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「茜と水の惑星 第弐拾伍話」

茜「あ、あなたたちはいったい、何者なの?」
茜は動揺を隠せませんでした。
ドキドキドキ…。
これでは”開けてびっくり玉手箱”です。
男1「なんだ、おまえは? 博士と斉藤はどこにいる?」
すると、一番先頭にいる男が問いただしてきました。 質問に対して質問を返す格好です。
茜「………。」茜は、警戒の眼差しで男たちを観察しました。
男たちは皆一様に、白い長衣とズボンをまとっていました。 これは、中国服(カンフー服)に似ていました。 男たちも茜の格好をジロジロと観察していました。
男2「なんだ、このオンナの格好は?」
男3「うひょー、裸エプロンだぜ。」男たちは口々に言いました。
茜「み、見ないでぇ!」茜は、胸と股間を手で押さえながら叫びました。
男1「そんな馬鹿オンナはほっておけ。それより博士と斉藤を捜すんだ。」
男たちは茜を無視して、コックピット内の捜索を開始しました。 捜索とは言っても、十畳間くらいしかないコックピット内では、一目で茜以外は誰も乗っていないことが判明しました。
男1「おまえ…ひとりか?」男は、茜をにらみつけながら問いただしました。
茜「え、ええ…。」茜は、緊張したおももちで答えました。
男1「なんでひとりなんだ、ええ? 博士と斉藤はどこにいる?」
男は、強い口調で追求してきました。答えないと乱暴されるのは目に見えていました。 茜には、斉藤というのが、あの宇宙船を乗っ取った男のことを指していることくらいはすぐに分かりました。そうすると…この男たちはあの男が言っていた仲間?
茜「2人とも、別の惑星に置いてきたわ。」茜は無難な回答をしました。
あの男…つまり斉藤が死んだことはあえて伏せておきました。
男1「よし、とりあえず2人が乗っていないことは分かった。このオンナをつれて下へ降りるぞ。」
男たちは茜を取り囲んで、発射台のエレベーターに乗り込みました。 エレベーターの窓からは、何十人もの人の姿が見えました。
茜(研究所はこの人たちに乗っ取られてしまったみたいね。これから茜は…どうなってしまうの?)
茜の心の中は、不安で満たされてきました。

