464 :名無しさん@ピンキー:2008/11/10(月) 01:08:53 ID:ww7/jDRE

 髪を指で梳く感触であたしは目が覚めた。
 頭から伝わるぬるい熱と程よい硬さの枕――ロックの膝の上に頭を置いた状態であたしは眠っていたのだ。
 いつの間にかあたしの上にはタオルケットが掛けてある。
 この状態で眠ることが多いあたしのために、ロックが買ってきたものだ。
 非番の日。
 ダッチがあたしとロックの休みを同じにするようになってどのくらいたつのだろう。
 二人で休みを過ごすことが自然になってから、ずいぶんたつ。
 だいたいが、朝というか昼までごろごろして、飯を食ったり、呑みにいったり、買い物したり、ヤったりする。そんなことを繰り返している。
 我ながら飽きもせずに。
 というより、それが楽しい。
 こんなことは口が裂けてもいいたくねえけどな。



465 :名無しさん@ピンキー:2008/11/10(月) 01:13:02 ID:ww7/jDRE
 で。今日は朝からひどい雨だったので、昨日からいたロックの部屋に居続けている。
 さっきロックが作った簡単な昼食を食って、そのうちロックが市場でなぜか売っていた日本の推理小説とやらをベッドに座って読み始めて、あたしも隣に寝転んだ。
 時々ロックにちょっかいだしながら横になっていたらいつの間にか眠っていたらしい。
 腹も程よく満たされ、眠気も吹き飛んだ。
 ――残る欲求はただひとつ。
 それを満たせる相手はあたしの髪を梳きながらも、視線は本に集中している。
 ――なんかムカつく。
 日本語でかいてある(らしい)タイトルはあたしには読めず、それが余計に腹が立つ。
 こっち向け。あたしにかまえ。
 そう促すようにひざに顔を擦り付けてやる。
「くすぐったいよ、レヴィ」
 答えはするが顔は本に向いている。
 思わずむっとする。
 あたしより本のほうがいいのか?
 そんなもんさっさとおいて、あたしを見ろ。
 そう、心でいいながらシャツのボタンを下から口で外していく。
 ひとつ、ふたつ、みっつ目でようやくロックの視線がこちらに向く。
「ちょっと、レヴィ――」
 嗜めるような声を無視して、露になった素肌に思い切り顔を擦り付けてやる。
「ちょ、レヴィ!」
 慌てるロックの手から本が滑り落ちて床から落ちる。
 あたしはにやりと笑うと、本から離れた指を口にくわえて丹念に舐めてやる。
 舌を出して、音をわざと立てながら上目遣いで見上げる。
 困惑したような、でも少し嬉しそうな表情。
 その瞳にはロックの指をくわえ、誘うような表情をする女が映っている。
 商売女じゃあるまいし、こんなことをするなんて昔のあたしが見たら鼻でわらっているだろう。確実に。
 観念したようにロックがもう片方の手を伸ばしてくる。
 頬を撫でてから、喉を擦られる。
 猫じゃあるまいし。
 でもこんなことでもあたしの身体も心も反応する。
 ロックが構ってくれたことが嬉しくて、その手に頬を摺り寄せる。
 ロックが苦笑するのがわかる。
 なんだよ?
「レヴィは本当に猫だね」
「……何でだよ?」
 この行動がか?
 ……確かにこの行動は多少猫っぽいとは思うが。
「主人の都合はお構いなしで、自分が構って欲しいときに甘えてくるとことか」
 猫そのものだね。
 そういって、胸に抱き寄せられる。
 ……フン。あったりまえだ。オマエの都合なんざ知るか。
 あたしが猫なら主人はあたしを可愛がるのが役目だろう。
 腕を伸ばし、首に絡めると耳元で囁いてやる。
「……にゃあ」
 ロックが驚いているのが気配でわかる。
 自分の顔が赤くなっているのも。
 ――だけど、それは確かに合図になった。


