ぱちん
 
と、風船が割れるような感覚に驚いて目が覚めた。
勿論、実際にはどこにも風船なんてあるわけが無い。
見慣れない白い天井、自分が握り締めているふわふわとした手触りの
ブランケットや、その上に幾重にも重ねられた毛布や羽毛布団。
目覚めは良いのに、体が付いてこない。のろのろと体を起こすと
どうやら俺はベッドではなく、ソファで寝ていたらしい。
今一つ状況が飲み込めないで居ると、
 
「いきなり起きるんやなぁ、吃驚するわ」
 
困ったように笑いながら、俺を見上げている涼平くんがいた。
ソファに凭れかかるようにしてテレビを見ていたようで、くしゃりと片側の
髪にだけ癖が付いている。
冬だというのに相変わらず裸足で、トレーナーの袖は肘まで捲られている。

「寒くないの?」
 
口にしてしまってから、そうではなくて!と、内心、自分で突っ込みながら
この状況に至るまでの経緯を、記憶の糸を辿ってみるが上手く行かない。
まるで、思考回路が超低速で動いている感じがして、埒があかない。
どうして自分の家じゃなくて涼平くんのところにいるのか、記憶が飛んでいる。
 
「大丈夫?気持ち悪い?」
「や、大丈夫・・・です」
「なあ、そんなお持ち帰りされてショックみたいな顔せんといて? 俺、傷付くやん」
「え?」
「・・・・・覚えてへんの?」
 
返す言葉も無く頷くと、目の前に一枚の紙切れを差し出された。
 
「席取れたって持って来てくれたの、覚えてない?」
「・・・金曜日のチケット!」
「正解。じゃ。これは?」
「あ!それは・・・」
 
涼平くんの手からもぎ取ろうとして空を切ったのは、俺のフォトブック。
それには、しっかりとサインまで入れてある・・・筈だ。
 
『俺な、サイン入れて欲しいんやけど』
『じゃ、「涼平くんへ」って入れときますね』
 
 
 
少しずつ、昨夜の記憶が甦ってきた。
 
 
夜の部が終わってから食事がてら皆で飲みに行ったんだ。
連日の緊張感が緩んだのも確か、酒で勢いが付いたのもある。
なによりも。
公演中の唯一の休みが23日ってのは神様の粋な計らいだったとしか思えない。
多分、冷蔵庫にはコンビニで買った苺のケーキと雛祭り用のお子様用シャンパンが
入っている。
自分の家とは逆方向の電車に乗り、駅からここに来るまでの間、何度も引き返そう
としたことも思い出した。
 
 
 
でも、俺。
どうしても涼平くんに、会いたかったんだ。
 
 
 
『誕生日、おめでとう』
そのヒトコトを伝えたかった。
 
『寒かったやろ?』
笑って迎えてくれて、ほっとしたんだ。
 
 
 
 

「おめでとう」
「ありがとお」
 



暖かで居心地の良い白い部屋で。
壊さぬように、そっと。
俺は涼平くんを、抱き締めた。
 
 
 









 
コレカラモ 
 
アナタト ワラッテ イタイ
 
イツマデモ

イツマデモ
 
 
 











2004/2/29 

ギリギリセーフ?
暑がりの彼が寒がりの彼の為に部屋を暑いくらいに温めておいたとか、見ていたのはテレビじゃなくて二人が大好きな「ショーシャンクの空に」だったりとかイロイロ素っ飛ばしてあるのですが…
なにはともあれ、33歳お誕生日おめでとうございます。今までの痛みをこれからに活かして頑張って欲しいものです(^ー^)b

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