光源

「あ、眼ェ覚めた?」

イェスパーの何日かぶりに開いた視界には、へら〜っと締まりの無い顔に埋め尽くされていた

「・・・ベル・・・?」

掠れそうな声を必死に絞り出して、その名前を呼ぶ

「おはよ、兄貴ー」

元々締まりのない顔をより崩して、横になったままのイェスパーの腹に、その頭を乗せる

「・・・生きているのか・・・」

ため息のように、イェスパーの口からは言葉が漏れた





死んだ、そう思った

異形の魔女の攻撃になす術も無く、屋根から落下した所で、己の意識は途切れている

その途切れを、イェスパーは死と感じていた





「俺も駄目かと思ったんだけど、なんとか大丈夫みたい」

もうけたね、と腹の上で頭をごろごろと甘えるように転がしながら、ベルドリトは言う

「・・・まだ、全快じゃないから、寝てた方がイイよ」

「・・・あぁ・・・そうだな・・・」

イェスパーは再び眼を閉じる

意識は自然と、夢の中へと落ちていた






夢は、先程あった出来事をリピートする

ギギナとの戦い

味わった事のない昂揚と焦燥

君主への想いと忠誠

魔女との戦い

ジェノンが吹き出した鮮血

己の敗北

そして、死

全てが終ったと思った瞬間-----





  「 死 ん じ ゃ 駄 目 だ 、 兄 貴 ッ!!! 」








闇から、再び意識が浮上する

「・・・・お前が、助けてくれたのか・・・」

自分につられてしまったのか、先程の姿勢のままで静かに寝息を立てるベルドリトの髪に触れる

「・・・馬鹿な弟だ」

冷酷無比と言われたラキ家の者でありながら、自らの命を放り出して他人を救うなんて・・・

父に知られれば、どれほどの罰を受けるか想像も出来ない

「・・・馬鹿だな・・・」

「あんまり、バカバカ言わないでよねー」

ベルドリトは急に眼を開けると、先程までの静かな寝顔が嘘のように、へら〜っと締まりのない笑顔に崩れる

「お前は大丈夫なのか?」

たしか、魔女に左肩を吹き飛ばされて、かなりの出血が在ったはず・・・

「兄貴よりはゼンゼン元気」

相変わらず、腹の上に頭をのせた姿勢で答える

しかし、その顔は血色の良い色ではなく、蝋人形とまでは行かなくとも、健康な人間とはとても言えない

その時、フッと意識をよぎる言葉

 『俺の血、全部あげてもイイからッ!!』

「・・・まさか、本当に・・・?!」

自らの傷を見てから、ベルドリトを問い詰めるように声が出る

「アレ、聞いてた?」

笑みの色が、悪戯がばれた子供の様な色に変る

「血が足りなくて、兄貴が死んじゃいそうだったから、ちょっとだけネ。 感謝してよ?」

腹の上に頭を乗せて擦り寄るのは甘えているからだと思っていたが、
実は単純に貧血で頭が上がらないのだろう

『皆殺しのラキ家』

そう呼ばれる自分たちの一族は殺す事に特化しすぎた為か、通常の人間とは違う、特殊な血を遺伝している

それのお陰で、規格から外れた戦闘力、呪術力を有しているのだが、
その特殊さ故に、他の血族からの輸血はできない

だから・・・

「・・・迷惑をかけたな」

「謝んなくてイイから、お礼を言って」

「・・・あぁ・・・そうだな」

イェスパーは、髪に触れていた手を滑らして、頬へ動かす

「ありがとう」

そう言って微笑むと、ベルドリトは満足そうに、光るような笑みを作った



『されど』で、霧生的に王道だと思っていたのですが、
実はそうでもないらしい、ラキ家・兄×弟
探せど探せど見つからないので、自分で書く事に・・・
次は猊下×ベルの予定
つーか、翼将×ベルでやっていくつもりです(オイオイ)
でも、本命は兄弟で

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