479 :さよなら夏の日:2008/06/29(日) 00:48:05 ID:MHWbUNiJ
湿度100%。
指先を動かすのも重いような空気が部屋の中まで侵食する。
窓から空を見上げれば、真っ黒に厚い雲が太陽を覆い隠し、降り出すタイミングを今か今かと見計らっ
ていた。
湿度が限界まで上がり、滝のようなスコールが降る、それを繰り返す今の季節はあの灰色の街では夏
の終わり。
昼は暑くても、朝や夜の寒さが来秋を告げる頃だ。
ここタイではあの街のように艶やかな四つの季節を感じることはできないが、こうしてスコールが降る雨
季と、雨を忘れてしまったかのような乾季とで時の移ろいを感じることはできた。
今回の仕事はベトナム軍の武器の横流し。
単純な輸送のみの仕事のはずが連絡がうまくいっておらず、持ち出しだけで丸二日かかり、今朝荷を
受け渡した頃には四人ともぐったりと疲れ切っていた。
港に着いた二人は事務所へも戻らず、スコールの隙間を縫って真っ直ぐにレヴィの部屋へやってきた。
「スコールが降る前にすましちまおうぜ」
そんな軽口を叩いたレヴィを玄関先で早速裸に剥いて、三日間触れることもできなかった彼女の身体
を楽しんだ。
とりあえず、の一度目のセックスを汗まみれで終えて、今、レヴィはシャワーを浴びている。
「あたしがシャワーから上がったら、直ぐ冷房だからな!」
じゃあ、今からかければいいじゃないか、と抗議すると、ここの部屋の主は自分だとばかりにリモコンを
シャワールームに持ち込んでしまった。
「あつ…」
一緒にシャワールームに行けばよかったのだろうが、なんだか疲れが出てしまい、ベッドの上でだらし
なく空を見上げながら一服。
煙の出て行く先には灰色というより真っ黒な空。
手持ち無沙汰でベッドの傍に転がっていたラジオをつけた。
日本語の番組だった。


480 :さよなら夏の日:2008/06/29(日) 00:49:26 ID:MHWbUNiJ
リクエスト形式の音楽番組だ。
日本人なら誰でも知っている、世界中に放送している(という噂の)公共放送。
ロック自身もあまり聞かないそのチャンネルを、レヴィのラジオが流しているのはなんだか不思議な気
持ちがした。
『次のリクエストは、東京都在住、匿名希望の女の子、からです。今年の夏は…』
女性の軽快な声が、葉書に書かれているメッセージを読み上げる。
ロック自身は一度も葉書を出したことは無いが、受験勉強や試験勉強をしていた頃にはよくラジオのお
世話になったな、と今は懐かしき学生時代を思い出す。
真夜中一人で勉強していても、誰かが起きていることを感じられる、ちょっとした寂しさを音楽やおしゃ
べりで夜の闇にかき混ぜ消してくれるようで嫌いではなかった。
少し耳を傾けていると、シャワーの音が止まり、タオルで乱暴に髪を拭きながらレヴィが部屋へ戻って
きた。
下着は下だけ。
髪を拭くタオルに見え隠れする乳房が柔らかく揺れる。
ちゃんと身体を拭いてから来いと何度も言っているのに、また足元が水浸しだ。
「何だ?ラジオ?」
「ああ、日本の放送局だよ、コレ」
「…ふぅん」
何で日本語のチャンネルなんて聞いてたの?
と、そんな野暮なことを聞いてしまうのは勿体無い気がした。
どうせ聞いたところでまた「ああでもない、こうでもない」と言い訳をつけて逃げしまうのだ。
口元が緩んでしまう程に自分が喜んでいることに気づいたロックは、手元のタバコを消すことでその気
持ちを隠した。
「トークばっかりだな」
「リクエスト番組なんだよ、聴きたい曲をリクエストするんだ」
「その割には喋ってばっかじゃねーか」
「曲をリクエストするときに葉書にメッセージを書くんだ。それを読んでいるんだよ」
「ふぅん…」
気の無い返事をして、さっそくタバコに火をつける。
「シャワーあびてくるからさ、エアコン入れておいて」
ロックは宛がわれた新しいタオルを持って、シャワールームへ消えていった。


