11 :名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:46:24 ID:3omUpsd5

「死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 お前なんか死んじまえ。」
「…………………………………レヴィ――あのさ。」
「口を開くな!!口からクソを垂れ流すな、黙ってろ!!!……ぁあ?何だその目は。畜生の分際で何か言いてぇのか?
 生憎とてめぇの口が並べる御託を有難がって頂戴するような可愛げなんかこれっぽっちも持ち合わせちゃいねぇんだよ、バ〜カ!
 ぉう?おぅおぅ、なぁんだってんだよ、そのため息はよぉ。死ぬか?殺して差し上げましょうか!???
 ああ!そうだ。折角バンコクにいるんだ、シリラートのミュージアムに並ぶってのもオツなもんだぜ?
 さぁさぁ皆様!どうぞどうぞご覧下さい!こちら日本人の大海賊ロック様ですってな!!傑作だぜ!?」
首都バンコクの路上。トゥクトゥクの車内。
針の筵(むしろ)のような空気の中、レヴィの口汚い罵倒を一身に受けロックは諦めにも似たため息を押し殺していた。

カンボジア国境の街への銃器輸送の依頼を終え、3日後に別の依頼品を受領するべく昨夜2人は陸路でバンコク入りした。
(違法船であるラグーン号のバンコクの港への入港は難しいのだ)
受領次第、近郊の田舎町の船着場でダッチやベニーと落ち合う手筈となっており、それまではほぼフリー。
そんなわけで、久々の都会で、何か珍しいものでもないかとマーケットをあれこれ物色していたワケである。
バンコク市内を移動するにあたり、いつもの調子で両脇にカトラスをぶら下げて歩くワケにも行かないレヴィのため、ガータータイプの
ガンホルダーとロングスカートを用意し、それを身に着けていた。
だが、マーケットを歩くロックの目に、一枚のスカートが留まる。「こっちの方がいざと言う時に動きやすい」だの言い包めて購入。
その場で着替えさせた。
そうなると、男のエゴか哀しい性か。スカートに合うキャミソールに、アクセサリーその他諸々。
店員の意見も交えながら、要求は増えていき、レヴィは着せ替え人形よろしく、彼好みの服装へとみるみる変貌していく。
レヴィもブツブツと悪態をつきながらも基本的には「自分の懐が痛まないなら」と、日本での時のように彼の好きにさせていた。
普段の服装にしても、単に「動き易いから」、というだけで特に拘りがあるわけではないのだ。

さて、夕刻になりあとは食事をして宿に戻ろうかという時分。
小用に向かったレヴィを河畔で涼みながら待つロックの耳に、久しく聞いていない母国語が飛び込む。

「緑郎?緑郎でしょ!!」

捨てて久しいとは言え、忘れる筈もない自分の本名。
「…!??」
振り返ると、日本人らしき女が近寄って来る(タイでやたらと脳天気に着飾って観光しているのなどほぼ間違い無く日本人だ)。
「ちょっと、やだぁ。久しぶり!何コレすっごい偶然!そんなカッコってことは仕事?元気にしてるの??」
近くで顔を見て思い出す。
彼が高校時代に半年間だけ付き合っていた女性だった。
内心面倒に思いながらも適当に相槌を打つ。
「緑郎ったら同窓会にも来ないじゃない?旭日重工に就職したって聞いたけど?やっぱり忙しいの?」
彼女に別の想い人が出来て、二股。そのまま自然消滅。他に特筆するならば。
―――彼にとって初めての女性でもあった。
「すごいよね、旭日なんて大手じゃない?もしかして世界中飛び回ったりなんかしてるワケ??」
卒業後は連絡を取ることも、顔を合わせることも無かった。そんなヒト。
「………………旭日は辞めたんだ。ここにいるのは、仕事だけどね」
余所行きの笑顔で答える。
「え?何で?勿体無い!旭日なんてエリートサラリーマンじゃないの!もっといい仕事でもあったの?」
詮索無用のロアナプラの流儀に慣れ親しんでいるためか、そんな世間話の範疇の好奇心にすら少し苛々して下に目を逸らす。
目に入るのはワイン色の透けるコットンを重ねたふんわりしたスカート。両サイドにはギャザー。裾にはビーズと刺繍。
彼がレヴィに買い与えたものと、よく似ている。

12 :名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:46:48 ID:3omUpsd5
「ねぇ、まだ仕事?せっかくなんだし食事にでも行かない?友達にも紹介する」
彼女はロックの腕に自らのそれを絡ませて誘う。
ああ、連休を利用し友人と旅行に来ているとか言っていたな…。
興味も無く聞き流していたことを思い出す。
「いや、悪いけどまだ用事があるから…」
レヴィとはぐれるわけにはいかない彼は、この場を離れられない。
(早く何処かへ行け!)
そう念じながら彼女の知る「人がよく、押しに弱い岡島緑郎」そのままにやんわりと断りを入れる。
「えー。1時間位いいじゃない!久しぶりなんだし」
腕に彼女の薄着の胸が押し付けられる。
そろそろレヴィが戻ってくる。
「人と会う約束をしてるんだ」
腕を振りほどいて改めて断る。
再度彼女を見ると、キャミソールも同系統の色。
ああ、確かこの色は店員に薦められた。きっとこういうコーディネートが流行なのだろう。
こんなに似ているのに、何故彼女に声を掛けられた時点で服装の類似に気づかなかったのか。
上の空で彼はそんなどうでもいいことを考えていた。