478 :名無しさん@ピンキー:2008/11/14(金) 00:02:33 ID:GXEzpVp9

頬に、額に、髪に、優しくキスされて、それだけであたしはどうにかなりそうになる。
 指が頬を滑り、肩からわき腹の辺りまで撫で下ろされる。
「――ひあ!」
 自分でもどう表現していいかわからないような声が漏れる。
 目の前の相手は笑って、耳元に顔を近づけてくる。
「――感じた?」
 その吐息にすら反応してしまうのを、必死でこらえる。
 だが、とっくにそんなことはお見通しらしい。
 耳にも口付けられ、甘く噛まれてから、タトゥにも丹念にキスされる。
「んっ、あ!」
 こらえたのもつかの間で、タトゥにキスされた瞬間抑えていた声が漏れる。
 ロックがにやりと笑うのが気配でわかる。
「レヴィ、ここ弱いよね」
 そういいながら何度も優しく撫でられる。
「う、るせえ。てめえが触りたいのはそこだけかよ」
「まさか」
 その瞬間、唇にキスされる。
 舌が、唇を舐め、歯をなぞり、舌を絡みとられて優しく噛まれる。
 その間にロックの手は動き、あたしの服を脱がしにかかる。
 あっという間に服は脱がされ、残るのは下着と、中途半端に脱ぎかけてある、ホットパンツだけだ。


479 :名無しさん@ピンキー:2008/11/14(金) 00:10:54 ID:GXEzpVp9
ロックの手が、自分の服を脱ごうとボタンに手を掛けているのを見て、とろけていたあたしの意識が戻ってくる。
「ちょ、レヴィ?」
 それを邪魔するように、抱きついてやる。
 首筋に顔を擦り付け、お返しにキスマークをつけてやる。
「どしたの?」
 ロックの顔が少し赤くなっているのを見て、少しだけ溜飲が下がった。
 あたしだけ翻弄されるなんて、我慢できねえ。
「あたしが脱がす」
 そう宣言すると、ロックはきょとんとしてから苦笑した。
「どうぞ」
 脱ぎかけていた服から手を離す。
 ほとんど外れているボタンから白い肌が見えている。
 ――つーか、コイツのほうがあたしより肌キレイだよな。
 自分の傷だらけの身体と、日に焼けて小麦色になった肌を思い出して憂鬱になる。
 こんなことを考えたことは一度もなかった。
 ――コイツと出会うまでは。
「レヴィ?」
 不思議そうな顔をするロックに、べーっと舌を出してやると、服を脱がせにかかる。
 もちろん口で。
 ワイシャツのボタンを時間をかけてすべて外し終えると、ロックに頭を撫でられた。
 まるでよくできたと褒められてるみたいだ。
 きっと今あたしの顔は緩みまくってるんだろう。
 そんな顔を見せるのは、悔しい。
 あたしは顔をベルトに顔を近づけて、くわえる。
「それも、口でするの?」
 困ったような口調だ。
 だけどあたしはあきらめず、かちゃかちゃと金属音を立てながら、懸命に外していく。
 時間を掛けたが、どうにか外し終える。
 だけど、今度はロックは褒めてくれなかった。
「ベルトに歯型がついてるんだけど……」
 ―――知るか!
 鼻を鳴らすと、ロックのジーンズのファスナーを銜えた。