エレベーターを降りると、10人ほどの男たちが近づいてきました。 皆一様に例の中国服のような服を着ていましたが、その中のひとりだけは同じ服でも青いものを着ていました。 先ほどの男たちは茜の背後に立っていました。
男1「ほら、ぼっとするな。」男に背中を押されて、茜は一団の前に突き出される格好になりました。
青い服の男「どうやら宇宙船に乗っていたのは、こちらの女性だけのようですね。」
青い服の男は、開口一番言いました。
男1「はっ! 博士も斉藤も乗っておらず、このケツ丸出しオンナが申すには、別の惑星とやらに 置いてきたとのことです。」先ほどの男が説明しました。
茜「ああっ! ちょっとう、見ないでよ。」
茜は今の台詞で、ようやく背後の男たちに剥き出しのお尻を見られていることに気づきました。 そして、慌てて手でお尻を隠しました。 しかし所詮手では、茜の肉付きの良いお尻全体を隠すことなどできませんでした。
青い服の男「これこれ。レディのお尻をジロジロ見るなんて失礼ではないですか。」
男たち「はっ! 失礼しました。」
男たちは謝ると、一団の方へ移動して、茜と向き合う格好になりました。 これで茜はお尻を見られる心配がなくなったので、ひとまず安心しました。
茜「あなたたちは、いったい何者なの?」茜は青い服の男に尋ねました。
茜はこの男の紳士的な言動から、幾分か緊張の糸がほぐれてきました。
青い服の男「おっと失礼。申し遅れました。我々はダミアム教団の者です。」
茜「ダミアム教団?」茜には聞き慣れない名前でした。
青い服の男「私は教団の司教…ま、言ってみれば幹部を務めております槙原と言う者です。 失礼ですけど、あなたのお名前は?」
茜「茜です。」
茜はさっそく槙原を観察しました。
槙原は、背は一団の男たちより頭二個分くらい低い男でした。
顔は冷徹な学者風で、頭はおかっぱ頭。 痩せ形で貧弱そうな体つきをしていました。 特に強烈な印象を与えるのはその教団服で、高位の身分を表す青いものを着用していました。
槙原「宇宙船に乗っておられたと言うことは、茜さんは博士とはお知り合いなんですか?」
男は人好きの良い笑みを浮かべながら、茜に問いかけてきました。
茜「はい。博士とは知り合いです。と言うより茜は、博士の助手を務めております。」
茜は槙原に心を許したのか、余計なことまでしゃべってしまいました。
槙原「ほう…あの水道橋博士の助手を。どおりで。先ほどから知的な女性だと感じておりましたよ。」
槙原は、茜の顔を見つめながら言いました。 槙原は、小さな布きれ一枚でかろうじて隠されている茜の見事な体はあえて見ないようにしていました。
茜は、槙原に対して次第に好感を抱くようになってきました。 先ほどの男たちにされたことなど、すでにどうでも良くなっていました。
茜「ダミアム教団の方々と言われましても、茜はその名前を聞いたことがありません。 どう言った教団なんでしょうか?」茜は当然の疑問をぶつけてみました。
槙原「ま、いわゆる新興宗教団体といったところですかな。我々は、唯一神ダミアム様を信仰しております。」
槙原は、引き続き笑みを浮かべながら答えました。
茜「ダミアム様というのは?」
槙原「ダミアム様というのは、慈悲深い神様です。信者にはありとあらゆる恩恵を授けて下さいます。特に女性に対しては…。」
そこまで言うと、槙原は急に黙り込みました。
茜「特に女性に対してはって…。女性にはどうなさるのですか?」茜は気になりました。
槙原「いや、これは失礼。これ以上は宗教上の秘密なものでして。申し訳ありませんが、信者以外の方にお話しするわけには参りませんもので…。」
茜「ふーん、そうなんですか。ところで、茜はこれからどうなるんでしょうか?」
茜はさりげなく、一番気になっていることを聞いてみました。
ドキドキドキ…。
茜の運命は、この男の胸一つにかかっている。 そう思うと、茜の鼓動は否応なしに高まってきました。
槙原「この施設…研究所は、我がダミアム教団と水道橋博士が協力し合って建てたものなのです。 従って博士不在の間は、こうして私どもが管理しております。 よって、教団に関係のない方にはお引き取り願うことになります。」
茜「つまり茜は、自由になれるってことなんですか?」
槙原「さようで。別に我が教団は、茜さんを拘束しようなどとは考えておりませんよ。」
ひとまず茜はホッとしました。しかし、ひとつ引っかかることがありました。
茜「ところでたしか…斉藤って言う人が宇宙船に忍び込んでいました。あの人はいったい何者なんで しょうか?」
槙原「ああ、彼ですか。彼は我がダミアム教団と敵対する、さる宗教団体から送り込まれた工作員なのです。彼らは、我がダミアム教団と水道橋博士が血のにじむような努力の末開発した宇宙船を、横取りしようと企んでいるのです。」
茜「なるほど…。」茜はいまいち釈然としませんでしたが、槙原の話はしっかりと筋が通っていました。
初めに出会ったダミアム教団の男たちはてっきり斉藤の仲間かと思いましたが、どうやら茜の勘違いだったようです。 血眼になって乱入してきたのも、茜に対する失礼な行動も、茜がその敵対する教団の仲間か何かと 勘違いされたと考えれば、こちらも筋が通ります。
茜は思考をこらした末、槙原の言うことを信用することにしました。 何よりもこの槙原という男は、人を信用させることに長けていました。
茜「ところで、その博士なんですけど…。」
槙原「たしか水道橋博士は、茜さんのお話ですと別の惑星に置いてきたということですよね?」
茜「ええ…まあそうです。」
槙原「どう言ったいきさつがあったかは、だいたい想像がつきます。 あの斉藤と博士がもめている隙に、あなたひとりがその惑星から脱出してきたってところですかな。 私の想像が外れていたら、大変申し訳ないのですが…。」
茜「いえ。だいたい槙原さんのおっしゃる通りです。ただ一つ違うのは、 その…宇宙船が故障してしまって…。」
茜はここで、あの姿なき男のことを思い出しました。
槙原「つまり宇宙船が故障して自動操縦か何かが勝手に作動してしまい、偶然にも茜さんは地球に戻って こられたっていうわけですね?」
茜「そうなんです。もちろん茜では宇宙船なんて操縦できませんから。」
槙原「なるほど。博士は我々の同士。我々が責任を持って救出しますので、どうか茜さんは ご心配などなさらないでください。」
茜「ありがとうございます。でも…その…。」
茜は、彼らだけでは博士を救出に行けないことを知っていました。 茜がいなければ、星間航行システムが使えないからです。 これが使えないと、水の惑星に行くのに、何万年、何十万年、それこそ天文学的な月日がかかってしまいます。
槙原「何か不都合でも?」槙原は、怪訝そうな表情で聞いてきました。
茜「………。」ここで茜は、槙原に星間航行システムの秘密を話して良いものかどうか迷いました。
彼らは悪い敵対教団の人々ではないので、茜を宇宙船の部品として飼うようなまねはしないとは思いますが、 いまいち信用が持てませんでした。
茜「その…茜を、もう一度その惑星へ連れていって欲しいんですけど…。だめでしょうか?」
茜は、訴えかけるような目で槙原を見つめました。
槙原「茜さんのような美しい女性にそんな目で見つめられたら、ノーとは申しにくいのですが…。 先ほどもお話ししましたが、茜さんは我がダミアム教団関係の方ではありませんので、 宇宙船に乗ることができないのはもちろん、今後はこの施設への立ち入りも出来なくなります。」
茜「お言葉ですが、茜は水道橋博士の助手です。茜がいないと博士が困ると思います。」
茜は、ここで引き下がるわけには行きませんでした。
槙原「しかし、そうはおっしゃられても…。」
今までは流ちょうに話していた槙原ですが、難題に直面して黙り込みました。
茜「………。」
茜は、真剣な眼差しで槙原を見つめていました。