目の前の女のグロスまみれの唇は、今は関西に住んでいる」とか「連絡先を教えて」とか、しきりに動き続ける。
いい加減に迷惑であることを伝えるべく顔を上げた彼の眼に入ったのは、先程から気に掛けていたレヴィの姿。
その顔に、怒りが浮かんでいるのなら、まだいい。
いや、全く良くは無いが、極めて健全と言える。だがしかし。
今の彼女は怖い位の無表情。
死んだ魚のような、目。
目が合った瞬間、彼女の右手が薄手のスカート越しに銃を握り締める。
銃を握る手は、震えていた。
彼はそんなレヴィから目を逸らすことが出来ない。
そして気づいた。どうして、服装に気づかなかったのかを。

喋り続ける目の前の女を無視してレヴィに向かって足を進める。
自らを全く眼中に入れないその態度に「ちょっと!何よ、ろくろう???」という苦情の声が耳に入る。
そして、悪いことに女は後を追ってきた。
(………面倒だ。)

「 う る さ い ・・・・・・ だ ま れ 。」

出来うる限りの冷たい声と目線をくれてやる。
彼とて暗黒街でただぼんやりとレヴィに守られているだけではない。
平和ボケした日本人を威嚇し、黙らせる程度の殺気を醸す。そんなはったりのような処世術は海賊稼業の中自然と身に着けている。
普段、恫喝はレヴィの仕事であるため、銃を持たない彼がその手段を用いるなんてまず無いのだが。

女は一瞬で変わった空気にたじろぎ、立ち竦む。
彼女の知る彼は、いつも優柔不断な笑みを浮かべた人畜無害なお人よしであるからして、今のようにドスを利かせて凄まれるなど
想像出来よう筈もない。
きっと彼女の帰国後、あること無いこと噂になるのだろう。家族の耳にも入るかもしれない。
そう考えるも、今更知ったことではなかった。

13 :名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:48:09 ID:3omUpsd5
レヴィの眼前で立ち止まる。銃を握り締め震える彼女の視点も挙動も変化しない。
そのまま震える右手を手に取り、一度両手で握り締めてから一言。
「お帰り。」
反応は、無い。
「腹減らないか?折角だからいいモノでも食って帰ろう?」
努めていつも通りを装う。
「川を渡った所に美味いイタリア料理の店があるらしいよ、ピザ好きだろ?」
彼は彼女の手を引き歩き出した。
「…いらねぇ、一人で勝手に食って来いよ。帰る」
彼女は彼の手を振りほどき一人歩き出す。
彼はそんな彼女の態度も何処吹く風で追いかける。
「着いて来んな、この豚野郎」
先ほど彼が日本人の女にくれてやったよりも更に冷ややかに凄み、睨み付けるレヴィ。
だが、この期に及んでそれに怯むようならば彼もとっくに日本へと尻尾を巻いて帰っている。全く意に介さず隣で足を進めた。
「一人で食ってもつまらない。一緒に食いに行こう」
「………………。」
何も言わずに殺気を強める彼女の歩調が速まる。
当然のことながら、彼の歩調も速くなる。どうやら何が何でも分かれて行動する気はないようだ。
尚も一人喋り続けるロックを無視し、レヴィは大股で大通りを目指す。

―――レヴィの心に一瞬、「また裏切られるのか」という恐怖は浮かんだ。
両親や仲間。信頼していた人に裏切られるなど、N.Y.では日常だったから。
しかし。
一方で彼の迷惑そうな態度にも気づいていた。
離れたところにいたし、日本語だったので何を話していたかなんて解らない。
彼のことを「ロクロー」と呼び腕を絡ませるなど、やけに親しげにしていたので、それなりの関係だったのかもしれないと
勘づいてはいるが、過去を詮索しても意味はない。
そして。彼は女を振り切って彼女の元へ戻って来た。
だから。彼女のそんな恐怖は本当に一瞬だった。
気に入らないのは、彼女が彼に買い与えられた服。
薄い柔らかな生地をふんだんに使い、刺繍とビーズがあしらわれた、女らしい清楚なデザイン。
似たようなデザインの服を着た人間がすれ違うなど、大量生産されている定番デザインではよくあることだ。
ましてやタイはそういった商品の主要生産国だ。マーケットの向こう10件で同じ商品が並ぶこともよくあること。
だから、誰が同じ服を着ていようと、そんなの気にしても詮無きこと。
それなのに、ワケもわからず酷く苛々した。


