車椅子


車輪が軋む 
錆び付いた足音 

看護婦を殺してしまった

夢中で表へ飛び出す
夢のように飛び出す

キリキリと回転する俺の足
声もなく笑いころげる俺は唖

草の上を石のすき間を路上を

俺はキリキリと駆け抜ける


その先まで
その次の先まで


血で錆び付いた車輪
回転する回転する 

看護婦の細い足
車椅子を押す手
同情した笑顔

頭の中を
回転する回転する

看護婦を引き殺した車椅子

キリキリと軋み回転する車椅子

奮えてしまうのは笑っているからではない

キリキリキリキリ

俺は回転し続ける 
泣きわめきながら回転し続ける 

その先まで
その先の次まで


******** 本当は小説で書きたかった話。 大江健三郎の「他人の足」のイメージとこないだはじめて乗った 車椅子のことを思い出して書きました。車椅子、不謹慎ながら 数ある乗り物の中で一番好きです。 05.8.27

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