その小さな器を満たすのは

結局

貴方でした


おもいのうつわ

しとしとと、雨が降り続く

静かな部屋の、さして広くもないベッドの上で、二人でゴロゴロ・・・

「ねぇ、みゆー」

仰向けに寝転がっていた雄一は、頭上に座っている海之に話し掛けた

「・・・んー」

背を壁に預けて、読書にふけっている海之は気の無い返事を返す

「・・・彼是、これが1時間28分ぶりの会話だねー」

「・・・んー」

「雨の日って、暇だよねー」

「・・・んー」

「でも、海之と一緒に居られるから好きなんだよねー」

「・・・んー」

「・・・ちゃんと聞いてる?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・聞いてる」

間が開ききった返事は、紙一枚分の信憑性すらもたない

「海之。 真面目な話するから、ちゃんとコッチ向いて」

寝転がったまま、見上げるように逆さまに見える海之へ手を伸ばす

「・・・なんだ」

海之は本を一旦閉じて、雄一を見つめた

「あのね、海之」

「なんだ?」

「好きだよ」

ニコーっと笑って、その言葉を唇が綴る

そんな雄一の顔を、海之は持っていた本で殴り飛ばした

「ぶッ!」

情けない悲鳴が上がる

「・・・何度も言ってて飽きないか?」

海之は微かに染めた表情で、雄一を叩いた本の表紙を払う

「飽きないよー、何万回言ったって足らないぐらいだもん」

殴られた顔を軽くさすりながら、海之の隣りに、身体を起して彼と同じように壁に背を預けて座る

「口に出さなくても、いつもずっと想ってるよ
 海之の眼が好きだなーとか、海之のコイン使ってる時の指先が好きだなーとか、
 っていうか、海之の全部が好きだなーとか・・・」

「・・・」

「何度も反芻していくたびに、そんな好きな人と一緒に居れて幸せだなーって思う
 それで、また何度も好きだなーって想うんだ
 ・・・それで、想うたびに気持ちの中の『器』みたいなモノに何か・・・水みたいなモノが溜まっていって・・・」

「『器』?」

「うん。 そんなに大きくない気がする。 小さい器
 そこにね、俺の想いが溜まって・・・
 ・・・でも、絶対、いっぱいにはならないんだ」

想いは増えていくのに、何故か、その想いが満ちて溢れ出す事はなく・・・

「どれだけ海之の事を想っても、満ち足りなくて・・・
 最初は、その器に穴でも開いてるのかと思った
 でも、違うみたい・・・どれだけ探しても、穴なんて見付からないんだ
 だから、もっと海之の事を想う・・・
 だけど、全然、足りなくて・・・」

胸を掻き毟りたい様な、焦燥感

どれだけ想っても、満ち足りない、君への想い

「こんなに想っても、足りなくて、どうしたら良いのかわからなくなって・・・
 ・・・それで・・・」

雄一は、そこで言葉を切ると

急に、少し乱暴なくらいの腕の強さで

海之を抱き寄せた



「すごく、海之に触れたいと思うんだ」



「----雄一?」

突然の抱擁に戸惑いながらも、海之は抵抗する事など微塵も思わない

「それで、海之を抱きしめるでしょ
 ・・・海之はいつも、こうやって俺を受け入れてくれて・・・
 ・・・そうすると・・・すぐに器が満たされて、溢れるんだ
 今まで1人で想い続けてたのが馬鹿みたいに・・・
 溢れて、止まらなくなる・・・」

笑みを浮かべて、雄一は抱きしめる腕を少しだけ強くする

「それで・・・俺、気づいたんだ・・・
 想ってるだけじゃ、満たされないんだなって・・・
 結局、海之に想ってもらわないと、意味が無いんだなって・・・」

「・・・うん」

「みゆ、あったかねー・・・」

「・・・そうか?」

「好きだよ」

「あぁ」

「もう、メッチャ好き」

「あぁ」

「愛してる」

「・・・そこまで言われると・・・少し、恥ずかしいな・・・」

「俺は『愛してる』以上の言葉が無くて、淋しいぐらいだけど・・・」

「・・・じゃぁ、雄一の想いはどれぐらい?」

「この世に降る、全ての雨と同じぐらい」

「・・・俺も、同じぐらい、お前を想ってるよ・・・」

「・・・うん」

「・・・溢れて、止まらないほど・・・」

「・・・うん」

「・・・溢れた想いは、どうなるんだろうな」

「・・・多分・・・」

「多分?」



「君への優しさに変るんだと思うよ」






・・・雄みゆなのに、なんだか我藤っぽい感じに・・・(落ち込み)

とにかく、ベタベタに甘いのが書きたかったんです
また、雨が降ってるんです
もう、ネタがないカモです

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