「茜と水の惑星 第参拾六話」 |
時刻はまだ午前11時を回ったところでした。
教団本部に行くにはまだ早すぎました。
それに市民プールからでは、教団本部より修行所の方がずっと近くにありました。 茜はどこにも行く当てがないので、とりあえず昼食を済ませた後、修行所へ行ってみることにしました。昨日は散々な目に遭わされましたが、まさか総大主教専属の巫女になった茜に対して、再び何かひどいことをされるようなことはないように思えました。
茜「こんにちは。」修行所へ入ると、茜はいつもの受付嬢に挨拶しました。
受付嬢「あら、茜さん。今日も早いのね。」
受付嬢は、いつも通りの気さくな態度で接してきました。
茜「ええ…ちょっと、ひまだったもんで」
受付嬢「ふーん。若いのにもったいないわよ。もっと遊ばなくちゃ。」
何も知らない受付嬢は、ニコニコしながら言いました。
茜(ぐっすん。遊びたくたって、バイブが邪魔して思うように遊べないの…。)
茜は心の中でつぶやきました。
受付嬢「今日は、外はいちだんと暑いわね。ねえ茜さん。ひまだったらプールにでも行ってくれば?」
茜(もう。さっき行って来たばかりよ…。)茜は憂鬱な気分になってきました。
受付嬢「あっ! でも茜さんって、いつも神具を入れてなくちゃならないから、プールへ行っても 泳げないわね。」
受付嬢は気まずそうに言いました。
茜「泳ごうと思えば泳げます…。あっ!」
茜はついつい余計なことを口走ってしまいました。
受付嬢「えっ? どうやって。」
ひまそうな受付嬢は、好奇に満ちた目で茜を見つめました。
茜「そ、それは…。」
(別に、隠す必要なんてないんじゃない。この人、教団の人間なんだし…。)
茜は、理恵には隠そう隠そうと必死になっていた水着のことを話しました。
茜「…それでね。バイブ…じゃなくて、神具をはめたままでも泳げるわけなの。」
受付嬢「ふーん。茜さんって、そんな水着を着なくちゃならないんだ。大変なのね。」
受付嬢は率直な感想を述べました。
茜「そりゃーもう…。あっ!」
茜は調子に乗って、また余計なことを口走ってしまいました。
受付嬢「ふーん。その水着、茜さんはもう着たことがあるんだ。」
受付嬢の好奇の目が再び輝きだしました。
茜「ま、まあね…。」茜はたじろぎました。
受付嬢「で? どうだったの。」
受付嬢は、目を爛々(らんらん)と輝かせながら突っ込んできました。
茜「別に…どうってことはなかったわ。」茜は視線をそらせて、適当に答えました。
受付嬢「えっ? そうなの。でも”あの神具”を入れたままで、泳げるものなのかなー…。」
受付嬢は頭の中で想像していました。 ちなみに受付嬢のような一般信者でも、月に一回、神具を使ってイかせてもらっているので、 神具がどういうモノなのかは、身をもって知っているはずでした。
茜「その…でも、神具はいつもブルブル動いているわけじゃないから、慣れちゃえば、入れっぱなしでもどうってことはなくなるのよ。」
茜は半分本当のことを言いました。もちろん、水泳のような激しい運動ではそうはいきません。
受付嬢「ふーん。たしかに言われてみればそうかもしれないわね。」
ここで、ようやく受付嬢は納得してくれました。
アンナ「ねえ! あなた。昨日の巫女さんじゃない。」
不意に茜は、背後から声をかけられました。 振り向くとそこには、昨日知り合ったアンナという、小太りで丸顔、鼻ぺちゃで目は小さくて たれ目と言う、救いようのないブス女が立っていました。 昨日は彼女のおせっかいのおかげで、大勢の信者たちの前で、アヌスをさらす死ぬほど恥ずかしい ショーをやらされたのです。 もちろん彼女が悪いのではなく、全てはその場にいた斉藤という悪徳司祭が悪いのでした。 斉藤は、己の出世目当てに茜を利用したのです。
アンナ「昨日の”これが巫女の肛門じゃショー”、すっごくよかったわ。」
アンナは別に悪びれた様子もなく、ぬけぬけと言い放ちました。
受付嬢「えっ? ねえ、なになに…。」
