855 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/03(日) 22:37:39.14 ID:EaGE5Qc/
11月某日 PM13:00

「ダー、スレヴィニンピョートル(大頭目)。手筈はそのように……。」
マホガニーの執務机に腰掛け次の取引の報告書を読みながら話している、この街では「火傷顔」と呼ばれる妙齢の女性。

「そうか……。例のメイドの危機は脱したか。相変わらずの手腕だな……。」

そして、電話口の発している声は初老の男性だろうか………
はっきりと威厳に満ちているその声は、この女性のボス………スレヴィニン。


856 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/03(日) 22:39:09.65 ID:EaGE5Qc/
「いえ、そのような……。」
「謙遜するな。日本での鷲峯・香砂会の件も報告書で読ませてもらった。
これも見事なものだ。…………ヴァシリの件も含めてな。」
「何のことでしょうか?」
「別にとがめはしない。お前も知っているだろうが、私もルビャンカの連中は好かん。
だが組織のビジネスのためには必要でもある。
ダーチャ(エリート層・支配的階級)も含めてな。」


857 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/03(日) 22:40:55.30 ID:EaGE5Qc/
「承知しております。」
「お前のチェーカー嫌いは組織随一だ。私と負けず劣らずな。」
「……」
「トライアドとも渡り合えるお前なら、タイだけでなく他国のヴォール(頭目)をまとめるのにも、私はいささか構わないのだが……。」
「本国に戻るつもりはありません。私は部下で手一杯ですので……。」
「わかっているさ、言ってみただけだ。」
「お戯れはよしてください。」
「くくく、変わらないな。近々、本国で会合がある。気が進まないだろうが……」
「わかっております。」
「では、引き続き頼むぞ……ソーフィヤ、いやバラライカ。」


858 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/03(日) 22:43:29.63 ID:EaGE5Qc/

ブツッ   プー   プー   プー

ソーフィヤ・イリーノスカヤ・パブロヴナ

かつてのその名前を呼ばれるのは好かない。
組織の人間がそれを言ってきたならば、スぺツナズ時代の拷問を実践しても生ぬるいくらいだ。
かつて政治将校であったわが父の友人であった大頭目で、ようやく仕方ないと思える。

ツー ツー ツー

「何だ?」
「失礼します、大尉。ラグーン商会からお電話が入っています」
「ああ。つないでくれ。」
「ガガッ……俺だ、大尉殿。」

この男の電話はいつも突然だ。
しかし、退屈はしない。
この街には珍しい、ユーモアあるこのスキンヘッドの黒き友人には。


859 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/03(日) 22:45:57.51 ID:EaGE5Qc/
シガーカッターを手に取りながら、葉巻を取り出す。
「あら、ダッチ?例の積荷の件なら滞りなく云っているはずではなかったかしら?」
「ああ、予定より早く終わってな。今、メコン川沿いをクルージングの最中だ」
「そう、仕事熱心で何よりだわ。それだけのために電話したわけではないでしょ。」
「ああ、久々に飲みに行くのはどうだい?お得意様と接待というのも悪くないだろ」

シャキッ    シュボッ!

「ふふふ。そういうシンプルなの、嫌いじゃないわ。張より才能がある。」
「光栄だね。」
「まあいいわ。丁度むしゃくしゃしてた処だから接待してもらおうじゃないの。」
「じゃあ、イエローフラッグで……」
「待って。たまにはオフィスでどう?こっちの。」
「ほお?」
「嫌かしら?」
「嫌?接待なんだぜ、お得意様の命令は絶対。だろ?」
「決まりね……。」

今日の仕事にはあの山盛りのエロビデオの編集作業が無い分、まだ取り組める……。

この日の仕事を早く終わらせようとふと、そう思ったバラライカだった。


869 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/04(月) 17:07:24.11 ID:JUl5nIwD

