クレームドカシス

花火の下で(薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク/土&日)

土田は月村の研究室のドアを叩いた。
この間のこともあって、この部屋の扉は重く感じるが、過ぎてしまったことをいつまでもくよくよと考えるつもりは無かった。
中から抑揚の無い月村の返事があった。
「どなたかな?」
「土田です。」
「どうぞ。」
入ると、月村と向かい合わせに座り本を読む要の姿があった。
「今夜、祭がある。河原で涼みながら花火を見ないか?」
その問いに、要は月村に伺いをたてるような眼差しを向けた。
「せっかくのお誘いです。行ってらっしゃい。」
「先生は?」
「私は、所用があるので遠慮します。お二人で行ってらっしゃい。」
月村は要を促す。
「では、後で下宿に迎えに行く。」


要が下宿の大家さんに、今晩は花火を見に行くから夕食はいらないと告げると、それならこれをと浴衣を出してきた。
息子さんの古着だそうだ。
浴衣に着替えしばらくすると土田がやってきた。
土田も藍染の浴衣姿で、手には風呂敷包みを持っている。
「実家から送られてきたが、こういう時しか着る機会がないから」といって照れている。
着ずにいても実家にわかりはしないのに、律儀に袖を通すところが土田らしい。


河原に付いた頃、夜空には色鮮やかな花火が大輪の花を咲かせていた。
水を渡ってきた冷たい風が心地よく感じられる。
二人は腰を下ろし、花火を見入った。
しばらくして、土田が風呂敷包みを開けた。
「これも、実家から送られてきたのだが、飲まないか?」
「お酒ですか。風流ですね。」
土田は手際よく湯呑み茶碗に注いで手渡した。
要は、それを一口飲んで噎せてしまった。
「おい、大丈夫か?」
土田は慌てて背中を擦る。
「ええ、焼酎ってそのまま飲むものなんですか?僕はいつも薄めていたものですから。」
「もしかして、強かったか?」
「大丈夫です。少しずつ飲みますから。それに、酔いつぶれても、土田さんが介抱してくれるのでしょう?」
要の冗談とも本気ともとれる言葉に、土田は安堵の笑みを返した。
花火が上がる度に要の顔を照らし出しだす。
不意に、要が花火を見つめながら言った。
「綺麗ですね。僕なんかとではなく、どなたか女性を誘って見ればよかったでしょうに。」
「俺は、あんたのものだから、あんたが嫌でなければそれでいい。それに......いや、いい。」
土田は自らの湯飲みを煽った。
「それにの後は何ですか? 途中まで言っておいて止めるだなんて気になるじゃないですか!」
要が意地悪く追求をする。少し酔いが回ってきているらしい。
まっすぐに見つめられてしまったら、言わざるを得ない。
「俺は...あんたと見たかったんだ。」
土田が顔を赤らめて言った。決して酒の為で無く。



「薔薇でほろ酔い」第3弾です。
遂にほろ酔い人物の登場です!
要ちゃんがいなければ、ほろ酔いなのは酸塊の頭のみとなってしまうところでした。(前2作は誰も酔わないし、今回の土田も酔わないし/苦笑)
今回は陵辱編を書きたくなって、がんばってみました。
でも土田のおかげでラブラブ感が漂っております。
そしてこの続きがあるとすれば、18禁でしょう。(笑)


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