481 :さよなら夏の日:2008/06/29(日) 00:50:59 ID:MHWbUNiJ
『もうひとり、リクエスト葉書読んじゃいましょう。神奈川県は…』
(何言ってんのかぜんっぜんワカンネェ…)
女の、少しだけ高め声。
ロックの言うように葉書を読んでいるのか、もう違う番組になってしまったのか、日本語の分からないレ
ヴィには区別がつかなかった。
別に日本語を勉強するとか、そんな殊勝な気持ちで聞いていたわけではなかった。
だいたいその必要は全く無い。
ロックは普段、殆ど誰とも英語のみで会話しているし、この街ではロック以外の日本人に会うことは滅
多に無いから、日本語を話したり聞いたりするほんのわずかなタイミングすらない。
そもそもこの街で日本語しか話せないようなニッポンジンがいるはずもなかった。
柔らかいトークが続く。
普段はタイの番組や、地元のジャンキーが趣味でやってる短波を聴く程度。
それが日本語のチャンネルになっていたのは、本当に偶然、たまたま仕事に出る前に聞いていたの
が、日本語の番組だっただけだった。
『他、たくさんの特に女の子たちからお葉書いただきました。それでは、リクエストをお送りしましょう。
曲はやました…』
(あれ、何で日本語の番組なんて聞いてたんだっけ?)
裸のまま、首にタオルをかけて、窓を閉めるためにベッドに上がる。
外はもう雨の予感に暗くなっている。
窓から見下ろした部屋の前の通りも、雨の気配を感じ取ってなのか人気が少ない。
野良犬が急いで走り抜けていくのを見送ると、ラジオから柔らかな日本語の曲が流れ始めた。
趣味じゃないと、ラジオのチューナーを回しかけたその時、
(そうだ、あの日、)
ふと思いだした。
今回の運び屋家業に出る前の晩、セックスの後ちょっとしたことでケンカをした。
ケンカの原因なんて覚えてはいない。
部屋が汚いとか、しつこく胸を触りすぎるとか、いつものちょっとした下らない内容だったのは、三日間
仕事に熱中しお互いそのことを口にすることすら忘れてしまったことからも間違いなかった。
ただ、あの晩は二人ともヒートアップしてしまい、
(ロックを追い出したんだった…)
一人になった部屋で、残っていたビールをあおってベッドに横になった。
静かになった部屋で、どうしてあんなことを言ってしまったのだろうか、いやあれはロックが悪いと自問
自答しているうちに、眠れなくなった。
いつもどおりの汚い部屋で、動く影は何も無い。
壁に貼りっぱなしのポスターはその気配を消して、いつも聞こえてくるはずの通りで騒ぐ男たちの声さえ
も聞こえない夜。
暗闇の中でラジオをつけて、偶然拾ったチャンネルが、日本語の番組だった。
(ちょっと声が似てた)
何を言っているのかは全く分からなかったけれど、曲と曲の合間に聞こえるDJの日本語は、ロックの
声に驚くほど似ていた。
それを聞きながら眠ったあの晩は、深く深く眠れた。


