そして僕は、また君と出会う


再びの世界

世の中が、七夕と浮れている7月7日のその日

真司は、OREジャーナルから少し離れた噴水のある公園に来ていた

「・・・いい天気だな・・・」

呟いて、空を見上げる

−でも何故、自分は今日、ココに来たのだろう?−

困ったように髪をいじりながら、真司は片手に持った花束を見た


花束は、そんなに大きな物ではない

両手で包める程度の量と大きさで、季節の花がまとめられているだけの質素なものだ


「・・・どうしよう・・・」

いや、正確にいえば、どうしたいのだろう?、と言いたいところだった



自分でも全く意味が分からない

今日も、いつも通り、起きたら会社に出社するつもりだった

でも、朝起きると、真司は意味も分からず叫ぶように泣いてしまっていた

何か・・・何か、大切なものを失ってしまったような・・・大きな喪失感に全身が包まれて・・・

−今日、あの人が死んだんだ−

胸の奥で、『誰か』が涙の答えを出す

感情が納まるのを待って、真司は会社に休みをもらうための電話を入れた



7月7日

過去に、真司の知り合いでこの日に亡くなった人は居ない

思わず実家に電話をしてまで確認したことだから、間違いない

・・・じゃぁ、自分にここまで喪失感を与える、その人はだれなんだろう・・・?

とても大切な・・・大切な、人だったはずなのに・・・

そして、自分は、その人のために花をもって、この公園に来たはずなのに



「意味わかんねぇーッ!!!」

噴水の縁に座っていた真司は、何かが切れてしまったように唐突に叫んだ

「悩み事か?」

不意に声をかけられて、真司は驚いて首を動かす

「さっきから一人で随分、悩んでいるようだな」

その視線の先には、赤いジャケットを纏った青年が居た

「・・・あ、アンタは・・・ いつかの占い師さん・・・?」

思わず指差して、恐る恐る尋ねる

「覚えていてくれたのか・・・光栄だな」

彼は真司の隣りに座って、小さく微笑む

「いや、あの出会いは忘れないよ
 アンタに会ったあの後、本当に散々で・・・」

「俺の占いは当るからな」

「そうそう、ホントに-----」

何かを言いかけて、真司の言葉は詰まる

「・・・あ、すみません! 初対面なのに、こんなに馴れ馴れしく話しちゃって!!」

真司は慌てて謝る

「いや、先に話し掛けたのは俺の方だ
 ・・・それに、初対面でもないしな・・・」

「あぁ、でも・・・あの時だってちょっとしか話さなかったし・・・」

そう言うと、占い師の彼の表情に少し、憂いが混じる

「・・・そう・・・そうだな」

「・・・あ! 名前!! 名前聞いてもいい?」

彼のその表情を払うように、明るい声で言う

「手塚、 手塚海之」

「みゆき・・?」

真司が呟くと、海之は砂の上にその文字を書いた

「海に、之とかいて、みゆき」

「俺は、城戸真司! よろしく!!」

そういうと、満面の笑みで手を差し出す

「よろしく」

海之がそっとその手を握ると、強い力で握り替えされた



「それで、何を悩んでいたんだ?」

「・・・えっと・・・なんて言うかな・・・
 多分、意味不明な話になると思うんだけど・・・」

「いいよ、大丈夫」

海之に優しく促されて、真司は少しずつ話を始めた

「今日、誰かが・・・死んじゃった気がするんだ」

「・・・誰が?」

「・・・わかんない・・・
 でも、すごく大事な人だった気がするんだ
 思い出も何も無いのに・・・でも、気持ちの真ん中がポッカリ空いちゃって・・・」

「その人の弔いに花を・・・?」

「・・・いや、弔い・・・じゃない気がする・・・
 何か、伝えたくて・・・
 俺、その人に何か・・・言わなきゃいけなくて・・・」

その人は、とても静かで、でも凛とした視線がいつも自分を支えてくれた

一緒にいる時も、別れたその後も・・・

・・ずっと、自分を支え、励ましてくれていた・・・

「いっぱい、伝えたい言があったんだ
 でも、何一つ、伝えれなかった・・・
 最期のその瞬間まで・・・俺・・・ッ!!」


沢山、山積みになった想いの一つ一つを、伝える前の別れ

あまりに突然で、信じられないような過程、そして結果

自分の目の前で、自分の腕の中で・・・

彼は--------


「城戸、大丈夫か?」

「---え?」


「---泣いてる---」


そう言われて、真司は自分が泣いている事に気が付いた

「っ、ごめん! すぐ泣き止むから!
 ホントに、ごめ・・・」

そう言っても、涙が止まる気はしなくて・・・

「構わないよ」

その泣き顔を海之が両手でそっと触れた

「無理しなくてもいい
 大丈夫、自然に泣き止むまで一緒に居てやるから」

彼の優しい笑みは、胸の奥の空虚に小さな痛みを響かせる

「てづか・・・」

痛い・・・なんで、こんなにも痛むのだろう・・・

「大丈夫」

繰り返される言葉に、涙が止まらなくなる

気が付くと、真司は海之の細い身体を抱きしめて、泣き叫んだ

それは、思い出の悲しみと、今の想いが入り交じったマーブルカラーの感情で・・・

海之の長い指がそっと頭を撫でる心地よさに安らぎを感じながら、真司は泣きつづけた



「・・・恥ずかし・・・
 人前でこんなに泣いたの初めてだ・・・」

ようやく泣き止んだ真司は顔を赤くして、頭を預けていた海之の肩から離れる

「落ち着いたか?」

「うん・・・ホント・・・」

声を一度切って、続く言葉を選ぶ

「・・・うん・・・本当にありがとう」

絞り出すように綴った言葉は感謝の言葉で

「・・・そっか・・・
 俺、『ありがとう』って言いたかったんだ・・・」

浮かび上がった気泡がはじけるように、その想いの答えが出た

「・・・『彼』に?」

「何度も助けてくれて、人の心配ばっかりしてるような奴だったから・・・
 ・・・謝らなきゃいけないと思ってた・・・
 『いっぱい迷惑かけてゴメン』って、『俺の所為でゴメン』って・・・
 でも、違うんだ
 『ありがとう』って・・・『もう大丈夫だ』って・・・
 笑って・・・伝えたかった・・・」

真司は、力強く立ち上がると、海之にその花束を差し出す

「・・・城戸?」

「受け取ってもらってもイイ?」

真司は柔らかく微笑む

「この花は弔いじゃないんだ
 俺なりの、お礼のカタチ」

「大事な人への花なんだろう?」

「だから、手塚に受け取って欲しい」

「・・・うん」

海之は両手を伸ばして、その花を受け取る



『ありがとう』



花が手から離れる瞬間、真司が太陽のように明るい笑みで、言った





この時が、『再会』であると、彼が気づく事はないだろう

けれども、この手の中の花が枯れぬうちに

空間を越えて、

この花と共に、彼の人の元へ届けば良いと思う

自分が死んでしまったあの世界に居る彼の人へ

そして、彼の人の為に命すら投げ出した自分へ


巡り出した再びの世界で、自分と彼の人は

また、出会うのだと・・・



この幸福の香る花が、届けば良いと思う






最終回設定でした
ライダーのコトを真司は覚えてないけど、海之は覚えてます

別ればかりだった龍騎の世界で、あの最終回の世界だけは『再会』という再びの世界だったと思います

海之も真司も、あの世界ではいっぱい、いっぱい幸せになって欲しいです

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