627 :名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 23:43:24 ID:JCQrLS19

 ロックのモノを取り出すと、先のほうを焦らすように舌で舐めていく。
 アイスでも舐めるように舌先だけを使う。
 見上げると気持ちよさそうな、でも焦れているようなロックの顔が見える。
 あたしはそれに満足して、そのままモノを口に含んで吸い上げてやる。
 音を立てて吸い上げ、時々軽く歯を立て舌先でいじってやる。
「あ、くぅ、ん!」
 その何かを堪える様な顔はかなり色っぽい。
「あ、ちょ、レヴィ――もう!」 
 我慢の限界が来たのかロックがあたしの頭をどけようとする。
 確かにいつものあたしならそれを合図に離れていただろう。
 だけど今のあたしは猫なのだ。
 だから――
 あたしはロックのモノを咥えたまま上目遣いで、啼いてやる。
「みゃお」
 呆気にとられたようなロックの顔が目に映る。
 と、同時に吐き出された精液を飲み干していく。
 独特の味と匂いを伴うそれを零さないように飲んでいく。
 さっきと同じ顔で固まっているロック。
 何を驚いてやがる。
 今のあたしは猫なんだからミルクぐらい飲んでやる。
 ――お前のだけな。
零れたものや手や顔にかかったものも丁寧に舐めていく。
 ゴクリと喉を鳴らす音がした。
 あたしのものじゃない。
 ロックのだ。


628 :名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 23:44:36 ID:JCQrLS19
あたしはわざと誘うように唇についたもの舌でゆっくりと舐める。
 ――瞬間。ものすごい勢いでベッドに押し倒された。
 安物のベッドがきしんだ音を立てる。
 文句を言う暇もなく、唇を塞がれ、そのまま深く貪られる。
 その間にも手はあたしの身体を這い回り、胸を強く揉まれる。
 痛いけど、気持ちが良くてやっと離れた唇から甘い声が漏れる。
「は……ぁ、あん……!」
「……レヴィ。レヴィ!」
 あたしを絶え間なく呼ぶロックの声にそれだけでイってしまいそうになる。
 ロックの手があたしの秘所に触れる。
 ようやく触れられたことを悦ぶように、既に濡れていたところにさらに愛液が溢れ出す。
「ふぁ……ひゃん!」
 クリトリスを弄られ、イってしまいそうになる。
 顔にキスの雨を降らされながら、違和感に気づく。
 いつもならあたしの反応に対してからかってくるのに、その気配がない。
 快楽に溶けそうになる脳を無理やり起こしてロックを見る。
 ――そこにいたのは余裕の欠片もなく夢中になった男の姿だった。
 あたしの中を快楽以外の何かが駆け抜ける。
 だけどそれと同じくらいの不安が心に広がる。
 たまらずロックの首に腕を回す。
 それを待っていたのか、ロックのモノがあたしの中に侵入してくる。
 すっかり慣れたと思ったのに、今日は一段とデカい気がする。
「あ、うっ!」
 思わず呻くあたしに構わず、すべてを埋め込むと「いくよ」と囁き動き始める。
「――あ! はぁ、あ! ん!」
「――あ――ん! レヴィ! レヴィ――」
 部屋に響くのは二人の濡れた声と、ベッドが軋む音だけ。
 絶頂が近い。
 ロックの首から腕を離し、代わりに手を重ねる。
 重ねられた手をロックが強く握り返す。
 それが嬉しくて、うれしくて、ウレシクテ。
――でも同時にさらに不安が広がる。


629 :名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 23:47:31 ID:JCQrLS19
律動するスピードが速まる。
「レヴィ! レヴィ!」
「あ、あ、あああ!!」
 最後にイくときまであたしは、何故かロックの名前を呼べなかった。
 ロックが自分のモノをあたしから引き抜く。
 大量の精液がシーツを濡らしていく。
 あたしの上にのしかかっていたロックがノロノロと身体を起こす。
 ――困惑した表情。
 あたしは頭を撫でられて、顔を起こす。
 瞬間――ロックの顔が哀しそうに歪む。
 瞳に映ったあたしは今にも泣き出しそうな顔をしていた。 
 起きるのも億劫だったが、ロックに触れていたくてしょうがない。
 手をロックに向かって伸ばす。
 その手を掴まれると無理やり身体ごと持ち上げられ、膝にのせられる。
 ギュッと抱きしめられて、不覚にも涙が出そうになる。
 頬をすり寄せ、強く抱きつく。
 ロックが頬を離し、唇を寄せてくる。 
 優しく触れるだけのようなキス。
 あたしもそれに応えてやる。
 舌の先でロックの唇を何度か舐めると、下に硬いものが当たる。
 ロックが罰の悪そうな顔をする。
 あたしがさっきの行為に不満があったと思ったらしい。
 ――違う。そうじゃないんだ。
 そう言おうとしたが何故か言葉は出てこない。