*   *   *

PM10:00

「大尉、お連れしました。」
「ああ。下がっていいぞ、軍曹。
それと、本国からウォッカの差し入れが届いている。皆にふるまってやれ。」
「解りました。では。」

バタン

「ここに直に来るのは久しぶりだな。」
「物見遊山に来たわけではないでしょ、ダッチ。まあお坐りなさいな。」
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
「そう。ロックがそんなことに……」
「ああ。火遊びどころかキャンプファイアのし過ぎだ。
一瞬、寒気がしたぜ。
最も、そうなったのは、あんたにも心当たりがあるはずだが?」
「さあね?助言はしたつもりだけど。」


870 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/04(月) 17:08:00.78 ID:JUl5nIwD
そう。あの時、私はヤポンスキにこう言った。
『お前、いい悪党になれる』と。
話を聞く限り、最初出会った時の日本人気質が出ている甘ったれた思考からよくここまで考えたものだ。
周りにいる鉄火場の人間を実に巧みに配置してもいる。
だが惜しいな。実に惜しいぞ、ロック。まだまだ詰めが甘い。
色々あるが、自分が撃たれるという仮定をまず考えなかったことが大きい。
作戦・計画というモノは、総じてあらゆる出来事を想定し、実行していくものだ。
安全の位置にいても、自らが撃たれるという事態は、まず最初に考えうる不測の事態…
まあ、今後の成長が楽しみだ。
またしばらく退屈しないで済むのかもしれない。
ふと思わず……私の銃の前で言ったロックの言葉を思い出した。


871 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/04(月) 17:09:18.37 ID:JUl5nIwD
「ふふっ・・・・・」
「どうかしたのか?」
「うん?酔ったせいかしらね、少し……思い出していたのよ?
初めて出会ったときのことよ。」
「いきなり何だ?いつの間にセンチメンタルになったのかね?」
「あら、ひどいわね。4年前の11月の今日。」

その言葉で、ようやくダッチも思い出したらしい。

「ああ。そうか、きょうはあの日か。」
「覚えているかしら?」
「未だに夢に出てくる……」


872 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/04(月) 17:09:53.28 ID:JUl5nIwD
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あの時は断片的にしか覚えていない………
覚えているのは、冥府の街の入り口であるあの桟橋…………
上等なスーツを着たジョーク以外はセンスがいいチャイニーズ…………
そして車から流れていたあの曲…………

フランク・シナトラの「It’s a Blue World」

「ちょうどいいな。この曲なら、君のドレスとこの街にふさわしい。
踊るかい、ミス・バラライカ?」
「付いてこれるかしら、ベイブ?」

ジャキッ

パパパパパパパッ バスッ  バスッ バスッ

戦場で、唯一血がたぎる瞬間………
顔面のすぐ横を通り過ぎる、弾丸飛び交うこの瞬間………
一瞬で死に場所を与えてくれるこの瞬間……
生ある人間に戻れるこの瞬間………

「ぐっ!!!」

バシャ―ン

そして、あの男に出会った………


873 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/04(月) 17:11:23.59 ID:JUl5nIwD
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あの時は、正直何が起こったのかと思った。
年がら年中、銃声が轟き死体が蟻山みたいに積み上げられる、このイカれたタイの町「ロアナプラ」。
別段、驚きもしなかった。
しかし5・6メートルの桟橋から高飛び込みを決めたのは、ここ最近名乗りを上げてきたロシアン・マフィア『ホテル・モスクワ』の「火傷顔」だ。
普段なら放っておく所だが、なぜだか体が動いてしまった……
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874 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/04(月) 17:13:37.68 ID:JUl5nIwD
目が覚めたら、望んでいた「地獄」という場所ではないらしい。
重油の臭いからして、ここは船の中だということはなんとなく理解できた。
「ここは?」
「ダンスホールに見えるかい、ミス・バラライカ?」
自分の眼前に見えたのは、サングラスをかけた黒人の男。
立ち居振るまいからして自分と同じ軍人崩れというのがすぐに解った。

懐と大腿に銃が忍ばせてあるが!
感覚からして、恐らく外されているのだろう。
「!!……Чёрт возьми。」
「悪いがあんたのドレスは風穴開いちまって、処分させてもらった。
上等ではないが我慢してくれ」
気がつけば身体中に包帯が巻かれていた。
その途端に、腹部に焼けるような激痛が走った。
「くっ………貴様、何者だ?」
「俺の名はダッチ。単なる運び屋さ。」
その時、三合会がお抱えにしている運び屋がいたと報告書で読んだことを思い出した。
「ラグーン商会のダッチか……。名前は聞く。一応……礼は言わせてもらう。」
「ああ。治療費は後で請求させてもらうぜ?」


