894 :嫉妬:2008/01/26(土) 13:15:09 ID:uAL1ZD9T
『どうしてこんな……』
もっとも見たくない光景
だからこそ、一瞬も目を離せなかった
薄暗い部屋、ソファーにゆったり腰掛ける奴の前に、一人立ち尽くす
アイツの左右には、幾つもの花が咲き乱れていた
知を色に隠した花
忠義を漲らせる花
無邪気な狂気を咲かせる花
闘いを嗜む花
沈黙を保つ花
穏やかに流れる花
若く未熟な花
美と力と傷を誇る花……

もう、アイツの隣には、空きなどなかった
空いているのは……
「ロ、ロック」
未練がましく声を掛ける
一切、反応はない
暗がりの中、アイツの表情も、気配すら読めなかった
「ロック!」
突如、襲ってきた激昂に身を委ね、両脇に避けた銃を引き抜く
標準を合わせるより速く、花々が揺れる
花弁を広げ、主を覆い隠し、刺をあらわにした
一触即発の中、アイツは一言も漏らさない
……スッ
ただ、静かに片手を挙げ、軽く振った
ササッ
それだけで、殺意に満ちた花々は穏やかに、元の位置に戻る
残ったのは、アタシの銃がロックに向けられている事実だけ
物理的には、数メートル離れていない的を外し様がない
引き金を引けば、その先の者は、物と変わる
それで終わりのはずだ
それで、おしまい……
カタカタ
銃口がふれる
何をしてるんだ
抜いて、狙って、後は撃つだけ
撃つだけ……
ハッ、ハアッ
息が上がる
ガクガク
腕が震えだす
狙いが定まらない
クソッ!銃が重い
早く、ヤッチマエ
何を?
マヌケに突き出した両手
クソ重い塊を握る
その先に人
ソイツを撃つ
なんで?
アタシを惑わすから
アタシを縛りつけるから
アタシを狂わすから
アタシを……
ウワァァァァァァァ!!
バン、バン、バン……
自分の心に浮かびかけた、悍ましい妄想を打ち消す為に、トリガーを引き続ける

895 :嫉妬:2008/01/26(土) 13:21:16 ID:uAL1ZD9T
ガシャ
スライドがオープンでホールドされる
あっという間に撃ち尽くした
アタシの中の、悍ましい思いは打ち消された
しかし、アイツは目の前に立ちはだかったまま
取り巻く花々も、一向にぶれない
銃口を突き付けられたまま、アイツは静かに近付く
アイツの掌が、グリップを握りしめた手を、上から包み込む
アッ
それだけで……
チクショウ
唇を噛み、身体の芯で疼くなにかを打ち消す
しかし、アイツの目的は、そんなことじゃなかった
ゆるゆると指を滑らせ、グリップの一部に触れた
ガシャ
カラカラ……
まさか!
空のマガジンがリリースされる
そして、もう片方の手には、弾の詰まった新たなマガジンが……
イヤだ
それを入れられたら!
黒く硬いソレが、アタシのナカに押し込まれてゆく
ヤダッ!ヤメてくれ
カチッ
願いは無常にも破られた
グイッ
それどころかアイツは、掴んだ銃身を自分の胸に固定する
「弾くか、引くかだ」
他人事のように呟いた
「アッ、アアッ……」
言葉に成らない
自分でもどうしたいのか、サッパリ分からないのだ
引き金を弾けば、コイツは終わる
だけど、銃を引けば、アタシが終わる
ダメだ!考えるな
『ハッ、まだ終わってないつもりだったのか?』
全く逸らさない奴の瞳の中に、写り込んだ誰かが嘲る
『ここまで虚仮にされながら、撃たない理由を探しているおまえが?』
ウルセエ
『認めちまえよ
棄てられたくないって』
ダマレ
『お優しいロック様だ
マタぁ開いて、足元に縋り付けば、拾ってくれるかもよ』
ダマレ
『愛しい愛しいロック様
どうかこの肉穴も使って下さいってナァ
ギャハハハ………』
ダマレェ〜〜〜
バンッ
罵り続ける影に耐えられず、引き金を弾く
醜い写し身は、一発で弾け飛んだ

896 :嫉妬:2008/01/26(土) 13:26:51 ID:uAL1ZD9T
「へッ!
ザマア見やがれ」
バカ女は目の前から消えた
真っ赤なカーテンが、不快なアレを覆い隠した
隠れていない所は……
綺麗なままだった
グシャグシャの半面の反対側は、いつものまま
穏やかに目を綴じているだけ
後ろ頭から脳をブチ撒けているようには見えない
……ウソダ
いつものままの、情けない素人面
ウソダコンナノ
静かに目を綴じたまま、全く動かない
イヤダ……
手の中の拳銃には、ベッタリと返り血が……
イヤ〜〜〜〜〜〜〜〜!!