すると、好奇心旺盛な受付嬢が横から口を挟んできました。 実は意外なことに、彼女は昨日のショーのことは知りませんでした。
茜「な、何でもないの。アンナさん、ちょっと…。」
茜はアンナのところへ走り寄りました。
アンナ「どうしたのよ。たしか、えーっと…。
」アンナは、すぐには名前を思い出せませんでした。
茜「茜ですっ。」茜はムッとして名乗りました。
昨日はあれだけのことをやらされたのに、名前も覚えていないなんて…。
アンナ「あ、そうそう。茜さんね。」
茜「そうよっ。」茜は不機嫌さも隠さずに言いました。
アンナ「ねえ。今日も”肛門”を見せてくれるんでしょ?」アンナは遠慮なく言いました。
茜「も、もう見せられないわっ。」茜は、怒りで顔を真っ赤に染めながら答えました。
アンナ「なんで?」茜の気も知らないで、アンナは無神経に突っ込んできました。
茜「お、お尻の穴にも、バイブを入れられちゃったからよっ!」
茜はアンナの無神経さにいい加減頭にきて、ついつい大声を出してしまいました。
アンナ「それって、つまり…。」アンナは、記憶の糸をたどっていました。
受付嬢「…つまり茜さんは、総大主教様専属の巫女さんになったってわけね。」
背後で2人のやりとりを盗み聞きしていた受付嬢が、正解を言いました。 彼女は、鋭いんだか鈍いんだかよく分からない人です。
受付嬢「昨日、教団本部に呼ばれたのはそのためでしょ?」
受付嬢はすました顔でそう言いながら、机上のキーボードをたたきました。
カタカタカタ……ピッ。
受付嬢「出たわ。えーと、なになに…。」
受付嬢は、ディスプレイに表示された茜の最新プロフィールを読み上げました。
受付嬢「名前:茜、身分:総大主教専属 巫女、年齢:16歳、身長:***、体重:##、バスト:○○、ウエスト:××、ヒップ:△△…。」
受付嬢は、勢い余って身分以外の余計なプロフィールまで読み上げてしまいました。
アンナ「ふーん。あなたも大変なんだねぇ。”肛門”にまで神具を入れられちゃってさ。」
アンナは別に驚いた様子もなく、相変わらずふてぶてしい態度で感想を述べました。
茜「ま、まあね…。」茜はアンナの反応に、内心驚きました。
たしか総大主教専属の巫女と言えば、教団内では、上級幹部でさえ手を出せないほどの不可侵な存在であるはずだからです。”すごいじゃない。”とか言って、少しは驚いてくれても良いはずです。
受付嬢「ちょといいかしら? 茜さん。」
見ると、背後で受付嬢がしきりに手招きをしていました。 茜は不審に思いながらも近づきました。
受付嬢「あなた、何も知らないようだから、あたしが教えてあげるわ。」
受付嬢は、茜以外には聞こえないように声を潜めていました。
茜「お願いするわ…。」茜は緊張した面もちで、受付嬢の顔を見つめました。
受付嬢「実を言うと、今の総大主教様って、教団内では全く力がないの。事実上は、元は大主教だった3人の主教たちが教団を支配しているわ。」
受付嬢は、いきなり決定的な一言を発しました。
茜「ええっ!?」茜は驚きました。
受付嬢「だって今の総大主教様って、元は巫女だったんでしょ。いくら先代の総大主教様専属の巫女だったと言っても、所詮巫女は巫女よ。先代の総大主教様は敵こそ多かったけど、判断力・統率力共に抜群で、何よりも人望があったから、不平幹部たちを押さえ込むことができたわ。」
茜「………。」
受付嬢「でも、それは先代までの話。今の総大主教様は、そのひとつでさえ持ち合わせていないわ。 一応は、言うことを聞かない3人の大主教たちを主教に降格させたけど、そこまでが限界だったわ。 彼らは今の総大主教様とは対照的に、教団にとって、なくてはならない能力を備えているからよ。」
茜「もしかして…そのひとりって、槙原主教なんですか?」
茜はふと思い出して聞きました。 かつて槙原は、入信を希望した茜の足下を見て、いきなり巫女の身分におとしいれた狡猾な男でした。茜にとっては全く良い印象のない男でしたが、コリンティア号がある研究所の指揮をとっていることから、相当有能な人材であるように思えました。