482 :さよなら夏の日:2008/06/29(日) 00:51:45 ID:MHWbUNiJ
「何だ、まだエアコン入れてなかったの?」
シャワーを終えたロックが部屋に戻ってきた。
丁寧にパンツもシャツも着ていたが、タオルはレヴィと同じように首からかけていた。
しかしレヴィは、ベッドの上に膝立ちで立ったまま、ブラインドを下げようともせずに窓の外を見つめたま
ま動こうともしない。
ロックはそのまま近づき、上から包み込むように抱きしめた。
髪からは自分のと同じ香り。
「さっき流れてた曲ね、夏の終わりの曲なんだよ」
ラジオからは、今はレヴィの理解できない日本語のトークが流れていた。
「夏が終わって思い出になるけど、けして君を忘れないって意味…かな」
「ラブソングか」
「センチメンタルだろ?」
まるで子供をあやすようにつむじにキスを落すと、まるで見計らったように窓の外を雨が降り出した。
カーテンのようなスコールは、この世の全てからこの部屋を隔絶する。
もうこの世界に二人きり。
誰にも邪魔されない世界。
ロックが何度も繰り返しキスを落していると、その唇を押しのけて、腕の中のレヴィがくるりと振り向き、
長い腕をからめるようにしてベッドへ誘う。
体重をかけてベッドに身体を沈められながらも、レヴィは首を少し持ち上げ、自ら唇を重ねてきた。
普段のキスとはあまりに違うお淑やか感触に、余計に気持ちが高ぶりそうになるのを必死で抑える。
こんな風に優しいキスをねだるときは、時間をかけて目いっぱい愛してあげないといけない。
「俺たちには似合わない曲だね」
ロックは優しく笑って、もう一度深く口付けた。


484 :無題:2008/06/29(日) 00:53:46 ID:MHWbUNiJ
窓を閉めた部屋に聞こえるのは、窓の外の激しい雨音と、エアコンの無機質な作動音。
レヴィは自分の胸の上に甘えるように頭を乗せた男の髪に触れた。
最近下町で切ってきたばかりの髪は、ほんの一房だけ不恰好に伸びている部分があった。
後で切ってやろうと長さを確かめるようにその一房を引っ張ると、ロックはそれを合図にずっと手で触れているだけの乳房の下側に吸い付いた。
少し強めのキス。
赤い印がついてしまうと思ってはいるが、止めるつもりは無かった。
そのキスの場所から舌が一点に向かってチロチロと動き始める。
やがてその感触が乳首に触れようとしたとき、ふと離れ、もう一度舌が先ほどと同じ場所へ戻っていった。
もう片方の乳房は手のひらで優しく同じリズムで揉まれている。
あまりに穏やかな快感に、のぼせることもできずに徐々に羞恥がこみ上げる。
もう一度頂に向かって舌が近づく。
今度はそこまで達してほしい。
そう思って思わずロックの頭を抱える。
「どうしてほしい?」
息が、触れられずとも立ち上がってしまった乳首にかかる。
「いつもみたいに…しろよ、早く」
「だめ」
「つっこんで、終わり…でいいじゃねーか…」
「そういうのはさっきしただろ?今はもっと…」
そっと舌の先が乳首に触れる。
「隅々まで食べたい」
つん、つんと上からつつかれた瞬間、臍の辺りにピリッと電気が通ったかのような感覚が突き抜けた。
今度は舌で弾くように舐めあげる。
最初は優しく、何度も、何度も繰り返し徐々に強くしながら舌が往復するたびに、臍の下が疼いた。
思わず背筋に力が入る。
「腰が動いてるよ」
「うる…さい」
息が上がり始めた。
「吸ってほしいんだ?それとも噛んでほしい?」
返事をしたくないと顔を背け、しかし頭を抱える力を強めると、
「いい子だね」
と言って、ロックはようやく乳首を口に含んだ。
少し吸っては口の中で唾液と一緒に舌でこね回して、優しく噛む。
それを何度か繰り返した後、真っ赤になった乳首から唇を話し、手で愛撫を続けていたもう片方の乳首に吸い付いた。
そちらは乳房全体を手のひらで優しく揉んでいただけだというのに、その感触だけで乳首がぷっくりと立ち上がっていた。
そっちもまたさっきみたいにネチネチと焦らすようにするのだろうかと構えると、ロックの唇はその乳首を吸う力を徐々に強めた。
「あっ」
まるで引っ張るように強く吸い上げられる
「・・あぁっ」
痛い、と声を出す瞬間に、ちゅぱっという音をさせてロックの唇が乳首から離れた。
触れられたら痛いほどに、乳首が赤く腫れている。
ロックは仕上げとばかりに両方の乳房を力を込めて掴むと、
「いやらしい色になってるよ」
と、満足げににやりと笑った。