辺りはそろそろ夜。
ネオンが光り出し、道端では屋台の準備が始まりだした。
売春宿の客引きが怪しげな日本語で話しかけてくる。
コンビニ前の地面に直に座り込んで酒盛りを始める若者達。ジャスミンのブーケを手に観光客を練り歩くホームレスの幼い少年。
レヴィにぶつかられた男が、中指を立てて後ろから何か叫ぶ。
そんな、人々で溢れかえる雑踏を早足ですり抜けて二人は大通りに辿りついた。
高速で車が行きかうそこを、そのまま信号無視して渡ったレヴィは、反対車線で雇ったトゥクトゥクドライバーに行き先を告げる。
その隣に、信号を渡って追いついたロックが当然の如く乗り込む。
「……誰の許しを得て乗ってんだよ、さっさと降りろ、カス」
「二人一緒に移動した方が安上がりだろ。どうせ行き先は同じなんだ」
「行き先が同じで安上がりなら、殺る気満々のテロリストや、ヤる気満々のゲイの車にも乗り込むってか?」
「………ゲイって…どこからそんな発想が出てくるんだよ…。第一、元々一緒に行動してたワケだしさぁ」
「はっ。だから何だってんだよ、アタシは今アンタのツラなんざ見たくねぇ。あんたが降りねぇならアタシが降りるだけだ」
「…レヴィ。いい加減可愛げがないぞ。」
「…っ!面白くもねぇ冗談だ、ロック。アタシに可愛げなんてモンが備わってたコトなんざ過去一度だって無ぇんだよ、寝言は寝て言え。
 ……ドライバー、止まってくれ」
そう言ってトゥクトゥクを止め、降りようとするレヴィの腕をロックは掴んで座席に引き戻す。
「ああ、気にしないで。目的地まで頼むよ」
片言のタイ語でドライバーに伝える。
「てめぇ、いてぇんだよ!離せ!いつまでもふざけたことやってっと、そのどてっ腹にケツの穴拵えることになるぞ」
「レヴィ。まずは話をしよう。彼女は―――」
「ああああああああああ、うるせぇ。んなモン誰も聞いちゃいねぇ、興味もねぇ!!死ね!死ね!」

14 :名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:49:04 ID:3omUpsd5
そして……至る、冒頭。
レヴィはロックに喋らせるつもりは無いらしい。
それならば、彼女の気が済むまで罵倒されるしかないのだろう。ロックは諦めた。
何より、こうして怒りをぶつけてくる分、先程より余程健全だ。
彼女はウルトラ短気なキレ易い性質ではあるが、その分済んだことをいつまでも引きずるタイプでもない。
まずは沸騰させ切ってしまうのが一番無難だ。限界まで熱くなってしまえばあとは冷めるだけなのだから。
自分の命と堪忍袋の心配は…危機に見舞われた時にでもすればいい。
渋滞の街の中、開放的なトゥクトゥクでの会話は周りに筒抜け。
開け放たれたバスの窓から、立ち並ぶ屋台から、二人乗りのバイクから、雑踏から、好奇の目線が向けられる。
まだ暑さの残るバンコクの夜空に、アメリカ訛りの口汚いスラングが響き渡る…。


好奇の目線に耐えながら走ること1時間弱。目的地である宿の前に到着。
ロックがドライバーに礼を言うと、彼は心底同情した眼でロックを一瞥し、「Good luck」と片言の英語で言い残し去って行った。
受付でさっさと鍵を受け取ったレヴィを追って、急いで宿の階段を上ると、ドアは閉まる寸前。
尚、余談だがダッチから一応二部屋分の経費は受け取ってはいる。
だが「どうせ同じ部屋で呑んだくれて寝るのだからその分旨い酒でも飲もう」と、部屋はツイン一部屋しか取っていない。
つまりは彼女に部屋に入れて貰わないことには、彼は寝床すら無い。
ロックは慌てて足を滑り込ませ…。
そして、ドアと壁に思いっきり挟まれる、革靴に包まれた彼の足。
「いったぁっ!レヴィ!足痛い!痛い!開けてくれ」
「ぅるせぇ、てめぇが好き好んで挟まれたんだろうがよ、痛けりゃ抜きな、アホんだら」
部屋の内と外。両方から押される安作りのドア。
「こんなにがっちり挟まれたら抜けるものも抜けないよ!開けてくれ!」
「知るか!そんなに抜きたきゃ足に鉛玉くれてやろうか、ズッタズッタに砕けるまで何発でもなぁっっ!!!!」
一層の力を掛けるレヴィ。体重は劣るが腰を入れて押せる分だけ若干彼女が有利である。
「待って!ホント、ヤバいってぇえええぇぇぁぁぁぁあああああああ あ あ あ!!!」
流石に尋常ではない彼の悲鳴に、一瞬レヴィの力が緩む。その隙をついてロックは一気に体重を掛け部屋の中へと進入した。


