モドル

キラ捜査本部は一行に捜査が進む気配は見えない。
いや、そう操作しているのは現主格とも言える僕夜神月の仕業なのであるが。
彼こそが今、世界の広範囲で神と囃され、崇め祀られる存在、キラなのである。
殺人犯であるキラがどうして自分を追い続けるであろう警察の存在を無視出来る?
放置して置くわけにも行かない。纏わり付かれる煩わしさはキラとなってからどれだけ身に沁みただろうか。
そういうわけで夜神月は上手く捜査員トップ「L」の座に上手く入り込み、操作を撹乱させ、
捜査本部をただの一般市民と同等の、何の力も無い少数組織へと墜とした。
しかしそれでも、既に自分には疑惑が何十にも乗せられている。
息をつける場所など、「神」にはどこにもないのだ。
そもそも楽園など神が人のために生み出す存在。神は自由にして、全て奪われた存在。
言い換えれば人のために存在する幻想。
何故なら神というのは完全なる偶像であるから。
この世の中のどこに神がいるという?
そう、なら神を創ればいい。自分が神となって世界を自由にしてやればいい。
雁字搦めの生活も、その一環だと思えば悪くない。
もはや自分は神として成立したのだ。条件は全て揃えた。
僕=神 神=キラという方程式は全世界共通となった。
神の降臨という愚かな人民達の夢と希望は叶えてやったのだ!
でも―
詰まらなくて仕方が無いんだよ、L。
相変わらずお前の残した捜査員や子供は無能だし、僕の周りにはその白痴しかいない。
馬鹿共が足りない脳漿を一生懸命フルスロットルさせて隣で嘲笑う僕を探している。
その様は見ていて実に愉快だよ。奴らを蹂躙する時が楽しみで仕方がない。
しがない暇つぶしのしらみ潰し。確かにそうだ。でも足りない。
自分が人間だった頃がまた戻って着たようだ。何故だろう。
神になったというのに、何故こんな焦燥感や悲壮感を味わうのだろう。
おかしい?不思議だ?何故なんだ?
これでは何も変わらないじゃないか。
部屋に篭り紙切れを片手にコーヒーを飲む。今日も、明日も、そして明後日も。
確実に変わった世界は、中心になればなるほど変革を起こさないのではないかと、
僕は静かに危惧しながら見ないふりをしている。ここは台風の目なんかじゃない。
すぐに過ぎ去る台風なんかじゃない!!僕はキラだ。神だ。神なのだ。
永遠に、永久に生き続ける神だ!
『神、変わらぬ忠誠を此処に誓います。どんな命令でも構いません。
私の全ては貴方の物。どうかご自由にご使用ください』
それは連絡を絶っていた照から突然の電話だった。
魅上照。僕が今一番信用している配下だ。全てに置いて完璧を催す。
そして誰より「神」を尊崇している。彼の言葉は僕の「神」としての自尊心を程よく刺激する。
実に美味しい蜜だ。
そんな彼が一体何のようだというのだろう。
僕が今、共犯と直接連絡取れるような現状にいないことを彼も理解してたはずだ。
『神のその声を聞きたく電話致しました。私のエゴをお許しください』
そうして始まった。判らない。一体お前は何故付きまとう?
お前は女か。昔いた。どこまでも僕と言う存在に夢を見続けていたメルヘン少女が。
あいにく僕は他人に夢を与えるのが得意でね、彼女の思うままに振舞ってやった。
まるで稚拙な小説か少女漫画のようだった。馬鹿らしい。
得意であっても、それを好むとは限らない。時間をかけて僕は彼女を引き離した。
まぁ中学生の頃だったから、高校で自然と離れることが出来たのだが。
『神…』
囁くな。耳元で囁くな。
『神……』
…照。どうした。何故そんなに動悸が激しいんだ?
まるでフルマラソンを完走してきたかのようなその息切れの度合いに、僕は不信感を募らせる。募らせる。
「魅上、お前が話したいのは判った。お前もわかっているだろう?
 見張られて動けない。この電話さえ危ういんだ」
『はい、もちろん了承の内です。判っています。ですから私のエゴです…。』
「お前の個人的な自己満足と、神の失墜、お前はどっちを選ぶんだ」
『わ、…私は……貴方、の…ハァ、貴方を………』
「そうだろう?この計画、全ては神が中心だ。」
『は、はい……ッ、神の、その中に、私が入って……ぁあ…い、いえ、逆でも…ッは』
「……魅上?」
そういえば偽装用に購入したAVやらエロ小説の女の台詞に似て……え?
『か、神が…ッ私の中に……あ、貴方と…合体したい…。私の身体も全て貴方の意のままに…』
だめだこいつ…はやくなんとかしないと……
「…魅上、言っておくが神はお前と合体することも身体を翻弄することも望んでないぞ」
『神。か、神……ああ、もっと、もっと声を……ッ』
…聞いてない…!?
「…切るぞ」
『あ、あああ…ッ!そ、そんなッ、ま、まって………うッ…』
…う?何故そこで力む。まさか………。
一応弁解しておくがもちろん僕がAVやエロ本を購入したのは年相応の少年を演じるためだぞ?
『………は、ハァ……はァ…、ッ……か、神…有難う…御座いました………』
「お、おい!?み、魅上!?」
なんて奴だ。どこから個人情報を手に入れたのか勝手に電話しぐだぐだと呪詛のような言葉を一方的に延々と呟いたかと思えば、
僕の呼びかけには応じず、勝手に切りやがった。魅上照……恐ろしい……。
僕は人選を誤ったか?二十にも三十にも重量を増した頭を抱え、悩ませた……。
…最初の重たいシリアスな独白はどこへいったやら…。
ていうか、いらなくね?
モドル

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