875 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/04(月) 17:18:34.58 ID:JUl5nIwD
ガー…………

「ヘイ、ダッチ!!ボス!!聞こえてるか」
「レヴィか。今、くるみ割り人形が起きだした処だ。」
「三合会の彪から無線入った。フライフェイスのイワンの点心拵えたい。
見付けたら連絡よこせとさ」
「まあ、そうだろうな。ボスがああなって黙ってるはずがない。引き続き運転頼むわ。」
「あいよ」

ガーーーー

「ずいぶん、勝気な小娘だな。訛りからしてチャイニーズ。飼ってるのか?」
「半分正解、チャイニーズアメリカンさ。それに単なる従業員だよ。
こういう鉄火場専門のな。あんたも気に入るだろうよ。」
「……………」
「とにかく、少なくとも2,3日はおとなしくしてもらう。
急所外していたとしても3発もぶち込まれてたんだ。
それと、お宅の部下に連絡することも控えてもらう。何か、質問は?」
「………なぜ、助けた?」
「…………」
「貴様は三合会を取引相手にしているはず。
そいつらに唾を吐いている真似をしてこの街に生き残れなくなってもいいのか?」
下手をしたら、後々タレこむに違いない。
無線の内容からして懸賞金くらいはかかっていてもおかしくないだろう。
そうバラライカは思っていた。


876 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/04(月) 17:20:04.25 ID:JUl5nIwD
「…………さあな。理由が思いつかねえ。」
「は?」
「普段はあんたの言うとおりだが、俺はフリーの運び屋。
依頼を受ければクライアントには従う。
だが多少の義理立てはするがそれ以上でも以下でもねえ。」
「………」
「それに。あんたを助けたのは………まあ、俺の趣味だ。」
「趣味?」
「ああ。」
その言葉を聞いた瞬間、なぜだか笑いがこみあげてきた。
打算なき無償の人助けなどありはしない。この世は全て利益で成り立っている。
それを………趣味だと?
「ぷっ。ふふふふ……。ははは!!」
「そんなにおかしいか?」
「はあ…はあ…、ああ。それはどんなジョークだ?リチャード・プライヤー並みだぞ。」
「ずいぶんご存じだな。光栄だね。」
この男は不思議な奴だ。この街の腐った臭いはするが、そいつらとはまた違う。
それにこいつは嗅ぎ慣れている、先ほどの男・張と同じ匂いだ。
「では、依頼人となるにしよう。傷が治り次第、私をこの場所に運べ。」
手近にあったペンを取り出し、紙に書く。

{Bougainvillea Trading Company} 
Roanapura Certainum Street,○○○○


2 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/06(水) 18:08:25.40 ID:p/n8jozy

*   *   *

「オーライ、ミス・バラライカ。」
その後は、ダッチの用意したスーツを身にまとい、先ほどの無線の小娘と面会させた。
灼熱の炎を内に秘めている赤毛。
タンクトップとホットパンツ・ジャングルブーツという出で立ちだ。
見たところティーンかそれぐらいなのだろう。
「こいつの名前は,レヴェッカだ。レヴィ。依頼人のミス・バラライカだ。」
その少女の目を見た時、「ああ、すっかりこの街に染まりきっている」と思った。
完全な野良犬の目。
下手したらこちらを食い殺す目だ。
小柄だが両側に吊っているソード・カトラスが異様に似合っている。


3 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/06(水) 18:09:03.52 ID:p/n8jozy
「あんたがそうか。まあ、よろしくな。」
「ああ。何と呼べばいい?」
「どうとでもいいさ。別にあんたには興味もないしね。」
自分のこの顔や身体を見たら、少なからず動揺はすると思ったがこの娘はそうではないらしい。
言っていることは真実。本当に興味が無いのだ。
そこが   まず    気に入った。
「ふふっ。ダッチ、面白いわね。この仔。」
「だろ?」
二人の会話に釈然とせず、きょとんとするレヴィ。
「Fuck、あたしを馬鹿にしてんのか?」
「違うわ。褒めてあげてるのよ、あなたみたいな目は嫌いじゃないから。」
「ほう?」