630 :名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 23:53:13 ID:JCQrLS19
 代わりに深くキスをひとつすると、ロックのそそり立つモノに自ら腰を沈めていく。
 すべてが納まるとそのまま腰を使って動かしていく。
 再び部屋に響く水音。
 二人分の喘ぎ声。
 先の行為で十分濡れたそこはロックのモノを軽く飲み込み、快楽を与え続けてくる。 
 ――今度はさっきより終わりが早く来た。
「レヴィ! レヴィ!」
「――ん! あ、ああ!」
 漏れ出るかすれた声をやはり言葉にならず、二度目の絶頂が訪れた。
「……レヴィ?」
 不安そうな声。
 恐る恐る頬に触れてきた手に顔を擦り付けてやる。
 安心したように抱き締められる。
 あたしも強く抱き返す。
……違うんだ。
 イヤだとかそんなんじゃない。

 頭に浮かんだのは、むかし見た映画のヒロインの台詞。
 あのときのあたしが思い切り馬鹿にした台詞。
――「幸せすぎて怖い」なんて。 

867 :名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 00:19:15 ID:JVJI5N1w

行為の後。少し眠ってからロックが起き上った。
 シャワーを浴びに行こうとするヤツにあたしも連れてけ、とばかりに腰に抱きついた。
 ロックはあたしの腕をやんわりと外そうとしたが、その前にさらにきつくしがみついた。
 ふぅ、と小さくため息をつくとロックはあたしを抱きかかえてシャワー室に向かった。
 シャワー室は二人入れば狭いことこの上ない。
 ロックがあたしを膝にのせて髪を洗う。
 コイツに髪を洗ってもらうのがいつの間にか習慣になってしまった。
 強すぎもせず、弱くもなく、丁寧に洗ってもらえるのでこのところあたしの髪はいつもサラサラだ。
 こないだエダに「いい専属美容師がついたみたいじゃねーか」とからかわれた。
おまけにヨランダのババアにまで「いい恋をしてるみたいだね、お嬢ちゃん」ともいわれた。
 ……恋だなんて、あたしがそんなものをするはずがないと思ってた。
っでも今のあたしは確かにどうしようもないほどコイツに溺れている。
 コイツがあたしの前から突如いなくなったらと想像しただけで震えが止まらない。
 いっちゃイヤだ。いなくならないで。
 振り向いて、ロックに抱きつく。
 泡だらけの頭を胸に擦りつける。
「レヴィ?」
 困惑したようなロックの声が降ってくる。
 あたしはそれに応えるかわりにかみつくようにキスをする。
 ずっとお前のそばに置いてくれ。
 ――猫でいいから。
 再び激しく絡みあうのに時間は掛らなかった。


