じっくりコトコト
・・・大事な人のために・・・?
スペシアル クッキング
〜どっちの料理Show♪編〜
仲代壬琴を新たな仲間に加えた恐竜やは・・・
「あまり俺を怒らせるなよ、女装マニア」
「ケンカを売ってきてるのはどっちだ、ゲームオタク」
・・・今日も今日とて、険悪ムード
「ホンッと、仲悪いわね、あの二人・・・」
座敷の影から壬琴と幸人の様子を見ながら、らんるが言った
「今まで流血ザタにならなかったのが不思議ですよね・・・」
そこから、ひょっこり、凌駕も顔を出す
「仲間なんですから、仲良くできないんでしょうか・・・?」
「「無理だと思います」」
アスカの真摯な願いは、届きそうになさそうだ・・・
「でも確かに、このままじゃマズイですよね」
戦いはまだ終わってはいないのだ
壬琴がせっかく仲間になっても、この調子では敵には勝てない
「じゃあ、思い切って、戦わせてみるのはどう?」
らんるが名案、という調子で言った
「何言ってるんですか、らんるさん!! 仲間同士で戦うなんて・・・ッ!!」
「あぁ、もちろん、殴り合いとか汗臭いのじゃなくて、もっと平和的なので対決させるのよ」
「それじゃあ、-------------------」
凌駕のその案は可決され、早速、次の日に二人の対決は行われることになる・・・
「って言うわけで、
『三条幸人VS仲代壬琴 第1回・料理対決』の開幕ですーッ!!」
「「どう言うわけだ、ソレは?!」」
変な所で気の合う、幸人と壬琴の突っ込みが、凌駕へ突き刺さる
「二人があんまり、仲が悪いんで、俺たちで企画したんですよ」
「平和的に勝負が出来るのはコレだろうって、凌駕さんの提案ですよ」
キッチンのセッティングを終えたらんるが言う
「・・・馬鹿馬鹿しい、何故オレがそんなことしなくてはいけないんだ?」
壬琴は白コートをひるがえして、恐竜やから出て行こうとする
「逃げるのか?」
その背に、幸人が嘲笑うような声をかけた
「・・・何?」
ドアノブにまでかかっていた手を戻して、壬琴を身体ごと振り返る
「ワニにまかせっきりだった所をみると、お前、料理は出来ないんだろう?
まぁ、負ける前に逃げるのも戦略の一つではあるがな」
幸人はいつになく、壬琴に挑戦的である
・・・どうやら、以前、大リーガーのバンズにフルーツポンチカレーを褒められた事が妙な自信に繋がっているのだろうが・・・
「俺に不可能なんて事があると思うのか、凡人め」
「じゃあ、やるんだな」
「あとで吠え面かくなよ」
絶対零度の火花が飛びかう中、かくして、料理対決は始まったのである
らんるとアスカがセッティングしたキッチンには様々な食材も準備されていた
「あの二人に扱わせるのもったいないかと思ったんだけどね。
やるなら、とことんやらなきゃ!」
食材調達係りのらんるは並べられた食材を見て、満足気にいう
「・・・たしかにスゴイな」
幸人が並べられた感嘆の声をあげる
「この食材費は、当然、二人の貯金を使わせてもらいましたから」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、何で俺の口座知ってんだよ、お前ッッ」」
・・・さっきから妙なところで気のあう二人である・・・
「何でって・・・銀行をハッキングして調べただけですけど」
「それ、犯罪じゃないですか!」
「犯罪なんてバレなきゃ犯罪にならないのよぉ〜」
・・・悪だ・・・見紛うことなき悪だ・・・
女は怖い生き物だと、しんみりと思う、恐竜や男性陣であった
それはさておいて、料理は始められたのである
山になっている食材から、幸人は適当な野菜を、壬琴は魚を、とりあえず手にとりまな板へ乗せる
そして壬琴はおもむろにコートの内ポケットに手を入れると、銀色に輝く物を取り出す
「・・・・・・って、待て、お前ッ!!」
幸人は思わず包丁を持った手で突っ込みを入れる
「あぶねぇじゃねえか、チョンマゲッ!!」
頬に当たった包丁の刃先を見て、壬琴も怒鳴る
「危ないのはどっちだッ、デコっぱち!! なんだソレは!?」
「メスに決まってるだろう!! そんなことも知らんのか、下等人種めッ」
「品名を聞いてるんじゃないッ。 何でメスなんて出すんだと聞いてるんだッ!!」
「魚の解体で、メスを使わないで、何を使えと言うんだ?!」
「包丁を使えよ、アホ医者ッ!!」
お互いに刃物を持ったままで、口ゲンカが続いている
今から殺し合いが始まってもおかしくない空気だ
「あの・・・、とりあえず、料理を進めてもらえますか・・・?」
らんるに背中を押されながら、冷や汗ダラダラの凌駕が声をかける
「この世界のお医者様は、いつでもメスを持ち歩くなんて、仕事熱心なんですね!!」
ギスギスした空気の中、トンチンカンな事を言うのは当然、アスカである
・・・そんな危険人物、壬琴とブラックジャックぐらいだと教えてやれる、余裕のある人は現在、居ないワケで・・・
「・・・で、どっちが勝つと思う・・・?」