受付嬢「茜さんったら、よく知ってるじゃない。槙原主教は科学僧の”僧長”よ。 他にも、武闘僧の僧長 三沢主教、医療僧の僧長 柏田主教と言う人がいるわ。 彼ら3人は主教に降格になったとは言え、役職はそのままだから権力はちっとも衰えていないわ。」
茜「槙原主教って、どんな人なんですか?」
茜は、とりあえず顔見知りの槙原のことが気になりました。
受付嬢「槙原主教は東大卒で、宇宙開発事業団で研究員を務めたこともあるその道のエリートよ。 たしか本当かどうか知らないけど、宇宙船の開発も担当しているって話よ。」
茜「ふーん。」
受付嬢の口振りから、宇宙船のことは、全ての信者が知っているわけではなさそうでした。
受付嬢「あとは、教育僧の僧長 岡田大主教と財務僧の僧長 河野大主教と言う人がいるけど、 彼らには力はないわ。事実上彼らの権限も、さっき言った3人の主教たちが握っているからよ。」
これでようやく茜は、教団の実態を知ることができました。 確かにこのような強力な幹部たちを押さえ込むことは、弥生の細腕では不可能のように思われました。弥生が味方を欲しがったのも無理もありません。 いくら真っ赤なチャイナドレスを着て、大粒の宝石でできたアクセサリーで着飾っていても、 彼女には力はないのです。
受付嬢「それと…茜さん。総大主教様には、あまり深入りしない方がいいと思うわ。 ただ言われたことをやるだけって言うお仕えの仕方がベストよ。」
受付嬢は、より一層声を潜めて言いました。
茜「えっ?」意外な忠告に、茜は驚きました。
受付嬢は真剣な表情をしていました。
受付嬢「万一、彼女の味方をするような素振りを見せたら、絶対に例の主教たちが黙っていないと思うの。きっと茜さんを排除しようと、ひどいことをするに決まってるわ。気を付けた方がいいわよ。」
茜「わ…分かったわ。」茜は、一応そう答えておきました。
もちろん茜には弥生を裏切る気持ちなど全くありませんが、今はそのように答えておいた方が無難なように思われました。 また受付嬢の言葉から、彼女も早苗同様、かつて弥生が罠にはめられて壮絶な責め苦に遭わされたことを知っているようでした。
茜(こうしちゃいられないわ。一刻も早く弥生さんに会って、今後のことを話し合う必要がありそうね。)
ようやく茜は、自分が極めて危険な状況に置かれていることに気づきました。
茜「じゃ、茜はこれからお務めがあるんで…。」
茜は受付嬢に別れを告げて、修行所を飛び出しました。そして電車に乗って、教団本部へ向かいました。
まだ午後3時を回ったくらいなので、お務め開始の時間である5時には早すぎました。 しかし茜は、一刻も早く弥生に会う必要がありました。 例の無愛想な守衛に身分の確認を受けた後、茜は教団本部の建物の中へ入りました。 建物に入ると、さっそく女子更衣室へ入って巫女装束に着替えました。
乳首まで透けて見えるミニキャミソール一枚に、ベルト付き極太バイブ一丁という装束は、 相変わらず卑猥そのものでした。 茜は、なんで雑用をするだけなのにこんな格好をしなくちゃならないんだろうと、初めの頃は思いましたが、今ではよく分かっていました。これが権力のひとつの”形”だからです。 同じ人間を非人間的な奴隷として扱えるのは、権力を持つ者だけの特権でした。 なお、昨日もらった巫女の備品の中には、巫女の仕事内容や戒律、普段待機する場所”巫女の間”の場所などが事細かに書かれた”巫女の心得”と言う冊子が入っていました。
昨晩茜は、一応それを読んできたので、迷わずに巫女の間へ行くことができました。 また、一口に巫女の間と言っても、これは各巫女用に用意された個室の集まりを指していて、総大主教専属の巫女の間は総大主教の間と同じ5階にありました。
もちろん茜は、巫女の間に行くまでの間は、黒いマントを羽織って卑猥な巫女装束を隠していました。 また巫女だからと言って、エレベータを使ってはならないとか言う戒律はないので、茜はエレベータに乗って5階へ行き、茜専用に用意されている個室に入りました。