「なっ…てめっ!!きったね!なに古典的なことしてんだよ」
「レヴィ。そろそろ話をしよう。あのな、彼女はハイスクールの頃の同級生だ。短い期間だが付き合ってもいたけれども、それだけで――」
「さっきも言ったはずだぜ、ロック。そんなコト聞いちゃいないし興味も――」
そう彼の言葉を遮って言う彼女を更に遮ってロックは低い声で言葉を重ねる
「レヴィ。俺が黙ってればいつまでもグダグダ五月蝿ぇ…。いいから黙って聞けよ。」
「…っ!!!!」
「彼女とは浅からない関係があった、それは認める。けどそんなの過去の話であって今ここで蒸し返す気は更々無い。
 ……そんなコト…お前だって解ってる筈だ」
「はっ、とんだお笑いだな。そんな下らねぇコトで腹を立てるように見られてたってか?ナメんのもいい加減にしやがれクソジャップ。」
彼女はガタンと音を立てて椅子に座る。
「…じゃあ、その服か。そんなの単なる偶然だってことが解らないお前じゃないだろ、流行りの服を着ればよくあることだ」
「ぁ ぁ あ あ あ あ!?お前大概にしねぇと本当に黙らすぞ、んなワケあるか、どこまでアタシを安く見やがる、胸糞わりぃ!!!
 ああ、ああ、ああ、ああ!ああ!!ああ!!!がっかりだ!本当にがっかりだよロック!!もう喋るな、しゃ・べ・る・な!!」

ロックは自分の中で何かがプツンと切れる音を聞いた。

「いい加減にしろよ…っ!!」
壁を思う様叩きつける。

15 :名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:50:13 ID:3omUpsd5
突然の剣幕に硬直するレヴィ。
「今まで俺がお前のコトを安く見たコトがあったか!?言いたいコトがあるなら言えばいいだろ」
一歩。更に一歩。彼女に近づく。狭い安宿。既に彼女を威圧し、見下ろす位置だ。
「俺にお前の考えてることが仔細解るワケねぇ!前にも言ったがなぁ、俺はお前じゃないんだ!!…何度も言わせんなっ…!!!」
彼女の座る椅子の脚を力任せに蹴りつけ怒鳴り散らす。
「お前の方こそ、こっちが何も言わねぇのをいいことにワケも言わずに男に当り散らしてよぉ」
彼は彼女の髪を鷲掴み、力任せに後ろへ引く
そして、強制的に上を向く形となった彼女の顔を見下ろし嘲るように言葉を重ねる。
「ワケを聞いたら『アタシのコト何も解ってない!』ってか!?」
わざとシナを作って女々しさを印象付ける言い方をした。
彼女の顔は引き攣っている。頬の肉がピクピクと痙攣し、顔面は蒼白。
髪を乱暴に引き摺り、側のベッドへ引き倒す。
彼女の眼に薄く涙が浮かぶのをこれ見よがしに鼻で笑い、馬乗りになって圧し掛かり、触れ合うギリギリまで顔を近づける。
そして…低い声で言い聞かせるように、ゆっくりと吐き捨てた。

「ああ、つまらねぇ…ほんとうにつまらねぇ…!!笑わせんな、安い女にも程がある…!!」

再度力任せ且つ乱暴に彼女の髪を左右に振り回し、彼女の頭をマットに叩きつける。
暫く天井を眺めた後、彼は自身の髪を苛立たしげに何度も何度も掻き毟ると
「ああああああクソっ!!何だってんだ!!面白くねぇ!畜生!!畜生!!」
と何やら日本語でブツブツと吐き捨て、彼女に一瞥もくれずに外に出るべく歩き出す。


彼がドアノブに手をかけようとすると…。


           銃声。


耳のすぐ横を何かが超高速で通過する気配。目の前の扉に突如現れた弾痕。
立ち込める硝煙の香り。
振り返ると髪を乱れさせたレヴィが銃を右手にベッドに腰掛け項垂れている。
彼女の混乱を示すように、投げ出された右手の、引き金に掛かったままの指が震えていた。
自らを隠すように左手で覆われた顔からは嗚咽を堪えるような、引き攣ったような、明らかに尋常ではない痛々しい吐息。

一気に頭が冴える。

(俺は一体何をした!?)
彼は冷静に直前の出来事を反芻し、そして後悔する。
彼とて決して…彼女を追い詰めたかったわけではない。
「………あ………その………レヴィ。ごめん。………俺もかなり熱くなって…いくら何でもやり過ぎた…謝るよ。」
ロックは再度彼女に向き直り、静かに近づく。
床に膝をつき、項垂れて低くなった頭を肩に抱き寄せる。
銃は…これが彼女の最後の砦なのだとしたら、今はまだ取り上げない方がいいのだろう。
「お互い…そう……もう少しだけクールにいこう。反省すべきは反省しよう。」
(静かに)
(こいつにだけ聞こえるように)
(どんなにもどかしくても声を荒げてはいけない)
そう言い聞かせる。
(…でも…)



「…でもさ、黙ってても…解らないんだ」

16 :名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:54:37 ID:3omUpsd5
そう呟いて。
ロックは苦しげに呼吸するレヴィの顔を覆う左手を握ると自らの肩に乗せた頭を一層強く押し付るように彼女の肩を抱きしめる。


