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「茜と水の惑星 第六拾九話」

聖便器の舞台から降ろされると、茜は、建物の4階にある理恵の個室へ連れて行かれました。
理恵「ねぇ茜、見て見てぇ! ここが理恵の部屋なのよ!」理恵は得意げに言いました。
自慢するだけあって、かなり豪華な作りの部屋でした。
床一面に鮮やかな模様の絨毯が敷き詰められ、ベットやタンス、机などの家具も、
みな豪華なものばかりでした。また、専用のバスルームやトイレも完備しているようです。
茜「うわー!」茜は、思わず声を上げてしまいました。
理恵「ねえ、スゴイでしょ? うふふ…。」理恵は嬉しそうでした。
茜「ええ、すっごくステキな部屋だわ! 理恵ったら、こんな部屋に住めて…うらやましいわぁ。」
この部屋にいると、理恵に酷い目に遭わされたことを忘れてしまいそうでした。
理恵「うふふ…。ちょっと待っててね。あたし、シャワーを浴びてくるから。暑い中歩き回ったんで、
もう汗でベトベトよぉ。」
茜「よいしょ!」茜は、見るからに座り心地が良さそうなソファーの上に腰を下ろしました。
理恵「ちょっとぅ! 茜は聖巫女なんだから、勝手にソファーに座っちゃダメよ!」
ガシッ! 理恵は、腕をつかんで無理矢理茜をソファーから立たせました。
そして、フローリングになっている入り口付近の床の上に座らせました。
首輪の鎖は、手頃な手すりにつなぎました。
理恵「今日は、”特別に”あたしの部屋に入れてあげたのよ。茜は、自分のおかれた立場ってものを
わきまえて欲しいわ!」理恵は偉そうに言いました。
茜「………。」茜は何も言い返せませんでした。
茜は依然全裸で、後ろ手に手錠を掛けられたままです。
おまけに首には首輪を、両足首には重い鉄球をはめられています。
茜は身体の自由さえ許されない、何とも惨めな立場でした。

理恵「ルンルン…。」理恵は、鼻歌を交えながら教団服を脱ぎ始めました。
脱ぎ終えた教団服は、かごの中へ放り込みました。
茜「あっ!」教団服を脱ぎ終えた理恵を見ると、茜は声を上げました。
なんと、理恵は純白のブラとパンティを身に着けていました。フリルの付いたかわいいデザインの下着です。
理恵「えっ? どうしたの?」理恵は、怪訝そうな面持ちで茜を見つめました。
茜「理恵…じゃなくて理恵様は、何で下着を着けてるの?」
難くせを付けられるのが嫌なので、様付けで言い直しました。
理恵「えっ? 茜ったら何言ってるの?」
茜「たしか…教団では、信者は下着を着けちゃいけないきまりじゃ…。」
ダミアム教団では、身分の上下を問わず下着の着用は禁止されているはずでした。
理恵「あ、そう言うことね。実はあたし、最近入信したばかりなんだけど…。
そういう戒律は無くなっていたわ。何でも、総大主教様が代わったとかで、戒律が変わったみたいなの。」
茜「どう変わったの?」茜は興味津々でした。
と言うより、これから先この教団で生きていく上で、新しい戒律を知っておく必要がありました。
その中に、少しでも茜の立場を良くするものがあるかもしれないからです。
理恵「まずは下着着用の禁止。これは廃止されたわ。次に”巫女制度の改革”。
神具の着用は、お勤めの時間以外は免除されることになったわ。ま、それでも着用したい巫女のために、
ブルマー型とかスクール水着型とか、次々と新型の神具が開発されているんだけど…。」
茜「へぇー…。」茜は感心しました。ずいぶんと進歩的な内容だからです。
理恵「あとは、茜に関わりがある改革ね。これも巫女制度の改革の一つで、巫女の更に下に”聖巫女”が
新設されたの。」
茜「それって、茜のことね。」
理恵「そうよ。ま、分かりやすく言えば、巫女の女の子たちに、自分たちの方がまだマシなのよって、