4 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/06(水) 18:09:23.38 ID:p/n8jozy
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その後は、その少女からは「姉御」と呼ばれるようになった。
話してみて、案外賢い子だというのも解る。
自分の火傷顔を……
この街にいる人間なら誰でも恐れるこの顔を……
何とも思わず、気さくに話しかけてきた。
それが逆に清々しく感じてもいた。
友人や家族と呼べるものは、供にムジャヒディン共との戦火を生き抜いてきた部下たちのみだった。
レヴィやダッチと話していると、まるで往年の友人と話しているようなそんな気分にさせる。
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5 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/06(水) 18:10:00.30 ID:p/n8jozy
AM 10:00

張との決闘から数日後・・・・・・

起きぬけの朝、誰もいない事務所で用意された痛み止めの薬とウォッカを喉に流し込んでいた。
そして、後ろから嗅ぎ慣れた臭いがした。
部下(メンバー)たちにはいつも注意している類いの臭い………

「吸うかい?」
ダッチだ……。

「ロールはしない。勘が鈍るのでな。」
「違う、只のたばこさ。こいつは運びの売り物だよ。俺はAmerican Spirit派なんだが、生憎無くてね。仕方なくこいつなんだよ。」
そう言って出してきたのは、Parliamentだった。
「あら?そいつは嫌いではないけどね。まあ、もらうわ。」
火をつけてもらい深々と香りをかみしめていく
葉巻ではなく、久々に吸ったタバコは思いのほか格別だ。
たまには悪くない。

事務所の中には、ダッチの趣味なのかどこからかジャズの音が流れていた。
ウォッカを傾けながら、ゆっくりと煙をくゆらせていく。


6 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/06(水) 18:10:31.86 ID:p/n8jozy
「今日で期限の日ね。レヴィは?」
「出払ってもらっている。ここは従業員が少なくてね。
ルート・小物の類いの確認をしてもらってる。」
「フリーの割には、随分仕事は来てないわね。」
「ああ、ここ以外にも運び屋はごまんといるからな。」
「この硬い看護ベッドとも今日でおさらばできて清々するわ……。」
「そうかい?一流ホテルほどではないが俺は気に入ってるんだがな。」
他愛ないジョークも過ぎ、少し時間がたった後バラライカが口を開く……



7 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/06(水) 18:11:47.39 ID:p/n8jozy
「ダッチ……」
「何だ?」
「もし、この一件で私がホテル・モスクワとして三合会と全面戦争を起こすと言えば……
あなたはどっちにつく? 私? それとも張?」

自分でも、なぜ聞いたかわからなかった。ここ最近、あまり感じたことが無い感情でもある分、わからないのだ。

「さあな。
だが話している限り、戦争屋ではあるが賢いあんたならその事態は何としても避けたいはず。逆に相手にそうするように仕向けるはずだ。
そうすれば手間が省けるし、楽しむことができる。違うか?」
「………」
「だが、面白そうではあるがな。それに他の方法もあるぞ。」
「他の方法?」
「痛み分けというやつさ。すべてを丸く収める。」
「馬鹿な!!そんなことできるものか。」
「確かにな。
だがあんたの理屈を貸りれば、この世は利益で成り立っている。
無論、俺もそう思うさ。
当然、利益の派遣のためにお互いを喰い荒らすのは忍びない。
張さんはそのことを誰よりもわかっているはずだ。
それに、暗がりだったが、あれは一騎打ちだろ?
そういう場合、落とし所が大事だ。
ルールを重んじる中国人ならなおさら。
痛み分けにして戦争のボタンをいつでも押すことをお互いできるようにすればいい。」
「くっ・・・・・・」
確かに、その点でいえばダッチの言い分は筋が通っている。
この時のロアナプラは小さいながらも麻薬・武器等の密輸で保っている、いわばハブ街。
警察・報道機関に賄賂を渡し、地図上には存在すらしない無法者(アウトロー)たちの巣窟……
それが戦火の爆撃で消えてしまったら、タイ支部長として温厚に扱ってくれたモスクワから、自分も、家族である部下たちも、何をされるかわからない。
もちろん張も、三合会からその長を任じられている、同じ穴のムジナ……


