255 :名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 02:01:01 ID:TAbRQJXV
確かに、複雑と言えば複雑な心境だった。
命を賭しても惜しくない程愛おしい、自分にとって自分だけの聖像であり、聖者であり、高潔な存在である主人。亡き先代を守れなかった無念を捧げるべき相手。
それに自分以外の女性を充てるなど。
考えついたのはつい最近だった。
沸騰しそう頭の中で、残り僅かと決めた時間の中で思ったのは、彼に、あの方に何を残せるか。将来あの方が何に苦労するだろうか。
メイド生活の中で忠を尽くす内に芽生えた母性は意外な事を思いついていた。

女性だ。

と。聡明さと内に秘めた意志の強さは将来も変わらない事を願える。ではあの方に足りなくなる事とはなんなのだろう。
古今、男性には女性経験が重要とされてきた事は少なくない。そして女によって男が破綻する事も。あの方に、今の内はその耐性は要らなくとも、将来きっとそれが必要となる筈だ。
ラブレス家を継ぐ様な人間なのだから、そんな経験があっても。

問題は人選だった。どうせなら抵抗の少ないと思う、少しでも年の近い人間の方が良い。自分が出るには…年が少々離れすぎている。
かと言って年が近ければ誰でも良いと言う訳でも無い。信頼できる、自分の指示通りに動ける者が良い。


眉をしかめる程、考え込む。
「ふぅ…」
「婦長様、お疲れですか?」
「いいえ。少し考え事してただけ」
「はぁ…お疲れでしたら言って下さいね。お仕事位なら代われますから」
「ありがとう…」
差し出された紅茶を啜ると、憂鬱が吹き飛ぶ気がした。

いや、本当に解決するかも知れない。今茶を差し出した相手に閃く事がある。

256 :名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 02:02:12 ID:TAbRQJXV
それとなく候補者を見る事にした。皿を洗っているので後ろ姿しか見えないが。
まずライン。撫で肩に少しは望めるくびれ。この年頃ならむしろこれ位の方がちょうど良いかも知れない。
首筋も悪く無い。親しみ易い形だ。尻も小ぶりだが形は悪く無い。

「ファビオラ?」
「はい?」
「ちょっとこちらまで来てくれる?」
「?…はい」

背丈の合わせも、自分より大分マシだろう。
「な、なんですか?」
「ちょっと動かないでね」
緊張しているのが見て取れる。初々しい方が良いかも知れない。
「きゃっ!」
小ぶりだが形の良い胸だ。まだ発育途中なのは間違いないが、及第点。
柔らかさも問題無し。
「ふ、婦長様?」
「今度は後ろ向いて頂戴?」
「きゃあああっ!」
尻の張りも良し。大き過ぎる事は無いだろう。
「ありがとう」
「な、なんだったんですか…婦長様?」
「ええ。実はお願いがあって…」


「わ、わわわ私が若様に!?」
「貴女しか頼めないの」
「わ、若様の了解は…」
取れる訳が無い。かと言って元々取るつもりは無かった。少なくとも悪事ではないのだから、後で適当な謝罪をすればいい。
「その辺りは大丈夫だから、貴女は私の言う通りにしてくれれば良いわ」
「そ、それって婦長様の見ている前で…って事ですか?」
「ええ」
せめて一部始終ぐらいは間近で確認しておきたかった。やはりあの方は恋人であり主人だ。
自らで行けないのは…少し悔しい気もするが。

どうせ一緒に居られる時間などそれ程無いのだから。
「う…う〜」
「駄目?もしかして若様とは嫌?」
「い、いえ!私もラブレス家のメイドですから!若様の為なら文字通り全てを捧げるつもりで…」
「…経験ないのね」
「…はい」
…予習をさせる必要があるかもしれない。若様はそう言う事に関しては無知の筈だ。こちらで出来る限りリードする必要がある。
しかし実際に男を充ててみるのも賛成は出来ない。せっかく傷の無いモノなのだから、そのまま若様に差し上げた方が良い。

と、すると…

「…今晩」
「え?」
「若様のお休みの後、私の部屋に来る様に。色々しておきたい事があるの」
「は、はぃ…」

これで良し。後は今晩を待つだけだ。




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