165 :700:2007/08/14(火) 01:40:01 ID:2jCTFI1s
「お兄さん…優しいのね…」
「…」
腕の中に居る存在。小さくて、ほのかに温かくて、全て許せそうな無邪気な微笑みを見せているのに。
白い天使の手は血で汚れて。穢れを知らなくていい体は大人達に汚されて、傷付けられて。
一番惨いのは、善悪を「運命」の一言で片付けてしまう、そういう意識を持ったままこれまで生きさせてしまった、神様の悪戯だと思う。
悪ふざけにしか、思えない。

彼女の純情は歪んでいた。それしか知らなかった。知らない事は、罪だ。
「お礼」
本当に潔癖な人達は、俺の取った行動を獣だと罵るかも知れない。でも、俺は「それ」が彼女の精一杯の表現なんだと受け止めた。
今更でも、この体に惜しみない愛を注いでやれば何かが起きると信じたかった。

「お…にい…さん?」
明らかな戸惑いの瞳は、始めての経験なのか。
体を見せた時には、もう彼女の体を貪る。そんな大人しか見た事がない事が腹立たしい。
「キスは得意かい?」
「…私からしたことはあんまり…いつも無理矢理にされてたから…」
「…俺にしてくれ」
「え?」
「君から…お礼はそれだけでいい」
「え?…ええ」

俺が今やろうとしてるのは同じ事でも、何かが違うと感じられればそれでよかった。
ちゃんと確かめるとそのキスは子供で、唇にばかり集中する。
幼稚さが逆に救いになる皮肉が、痛い。

「ねえ?ほんとにこれだけ?」
「ああ。ごちそうさま」
「…」
腕の中から離れようとしない。
「どうしたんだ?」
「…もっとお礼したいのに…」
「いいんだ。本当に…」

戸惑いを見せる所さえ、救いだった。


172 :700:2007/08/16(木) 01:08:45 ID:J//d7zdr

子供だ。解らない事があってそわそわして、落ち着かない。

「ねえ…お兄さん」
「ん?」
「私…変。人を殺してる最中でも無いのにドキドキしてる」
「どうしてだろうね」
服を引っ張られる手応えがあった。気が付くと俺のボタンに手がかけられている。
「私からしたいの…ダメ?」


「怖くはない?」
「平気よ。沢山されてきたもの」
苦笑いで答えるしか無かった。この体がどれだけの連中に、どれだけの事をされていたのか、俺には知る由も無い。
真っ白な肌に残されている無数の痕。火傷、裂傷。ここに返り血まであったのならやりきれないだろう。
彼女の胸は当然膨らみの兆しを見せていない。それでも玩具にされた跡がある。
将来女の機能をもつ頃には…考えない事にした。

例え、嘘でも。
「綺麗な体だね」
「嘘。傷だらけよ。それに汚れてるわ」
「嘘じゃないよ」
自分で嘘だと自覚している所に俺の偽善がある。それを払拭したい思いもあって、彼女の体を引き寄せた。
「え?…」
「嘘じゃないんだ…」
舌を伸ばす。首筋や肩に。敢えて唇や乳房を避けた。
「あ…」
「じっとしてて」

吐息がみるみる変わって、女のソレに変貌する。その吐息に切なさを感じたのは、やっぱり彼女が普通の子供じゃなかったからか。

「も、もっと激しくしても…いいのに」
「…まだキスくらいだよ」
「頂戴…お兄さんのキス」
整った顔の肌に赤みが差した所を見ると、虜になってしまいそうだった。大人でさえ誘惑してしまう美しさが、先天的に備わっていた。

キスの瞬間彼女の力は抜けた。俺に体を任せる様に。

「おにい…さん」
「わかった…次のステップだ」


179 :700:2007/08/17(金) 01:25:22 ID:D+LNt14h

俺の体の上で踊った。どうしても自分からしたいというのが彼女の願いで、俺は応えた。
「ねえ…私の体良い?」
「こ、子供がそんな事いっちゃダメだよ…」
「お、お兄さんが気持ちよくないと嫌…」
甘い香り。あっちから来たキスの返答。俺の体には充分過ぎる快感が伝わっている。優しくと思っても性欲の妨害のせいでそうはならない。この瞬間、やっぱり俺は獣だった。
「な、中で大丈夫…まだ来てないし…もう壊れて…」
「っ…」
「そう…それで良いの…お兄さん」

「ふふっ…犯されちゃった」
「…」
何故か解らない。彼女の瞳が魔性の物に戻ってる。
俺は軽く体力を消耗して息をついていた。まだズボンしか着けていない。が、彼女はさっぱりと服装を戻している。さっきまでの熱のあった瞳は見られない。


「少しだけ期待してたのに…」
「…?」
「やっぱり…皆変わらないのね」
何を言っているのか解らなかった。心臓が焦った感じに早くなる。
「皆変わらないわ。始めは優しくしてあげるって言うの。でも最後は好きな事して、終わり。お兄さん、何も違わなかった」
「え…」
「オジサン達とおんなじ。お兄さんが悪い訳じゃないけど」奴らと同じ。
何か、プライドに近い物が崩れていく。彼女は純粋だ。純粋に感じた事を言っている。
だから、痛い。
「奴らと…同じ」
「誘ったら食いついた。同じよ」
「…誘ったのか?」
「子供扱いされるのは好きよ?簡単に誘われてくれるもの」
「…」
「自分だけ違う訳じゃないの。お兄さん?」
「…っ!!」