485 :無題:2008/06/29(日) 00:55:34 ID:MHWbUNiJ
柔らかい乳房から腰のラインに沿って、徐々に手を下へ下ろしていく。
右手をシーツとの隙間に入れ、背筋に指を這わすと、こちらの意図を読み、従うままに背中をこちらに
向けた。
身動きを封じるように覆いかぶさり、柔らかな尻の谷間に既にガチガチに硬くなった自分自身を押し付
ける。
こうしてしまえば二人の間に一ミリの隙間も無い。
「すげぇことになってる…」
「ああ、でももう少しガマンするよ」
「何でだよ…早くしろって…」
「こうしていたいんだよ。たまにはいいだろ?こうやっていちゃいちゃするのも」
「ふざけんな。ピロートークは終わってからするもんだ」
「ピロートーク…って、終わったらすぐ寝るくせに」
「うるせぇ黙れ。ってかさっさとう・ご・け!重いんだよお前」
しかたがないな、と首筋に口付け、身体を起こす。
そして、先ほど乳房にしたのと同じように、口と舌とを使って背骨に沿って這わせていく。
レヴィが腰を震わせた。
美しいライン。
腰を持ち上げ、尻たぶを手で広げると、レヴィは両膝を立ててそれを支えた。
秘密の場所が露になる。
赤くなった襞がめくれ、いやらしく滴る蜜を掬い取る。
「濡れてるよ、すごく」
「黙れって…」
「何だかおとなしいね。そんなに早くほしいの?」
横を向いたレヴィが、こちらをじっと睨み付ける。
いい加減にしろ、とでも言いたげだが、だからと言ってこっちのペースを崩すつもりはなかった。
「ねぇ、レヴィ、もっとお尻上げて」
素直に持ち上げられた腰。
赤い花びらが蜜に濡れているのが丸見えだった。
「いやらしいなぁ、丸見えだよ」
腰を抱えて、蜜壷に舌を押し付けた。
「あぁんっ、…あぁっ」
舌を差込み、出し入れする。
両脇の赤く腫れた淫靡な襞を吸い、片方の手を腰から放して指で軽く引っ張った。
充血した淫らで美しい花壷に指をそっと差し込む。
ズプッ
「あああっ」
もう一本、二本の指を簡単に飲み込んでいく。
指の付け根まで押し進めると、動かしてもいないというのに激しく蜜が滴り落ちた。
「全部入ったよ、レヴィ。全部飲み込んじゃった」
指をゆっくりと引き抜き、もう一度押し込む。
その動きに合わせて、レヴィの唇から声にならない声が零れる。
手が滴り落ちる愛液でビショビショに濡れている。
「あ、や…ロック…やめ…」
息が上がっている。
必死に快楽に耐えている。
「レヴィ、かわいいよ」
「うるさ…い、だめっ…、やめ…もっ」
やめてほしいの?
もっとほしいの?
早くしないとこっちだって持ちそうもない。
そう思いながらも愛液を掻き出すような動きを止めることができずに、何度も何度も徐々に激しく往復さ
せると、急に指を包む襞がうごめき、抱えていた腰から力が抜けた。


