「ありがとうございました」
もっと、ずっと前に伝えたかった言葉なのに、随分、遅くなってしまった
「・・・は?」
恐竜やの隅でヒトリで座っていた先生さんは、意味不明という感情をいっぱいに出している
「あの、コレ! 拾ってくれたの、先生さんだって聞いて、ずっとお礼を言わなきゃって思ってたんです!!」
私は、『コレ』と、ダイノハープを手に持つ
実際に拾ってくれたのは、随分前で、出来たならすぐにでもお礼を言いたかったのだけれど、
あの時は、私が鎧の呪いで理性なかったし、
その後は先生さんがデズモゾーリャだなんだでドタバタしてたし・・・
それらも全部片付いて、ようやくお礼が言えた
私が胸の中で、達成感を感じていると、
「・・・あぁ、それか・・・。 別に礼を言われることでもない」
先生さんは興味がない様なそぶりで、フイっと視線を逸らせてしまった
「でも、ありがとうございました。 これは・・・私にとって、とても大切なものなので・・・」
私がダイノハープをそっと握り込むと、先生さんの視線がコチラへ戻ってきた
「大事なら、もう落とさないようにしろよ」
「はい! 絶対に落としません!!」
そういうと、先生さんは酷く優しい顔で微笑んだから、私は思わず尋ねてしまった
「先生さんの大事なものはなんですか?」
「そんな物はない」
笑みが途絶える
「ないんですか?」
「ない」
追随を許さないような即答で、それに圧される様な形で、私は言葉を詰まらせた
「・・・大体、そんなコトを聞いてどうする?」
「先生さんが大事なものを落としたら、私が探しに行こうと思いました」
私の返事に、先生さんは意外そうな顔をした
「・・・悪いが・・・俺には大事なものなんてないからな」
「・・・そう、ですか・・・」
「・・・なんでお前が泣きそうな顔をする?」
気がつけば、確かに私の顔は俯き加減になっていて、勢いよく顔を上げる
「泣いてません!」
「『泣きそうな』と言ったんだ」
「・・・泣いてません」
先生さんの表情が、頭が痛いような、困ったような顔になる
「わかった」
深いため息と共に、先生さんが言った
「え?」
「大事なものがみつかったら、お前に一番に教える。 だから、落とした時はお前が拾って来い」
なんとなく、犬の教育のような言い方だと思ったけど、何故だか嬉しくて
「はいッ、わかりました!!」
私は満面の笑みで答えた
先生さんも、こらえきれなくなったような笑みを零す
夕日の柔らかな、優しい夕暮れだった
実はずっと描いてみたかった、黒白
・・・白黒じゃんッ、白黒じゃんッ!!!
そんな感じで、壬琴追悼祭り週間1作目