「茜と水の惑星 第四拾参話」 |
茜が壮絶な責め苦に遭っている場所より2階上…つまり1階の受付では。
プー、プー、プー…。電話のブザーが鳴っていました。
プツッ。受付嬢「はい。こちらダミアム教団更生所でございます。」
受付嬢は普段と変わらず、平穏に仕事をこなしていました。 彼女は、先ほど連れてこられた全裸の美少女が、まさかこのすぐ下の地下室で壮絶な責め苦に 遭っているなんて、夢にも思っていませんでした。
受付嬢「はい、かしこまりました。ただ今、河原主教様に替わりますので、もう少々お待ち下さい。」
ピッポッパ。受付嬢は保留ボタンを押して、河原へ内線をかけました。
プー、プー、プー…プツッ。受付嬢「河原主教様でしょうか?」
河原「ん? そうだが。」
受付嬢「槙原主教様からお電話が入っております。」
河原「回してくれ。」
受付嬢「はい、ではお回しします。」
プツッ。槙原「河原か?」
河原「はいっ。か、河原であります。」
槙原が電話に出た途端、河原の全身に緊張の電流が流れました。
槙原「あのオンナは、いまどうなっている?」
河原「ええと…あのオンナと申されますと?」
河原にはどの女のことだか、すぐには分かりませんでした。
更生所には、女性信者などたくさんいるからです。
槙原「茜と言う受刑者のことだ。」槙原は補足しました。
河原「ああー、今日見えられた方ですね。…しっかし、彼女ときたら、服も何も着ないで現れましたので、正直言って驚きましたよ。」
河原は率直な感想を述べました。
槙原「余計なことは言うな。…ところで、例の拘束具はしっかりはめてあるか?」
河原「はい、仰せのままに。護送車から降したところで、すぐにはめさせました。」
槙原「なら、よい。」
河原「…しっかし、あんなか弱い女の子に、あそこまで厳重な拘束具をはめる必要なんてあるんですかねぇ?」
河原は、また余計なことを口走ってしまいました。
槙原「私はおまえの意見を聞いているのではない! 質問にだけ答えろ。」
槙原は少し苛立ったようでした。
河原「こ、これは、た、大変失礼いたしました。」
河原は受話器を持ったまま、受話器の向こうの相手に向かって深々と頭を下げました。
額には汗の粒が浮かんでいます。
槙原「分かればよい。…で、いまオンナはどこにいる?」
槙原は、質問の内容を微妙に変えました。
河原「彼女なら、今頃…地下の”懺悔の間”で懺悔をなさっている頃かと思いますが…。」
茜の刑罰はすべて部下任せにしているので、河原は今現在茜がどうなっているかは把握していませんでした。
槙原「すぐに中止させろ。」ここで槙原は、意外な命令を発しました。
河原「えっ!? ちゅ、中止ですか?」
河原は驚いて、失礼にも聞き返してしまいました。
槙原「聞こえなかったのか? 中止だ。即刻オンナの懺悔を中止させ、例の拘束具で厳重に拘束した上で、研究所へ移送しろ。」
河原「研究所へ移送…。ははっ! かしこまりました。直ちに取りかかります。」
プツッ。そこで、槙原は一方的に電話を切りました。
電話が切れると、河原は一目散にエレベーターへ駆け込みました。 懺悔の間には電話がないので、河原が直接行って刑罰を中止させる他はないからです。 ちなみに茜の刑罰については、河原と刑を執行している3人の教育僧以外の職員に対しては、極秘となっていました。
ところで、よくよく考えれば、槙原には茜の刑罰を中止させる権限などないはずでした。 権限があるとすれば、それは河原の直接の上司であり、教育僧の僧長である岡田だけでした。 しかし、槙原の権力を持ってすれば、後からいくらでも岡田から事後承諾を取れるはずなので、 教育僧であっても槙原の命令に従うことは、いわば”常識”となっていました。
一方、懺悔の間では…。