8 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/06(水) 18:12:17.36 ID:p/n8jozy
面子を保つにはそれが最適であると言えるだろう。
頭では理解している。
しかし______戦争を起こしたい、戦士として闘い、すべてを灰塵にしてしまいたい______
_______この世のすべてを皆_______壊したい______________そういう破壊願望・欲望を持っている自分がいる……………。
だがそれを目覚めさせてしまえば、部下たちはどうなる?
自分が「進め」といえば臆面もなく任務を遂行するだろう。
「殺せ」と言えば蟻一匹残らず根絶やしにするだろう。
だが、大義も何もない、私自身のわがままに突き合わせるわけにはいかない………。
そんなことは私自身解るし、耐えられない苦痛だ……。
もう二度とあの場所での轍は踏まないと誓ったのだ………。


9 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/06(水) 18:19:13.79 ID:p/n8jozy
アンタの気持ちは解らん。
俺はイエス様でも心理学者でもないからな……
しかし、事態を起こせばアンタはただでは済まないはずなのは解る。
だから向こうが起こした時を、待て。
その時は、大義名分振りかざして第二のソドムとゴモラよろしく、心おきなく思う存分戦争すればいい。
少なくともその時は、俺とこのラグーン号はナイル川への船旅だろうがな。」

その時、なぜだか気が楽になった。
そして、なぜかは解らないが心がざわついた。

「………あなた、いい悪党になれるわ。」
「何、言ってんだ?大尉殿。ここは悪党の巣食う街だぜ?」
「ふっ。それもそうね。つまらない事を聞いたわ。忘れてちょうだい。」
「ああ、聞かなかったことにしとく。」
「ふふっ。そういえばお詫びもしてなかったわよね。」

スルッ……
衣擦れの音と共に痛々しい傷跡に満ちた豊満な姿態が露わになっていく……

「何のつもりだ?」
「良いじゃないの。前払いの報酬だと思えば……。」

少なくとも、この男に身体を許すのは悪い気はしない………
それだけは思えた…………

「まあ、それもそうか……。」

事務所の窓から差し込む光が彫刻のようなバラライカの美しい体を際立たせる……


26 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/08(金) 15:37:20.29 ID:7zR2OV9g

*  *  *  *  *  *
とにかく、余計な事は考えるな。
今、私が求めるのは、あくまでこの火照りを……疼きを……
鎮めること……

腹部と肩にかけた包帯と消毒薬の臭い、そしてジャズのバックミュージックが不思議とこの場を包み込む。


27 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/08(金) 15:38:08.97 ID:7zR2OV9g
無骨な手が繊細な動きで下着を下げる。
片方の脚だけ抜いたシルクの布は、膝の下に引っ掛かった。
太腿を大きく広げ、プラチナブロンドの花園に両の親指が潜る。
その指に押し広げられて露わになった粘膜を、舌が舐め上げた。
熱く柔らかいものが、襞の間を生き物のように蠢く。
先を尖らせ、小さな先端を押し上げるように刺激する。
「ふっ!!くう……はあっ!!」
緩くかき混ぜて、掬い取るように体液を絡ませると、容赦なく入ってくる。
唇で突起を柔らかく包んでおきながら、指は根本まで沈む。
柔らかく濡れた粘膜が、太い指に押し拡げられた。
節の目立つ指の形を内側で感じ、体が反り返る。
崩れそうになる体を、片肘で支えてもらい、 快楽を示す体液を纏って、指は何度も往復した。
先端の突起の上では、舌がちろちろと遊ぶ。
指の動きが速くなり、彼女の脳は快楽で満ちてゆく。
嫌っているドラッグでトリップしたかの様に……


28 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/08(金) 15:39:42.30 ID:7zR2OV9g
堪らず、腰を押し上げると同時にダッチの首へ手を伸ばす。
手と太腿に力が入った。