486 :無題:2008/06/29(日) 00:57:27 ID:MHWbUNiJ
「ふぅん、黙ってイッちゃったんだ…」
身を捩ってロックを見ると、困った顔を「作って」さっきまでぐいぐいと突っ込んでいた指を舐めていた。
HENTAI。
おまえは正真正銘のHENTAIだ。
「やめろって言った」
「聞いてない」
「言った!」
「言ってないよ?聞いてない。もっと、ってお願いは聞いたけどね」
この嘘つきヤロウ。
口元が笑ってんだよ!
「んなこと言うかよ!こっちは勝手に指突っ込まれて、ナカ掻き回されて、イヤだからストップかけたって
のに、ふざけんな!」
と、喚いた自分の声が止まると奇妙な沈黙。
ロックの困った顔が、作られたそれから本当に困ったときの表情に変わった。
あれ?何か間違えたっけ?
「イヤだったの?痛くした?」
俯くな俯くな俯くな!
そういう意味じゃなくて、そうじゃなくて、だから、
「一人で振り回されてバカみたいにアンアン言ってるのがイヤだったんだよ!お前ばっかり楽しそうにし
てて、くやし…」
あれ?また何か間違えたか?
っておいおいおいおい!
こいつベッドの縁に座って、パンツはきやがった。
「………楽しくないなら、本気でノーって言えばいいだろ?いつだってお前のノーは俺のイエスより強い
はずだ。それとも俺がレイプしたとでも言うつもりか?」
「んだよそれ、んだよそれ、あぁ!?んなこと誰が言ってんだよ!」
「お前が言ってるんだよ、「イヤ」で「楽しくない」ってな。俺は嫌がる女をレイプする趣味はないよ」
「何お上品ぶってんだよ!だいたいお前のはしつけーんだよ!ただのファックだろ!?ただのファックで
いいじゃねーか!裸んなって突っ込んで吐き出して、それで終わりでいいじゃねーかよ!」
「俺とのセックスがただのファックだって言うんなら、俺はもう二度とここへは来ない。俺はお前をファック
したいんじゃない。それすら分かっていなかったんなら、こういうことは何の意味も無い。明日からはた
だの同僚だ」
スラックスをはき、ベルトを締め、脱ぎ散らかしたシャツとワイシャツを手に立ち上がる。
「悪かったよ。今後このような間違いをしないように気をつける。じゃ、おやすみ」
背を向けてドアに向かうロックの背中に向けて、ベッドサイドに置いてあったラッキーストライクを投げつ
ける。
見事ストライクしても、この程度じゃ振り向こうともしない。
いつもそうだ。
まるでボタンを掛け間違えたシャツのように、自分の言葉が足りてなかったり、乱暴なもの言いが言葉
を真っ直ぐに受け取るこいつに誤解を与える。
そしてその誤解を解こうとして、また誤解を与える。
それの繰り返し。
いつまでたってもシャツ一枚満足に着れやしない。
「意味が無いって何だよ、間違いって何だよ…あたしとセックスするのは間違いかよ…」
ドアが閉まりきる前にようやく吐き出した言葉。
こんな言い訳はすがりつくみたいでみっともない。
「分かるだろ?分かってるんだろ?あたしは…」
ドアが開いて、ロックが部屋の中へ戻る。
腕を組んで立ってる男はまるで万引きしたあたしをとっ捕まえて、児童福祉センターに預けようとした警
官のようだった。
って、あたしは怒られているガキか?
それとも昼メロのヒロインよろしく、雨の中地べた這いずり回って名前を呼べっていうのかよ。
言いたくない、言いたくないんだよそんな恥ずかしいことは。
「一緒によくなりたいなんて言わせんな」
最後の一言は、殆ど蚊が鳴くような小ささだった。


487 :無題:2008/06/29(日) 00:59:23 ID:MHWbUNiJ
ケンカするほど仲がいいと言うけれど、それはお互いが人間の場合に限るんじゃないだろうか。
人間だと思っていたこの女は時々山猫(ウミネコでは鳥になっちまう)に化けて、引っ掻いては爪が痛い
と泣き喚く。
可愛いとは、思うけれど、正直時々堪らない。
「俺が謝ったほうがいい?それともお前が謝る?」
「ごめん…」
そして今度は仔猫に化けて、この有様だ。
「気持ちよくないの?」
頭を横に振る。
「楽しくないの?」
振り続ける。
「ファックだと思う?」
首、痛くならない?
「じゃあちゃんと言ってよ、レヴィ」
ベッドに座り、肩に手を回して抱き寄せると、本当に素直に身を任せてきた。
素直なときも、素直じゃない部分も好きだし、二丁拳銃振り回してガンファイトこなす彼女を美しいと思う
のも、体の上で快楽に溺れている姿を美しいと思うのも、全て真実。
だが、二人きりの時間ぐらいはこんな感じにいつも素直でいてほしいと思ってしまうのは贅沢なのだろう
か。
(ツッこんでる最中は素直なのにな…。ってずっと入れっぱなしってわけにもいかないし)
「何言えばいいんだよ」
「俺とのセックスをどう思っているか、かな」
反抗的な目。
うっすらと染められた頬。
可愛い。
可愛すぎる。
どうせこれ以上何をしたってマトモな返事は戻ってこないのだから、と、ここは一度引いて、別の手段で
素直にさせる方法を選ぶことにした。
両手で頬を優しく包み、口付ける。
「第二ラウンド、…第三ラウンドかな?はじめよっか、レヴィ」