――気がついたら発砲していた。
何が起きたか解らない。ただ、言葉に出来ない苛立ちの正体を問い詰められて酷く混乱したのは確か。
頭では無意味だと理解している子供じみた不安。焦燥感。
頭で無意味と理解しているからこそ、馬鹿馬鹿しくて言語化しにくい。
そこから派生する新たな苛立ち。
それら全てを目の前の男に八つ当たりしていただけ。
(一番安っぽいのはアタシだってのに…。ガキかよ、クソくだらネェ…)
そして…その結果によるところの彼の剣幕に、彼女は酷く怯えざるを得ないこととなってしまった。
一度手にした、この男の「隣」という居場所を失うかもしれない、そんな恐怖。
自分自身の死を怖いと思ったことなど、彼女には久しく無い。
なのに、この男を失うのはとてつもなく怖いのだ。それが死であれ心の離別であれ。
彼の発作的な暴力を受けながら、そんな離別を予感した。
その瞬間、昂ぶり、あふれ出る様々な情動。
溢れ出そうな涙と嗚咽を堪えようと何度も深呼吸し、軽い過換気に陥る。
それを治めるべく必死になっていると、生理的なものか心理的なものかもわからぬ涙が止まらない。
どうすればいいのか解らない。
(出て行んじゃねぇよ、イヤだ。イヤだ。イヤだ。アタシが悪かったんだ、だから…行かないでロック)
声に出そうとしても、息が出来ない。
こんなに叫んでいるのに、彼には届かない。
―――彼との間にある壁を壊したかったのかもしれない。
とにかく彼女は無意識のうちに彼に向け引き金を引き、そのことによって更にパニックに陥った。
レヴィは自らがどうするべきなのか解らない。
(解らない。 解らない。 解らない。 解らない。 解らないんだ、ロック――――――)

―――いつの間にか、先程から必死に名前を呼び続けていた男に抱きしめられていた。
涙腺は勿論、呼吸困難の鼻と口からもだらしなく体液が流れ出て、目の前のシャツを汚している。
(…いつからアタシは男の腕の中で泣きじゃくるような無様な女になった?…最悪だ。)
朦朧とした意識の片隅で考える。
(コイツがキレんのも当然だってのに、正論言われて逆ギレかよ、ダセェ…。)
それでも、安心感からか、顔を押し付けれれているための二酸化炭素濃度の上昇からか、呼吸は出来るようになっていた。
鼻をすすり上げると鼻腔にロックの体臭が広がる。
昔奪われた行きずりの男、金のために身体を開いた男、身体目当てに寄ってくる蛆虫共。
他人の体臭なんて、不快なだけで、時に吐き気さえ覚えるものでしかないのに。
口には出さないが、ダッチやベニーのそれだって、正直得意ではない。
(なのに、こいつのだけ、どうしてこんなに安心するのだろう。)
先程力任せに引き回された髪に酷く絡まった髪留めが丁寧に解かれ、そこを慈しむように撫でられる。
(いいや、理由なんかどうだっていい…)
レヴィは静かに瞳を閉じた。

17 :名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:57:17 ID:3omUpsd5
「レヴィ…何か言ってくれよ…」
興奮状態が落ち着いた後も沈黙を続けるレヴィに。
独り言のように。
懇願するように。
ロックが呟く。

その声に応えるように、自分の左手を握る彼の手に指を絡ませる。
目立った傷も無い、自分より綺麗な手。だけど、自分よりずっと大きい。
背中に縋り付きたくて。
右手を上げると、重いものが床に落ちる気配。
(ああ、まだカトラスを握り締めてたんだ…。)
ロックのシャツの背中側を、皺になるほど握り締めながら一つだけ深呼吸した。
「ごめん」
レヴィの耳元に謝罪の言葉。
いよいよ自分が口を開かなくてはこの状況は動かない。
ロックの腕の中、レヴィは伝えるべき言葉を必死に練り上げる。
でも、声にしようとすると喉元で張付いて止まってしまうのだ。