思わせるために作られた身分なの。聖巫女は、全ての権利を剥奪された存在だからね。」
茜「なるほど…。」茜は納得しました。
たしかに、これほど酷い扱いを受ける身分があれば、巫女たちにとって慰めになるでしょう。
茜は、いわば生贄のような立場におかれているのです。
理恵「ま、それより下の身分は無いんだから、当然定員は一人よ。つまり、聖巫女は茜だけ。」
茜「やっぱり…。」予想していたとは言え、茜は愕然としました。
茜「でも、何で茜なの? 茜以外になり手はなかったの?」これは、茜が一番聞きたいことでした。
理恵「まず巫女には、容姿端正・頭脳明晰・性格良好な女の子じゃないとなれないわ。おまけに歳は、
15〜19歳に限られるわ。これが聖巫女になると、更に”どんな恥辱・苦痛にも耐えられる女の子”と
言う条件が追加されるの。」
茜「なるほど…。」茜は納得しました。確かに、茜は全ての条件を満たしているようでした。
理恵「そ・こ・で、聖巫女の条件を満たした女の子を連れてくれば、司祭に昇進させてもらえると
言われたの。」
茜「つまり…。理恵様は、茜を教団に売ったのね。」茜はトゲのある言い方をしました。
理恵「うふふ…。ま、そういうことになるかしら。あたし、茜のお陰で、こんな豪華な暮らしができるのよ。
おまけに30人もの教育僧をあごでこき使えるし。」
茜「くっ…。」茜は、悔しくて悔しくてしかたがありませんでした。
理恵「おっと、おしゃべりがすぎたわね。シャワーを浴びてこなくちゃ。」
理恵は下着も脱いでかごへ放り込むと、シャワー室へ消えました。
もちろん、わざわざ茜にことわってからシャワーを浴びに行くのは、茜がシャワーを浴びることさえ許されない
身分であることを、暗にバカにしているのです。
茜(なるほど。よーく分かったわ。理恵がどういう女の子かってことが…。)
そう考えると、茜は悲しくなってきました。どんな恥辱・苦痛にも耐えてこられた茜でしたが、
理恵に裏切られた生活だけは、絶対に耐えられそうにありませんでした。
これが槙原相手なら、こんな感情は沸いてこないのですが…。
茜(茜、まだあきらめるのは早いわ! 茜は、どんなことがあっても負けない女の子のはずよ!
こんな生活、冗談じゃないわ! 何が”全ての権利を剥奪された存在”よ!)茜は自らを鼓舞しました。
茜(とりあえず、逃げることが先決じゃない? また捕まっちゃうかもしれないけど…。
あきらめちゃダメよ! 今度は”計画的”にやらなくちゃ。)
そう決めると、茜は首輪の鎖が繋がれている手すりのところへ行きました。
そして、手探りで鎖を外しました。
これは、手動のロックがかかっているだけなので、手探りでも難なく外せました。
茜(急ぐのよ、茜! 理恵がシャワー室から出てくる前に、逃げなくちゃ。)
次に、茜は先程理恵が服を投げ込んだかごのところへ行きました。ズル…ズル…。
もちろん、足首の鉄球を引きずったままです。そして、同じく手探りで服を物色しました。
ゴソゴソ…カチャ。茜「あったわ!」服のポケットに、鍵が入れられていました。
カチャカチャ…。茜は、さっそく手に入れた鍵で手錠を外そうとしました。しかし…。
茜(あーん! 手探りじゃ、鍵穴がどこにあるのか分からないわ。)
いくら首を回しても、鍵穴を直接見ることはできません。
後ろ手に手錠を掛けられている以上、手探りでやるしかないのです。

理恵「ふーん…ふーん…。」シャワー室からは、理恵の鼻歌が聞こえてきます。
茜(急がなくちゃ!)カチャカチャ…。しかし、いくら焦ったところで、鍵は鍵穴にはまりませんでした。
茜(もー!)イライライラ…。茜はいらだってきました。
理恵「ねえ、茜…。」すると突然、シャワー室から理恵の声が聞こえてきました。
茜「な、なにかしら?」怪しまれるとマズイので、とりあえず返事しました。カチャカチャ…。