「……ヴィ!レヴィ
どうした!?大丈夫か」
ハッ
目の前に転がってた筈の死体が、慌てたように問い掛けてくる
いつも通りのアイツの部屋
二人で使うには、ちょっとばかり狭っ苦しいベッドの上
枕元のライトに照らされるのは、心配そうに見つめている、いつもの優しいアイツの瞳
熱い物が溢れ出し、目の前がぼやける
ガバッ
「ロック!ロックゥ……」
歪み始めたアイツの姿を、逃がさないようしがみつく
確かめるように名を呼び続けた
意外に広い胸
触れ合う汗ばんだ素肌が、落ち着きを取り戻させる
グズグズと鼻を鳴らすアタシの髪を、ロックは何も言わずに撫で続けてくれた
「ガキじゃねえんだぞ」
ツッパねてはみたが、本当は心地よさに痺れている
『この温もりを無くしてたら……』
チラリと頭に掠めただけで、背筋にカンナがけしたような悪寒が走った
ますます強く縋り付くアタシを、ロックはただ辛抱強く支えてくれる
アンッ
前言撤回
どさくさ紛れに、うなじと背筋に指を這わせてきやがった
『このヤロウ』
睨みつける
チュッ
顔を向けたとたんのキス
なにが、日本人はキスに慣れてないだ
憤ったつもりが、身体は既に受け入れている
軽く唇を開いて、舌に吸い付く

897 :嫉妬:2008/01/26(土) 13:40:07 ID:uAL1ZD9T
チュプ、チュプッ……
されてる筈が、言い訳出来ない程、しているに代わっている
ロックの唇を、舌を、温もりを貧った
コイツも応えながら、穏やかに手を進めて来る
首筋から背中、腰に胸に、手足の指まで……
緩やかに、ときに激しく、欲しいだけ与えてくれるような、そんな触れかた
こんなの初めてだった
経験だけは、否応なしに腐るほどある
生まれた糞溜めでは、SEXは奪い、奪われるものだった
力が無いものが奪われ、力をつける為に使えることを知り、力で奪いとることを覚える
一時の快楽を得る、酒やモクやヤクと同じようなもの
そんな下らない価値しか無かった
今はどうだ
ロックに触れてないと苦しい
飯より水より空気より、コイツの肌を欲している
また、コイツもそれに応えてくれた
最初は、ありていに言ってヘタクソだった
歯は当てるは、いつまでも撫で回すは、入れるとこ間違えるは、早いは……
それでも、不思議に満足感だけはタップリとあった
快楽を、奪い奪われるのではなく、与え与えられ分かち合う
そんな感覚
認めたくはないが、正直溺れている
ある意味、最もタチの悪い男にひっかかったようなものだ
「クウッ!」
強く抱きあったまま、ロックが緩やかに侵入してきた
熱く硬いソレが、ナカに納まる
一つに繋がる快感
より一層身体を押し付ける
胸が潰れて息苦しい
それでも唇を離したくない
ロックも、しっかり抱きしめてくれる
微妙に両手をずらしながら、アタシの身体を刺激していく
「ン、ンンッ!」
ジワジワと高みに達していく快感
もっと長く味わいたくて、腰を止める
すぐに、切なさに耐え切れず、激しく腰を使う
ロックは合わせながら、アタシの好きにさせてくれる
気の狂いそうな快楽のなか何時となく繰り返し、遂に最後の瞬間を迎える

898 :嫉妬:2008/01/26(土) 13:55:56 ID:uAL1ZD9T
「ロックゥ〜〜〜!!」
耐えられず、アイツの名を叫びながら絶頂に達した
同時にロックが、タップリとナカに溢れかえる
ビクビクと痙攣しながら、身体に染み込む感覚に酔いしれた
ゴムを付けようとするヤツを「ピルを飲んでいる」と騙した甲斐がある
ロックの胸に収まり、ロックを中に収めたまま、とろけるような快楽の余韻に浸りきった





「……で、どうしたんだ?」
「ウルセエな」
至福のまどろみから目覚めるまで、ずっと髪を撫でてくれていた相棒を突っぱねる
世の中には言えることと、言えねえことがあるんだ
『女に囲まれたアンタに棄てられそうになって、撃ち殺した夢見て泣いてました』なんて言わせる気か? むくれながらゴロンと背を向け、無視するアタシ
ロックも気にはなるようだが、空気を察したか何も言わない
ただ優しく背中から抱いてくれた
『浮かれんな』
依存し過ぎている自分を叱り付けることによって、嬉しさに口を割りそうな心を戒める
ピピピ…………
唐突に不粋な電子音が響いた
「ン、誰からだ?」
ロックは起き上がり、机のケータイを取り上げる
背中が急に寒く感じた
「ああ、おはようございます
…………ハイ
今日ですか?
…………ハイ、ハイ
では教会のほうにも
ハイ、エダに
………………
ああ、レヴィ今日は駄目なんですよ
シェンホア辺り、空いてんじゃ?
ソーヤーもいるし
エエッ、メイドは無理ですって
大きいのも小さいのも
じゃあ、そういうことで
バラライカさん」
ピッ
「レヴィ、俺ちょっと仕事出来たから……」
チャキッ
カトラスを構える
「ワアッ!なんだなんだ!!」
「……この、この女タラシッ〜〜〜!!」
バンバン
「なんのことだ〜〜!」
逆上したアタシは弾が尽きるまで、ロックを追い掛けまわした







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