そんなことを何度か繰り返し…
「………ゎ…か…んね…んだよ」
やっとのことで、声を絞りだす。
「…ん?なに?」
あまりにも小さなその声に、ロックが聞きなおした。
「…はっきりとは…わかん…ねぇ。……お前が言ってるようなコトでは…多分これと言って怒ってねぇ。流石に…愉快ではねぇけどよ…。
 きっと…もっと馬鹿馬鹿しくってガキみてぇな、呆れるくらいに安っぽい理由だったんだ。」
「うん」
ロックはレヴィの顔を見ようと身体を離そうとするも、彼女はいっそう強く彼の身体に顔を押し付け抵抗する。
「…………………お前、あいつのコト好きだったのか?」
「え!?ぁ……う〜ん…どうなんだろ。当時は当時なりに好きだったんだろうとは思うけどね。
 ただ…今みたいに不機嫌なお姫様に跪いて無様に許しを請おうと思ったことはないかな」
そんな彼の軽口に少しだけ気が楽になる気がした。
「何だそれ」
クスっと、彼女が本当にほんの少しだけ笑う気配。ああ、良かった。彼は心からそう思う。
彼女の言葉は続く。
「あーでも。多分……そういうコトじゃなくて、だな……そうだな…言い方を変える…とよ。
 ああいう…女らしく着飾ってるようなのが好きなのか?…………お前が買った服が似合うような……」
「……ぁぁ……そう…嫌い、ではないね。というか、まぁ……好きだからあれこれ買ったんだろうけど……」
彼にも何となくながら彼女の言わんとすることが読めて来る。
「でも、アタシには…こういうのは似合わないんだよ」
「似合ってないってコトは無いと思う…。可愛いし」
ロックは彼女の髪を弄び、口付ける。
「可愛くねぇよ、こんな清楚でお上品なお洋服。」
「卑下するなよ。レヴィは十分可愛い。……それにこれは言う程清楚でも上品でもない」
事実、この類のスカートは日本では雑貨屋に安価で大量に並ぶ定番商品で、決してレヴィが言うような大層なものではない。
「そう言うけどよ、普段アタシはこんなの着ねぇ…。お前アタシにこれが似合う女になることを望まなかったか?
 無意識に昔の女の面影やお前の求める理想の女ってヤツを、似合いもしない服に託してアタシに求めなかったか?
 ………お笑いだろ、お前に買って貰った服が、お前の昔の女の方がお似合いだったってだけで…八つ当たりしたんだ…多分だけどな。」
レヴィは言いながら、あまりの馬鹿馬鹿しさに改めて泣けてきて、鼻をすする。
一方ロックも、そんな子供染みた事情で小一時間罵倒され続けていたことに心底泣けてきたが、それと同時にそんな彼女が可愛くて仕方ない。
(俺、もう駄目だ、末期だ…。)
そう諦めにも似た気持ちを胸に、どうしようも無く可愛い小悪魔を腕に抱き、小汚い天井を見上げる。

18 :名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 00:00:23 ID:3omUpsd5
やり場のない微妙な気持ちを抱きながら言葉をかける。
「…比べた所で仕方ないよ。俺はレヴィにあそこまでの厚い化粧も、頭の痛くなるような香水も、派手にデコレーションされた爪も望んじゃいない。」
「…………………………。」
改めてそう言われると、何だか女扱いされていないようで心中複雑になるレヴィ。
「さっき彼女と会った時、服にはすぐに気付かなかったんだ。一言で言えば『どうでもいい』んだよ、他人がどんなナリをしていようと」
「そんなモンか?」
「そんなモンだよ。まぁ、レヴィが何着てようとそれもそれで『どうでもいい』んだけどね」
「……は?」
レヴィは思わず気の抜けた疑問符を投げかける。
「何を着ててもレヴィが隣にいればそれでいい。たださ、一緒にいる時間も大事だから、その時間がもっと楽しければそれにこしたことはないだろ。
 普段と気分や雰囲気が違えばそれだけで楽しいってこと、無い?そのための小道具でしかないんだよ。
 それに場所やモノってさ、記憶を焼き付けたり、引き出したりするのに役立つんだ。一年後この服を見れば、きっと『下らないケンカしたな』って思い出す」
「…まぁ、そうだろうな…思い出したくもねぇけどよ」
「きっとそれだって時間が経てば懐かしいよ。それにさ、レヴィは似合わないっていうけど十分可愛い。改めて望むまでも無く似合ってる。
 似合わないと思う服なんか最初からプレゼントしない。今回は、何かややこしいことになっちまったけど…」
「………。」

さっきから絡ませていたレヴィの左手がロックの首に廻され、ぎゅっとしがみついてくる。
「まぁ、レヴィが普段と違って見えることを望まないわけじゃなかったし、レヴィが言うのもあながち間違いでは無いんだろうけどね」
「……」
「なぁ、レヴィ。顔上げろよ。」
「…やだ。見れたモンじゃねぇ…」
そう言ってレヴィはふるふると首を横に振る
「…じゃあずっとこのままか?俺そろそろ膝限界なんだけど……この床固いんだ。そろそろ許してくれないか?」
そう言って身体を離す剥がすと俯いたままの彼女。
よっこらせ、と日本語で呟きながら立ち上がり、隣に腰掛ける。

腰を落ち着けるなり

「……悪かった…。」

ぽつりと、呟くレヴィの声。
聞こえていたが、このままでは何となく割が合わない。自分のしたコトは棚に上げロックは敢えて聞きなおす。
「え?なに?」
「…悪かった。」
「聞こえないよ?」
「アタシが悪かったって言ってんだろ!!!このスカタン!!お前の顔についてるこの2つのお耳はお飾りか!?ぁあ??」
顔を上げて声を張り上げるレヴィ。
ロックの顔を見ると、何かに気付いた様子の彼は真顔でゴソゴソとスラックスの尻ポケットを漁り…。
「あのさ、これ…取り敢えず…使いなよ」
そう言ってティッシュを渡して来る。