くちゅ  クチュ  グチュ  ギュチュ グチュ  

バラライカの体は一層熱く燃え上がり、粘着質な音を上げながら責め立てられる。
――限界が近い。
そう思った時、柔らかい突起を強く吸い上げられて、エクスタシーを感じた。
「ふぐぅぅぅうぅう………ぅはあっ……はっ……はあっ。」

「随分いい声だな。それが、またそそる。」

そう言ってダッチは愛液の付いた指を舐め、体勢を変える。
傷口を深くさせてしまうことへの配慮からか座らせたまま行為を行った。


29 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/08(金) 15:42:40.86 ID:7zR2OV9g
自然と、バラライカの指もジッパーに伸びていく。

「ううん。。うん。ふっ。」

ジュパッ ズボッ ちゅポ ズウズズズズズズ シュツーー

ダッチの黒々とした男根をためらいもなく咥えている……

この光景を家族である「遊撃隊(あいつら)」が見たら、卒倒するだろうな……

どうでもいいことだが、ふとそんな考えを頭の中がよぎった。
軽く、バラライカの頭をつかんだダッチは少しずつ確実に絶頂に達そうとしていた
「くっ!!!!」

ビュルルル

「ウムッ!!?フゥン……フグ……ん……」
ゴクッ   ゴクッ   ゴクッ

ポニーテールのブロンドをかきあげながら、黒い巨漢とは裏腹の白く濃厚な液体を少しずつ嚥下していく……

「ふは……。喉に絡みつくな……」
「別によかったんだぞ。」
「構わんさ。相手してるうちに、また火がついた。さあ……こい。」
命令的に……そして蟲惑的に発し、誘惑していく………
まるで女郎蜘蛛の様に……男に負けないための彼女なりの誘い……


43 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/11(月) 22:21:46.04 ID:JDJ1Pmp2


*  *  *
首筋にキスをし吸い上げながら、一向に衰えることのない男根を冷たい花園に沈めていく……
「ハアッ……」
その吐息だけを聞けば、誰も恐れ多い火傷(フライ)顔(フェイス)ではなくソーフィヤと呼ばれた女のものだった……
長い間、忘れていて嫌いで、なければいいと思った女の自分……

ゆっくりと、少しずつピッチが上がっていく・・・

ぐちゅ クチュ くちゅ グチュ ずぷっ

「ふぅ……はあっ………ううん………あっ………」


44 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/11(月) 22:23:13.88 ID:JDJ1Pmp2
バラライカは何かに耐えるように深く息をつくと、ダッチの首にしがみつき、その姿を見上げる。
無論、表には出さないがダッチの心中も、少なからず驚いていることだろう。
そして、その女をビジネスの為か快楽の為か、とにかくSEXしているという事実に……
極上のスタイルだけでなく全身の傷跡も含めて、かくも苛烈に「生き様」を語るカラダを持つ女はそうはいない。
ジョークとしてはジャンキーなどのイカれた奴らの与太話にしかならないだろうが……
やがてゆるやかに円を描くように腰をグラインドさせはじめる。
少しずつ、内部の熱が高まってゆくのを感じる。
リズムに合わせて突き上げを繰り返すうち、締め付けがキツくなっていく。
つながった部分からは、淫媚な水音が途切れることなく聞こえている。
親指の腹で花芯を直接刺激してやると、うめき声とともに女の背中が大きくしなった。
「好きなだけ…いいぞ」
いやらしくくねる腰に手を添え、いつの間にか覚えてしまった女の「カラダ」が声を上げるポイントを攻め上げる。


45 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/11(月) 22:24:05.77 ID:JDJ1Pmp2
「はぁ…っッ…あ…!」
バラライカの歯の間から、押し殺したような「悦び」が溢れ出す。
「ンんっ…!アっ、あァ…っ!」
もっと、声をあげさせてみようと腰の動きに変化をつけるが、それを素直に受けとめず、 それどころか逆を突くような動きで応戦していく。
「ふん……どうしたの?それぐらいの……ものなのかしら?」
「言うじゃないか……」
所々、絶対に見せない女の部分が見え隠れしていく様を見たダッチは少なからず興奮していき、ラストスパートをかけていく……

