静寂がつくる一瞬の世界
息が詰まるほどに愛しい、世界
今始まる世界について
「I want everything
I need everything
and I sing a song...」
夜の裏路地
最近覚えた歌を、囁くように口ずさむ
そして、その歌に合わせて緩やかなステップを刻む
「'cause tha's my life
'cause tha's my life
you know, that's may wey...」
跳ねて、回って、跳ねて、回って
それだけの、単純な動き
誰も居ない夜の路地に、踊る靴音と自分の歌声だけが響く
「if you leave me alon
sing a song
no music, no life」
それは、まるで世界には自分しか居ないようで、
それは、まるで世界を独り占めにしたようで
それが、なぜか嬉しくて、僕はまた、クルリと回った
時刻が時刻ということもあるけれど、本当に人が居ない
帰路をステップで進みながら、空を見上げる
建物で区切られた、縦長の空で光る星
・・・星に意識があるとしたら、仲間はあんな遠くにいて、
自分は一人きりで、きっと寂しいのだろうなと、ぼんやりと思った
見慣れた道に出る
そして、自分の家近くの街頭の下に人影を見つけて、ステップをやめた
今まで歩いてきたスピードの3倍くらいの速さで、人影に駆け寄る
「兄貴」
声をかけるよりも早く、兄貴は視線を僕によこした
「ただいま、兄貴」
「・・・今、何時だと思ってる?」
低血圧の兄貴の表情は、不機嫌絶頂
「うん、2時半」
午前のね
「遅くなる時は連絡しろと言ってるだろう?」
まるで、子供のような扱い
でも、自分達の仕事が仕事だからさ、
帰りが遅くなると、闇討ちにでもあったかと心配になる
・・・わかってて、連絡しないのは・・・
「うん、ゴメンね」
僕を心配して、こうして家の外で帰りを待っててくれる兄貴の姿が嬉しいからで・・・
ヘラヘラと笑う僕に反省の色を見出せなかった兄貴は、呆れたため息を吐く
多分、兄貴には僕の考えなんてお見通しなんだろう
「・・・全く、仕方ない奴だな、お前は・・・」
だから、そんな不機嫌な顔をしていても、いつもいつもココで待っていてくれる
「ねぇ、兄貴」
呼びかけながら、その背中に飛びつく
不意打ちに少しよろめきながらも、兄貴は僕を背中で受け止める
「重いぞ」
「えー、いつからそんな軟弱になったのさー」
相変わらず、街には静寂に包まれている
今、世界は、僕と兄貴の二人っきりだ
「あーにぃーきー」
「なんだ」
「えへへ、兄貴ー」
「なんだ、ベル」
「んーん、呼んでるだけー」
「・・・なんだ、それは・・・」
呆れ顔と笑い顔、混じった顔で兄貴が首だけ振り返る
「おかえり、ベル」
「うん、ただいま」
そして、僕は兄貴に背負われたまま、アパートへ入っていく
その背中の暖かさを感じながら、
僕は、さっきまで口ずさんでいた歌の続きを思い出していた
「just remenber
I love you so...」
そんな、二人きりの世界の話
song by: Cocco『SING A SONG』
久しぶりの更新なのに、短めで申し訳ないッス!
今回は内容というより、雰囲気重視を意識しつつ、書いてみたんですが・・・
・・・駄目だねー、ホント・・・(激鬱)