股間の2穴への、新型バイブの埋め込み作業は完了していました。
茜「はぁはぁはぁ…。」茜は、全身に脂汗をにじませていました。
この新型バイブは、全身がイボだらけなので、穴に入れられただけで性感体を激しく刺激しています。おまけに、穴を今にも引き裂きそうなくらいの超極太なので、激痛が走っていました。 なお3人の男たちは、作業が終了すると、もと来た扉に引き返して行きました。 よって茜は、哀れな姿を四方八方の壁面に張り巡らされた鏡にあらゆる角度から映し出されながら、 ひとり力無く吊されていました。
いまや茜の足もとは、つま先がかろうじて付くくらいの高さまで吊り上げられています。 よって、手首から先へはあっという間に血の気が引いてしまい、すっかり麻痺していました。 また茜は、アソコの毛を剃られた上でベルトのない新型バイブをはめられているので、バイブが突き刺さった股間を隠すものは何もありませんでした。
これは一見すると、全裸の美少女が背伸びのポーズで吊されているように見え、股間に目を移すと、 2つの穴それぞれに超極太バイブが埋め込まれていると言う有様でした。 そして、”刑の執行時間”は刻一刻と近づいてきました。 なお、3人の男たちが出入りしている鏡はマジックミラーになっており、男たちは鏡越しに茜の様子を監視していました。
茜「ご、ゴクリ…。」茜は、見られていることにはもちろん気づいていました。
これから何が始まるのかも…。
そして、男がリモコンのスイッチに手をかけた瞬間…。
カチャカチャ、ガチャン…。ドカドカドカ…。
突然、河原が部屋へ乱入してきました。
河原「刑罰は中止だ! 即刻中止しろ! すぐに彼女を降ろすんだ!」
部屋へ入るなり、河原はわめき散らしました。
「へっ!?」茜は、呆気にとられて河原を見つめました。
ここまで来て中止とは、いったいどういうことなのでしょうか? とりあえず茜は、河原に危機一髪のところを救われた形となりました。 茜は、再び現れた3人の男たちによって床に降ろされて、部屋の外へと出されました。
茜「あ…あのー…。」
部屋の外へ出されると、茜はさっそく事情を聞こうとしました。
ひょっとして、河原が茜の味方に付いたとか…。あるいは弥生の活躍で、茜の無実が晴らされたとか…。
茜は淡い期待を抱きました。
ガチャン…。
しかし茜の期待も空しく、茜は再び例の角材型の拘束具をはめられてしまいました。
河原「これより茜さんの身柄は、我が教団の宇宙工学研究所へ移送されます。」
拘束具をはめ終わると、河原は意外なことを言いました。
茜「えっ!?」何だか様子が変です。
刑罰が中止されて自由になったと思いきや、再び例の厳重な拘束具をはめられた上、今度は宇宙工学研究所…つまりコリンティア号がある研究所へ連れて行かれると言うのです。 また、先ほど埋め込まれた新型バイブは、依然として股間の2穴に埋め込まれたままでした。 刑罰が中止されたのなら、少なくともこの2本のバイブは抜いてくれても良さそうなものです。
茜「あの…どうして茜を研究所へ連れて行くんですか?」
茜は、当然の疑問をぶつけてみました。
河原「上からの指示です。それ以上は何も言えません。」
河原の返答は至極(しごく)官僚的でした。
茜「あの…それならどうしてまた、茜にこんな拘束具をはめるんですか?」
ジャラジャラ…。茜は足首にはめられた鎖を鳴らしながら、尋ねました。
河原「それも上からの指示です。」河原は再び官僚的に答えました。
茜「あの…その、服とかは着せてもらえないんですか?」
茜は、顔を赤らめながら尋ねました。
いくら裸でいることに慣れてきたとは言え、茜は年頃の女の子なのです。 おまけに、拘束具で両手を拘束されていたのでは、恥ずかしい部分を隠すことすらできませんでした。