ちなみに個室に入るとセンサーが反応して、その巫女が在室であることが主人である上級幹部のリモコンや、教団の全ての情報を管理している汎用コンピュータで分かるようになっていました。 もちろん汎用コンピュータから情報を取り出すには、一定以上のアクセス権が必要です。 巫女の所在となると、巫女の所有が許されている主教以上の上級幹部でしか確認できないことに なっていました。
なお、個室は10畳ほどありますが、何もない殺風景な部屋でした。 壁は全て白塗りで、天井から吊り下がっている裸電球の他は、窓すらありませんでした。 冊子には、泊まりになると壁からベットがスライドして出てくると書かれていましたが、もちろん今は出ていません。
巫女は、主人から極太バイブを使った呼び出しを受けるまで、この部屋で待機します。 許可なく、巫女の方から主人の元へ会いに行くことは許されません。
また巫女は、食事や睡眠、洗面、排泄に至るまで、全てこの部屋で済ませなければなりません。 ちなみに排泄をしたくなったら、壁に付いているボタンを押すと、壁から便器がスライドして出てくるようになっていました。洗面台も同様です。
しかし、ちゃんとしたトイレでないだだっ広い部屋の中で汚物の排泄をするなど、茜のような年頃の 女の子には、かなり抵抗感がありました。
しかし人間である以上は、何時間も排泄をがまんすることはできないので、 その時になればするしかありません。
茜は黒いマントを脱いでハンガーに掛けると、部屋の中央で足を抱えて座りました。 茜はこんな殺風景な部屋で、しかも常識では考えられないような卑猥な格好をさせられて座っている…。 そう考えるだけで、茜は感じてきました。
プシュ…。
しかし、だからといってオナニーを始めるわけには行きませんでした。 巫女は戒律により、オナニーを禁止されているからです。 またオナニーだけでなく、主人にバイブでイかせてもらう以外の全ての性行為が禁止されていました。 戒律を破ると、例の過酷な罰が待ち構えています。 今考えれば、健二にディープキスやフェラチオをしたことでさえ、バレれば大変な罰を受けさせられるところでした。 罰の内容は昨日早苗に聞かされたばかりなので、今思うとぞっとしました。
ガチャン…。
しばらくすると、突然、部屋のドアが開け放たれました。 そして、血相を変えた総大主教の弥生が飛び込んできました。 もちろん弥生は、例の真っ赤なミニチャイナドレスに身を包んでいます。
茜「や、弥生さん…。」茜は弥生の突然の来訪に驚きました。
弥生「あ、茜さん。た、大変なことになりました…。」
弥生はかなり緊張している様子でした。どうやら、ただごとではないようです。
茜「弥生さん。い、いったい…どうしちゃったの?」
弥生の緊張は、すぐに茜に伝染しました。
弥生「茜さんの超神具なんだけど…。」弥生は、視線を茜の股間に向けました。
茜「えっ? コレがどうかしたの。」
茜は、股間の極太バイブを指さしながら聞きました。
弥生「電池が切れちゃったみたいなの!」ここで弥生は、決定的な一言を発しました。
茜「ええっ!!」茜は、かつてこれほど驚いたことはありませんでした。
昨晩、弥生の正体を知ったときもかなり驚きましたが、あの時の比ではありませんでした。 茜の頭の中では、”なぜなの?”の一言が永遠と鳴り響いていました。 どうやら弥生は、茜の在室をセンサーで知って、バイブを使って呼びだそうとしたみたいです。 しかし、電池切れの表示が出て異常に気づきました。 茜は、混乱しかけた頭脳を何とか抑えて考えました。
まだ一度も使っていないのに…。しかも昨日充電したばかりなのに…。
茜には、思い当たる節はありませんでした。
弥生「ごめんなさい、茜さん。こうなってしまったら、もう私にはどうすることもできないの…。」
弥生は申し訳なさそうに言いました。
ドカドカドカ…。
すると、続いて教育僧らしい屈強な信者が2人ほど、部屋へ押し入ってきました。