868 :名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 00:20:09 ID:JVJI5N1w
 いつの間にかベッドの上にあたしは寝かされていた。
 さっき二人分の汗を吸い取ったシーツではなく、清潔なものにかわっている。
 つくづくマメなやつだ。
 少なくともあたしが今まで寝た男たちの中でここまでしてくれた奴はいない。
 身体にかかっているタオルケットも随分と手触りのいいもので。
 自分がアイツにバカみたいに大事にされていることがわかる。
 嬉しいと素直に思うけど、また不安が頭を過ぎる。
 アイツが優しくしてくれるのは、ただの気まぐれなんじゃないかと。
 今まで付き合った女と少しばかり毛色が違うから珍しいだけなんじゃないかと。
 いやな想像ばかりが次々と溢れ出す。
 アイツがまだ帰ってこないからか。
 それとも今日が雨だからか。
 あの時みたいにもう二度と――
 不意に足音が聞こえてくる。
 規則正しいこの音は間違えようがない。
 ドアが開く。
「ただいま、レヴィ。色々買ってきた――」
 そのセリフは最後まで続かなかった。
 ギョッとした顔で、あたしを見つめるロック。
 何故か視界がぼやけてくる。
 ロックが帰ってきてから頬を何かが伝ってくる。
 こんなものはあの街を出る時に捨ててきたはずなのに。
「レヴィ? どうしたんだ?」
 荷物を置いて、すぐにロックはあたしのそばにくる。
「何かあったのか?」
 何も答えず、あたしはロックにしがみついた。
 あとからあとから涙が零れてくる。
 ロックのシャツが涙でグチャグチャになっても、それでもあたしは泣きやまなかった。
 抱き寄せられて、ガキにやるみたいに背中をぽんぽんと軽く叩かれる。
 その一定のリズムが高ぶったあたしの感情を鎮めていく。
 しばらくしてからあたしはようやく口を開いた。
「……昔な……」
「うん?」
 雨の音が強くなっている。
「……こんな雨の日に母さんが出て行ったんだ」


869 :名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 00:21:35 ID:JVJI5N1w
「…………」
「……だけど、出ていく前の日に普段じゃ考えられないくらい優しかったんだ」
ガキのあたしは戸惑いながらも、それが純粋にうれしくて……
「……その夜は同じベッドに寝ることも許してくれた」
 でも目が覚めた時には母さんはいなくて……
 あの行為があたしを置いていくことへの罪悪感からでたことにあたしはやっと気づいた。
 それから親父が母さんに向けていた暴力もあたしに向かうことになり、あたしの地獄はさらに深まった。
 いなくなるなら、結局消えてしまうならあんな希望は見せないで欲しかった。
――あの時のあたしの絶望を母は考えたことがあるのか。
 自分の中の罪悪感を軽減させるために見せた夢はガキのあたしをさらに傷つけたことを知っているのか。
――だからあたしは時々不安になる。
こいつもまた母さんみたいにいなくなってしまうんじゃないかと。
ひどく抱かれると安心する。
それはまだコイツに必要とされていると思うから。
「……猫でいい……」
「……え?」
「……置いてかないで……」
震える声で小さく鳴く。
ロックが抱きしめる腕の力を強める。
温かい腕の中。
このぬくもりをしってしまった今では離れることなんてできない。
ロックが首筋に顔を埋めてくる。
「置いてくなんてできないよ。こんなにレヴィが好きなのに」
クサすぎる台詞。
いつものあたしならせせら笑っている。
だけど今日はダメだった。
ロックの腕の中であたしはまた少し泣いた。
今度は嬉しくて。
あたしが泣きやんだころを見計らって、ロックの指が涙を拭う。


870 :名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 00:28:07 ID:JVJI5N1w
「――ねえ、レヴィはそんなに不安なの?」
 言葉だけじゃだめなのか?
 問われてあたしは考える。
 猫なら首輪でもつければ飼い主がわかるのに……。
 あたしがロックにつけられるのはせいぜいキスマークか歯形くらいだ。
「――さすがに首輪はごめんだけど……」
 ロックの手があたしの左手をとる。
「ここに銀色の輪でもつける? おそろいの」
 その指があたしの薬指をなぞった。
 その意味を理解するのにたっぷり十秒はかかった。
「……?☆◆○◎※※▲♨〒☆◆!!」
 わかったところででてくるのは意味不明な言葉だけで。
 面白そうな顔でロックがそんなあたしを眺めている。
 それがあたしには嬉しくて少し悔しい。
 だからあたしはこう返してやる。
「ウエディングドレスはお前が着るんだよな?」
 余裕のあった表情が一転して情けなく曇る。
「――ひどいな。俺にレヴィのウエディングドレス姿を見せてくれないつもりかい?」
 本気で訊くコイツが心底愛しい。
 返事の代わりにあたしは噛みつくようなキスをした。




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