槙原「…それならば。茜さんが我がダミアム教団へ入信するって言うのはどうでしょうか?
そうすれば、お互いの問題は一挙に解決すると思うのですが…。」
茜「ダミアム教団に茜が…入信…。」
茜は、自分自身が新興宗教に入信することなど、考えたこともありませんでした。 しかし絶対に博士を見殺しできない以上、茜には選択の余地などありませんでした。
茜「喜んで入信させていただきます。」茜は覚悟を決めました。
槙原「そうですか。こちらとしても、茜さんのような知的で美しい女性に入信していただけると、 うれしい限りですよ。それでは教団について詳しく説明する前に、さっそく教団の服である”聖衣”に 着替えていただきましょうか。」
茜「はい、司教様。」茜は、お世辞を言われて気分が良くなりました。
槙原「ほほぅ。なかなか礼儀正しい女性だ。しかし茜さんは、私のことを司教と呼ぶのはまだ早いですよ。
茜さんはまだ、入信の儀式を済ませておりませんので。」
茜「儀式ですか…。」茜は思わず眉をひそめました。
茜は常日頃から、宗教に対しては嫌悪感を含んだ偏見を持っていたので、儀式と聞くと、どうせろくなことでは ないのだろうと想像してしまいます。
しかもあの惑星での出来事…。
きっと茜は、大勢の見ている前で裸にされて…。
そして…。
その後を想像しようとしたとき、槙原が声をかけてきました。
槙原「どうしました、茜さん? どうも顔色がさえませんよ。 なーに。儀式とは言っても、心配するほどのことではありません。 要は、我が唯一神ダミアム様に対する茜さんの忠誠心を示してもらうだけですから。」
槙原は、茜を安心させるように言いました。
茜「忠誠心?」
槙原「そうです。今あちらの部屋に”モノ”を用意させますので、着替えと同時に儀式を済ませて下さい。」
茜「その…大勢の人が見ている前とかでするんじゃ…。」茜は念を押してみました。
槙原「はははは…。どうやら茜さんは、変なアニメや漫画を見すぎているようですな。
正真正銘のれっきとした宗教法人である我がダミアム教団が、人が見ている前で女性に着替えをさせるなど…。 そんな破廉恥なまねをさせるとでも思っているのですか?」
茜「ご、ごめんなさい。茜ったら悪いコね。」茜は思わず赤面しました。
槙原「なーに。気に病む必要なんてありませんよ。入信される前は、誰しもがそう言った勘違いをなさっている ものなんですよ。これ、西山。」
西山「はっ!」槙原のすぐ脇にいる信者が返事をしました。
槙原「こちらの茜さんに合う聖衣とモノを見つくろって、あちらの部屋に用意しなさい。」
西山「はっ! 直ちに。」
西山はさっそく茜の体を調べ始めました。
西山は茜の体に触れこそはしませんでしたが、周囲を回って体のそれこそ頭のてっぺんからつま先に至るまで、 入念に観察しました。
茜「………。」茜は終始無言で耐えました。
股間をのぞき込まれたときはさすがに焦りましたが、何とか耐え抜くことが出来ました。
西山「少々お待ちになって下さい。」
西山は2人にそう告げると、いそいそと何処へと走り去っていきました。
スタスタスタ…。
茜(聖衣って、あの教団服のことだと思うけど…。)茜はなぜか嫌な予感がしてきました。
茜の嫌な予感は外れたためしがないので、茜は憂鬱な気分になってきました。
槙原「茜さん。西山が戻ってくるまでの間、ただぼーっと待っているのも何ですから、教団について 少しお話をいたしましょうか?」
茜「お願いします。」茜は少し興味がわいてきました。
槙原「我が教団は、総大司教様を筆頭に、2名の大司教、13名の司教、約100名の司祭からなる 幹部信者と、約5千名に及ぶ一般信者からなります。茜さんは、とりあえずは一般信者となります。 ただし、昇進試験に合格するか教団に対して大きな功績があると、幹部信者への昇進があります。」
茜「はい…。」茜は一応返事はしましたが、昇進についてはまるで興味がありませんでした。

西山「ぜぃぜぃぜぃ…。た、た、ただいま準備が完了しました。」
西山はすぐに戻ってきました。走り回ったせいか、激しく息を切らせていました。
槙原「ご苦労でした。」槙原は、尊大に西山の労をねぎらいました。
茜は、なぜ走る必要なんてあるのだろうと疑問に思いました。
槙原「それでは茜さん。どうぞお部屋の中へ。」
茜は勧められるままに、女子更衣室へと入りました。 この部屋は、以前地球から出発する際に、エプロン一枚の格好に着替えた部屋でした。 槙原は、部屋の中へと消えていく茜の生尻を見つめながら、心なしか卑猥な笑みを浮かべていました。

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