理恵「聖巫女ってね。すっごく忙しいんだよ。朝4時に起こされて、夜中の2時に寝かされるまで、
ずっと”お勤め”しなくちゃならないの。」
茜「へぇー。そうなの。」茜は適当に相づちを打ちました。カチャカチャ…。
理恵「寝起きが悪い茜には、大変だよねぇ。」
茜「そ、そうね。」カチャカチャ…。
理恵「お勤めって、すっごくハードなのよ。なんせ、一日に3ヶ所から4ヶ所の支部を回らなくちゃ
ならないの。もちろん、電車やバスで…。まあ、電車やバスが通ってないところへは、専用の護送車で
送り迎えしてくれるんだけど…。」
茜「ふーん。そうなんだぁ…。」カチャカチャ…。
理恵「茜ったら、さっきから相づちばかり打って…。あたしに何か聞きたいこととかないの?」
いいかげん、理恵は不審に思ったようです。
茜「そ、そんなことないわ。あ、そうそう、その護送車って、ひょっとしてガラス張りじゃないかな?
荷台に茜を吊しながら走ったりして…。」カチャカチャ…
理恵「茜ったら、よく知ってるわね。その通りよ。あ、そろそろ出ようかしら…。」
茜(やっばー! は、はやく…。)カチャカチャ…。茜は焦りました。
もしこんな中途半端なところで、理恵にバレたら…。
どんな酷い目に遭わされるか、分かったものではありません。
焼き印は確実だとしても、また犬のウンコを食べさせられるかもしれません。
いやそれ以上の、茜の想像も付かないような過酷な罰を与えられるかもしれません。
茜(あぁーん! いいかげんはまってよ!)カチャカチャ…カチ!
すると、ようやく鍵が鍵穴にはまりました。
茜「やったぁ!」思わず茜は声を上げてしまいました。
理恵「茜、どうしたの? 何かあったの?」不審に思った理恵が聞いてきました。
茜「んんーん。な、何でもないわ。」茜は適当にごまかしながら、手錠を外しました。ガチャ…。
茜(よし!)そして、急いで首輪と足枷も外しました。
茜(あとは…。あ、そうそう着る物よ!)
茜は、タンスを開けて服を物色し始めました。ゴソゴソ…。
すると…。

理恵「お・ま・た・せ!」身体にバスタオルを巻き付けた姿で、理恵がシャワー室から出てきました。
茜(し…しまった!)その瞬間、茜は硬直してしまいました。
理恵「あれー? 茜ったら、何してるの?」
理恵の視線は、タンスを開けたまま硬直している茜の背中に注がれました。
もちろん、茜はまだ全裸のままです。
茜(よーし、こうなったら!)バッ! 茜は振り返ると、弾かれた矢のように理恵めがけて飛びかかりました。
ドサ! そして、勢いにまかせて、理恵を押し倒してしまいました。
理恵「な…何するのよ! ちょっと、やめてよ! 誰か来て…。」ブチュ!
茜は、理恵を黙らすために、唇を重ねて口を塞ぎました。
理恵「んんーっ!」バタバタバタ…。理恵は激しく抵抗しました。
二人は抱き合ったまま、床の上を転がりました。ゴロゴロ…。
理恵が身体に巻いていたバスタオルは、もみ合っている間に取れてしまいました。
よって二人は、お互いに全裸で抱き合っていました。
理恵「んんーっ!」理恵は、何とか唇を離して助けを呼ぼうとしました。
茜「んんっ! んんーっ!」チュー! 一方、茜はそうはさせまいと、理恵の唇を激しく吸いました。
端から見れば、濃厚なキスをしている2人にしか見えませんでした。
理恵「ん…ん……。」グッタリ…。まもなく理恵はグッタリしてしまいました。
シャワーから上がったばかりで、女同士の濃厚なキス…。理恵は、すっかりのぼせてしまいました。
茜「ん…?」理恵の異変に気づいた茜は、唇を離しました。
ダラーン…。すると、2人の口の間に糸を引いた唾液が垂れました。
茜「ねえ、理恵。どうしちゃったの?」茜は心配になりました。
理恵「ん…。」理恵は、弱々しく返事しただけでした。
茜(あっ! これってチャンスじゃない!)