河原「そう言った指示は受けておりません。それに…茜さんは、もともと服はお持ちになっていませんよ。」
河原は、官僚的な回答しか返しませんでした。
茜「………。」茜は、これ以上追求できませんでした。
回答の最後のところは、理にかなっているからです。 茜は、持っている服は私服に至るまで全て処分されてしまったので、たとえ服を着る権利が回復しても、すぐに服を着ることはできそうもありませんでした。 そもそも茜は、いまだ”服を着る権利”を剥奪されたままのようでした。
時刻はすでに午後9時を回り、外はすっかり暗くなっていました。 茜は、河原に1階の受付のところへ連れて行かれました。
ジャラ…ジャラ…。
歩くたびに鳴るこの鎖の音は、茜の心の中で屈辱的に響いていました。 茜は服を着ることすら許されず、その上、現代の社会では考えられないような角材型の拘束具を はめられているのです。 相変わらず受付嬢は営業スマイルを浮かべていましたが、その視線は自然と茜の股間に注がれていました。茜の股間は、先ほど受付嬢が見たときとは違い、陰毛を剃られてツルツルにされている上、2つの穴それぞれに超極太バイブを埋め込まれているのです。
ジャラ…ジャラ…。
茜は、同性の受付嬢にまでこの屈辱極まりない格好を見られるのは、あまりにも惨めだったので、 顔を下に背けながら受付を通過しようとしていました。
受付嬢「あの…。茜さんは先ほど見えられたばかりなのに、もうお帰りになるんですか?」
受付嬢は、茜が目の前にさしかかると、不意に声をかけてきました。 彼女の視線は、依然として茜の股間に注がれています。 茜は極力、この恥ずかしい股間をさらしたくなかったので、彼女に対しては身体の側面を向けて、 首から上だけ彼女の方へ向けました。
茜「え…ええ、そうみたいなの…。」茜は曖昧に答えました。
受付嬢「ふーん、そうなんですか。せっかくいいお友達になれると思ったのに、残念ですね…。」
そう言うと、受付嬢は営業スマイルではない、気さくな笑みを浮かべました。 彼女は、先ほど茜がどんな目に遭わされたかなどは全く知りませんでした。 そもそも茜の格好を見れば一目で分かりそうなものですが、実はこの受付嬢は根っからのお嬢様育ちなので、茜の身にふりかかった壮絶な責め苦を想像できるような思考回路は持ち合わせていませんでした。
茜「こ…こちらこそ残念です。それじゃ…。」
茜はそこで会話を打ち切ると、逃げるようにして更生所の建物を出ました。
ヒューゥ…。外へ出ると、そこにはさわやかな風が吹き抜けていました。
茜のセミロングの茶髪は、風になぶられて乱れました。 茜は拘束具で両手を拘束されているので、乱れた髪を直すことすらできませんでした。 ぶるる…。また、陰毛を剃られた股間がスースーしています。
ブオーン、キキッ…。
間もなく、茜の目の前にワンボックスのワゴン車が停まりました。
河原「さあ、茜さん。これに乗って下さい。」
ガシャン。河原はワゴン車の後部ハッチを開けました。
茜「はい。…ん、んー、よいしょ…。」
茜は重い角材を背負わされている上、両手が使えないので、うまく乗り込めませんでした。
河原「そら。ちょっと失礼しますよ。」
河原はそう言ってから、茜の身体を支えて乗り込むのを手伝いました。 茜は全裸なので、身体のどの部分を支えるにしても直接肌に触れなければなりませんでした。 河原は紳士的で、一言断ってから茜の太股と腰に触れました。 そして、ようやく茜を荷台に乗せることに成功しました。
河原「ふぅー…。」河原は、額に汗を浮かべながらため息をつきました。
茜「主教様、どうもありがとうございました。」茜は素直にお礼を言いました。