気が付くと部屋を飛び出していた。入れ違いに煙草の臭いを嗅いで。


二人きりの船室に渇いた音が響く。拳に強い手応え。
コイツの見た目に憎悪する。
立ち聞きが悪いのは解ってた。コイツをロックが抱いてると解った時、血が滲む程唇を噛んで、拳を握り締めた。
耐えたのはロックに免じてだ。すくなくともアイツに救われてる人間が。

ここに居る。


225 :700 1/3 双子編IF?:2007/08/21(火) 18:33:04 ID:/yYWYbQe

「あれ?あなた怒ってるの?」
「ああ。仕事じゃなきゃこの場でケリをつけてる」
口元に血が滲んでた。アタシもそれだけ容赦なく、拳をあてたつもりだ。
だが。
笑ってやがる。腹が立って仕方がない。


「どうして怒ってるの?私があなたに何かした?」
「…」
「ねえどうして?お金もあげたじゃない。だからお仕事、引き受けてくれたんでしょ?」
「…お前と契約したのはダッチだ。アタシには関係無い」
「関係無かったら何をしても良いの?雇い主は大変ね。教育もしなくちゃならないなんて…」
「テメェ…」

挑発されてるのも解るが、言ってる事は正しい。
今アタシは仕事中に、積み荷を傷付けて。ビジネスを忘れて。
キレてる。その理由も自分で解ってだ。

「ねえ…なんで怒ってるのか言ってあげましょうか?」
「解ってるならなんでロックにあんな事を言った?」
「ふふ…教えても良いけどもう殴らないでね?」



お兄さんと私は何もかも違うの。
お兄さんにとっての優しさは私にとって距離になるの。お兄さんが優しくしようとすればするほど、私とは違う人って解るから。
お兄さんが私に近付く手段が「優しさ」なのに、その「優しさ」が私とお兄さんを離す。
なら後で辛くなるより、ここではっきり突き放した方がいいじゃない。

「…他に言い方は無かったのか?」

無かったわ。って言うより、お兄さんは一生懸命私の事を解ろうとするから、あれ位言わないと離れないと思ったの。
抱いてもらったのは、お兄さんに私の事を覚えていて欲しかったから。
優しくしても何も変わらない人も居るって、良い経験になったでしょ?これもお礼よ。




226 :2/3:2007/08/21(火) 18:35:12 ID:/yYWYbQe
「つくづく馬鹿にしてるな?」
「馬鹿にしてないわ。抱きしめてくれたお返しをしただけ。それより…」
「?」
「今気になるのはあなたの方」



私と同じ臭いがするのにね。なのにいけない事を望んでる。

「どういう事だ」

欲しくて欲しくてたまらない物があります。それは特に輝いてるのではありませんが、「私と違う」モノだから欲しいのです。
「私と違う」から憧れるのです。嫉妬ではありません。欲しいのです。

「…」

けれども、違うモノは触れあわせてはいけません。両方とも違うモノになって、お互いの役割を果たせなくなるからです。
本来あるべきモノと違う姿になってしまいます。

「…何が言いたい」

私もあんな人、欲しいわ。でもそんな事したら両方とも駄目になっちゃう。私もあの人も中途半端になるから。
あの人は綺麗過ぎるから、濁らせちゃう。可哀想よ。そう思わない?

「関係無いだろ…アイツが何して、アタシにどうしてるか」

はっきり言わないの?
あなたはあの人を汚して、それでもあの人が欲しくて欲しくてたまらなくて。
お兄さん優しいでしょう?朝まで抱きしめてくれる?好きなだけキスを貰える?好きだって言ってくれる?
心も体も全部抱いてくれてる。そんな幻が見える?あの人に浸りたい?

「黙ってろ!」

あくまで予想だけど…体は全部あげてるのに心の深い所は見せない。そういう事してない?
心も全部見せてあげないと愛し合えないのよ?だから私と兄様は愛し合えたもの。

あなたはどう?




227 :3/3:2007/08/21(火) 18:36:40 ID:/yYWYbQe
「…話す事はこれ以上無い」
「あら。逃げられちゃった。じゃあお兄さんをつなぎ止められる様に頑張ってね」
相手するのに疲れたのもあって、アタシは椅子に座った。いや、疲れさせられたの方が正しかった。
コイツはそれから黙って、無邪気な笑顔を見せていた。
アタシを馬鹿にしてる以外、何でもない笑み。

それから運び屋の仕事を終えて。あのガキの結末を見た、帰りの途中。
ダッチ達の迷惑を顧みず、アタシはロックを誘った。
ガキの相手をした時と同じ船室で。


「…見てたのか?」
「聞いてただけだ。何してるかはバッチリわかったけどな」
「ごめん…」
「…謝ることはねえ」
ロックがここまで憂鬱な顔をするのは久しぶりだった。 一番見たくないシケた面。
不思議とあのガキに嫉妬は無い。嫉妬より怒りだ。ロックに余計な事を言った。その事が気に食わない。
それと、あのガキが遺した言葉の幾つかが引っ掛かってる。

「…ロック」
「ん?」
「…アタシをもっと知りたいと思うか?昔の事とか…」
「…レヴィはレヴィだよ。何があっても変わらない」
「…人によっちゃ、過去によってソイツが嫌いになったりする時があるだろ…」
「…レヴィ?」
黙って抱き付いた。喋りたくない時の表現。
「何かあったのか?」
「…別に」
ロックの手を取って、アタシの胸へ引き取る。普段はこんな真似はしない。
「無性にしたいんだ…早くやろうぜ」
「ん…」







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