あ、これ日本に行った時に「タダだから」と、道ばたの若い男から大量にかっぱらってきたヤツだ。
やっぱ日本はすっげーなーと思ったモンだぜ…。

などと、明らかにどうでもいいことを思い出しながら、目の前のそれを奪い取り、ロックに背を向け鼻をかむ。
「だからイヤだって……最悪だ。嫌いだ、お前なんか嫌いだ…ああ、もう…だせぇ…最悪だ…」
耳まで真っ赤にし、鼻をすすりながら顔を擦り上げるレヴィ。ブツブツと何かを呟いている。
そんなレヴィを後ろから抱きすくめ
「……なぁ、レヴィ。今日のことはこれでチャラ、お終いだ。異存は?」
耳元で囁く。
「あんたがそれでいいなら、アタシに異存なんてモンは無ぇよ」
レヴィは尚もティッシュで鼻を擦りながら承諾する。

19 :名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 00:00:49 ID:eRyzIgPb
「O.K.…O.K.…じゃあ、レヴィ、次だ。男が服をプレゼントする時ってさ―――」
「『ベッドの上で脱がせたい』ってか?オヤジか??お前さっきから随分と古典的だな」
やれやれとため息交じりに返す。
「…それが真理だからだよ。」
「真理?そんな大層なモンかよ、ただのスケベ野郎の下心だ。どうせあの女にも同じようなコト言ってコマしてたんだろ?」
ニタリ笑って顔だけ振り返り「ぉぃ、どうなんだよ」と詰問するレヴィ。
「って…!!いやいやいや、あの頃はまだ…そんな…ねぇ?」
ロックは思いがけない問いに狼狽し、言葉を濁す。
「ふんふん…エテ公みてぇに目の前の穴に突っ込むコトしか考えてませんでしたってか??」
レヴィはいかにも楽しげに彼の膝に跨り、耳たぶを噛む。
「…ぃっ…あー……その……若かったんだ……」
彼も特に否定もせずに目の前の首筋に唇を寄せ、軽く食む。
「…んっ……あーそうかそうか、…チェリーだったか…」
「………っ……悪いかよ…日本では平均的なハズだ……ていうか、レヴィ、さっき今日のコトはチャラって…」
「ぁあ?そりゃ、アタシの八つ当たりとお前のDVのコトだろうが」
そんなことを言っているうちに、首筋ではロックの舌が這い、キャミソールとスカートの裾からはそれぞれ腕が
潜り込み、肌を直にまさぐっている。
「それで?他に質問は?」
「あ?んー…そうだな、…いや、いい。やめとく」
「そう?…じゃあさ、そろそろ脱がせてもいい?」
彼女の髪に頬ずりし、甘えるようにねだる。
「……もう脱がせに掛 か っ て る じ ゃ ね ぇ か ! て め ぇ は よ ぉ ! !」
レヴィは彼の耳を引っ張り、語気荒くねめつける。
「痛っ!痛いって!!レヴィさんのおっしゃる通りです!!相違ありません!」
ロックは笑いながらオーバーリアクション気味にホールドアップの体勢を取り、肯定する。
「ふん!」と鼻息荒い彼女に「許して?」と触れる程度のキスを頬と唇に落とし、シーツへ押し倒す。
彼女の眼前には薄く微笑む情人の顔。
既に胸の上までたくし上げられているキャミソール。
余裕溢れる表情のようで、いつもよりがっついているような気がしないでもない。
下半身を弄る手も既にショーツの上から秘所をなぞっている。
気付くと彼のペースに乗せられてしまっている事が何となく悔しい。
彼女の胸を堪能すべく離れていく彼の頭をネクタイを掴んで引っ張り寄せると、噛み付くように唇を重ねた。
彼の首に両の腕を廻し、お互いの唾液を混ぜあいながら、次はどう意趣返しをしてやろうかと考える。
夜は長い。この調子ではどうせ今夜はずっとヤり通しだ、ゆっくり考えればいい。
あ、そうだメシ喰い損ねた…。冷蔵庫に昨夜のビールが残ってるハズ、それでいいか、仕方ねぇ。いざとなりゃ、近所にコンビニがあったハズだ…。
いつからか、彼とこうして身体を重ねることが日常生活の一部となっている。
それを示すように、同じく日常の一部である彼をちょっとだけ困らせる悪巧みや食事などの生活感溢れることを考えながらレヴィは快楽の海へと沈んでいく。
目の前の男に心も身体も全てを委ねるような、心底安心した顔を浮かべて。

20 :名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 00:03:53 ID:eRyzIgPb
部屋に備え付けられた安物のブックライトの灯りの元、身体を繋げ、再び緩やかに高まっていく体温。
下半身からのねちゃねちゃという湿った音と、苦しげで甘やかな嬌声が響く室内。
床には無造作に脱ぎ散らかされた男女の下着はじめ、それまでの情事の名残とも呼べる紙くずや、それに無造作に包まれた破られた避妊具の包装と使用済みの中身が散乱する。
壁には舟を漕ぐように揺れるハダカの女の影。