茜は、ひどい目に遭わされているにも関わらず、なぜか河原を憎む気にはなりませんでした。
河原「ははは。茜さんは軽いんで、何のことはなかったですよ。」
河原は照れたように言いました。
河原「それと茜さん。この荷台のガラスは全てマジックミラーになっていますので、外から中が見えることはありません。だから茜さんは心配などなさらずに、安心して研究所の方へ行って下さい。」
河原は、上からの命令に対しては絶対的に忠実な男でしたが、それ以外のことについては紳士的な男でした。 茜はそんな河原に、自然と好感を抱いたようです。
茜「主教様。ありがとうございます。それと…うふ、いろいろとお世話になりました。」
茜は、さわやかな笑みを浮かべました。
河原「それでは、茜さん。お元気で。」
ガッチャン…ブオー。
後部ハッチが閉まると、ワゴン車はすぐに発車しました。
一方、総大主教の間では…。
いまだ、弥生と早苗の膠着状態が続いていました。 弥生は、早苗に木村の肛門へ新型バイブを入れるよう命じていました。 言うまでもなく、木村を拷問するためです。 しかし木村が口を割ると、今回の陰謀の実行犯が誰であるのかもバレてしまいます。 新型バイブの性能から言って、木村が口を割るのは、ほぼ間違え無さそうでした。 よって早苗は、木村の拷問を始めさせるわけにはいきませんでした。 一方、時間がたてばたつほど、弥生の心に早苗に対する不審感が募ってきました。
弥生「これ、早苗。なぜ入れないのか!」
弥生は、高圧的な口調で早苗を詰問しました。
早苗「そ…それはその…。」
まさか自分が実行犯であることがバレてしまうので入れられませんとも言えないので、早苗は 沈黙を続ける他はありませんでした。 なお、弥生の斜め前方の椅子に座っている岡田は、先ほどから早苗を一挙一動に至るまで、 じっと観察していました。
彼の目には、2種類の人間しか映りませんでした。”疑わしい人間”と”疑わしくない人間”です。 先ほどの早苗の弁明は実に見事で、非の打ちようがありませんでした。 しかし今の早苗は、弥生の質問に対してさえ満足に答えられないのです。
岡田「これ、早苗とやら。総大主教様の意に反すと、茜と同じ重罰に課せられることになるが、 それでも良いのか?」
ここで岡田の目が光りました。早苗を”疑わしい人間”と判断したためでしょう。 しかし弥生は、なるべくならこの手の恫喝(どうかつ)は用いたくありませんでした。 弥生は、木村のような陰謀の手先は別として、自分の身近にいる巫女に対しては、常日頃から必要以上に偉ぶらないように努めていました。 弥生はつい2,3週間前までは、彼女たちと何ら変わらない巫女だったからです。 その彼女たちに対して、総大主教として振る舞わなければならないのは、弥生にとってはこの上ない苦痛でした。だから、茜のような心の通える友達を求めたのかもしれません。単に味方としてだけでなく…。
弥生は、岡田が早苗を疑っていることに気づきました。
弥生「………。」そして、弥生も黙り込みました。
もし早苗が犯人とまでいかなくても、この陰謀に何らかの関与をしているとしたら…。
関与する理由としては、弥生に対して憎しみを抱いていると言う他は考えられませんでした。 弥生は、つい最近まで配下の巫女たちと同じ身分であったにもかかわらず、今はご主人様に成り上がってしまったのです。その弥生から受ける仕打ちは、巫女としては当然のものであっても、そこから憎しみが生まれないとは言い切れませんでした。
弥生「早苗よ…。そんなに、この私が憎いのか?」
弥生は、このまだ不確かな考えを思わず口にしてしまいました。
早苗「えっ!?」早苗は、目を大きく見開いて驚きました。
そして、2人はお互いの瞳をじっと見つめ合いました。