茜は跳ね起きると、先程外した手錠と、シャワー室からタオルを2枚ばかり持ってきました。
そして手際よく、タオルで理恵の口と足首を縛り、後ろ手に手錠を掛けてしまいました。ガチャン…。
茜「ふぅー…。これでいいわ。」茜は、理恵を身動きできないよう拘束したのです。
理恵「んっ!? んんーっ!」異変に気づくと、理恵はうめき声を上げました。
そして、拘束を解こうと必死にもがきました。ジタバタ…。
しかし、ただイモ虫のように転がるだけでした。ゴロゴロ…。
茜は、常に拘束される立場にいただけに、どこをどう拘束すれば効果があるか知り尽くしていました。
茜「ごめんね、理恵…。」茜は、申し訳なさそうにあやまりました。
理恵「んんーっ!」一方の理恵は、うめき声を上げるだけでした。
茜「あっ! こんな格好じゃ、理恵風邪引いちゃう。ちょっと、待っててね…。」
茜は、ベットのところへ行って毛布を持ってきました。
そして、全裸で転がされている理恵の上に、優しく掛けました。パサ…。
茜「理恵…。ちょっとの間の辛抱よ。きっとすぐに、誰か助けが来ると思うわ。」
茜は理恵にそう告げると、ようやく脱走の準備に取りかかりました。
まずは服です。改めてタンスを物色しましたが、そこには下着と紫色の教団服が何着か入っているだけでした。
私服はまったく見あたりません。恐らく、1階の更衣室のロッカーにでも入れてあるのでしょう。
あるいは、今日理恵は教団服で本部に来たので、私服は持ってきていないのかもしれません。
茜は、目立たない私服を着たかったのですが…。
しかし、無い以上しかたがないので、とりあえず教団服を着ることにしました。
なお下着については、そもそも他人の下着というのはなかなか着る気にならないものだし、
茜と理恵では体型が大きく違うので、サイズが合いませんでした。
理恵は、茜とは違い、スレンダーな体型をしているのです。
よって、下着は着けずに、紫色の教団服だけを身にまといました。
また、靴については、理恵が履いていたハイヒールを履くことができました。
靴のサイズは、理恵と同じだからです。
茜(あとは…。お金ね。)茜は、教団服のポケットを調べました。
すると、ズボンのポケットに財布が入っていました。
茜「ごめんね、理恵。服とお金はあとで必ず返すから…。少しの間、茜に貸しといてね。」
茜は、一応理恵にことわりました。
理恵「んんーっ!」理恵は、うめき声を上げるだけでした。
茜は、そんな理恵の姿を悲しそうな目で見つめました。
ここへ連れてこられるまで、茜は、理恵に想像を絶するほどの責め苦を味わされました。
しかし、それに比べればささやかとは言え、今度は茜が理恵に責め苦を味わせているのです。
茜は、そのことに深く心を痛めていました。
理恵に酷いことをしてしまった以上、茜は、もう理恵を恨む資格は無いとさえ思えるのです。
茜は、そういう女の子でした。
茜「じゃあね…。」茜はようやく部屋を出ました。バタン…。

廊下へ出るとそこには…。
槙原「どちらへおいでですかな? ”司祭殿”…。」
茜「あっ!?」廊下では、なんと槙原が待ちかまえていました。
もちろん、槙原ひとりだけではありません。
槙原の背後には、屈強な武道僧が5人ほどひかえていました。
槙原は、満面に余裕の笑みを浮かべながら、茜のことを”司祭殿”と呼びました。
もちろんこれは、茜をバカにしてのことなのでしょう。
茜(………。)その瞬間、茜の心は絶望感で満たされました。

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