「ふぐっ……んんんん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

「くっ!!!!」

最奥に放ったものは、勢いよく2人の意識を持って行った……


46 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/11(月) 22:24:47.17 ID:JDJ1Pmp2
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
PM 14:00

その後は、レヴィが帰ってくる前にもう2ラウンド異種格闘技を行った2人は後始末を終え、秘蔵のバーボンをあおっていた。
銘柄は「Ardbeg Provenance」


47 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/11(月) 22:28:08.14 ID:JDJ1Pmp2
「あなたの提案……考えてみるわ。」
「あん?」
「痛み分けの話よ。」
「ああ。だが落とし所がどうするかだな。」
「簡単さ……。次に、どちらかがこの街に問題を持ち込んだら。
その時は……容赦なく、撃滅する。」
その瞳は先ほどの情事の時の眼ではなく、もう黒く淀んだ元アフガンツィのモノになっていた……

            ………カラン

「おお怖っ。命がいくつあっても足りやしねえ。」
「ふふ。大丈夫よ、私はあなたには借りがある。
恩は返させてもらうわ。報酬にしてもこっちにしても……」
先ほどまでとは打って変わって、打ち止めになっているソレに熱を上げようとテーブル下からつま先をかけていく……
「おいおい……」
「冗談よ。でも、必要あらばいいわよ。嫌いじゃないから…」
「それはまた光栄だ。」
「それに、あなた。これからの雇い主に対していい顔しておいた方がいいんじゃない?」
「これからの?」
「ええ。私も、頼もうかしら。信用出来る優秀な運び屋。ちょうど探していたのよね・・・・・・」


48 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/11(月) 22:30:17.63 ID:JDJ1Pmp2
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

「今思えば、ロックのあのセリフ。あの時のあなたとそっくりよ。
その時、どう考えて言ったのかは別としてだけど。」
「そんなこと、言ってたのか。あいつ……」
「あまり語りたがらないのね、その件の話は。」
「聞く義務はないからな。雇用主だが余計な詮索はしない主義だ。そのほうがスマートに事が運ぶ。」
―――唯一アイツから聞いた話が「人は自分の人生をサイコロに例える。」その発言者は誰なのかくらいだ。
自分の故郷で何があったのか報告書の内容以外知らん。
が、普通の人間なら逃避の為にトリップするだろう精神的なものだということくらいは解ったぞ。
この街にはそんな人間は腐るほどいる。まあ、先のメイドの件で少しはましになったようだが……

そう考えを巡らせていた時、バラライカから含み笑いが浮かんだ。


49 :A  Memorized Bullet Ballet ◆B6YqIdhOFA :2011/07/11(月) 22:44:17.99 ID:JDJ1Pmp2
少し、小気味いいのよ。いつかあなたを喰うんじゃないかってね。」
「馬鹿言え。俺は、まだまだあんな若造に負けるつもりはねえよ……あいつが2・3手読むようなら、5・6手先まで読める。」
「解らないわよ?私のお墨付きなんだから。」
「質の悪い守護天使様だ。まあ忠告として受け取っておくぜ。」
ポケットからタバコを取り出し火をつける。
「あら。」
すかさず、ダッチから取り上げた
「おい、何すんだ。」
「ここは葉巻以外、禁煙よ。それにまだタバコの時間じゃないから……」
その雰囲気を見てダッチも察しがついた。
「随分、久しぶりだな。」
「そうね、あの日以来かしら?」
この部屋に流れていたのはレコードのジャズ。そして曲名は……

「             」

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思えば、メイドの件は唯一のチャンスだったがまあいい。次に三合会を、ベイブを殺すのに備えよう。向こうにも解らない方法でいくらでも謀にかけていく………
利用できるときはとことん利用する………
向こうが起こした時を………ひたすら…………待つ
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ここは、タイにそびえる悪の街「ロアナプラ」。
そこに潜む火傷顔の女狼が天帝の双龍をいつか喰おうと牙をとがらせている……


                                 Fin



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