厨房に異変がないか見張りながら、らんるが言う
「幸人さんの料理の腕はアレですからね・・・」
伝説のフルーツポンチカレーを思い出し、アスカが青い顔をした
「でも仲代先生も、アレですからね・・・」
凌駕がチラリとそちらを見れば、彼の手元はまるで手術台の様になっている
「・・・料理なのか、理科の実験なのかわかんない感じが嫌よね・・・」
「・・・・・・・ところで、私、素朴な疑問があるんですけど」
チョコリとアスカが手を上げる
「え、なんですか?」
「・・・あの、料理対決って事は勝敗を決めるわけですよね」
「当然じゃない。 決着つけなきゃ、意味ないもの」
「・・・って言うことはですよ・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁッ!!」
一足早く、危機を悟った凌駕が悲鳴に近い声を上げる
「え、何、なに?!」
「つまり・・・、
誰かが食べないといけないんですよ・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
☆現在の厨房の様子☆
三条幸人→手元に正体&出所不明の調味料(幸人の私物と思われる)を並べ、吟味中
仲代壬琴→魚に続き、まな板の手術台で鶏の解体を開始
フッと、3人の空気が氷点下まで落ち込む
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
嫌な・・・嫌な、沈黙が、そっと店内に降りる
「・・・これは言いだしっぺの凌駕さんが食べるしかないわ」
「えぇ?! 一番最初に戦わせようって言ったのはらんるちゃんじゃないですか!!」
「あっ、アスカさんなら、一度、幸人さんの料理食べたことあるし、大丈夫じゃない!?」
「無理ですよッ、アレをまた食べるなんてッ!!
ハチに刺されるのだって、1度目より2度目の方が危ないんですよ?!」
「・・・・・・・・・・・逃げちゃいましょうか・・・?」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
凌駕の提案に、3人は顔を見合わせ、同時にコクリと頷く
「「「逃げようッ」」」
そうして、3人揃って、恐竜やから駆け出そうとした瞬間・・・
「料理が完成したのに、どこ行くんだ、主催者?」
玄関にはメスを構えた壬琴が
「安心しろ。 ちゃんと、3人分作ってあるからな」
裏口には針を手にした幸人が
「「食べるよな?」」
口元は綺麗に笑っているが、眼が一切笑っていない
・・・まさか、この二人に逆らえるわけもなく・・・
いっそ殺してくれと思いながら、カウンター席に座る3人であった
3人の目の前に、料理が並べられる
奇しくも、二人が作った料理はなんと、洋菓子で、
幸人はプリン、壬琴はチョコレートケーキだった
互いに見目も綺麗で、匂いもいい
現状としては、むしろ、それが怖い
「・・・・・・・・・・・・・・・・って、仲代センセが解体してた、魚さんは!? 鶏さんは!?」
凌駕が悲鳴に近い声を上げるが
「アレは隠し味だ」
何故、ケーキの隠し味に魚と鳥を使うのか?
幸人は一番初めには野菜を切っていなかったか? っていうか、彼が吟味してた調味料はなんだったのか?
よぉ〜く思い出すと、なんていうか、ファンタジーな色をしていた気がする・・・
誰か教えて欲しい・・・いや、逆に知りたくないカモ・・・
「プリンとは、質素で庶民的で、実に貴様らしいメニューだな」
「チョコレートケーキならコゲもごまかせて、お前にはちょうどイイだろう」
幸人と壬琴の交わす視線は相変わらず、あの極寒の冬が再びやってきそうなほど冷たい
そしてその視線は、そろって、哀れな3人へ突き刺さる
「「食え」」
拒否権無し、逃げ道無し、救世主無し
最早、死を覚悟して食べるしかない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、3人が決意し、フォークを手にした瞬間だった
恐竜や店内に色気のない、サイレンが響く
「次元の扉反応よ!」
らんるが嬉々として叫ぶ
「エヴォリアンめ! お前らの好きにさせません!!」
アスカも満面の笑みで立ち上がる
「地球と、そして俺達の明日のために出撃だーッ!!」
今まで、エヴォリアンの出現がこんなに嬉しかったコトがあっただろうか?
今回はどんな芸術作品かまだわからないが、どんな姿でも神のように見えることだろう
「「って、待てッ、お前らーッ!!!」」
一目散で恐竜やから駆け出した3人を追うように、幸人と壬琴も駆け出す
かくして、二人の料理対決は勝敗付かぬまま、終わりを迎える
・・・しかし、エヴォリアンを倒したあと、恐竜やに帰れば、
ワニが、まだらの湿疹を出して死にかけていたそうである・・・
正味な話、壬琴は料理が出来ないと思う
実はコレ、ヴァレンタイン用で書いてたヤツだったのですが、
もぉ、全ッ然面白くなくて、申し訳ない感じです・・・