488 :無題:2008/06/29(日) 01:00:33 ID:MHWbUNiJ
「ねぇ…レヴィ…気持ちいい?」
あたしの上で鼻息荒く、犬みたいにハァハァ言いながら突っ込んでるバカが、バカなことを聞いてきた。
気持ちよくなかったら、どうしてあたしがアンアン言ってると思ってんだよ、バカだこいつ。
「ねぇ、気持ちイイって…言ってよレヴィ」
可愛いハニーのおねだりに、口から出るのをどうにかマトモな言葉にしようと腹に力を込めるが、全く無
駄な努力だった。
言葉になんか、なりゃしない。
その上腹に力を込めたせいで、締まったアソコに突っ込むロックの動きが一瞬止まる。
汗かいて、目を閉じて、イクのをガマンしている顔だ。
前に一度、「ソーロー」って言って怒らせたことがあった。
意味は分からなかったけど、ローワンの店のアジア系の女から聞いたってエダが言ってた。
萎えさせるには一番だって。
案の定萎えて、その上涙目になったっけ。
それからコイツは時々、こんな風にガマンして、耐えるようになった。
かわいいな。
ホントこいつ、すげぇかわいい。
また動き出すロックの腰に足を絡めて、もっと奥まで突っ込めと足に力を込める。
なんだか呼吸ばかりが荒くなって、頭の中が真っ白になってくる。
どうしよう、言ってみようか、意味は分からないけれど。
この気持ちよさに頭がバカになる前に。
「んっ、ロック、…なぁ、ロック…」
「何、レヴィ?」
言ってみた。

「スキ」

こいつ、中に出しやがった…。


489 :無題:2008/06/29(日) 01:01:55 ID:MHWbUNiJ
「くそったれ、くそったれ、くそったれ」
「ごめん、ホントごめん」
「おまえさっき言ったよな、黙ってイッたとか何とか。それであたしを責めたのにそれが今のは何だよ、
何もなしに勝手に出しやがってくそったれ」
乱暴な言葉をいくら投げつけられても、にやけた顔が元に戻らない。
反省しなければならないことは分かっている。
っていうか、レヴィは本気で怒っている。
分かってる。
でも、
「嬉しいんだ、レヴィ」
確かにさっきのは日本語だった。
英語でもセックスのときですら口にしてくれない「好き」という言葉。
それを日本語で囁いてくれたのが本当に嬉しかった。
一緒に日本へ行った時でさえ、全く興味を示さなかった日本語で。
俺の母国語で。
俺へだけの言葉で。
「好き」と言ってくれた。
どこで聞いてきたんだよまったく。
どうしてくれるんだ、顔がいつまで立っても元に戻らない。
「俺もだよ。「スキ」だよ、レヴィ。心から」
「意味わかんねーよ、どういう意味だよ」

……………え?

「エダがローワンの店の女から聞いたんだってよ。日本語なんだろ?これ」
え?
「ニホンジンの男を興奮させるには一番だって。意味教えろよ、どういう意味だよ」
はい?
「おまえ…意味知らないで言ったの?」
「知らねーよ、ニホンゴなんて。でも喜んだってことは悪い意味じゃねーんだろ?」
落された。
高いところまで登らされて思いっきり落された!
「お前はだいたいデリカシーがないんだよ!ソーローとか、変なニホンゴばっかり覚えやがって」
「何だよ何でいきなり怒んだよ!意味わかんねーよ」
「ニホンジンの男はナイーヴなんだよ!少しは気を使え!」
「あぁ!?ってか、うぜぇよおまえ。さっさと抜け!あっ…」
絶対もう一回言わせてやる。
「ばか、でかくすんな!」
もう一回言わせるまで絶対抜くもんか!





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