未来なんてわからず、
先の事なんてどうでも良かった
他愛ない会話の中で、積み重ねられる約束が、ただ大切だった
遠い約束
雄一と2人で、暇を作って海へ出かけた
バイクで、運転手は俺
「海外の海や空はもっと綺麗なんだろうな〜」
雄一はクツをバイクの横に脱ぎ捨てて、波と遊びながら俺に話し掛けてくる
「写真集とかで見てもさ、やっぱりアメリカとか、近くなら沖縄とかの海とか空って何か違ってさ」
「東京より青くて、透明で、なんというか、自然ってカンジ?」
「ねぇ、聞いてる、海之?」
「あぁ、聞いてるよ」
俺は砂浜に座って、雄一の声を聞く
「行きたいよね〜、海外とは言わないから、せめて本土から出てみたいよ」
「海之はどっかいったことある?」
「・・・俺は、東京から出た事はないよ」
「うわっ、寂しい人生ッッ!!!」
「ほっといてくれ」
軽く拗ねた俺のとなりに雄一が座る
「じゃぁ、こうゆうのどうかな?」
「?」
「俺が有名ピアニストになれたら、そのリサイタルでどっか行く時に海之も一緒に行くの
「それで、空いた時間に2人で観光旅行とか、どう?」
「・・・どう? って、お前・・・」
「どこがいいかなー?」
「箱根の温泉とか、京都、奈良、沖縄、広島、大阪、・・・」
「・・関西ばっかりだ」
「・・・あ、ホントだ」
「海之は?」
「行きたい所ない?」
「俺?」
「どっかない?」
「2人で行きたい所」
「・・・そうだな・・・」
「・・・俺は、北海道かな」
「雪が見たい」
「北海道か!」
「いいね、北海道!!!」
「ウニ、カニ、サケ、イクラ・・・」
「あとは、マリモか」
「行きたいね、北海道」
「なんだ、連れてってくれるんじゃないのか?」
「・・・よっし!」
「じゃぁ、約束しよ!」
「絶対、2人で北海道行こうね」
「うん、行こう」
「じゃぁ、指切り」
「ユビキリ?」
「小学生みたいなコトを・・・」
「約束って言ったら、コレでしょ?」
「・・・うん」
小指を絡めて、2人で約束した
『ずっと一緒にいようね』
子供のような戯れの約束
『ゆーびきりげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます』
でも、僕らは心の底から、それを願い、約束した
『ゆーびきった』
笑顔で交わした約束
それはもう、失われた約束であるけれど
もう、君の暖かさも思い出せないほど、遠い約束
ユビキリ
すごく好き
最近、あんまりしないけど、すごく好き
サインとか、証文とか残らないけど、
なんていうか、貴方と交わした約束っていうコトを、とても感じる気がするから
海之と雄一は『その時』まで、すごく幸せな時間が流れていたと思います