自身を取り出した。 それを初めて目の当たりにしたカシスは、とろんとした目でこちらを見つめている。 カシスの体を抱えながら、いいか?と目で問うと、若干怯えながらも小さく首を頷かせた。 ハヤトは自身をカシスの秘所にあてがい、ゆっくりと侵入させていく。 「くっ……!うぅっ……!」 先端が見えなくなった所でそれ以上進まない手応えを感じる。 「痛っ!」 「……大丈夫、か?」 ハヤトの方も相手を気にかけるほど余裕がない。いつ爆発するかわからないほどだ。 「ぅん……。痛みが長いのキツいから……一気にやって。それと……」 「何だ?」 「ちょっと泣いちゃうかもしれないから……口、ふさいでて」 ひとつ頷いてカシスに覆い被さると、唇を強くふさぎ── 一気に貫いた。 「────ッ!んううっ!」 口をふさいでなお響く悲鳴。二人が繋がった部分には朱が混じり始めていた。 「はっ……はぁっ……」 にじんだ涙をぬぐい、抱いた背中を撫でて、ようやく落ち着いたようだ。 こっちの方は爆発を耐えるので精一杯なんだが、何とかそれを見せないように努力する。 当のカシスはと言えば、繋がった部分を見つめて真っ赤になっている。少し満足そうでもあるが。 ゆっくりとハヤトの腰が動き出す。 「んぁっ!あぁぁっ!」 やはり痛みが勝るのか、カシスの目に涙が浮かんでくる。 初めて男を受け入れたそこは、絡みつく──いや、噛みつくほどにハヤトを締め付け、 一度動くたびに絞られるような感覚が思考と理性を削り落としていく。 数度繰り返す頃にはハヤトの思考はずいぶんシンプルになっていた。 「大好きだよ、カシス……」 思えば、初めて口にしたような。 「うん……あたしも、だよ……」 その瞳には「痛み」のものではない涙が。 「くっ……もう限界だ……」 「あ、あたしも……」 精神の高ぶりに薬の効果も相まって快感が波のように押し寄せる。 「ああああぁぁっ!」 激しく突き上げられ、想いを全身で受け止めて、カシスの意識は襲ってきた快感の津波に押し流されていった。 ハヤトはくたりとのびたカシスの体を抱え上げ、屋根から部屋まで連れて行く。 そっとベッドに下ろすと、部屋を後に── できなかった。 首にカシスの腕が絡まっている。 「……続き」 「え?」 薬の効果は夜が明けるまで残っていた。 ──翌日。 「あら、どうしたのハヤト?」 朝食の準備をしながら、リビングのテーブルに突っ伏したハヤトに尋ねるリプレ。 「ずいぶん疲れてるみたいだけど……仲直りしたんじゃないの?」 「あ、ああ……仲直りはできたんだ。その、少し寝不足なだけでさ……」 ふぅん、とあまり気にも止めずキッチンに戻っていく。 さすがに「眠らせてくれなかった」などと言えやしない。 ちなみにその相手は腰が抜けてベッドから起きあがれずにいたりする。 向かいでは朝食をたかりに来たアカネがにやにやしている。いやがらせか。 とりあえずポケットに入りっぱなしになっていた小瓶をつかむと、にやけ面めがけて全力で返却した。 おわり 前へ | 目次 | 次へ |
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