「ん………ぁん………ぅ…ぁあっ………はぁっ…」
「…レ…ヴィっ…………はぁ………んぅ………」

お互いこれといった言葉も交わさず、与えられる快楽を貪ることにのみ集中する。
そんな中、ロックに跨り豊かに身体を揺らすレヴィが、ふいににやりと不適な笑みを浮かべ口を開く
「…なぁ…っ…ロック…さっきの話…だけどよ…」
「な…に…」
ロックがレヴィを見上げ、声が聞こえるよう少し首を起こすと、彼女は彼の頭の両脇に手を突き、顔を寄せる。
そのままキスをするべくレヴィの後頭部に手を差し入れ引き寄せる彼に、彼女が囁いた。
「お前…帰ったら…はぁっ……アロハ…着ろよな…」
「……え……」
唇を引き寄せる彼の腕が硬直する。
「さいっ…こうに…イカして…るだろ?着ればっ…気分も、雰囲気も…変わるぜっ…、きっと…ハッピーだ」
下半身の揺らぎはそのままに、シニカルに笑んだ口から紡がれるのは、喘ぎ声とロックにとってある意味では人生最大の危機を意味するセリフ。
一気に全身の血の気が引く。勿論、彼女と繋がっている箇所だって…例外ではない…。
「……えっと……」
「あっ…おま、縮んでねぇか!?」
膝立で腰を浮かせ、濡れそぼる結合部を覗き込むレヴィ。
「ぁ…気の…せいだよ。それより!覗くな!」
「いや、萎んだね、ヒャ〜!情けネェな、見ろよ!ふにゃってるぜぇ、ゴム緩くなってるんじゃねぇか?ケケケ」
「レヴィ!!!」
腰を浮かせた事により抜けた分の数センチが覗く、レヴィを貫くロック自身と、それに被さるスキンを指先で摘みながら笑う。
下を向くレヴィの髪がロックの胸元をくすぐった。
ロックは慌てて彼女の肩を掴み、上を向かせる。
「ん?何だ?んなキレんなよ、思い出作りを兼ねてアタシからのプ・レ・ゼ・ン・トを着てくれって言ってるダケじゃねぇか、なぁ?ハニー」
顔を上げ、"プレゼント"をやけに強調しながら、何かを強請るように身をくねらせるレヴィ。
ロックの体躯に自らの身体を密着させ、首筋に唇を寄せると鼻から胸いっぱいに息を吸う。
熱帯を一日中歩き回った彼の体臭に、彼女の身体の奥がずきんと疼く。
中にいるロックにも伝わった筈だ。その証拠に彼女の腹の中で少しだけ硬度を回復する彼自身。
そんなお互いのあからさまで生々しい身体の反応を自らの身の内で実感し、今更のように内心動揺する。
照れ隠しのように、彼女は吸った息を彼の耳に吹きかけた。
「ぃっ…あ…そ…そんなこと言ったってさぁ……………あー……部屋の中だけなら…」
ロックもロックで、妥協案を提示するも、受け入れられない事を承知しているためか徐々に声が小さくなる。
「だ〜め〜だ!!」
予定調和。レヴィは口を尖らせ身を起こす。
拗ねたような、幼い表情を浮かべる顔の下には、出るところが出て引っ込むべきところはしっかり引っ込んだ、しなやかで筋肉質な身体。
そんなどこかアンバランスさを感じさせる彼女に改めてそそられる。
彼女に合わせてロックも身を起こすと正面から抱き締め、一言。
「じゃあさ、また別の服をあげるからそれ着てよ、それを着て一緒に歩いてくれるなら………………考える」
決して「着る」という言質を取られまいとする無駄な抵抗。そんな浅はかな抵抗などお見通しとばかりに
「考えるだけかよ?だからジャップはダメなんだ、白黒つけやがらねぇ!…まあいいさ、忘れるな、絶 対 着 せ て や る か ら な 。
 ……んで?ロック、お前次はどんな着せ替え遊びをするつもりだ?」
と、勝ち誇った顔で宣言した後、問い掛ける。
その問いが、自らにとって地雷となることも知らずに。

21 :名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 00:05:25 ID:eRyzIgPb
「う〜ん」と考える素振りをしながらレヴィの体を押し倒し、正常位に雪崩れ込むとロックもまたニヤリと笑う。
「これもまた古典的だけど、バニーガールとか、どう?バドガールでもいいけどね…。
 あー…ハリウッドの女優顔負けのセクシードレスもいいかもね。でも腰までスリット入った際どいチャイニーズドレスも捨て難い…」
「!!!!???ロック!てめー!そりゃ何のペナルティだ、随分と見下げたヤローだぜ、このド変態が!!」
口をパクパクさせながら抗議する彼女を無視し、身体をぴったりと密着させると、
「ああ、ミニスカートのっ…ジャパニーズメイド…スタイルはっ……どうだい?…色んな意味でっ…ロアナプラ中が……大騒ぎっ…だっ!!」
などと彼女の股間に腰を叩きつけながら一人勝手に喋り続ける。
「うるせぇ!!このマザーファッカー!!ファッキン!シット!シット!シ……ぁあっ…ん…」
レヴィも手足をバタつかせて抵抗するも、既にロックのペース。
意趣返しをした筈が、またしても彼のペースに乗せられてしまうこととなったレヴィ。
結局、高まる愉悦の中でバドガールに扮して給仕することを承諾してしまったような気もするが、それはまた別の話。


おわり




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