358 :Under the Dark Water:2009/07/26(日) 20:06:40 ID:YChqIGLz
ライトブルーに白のいまいましい塗り分けのディプロマットが一台、フラッシャーとヘッドランプを点滅させながら、どぶ川みたいな運河に面したごみだらけの通りを駆け抜けていった。
あたしはそれを道端に停められた黄色いダットサンの影から確認すると、薄汚いパーカの腹ポケットに忍ばせたサタデーナイト・スペシャルの感触を確かめながら、まばらな街灯に照らされた通りへと足を踏み出した。

畜生、あいつらしつこすぎるぜ。
チンクのメスガキがアル中のDV親父を撃ったってだけなのに、ポリスカー何台回せば気が済むんだ?

…なわけねーよな。
マッポどもは決して、あたしを追ってるわけじゃねえ。
だいたいそんなありふれた事件なんか制服が2人来ればいいほうで、大体検分を塩漬けにして終りのはずだ。
多分あれは、普通のパトロールなんだろう。
大方中のオマワリも、勤務サボって食うドーナツとコーヒーで頭がいっぱいに違いねえ。

だが、連中があたしを探してる可能性も捨てきれない。
とりあえずはあいつらの目に触れないようにする必要はある、あたしはそう思いながら小走りに通りを駆け抜けていく。

あの角を曲がったら、人通りの多い大通りに出る。
そうすれば、もうあいつらにはあたしと他の東洋系との見分けなんかつかねえ。
白にも黒にも、あたしら黄色の顔の区別なんかつかないからな。
あとは適当な駅からサブウェイに乗ったら、もう、この町ともおさらばだ。

そう思った矢先だった。
突然あたしを照らす、複数のスポットライト。
早口でがなりたてるスピーカー。
もうだめだ…このレヴェッカ様も、ついにお縄ってワケか。
いや、あきらめるには、まだ早い。
あたしは、息を思い切り吸い込むと目の前の運河へと決死でダイブした。

359 :Under the Dark Water:2009/07/26(日) 20:07:49 ID:YChqIGLz
耳に入る、生ぬるい水。
そして、そこから途切れ途切れに、フィルターがかかったように聞こえてくる声。
「…レヴィ、おい、レヴィ!」

ロック…の声?
あたしは、苦しい息の中、がばっと身を起こす。

「レヴィ、フロ入りながら寝るなんて、よっぽど酔ってたんだな。
 俺が起こさなかったら、溺れてたんだぜ。
 大丈夫か?」

不安げな顔であたしを見下ろしているロックの顔が、そこにあった。
流れ続けるシャワーの音に混じって、雀の鳴く声が、開け放たれたバスルームのドアの向こうから途切れ途切れに聞こえてくる。

いつもの、ロアナプラのアパート。
いつもの、ホワイトカラーみてえな格好のロック。

「…なあロック、ここはあのくそったれなNYじゃねえよな?」

「何言ってんだよ、それより大丈夫なのか?」

「ああ、おかげさまでピンピンしてるよ。
 で、何か、お前さん、レディが使用中のバスルームにいきなり入ってきて、謝りの言葉もなしか?」

あたしは、身を起こしながらじとっとロックを睨む。

「あ…ごめん。」

ロックはそう言いながら、その赤い顔をそむける。

360 :Under the Dark Water:2009/07/26(日) 20:08:30 ID:YChqIGLz
「ま、今更お前さんにあたしのフルヌード見られたところで、どうってこたないがな。
 つーかホントにお前、昨日あたしをあんだけ好きにしたあの男なのか、ロック?
 一晩明けただけで、そんなに、初めてストリップ小屋に来たガキみてえに、顔赤くしやがってよ。」

あたしは立ち上がりながら、そんなロックがなんだかとても可愛らしく思えて、皮肉たっぷりにからかってやる。

「あんときは暗かったし…それに、俺、ちょっと酔ってたし、さ…。」

「ぷっ…あははは!」

「何だよ、何がおかしいんだよ、レヴィ!?」

「まあいいじゃねえか、お前も一緒に入ろうぜ。
 お前の顔、汗びっしょりだぞ。」

「いいって…おい、引っ張るなよ!」

ワイシャツとウールパンツのままのロックを、あたしはバスタブに無理矢理引っ張り込む。

「うわっ、おい、俺どうやって帰ればいいんだよ!?
 俺、着替えなんか持ってきてないぜ!」

「あたしが買ってやったアロハシャツと、あたしのトレーニング用のスウェットあるだろ。
 あのスウェット、でかいからお前でも入るよ、きっと。」

「えー、嫌だよあんなアロハ。
 お前の趣味はどうかしてるって、絶対!」

互いに軽口をたたきながら、あたしは今のこの時間を、めいっぱいかみ締めていた。
それは、あのままNYにいたらきっと味わえなかった、そんな時間に違いなかった。

開けっ放しのドアの向こうから、高くなりつつある南国の太陽がこっちを睨んでいた。
今日も、きっと暑い一日に違いなかった。

今日はどこへ行こうか、ロック。
ロアナプラの朝は、始まったばかりだぜ。

                <完>



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