ジョウトやカントーの北に、未開の地として知られるセミノ地方という土地が広 がっている。ツルバミシティやラシャーニシティ、フタアイシティといった街がある という。そこは広大な土地であり、ジョウトやカントー、はたまたホウエ ンとは違った地方である。 しかし、そのまた北、つまりセミノ地方の最北端・・・は海だが。そこからさらに 北に行くと、随分と海が続く。その海を超えると、その先には別の大陸、というには 小さすぎる、むしろ島、が存在していた。大きさはジョウトの4分の1もないだろ う。 そこはイザクという名の島である。殆どのものは知らないであろう。何故なら、そ こに 行ったとして、旅人を待つものは厳しい寒さなのだから。 少しその土地の気候について述べておくと、年間平均気温は僅かに2℃。一年の多 くは雪に覆われたままの土地である。 そのイザクには人はいないのか?そんなはずはない。外からの人の出入りが無いだ けである。こういうのを原住民族とでもいうのだろうか。また、そこにもポケモンは いる。といっても、寒冷地を好むポケモンがほとんどであるが。 「お兄ちゃん、外に行くよ。今日は少しあったかくなるってよ。」 高い声がした。そう、ラティアスである。彼女は生まれた時からこの地、イザクに いた。 「ちょっと待てよ。手袋したのか?」 「あっ、いっけな~い。」 「ほら。お前の分。それにセーターも。」 お兄ちゃんと呼ばれたポケモン、・・・言うまでも無いがラティオスの声だった。彼 らは所謂ラティ兄妹。しかし、彼らの父母は、すでに亡くなっていた。ある吹雪の 日、彼らを産んだ僅か二日後のことだった。 現在彼らは、この島の・・・人間で言うところの孤児院で育てられていた。無論、 育てるのは人間だ。しかし、何故そのようなことが出来るのか。それは彼らがアルト マーレにいるようなラティ兄妹ではなく、一ポケモンとしてここにいたからなのだ。 「こら!もうちょっと静かに出来ないのかい。」 威厳のある声。ここの園長、ヒロのポケモン、ガルーラの声だ。 ヒロとは?一応説明しておこう。彼女は弟のキヨとここを経営している。経営と いってもそんな大したことはしてはいないが。 「ごめんなさ~い。」 ラティアスが悪びれた様子もなく言う。そして、兄、ラティオスから手袋を受け取 り、セーターを着、すぐさま外へ飛び出していった。 「ねぇ、タマ達を誘って雪合戦やろうよ。」 「え?タマ達か?・・・まぁいいよ。」 ラティオスが言う。 「なぁ。」 ラティオスが言った。 「何?」 「あそこにいるじゃん・・・。」 「あ!」 「行こうか。」 「うん!」 ラティアスとラティオスはその方向へと向かっていった。 「おーい!」 ラティアスが言った。その声に反応したのか、2、3匹のタマザラシがこちらを向 く。 「ね、雪合戦やろうよ。」 ラティアスが誘いかける。 「いいよ。・・・だけどラティアス、本当に好きだね。」 「え?」 「雪合戦だよ。一週間に一回はやらないと気がすまないもんな。」 ラティオスがおどけて言う。 「もう、お兄ちゃんたら。」 「ははは。気にしない気にしない。ほらっ!」 そう言うと、ラティオスは雪の玉を一つ、ラティアスに投げつけた。 「きゃっ!」 そこにいた一同は笑った。 「もう・・・!」 「ごめん。手が滑った・・・。」 「何それ!」 「お、怒るなよ。謝るからさ。」 そうラティオスが言った時だった。ラティオスの顔に、すごく冷たい感触が走った。 「うわっ・・・!」 「し・か・え・し。」 ラティアスは手袋の上から雪を手にこすりつけ、その手でラティオスの顔を覆った。 冷たそうである。いや、相当冷たいだろう。 「このぉ・・・。」 とラティオスが言うと、また顔に雪玉がぶつけられた。 「ぶわっ・・・。」 「ほーら。始まってるよ!」 誰かが言った。 しばらく遊んだだろうか。朝、ラティ兄妹は外に出て、昼まで遊んだような気がし た。日はまだ高い。 「ねぇ、ラティアスは?」 一緒に遊んでいたタマザラシが言った。ラティアスがタマと呼んでいたあのタマザ ラシである。 「え?」 ラティオスは一番にその声に反応した。 「いないのか?」 少し強い口調になってタマザラシに言った。 「見当たらないんだけど・・・。」 と、タマザラシ。 「ちょ、ちょっと探してくれ!」 ラティオスが言った。 一時間くらい経ったろうか。 「ラティオス!」 一緒に探していたマッスグマが叫んだ。 「いたのか?」 「ああ。こっちこっち。」 ラティオスはマッスグマのいる方向へと向かった。 そこには、紛れもなくラティオスの妹であるラティアスが倒れていた。 「おい。ラティアス・・・。」 「大丈夫。死んではないよ。」 マッスグマはそう言ったが、 「あ、当たり前だ!」 とラティオスに怒鳴り返された。 「わ、悪かったよ・・・。」 マッスグマは小さく言った。 「ラティアス・・・。」 「とにかくヒロさんのとこに行ったほうがいいんじゃない?」 タマザラシが言った。 「あ、ああ。そうだな・・・。」 ラティオスが言った。普段の様子からは想像も出来ないような動揺の仕方だった。 それから半日。ラティアスは意識を取り戻した。 「ラティアス・・・。」 ラティオスが言った。 「お兄ちゃん・・・。」 「何があったのか聞かせてくれるか?」 「・・・。」 ラティアスは黙っていた。 「!?」 ラティオスは後ろで誰かが呼んでいるような気がして振り返った。 見ると、マッスグマだった。 「何?」 「さ、さっきはごめん・・・。」 「そんなこと気にしてたのか?」 「まぁね。」 「いいよ、悪気はなかったんだろ?」 マッスグマは頷いた。 「それと・・・。」 「まだ何かあるのか?」 「ああ。」 「何?」 「ラティアスが倒れてたとこなんだけど・・・。」 「・・・。」 「近くに人間の足跡があったんだ。」 「!」 ラティオスは驚愕した。ラティオス達が遊んでいた近くに人の家はなく、人通りすら ないところだったのだ。 「う、嘘だろ?だって・・・。」 「・・・だけど事実だ。」 その夜、イザクのジュンサー達による現場検証が行われたが、何ら手がかりはな かった。 「一体・・・。」 ラティオスが言った。 そして、ラティアスの寝ているベッドへと向かった。 「なぁ・・・何も覚えていないか?」 ラティオスは単刀直入に聞いた。 「・・・うん。」 ラティアスは申し訳なさそうに言った。 「そうか・・・。」 「ごめんね。」 「あ、いや、別に責めてるわけじゃないんだ。」 「本当?」 「ああ、当たり前だろ。」 「良かった・・・。」 「・・・。」 少し沈黙が流れた。 「あ、そうそう、身体には全然異常はないらしいから、そこは心配しなくていい ぞ。」 「そう。ありがと。」 「・・・結局は何も分からなかったのか・・・。」 部屋を出て、ラティオスが独り言を言った。 「まぁ、ラティアスに殆ど危害が及ばなかったのならいいか。」 それから3日。 「ラティアス、身体はもう大丈夫なのか?」 ラティオスが心配そうに聞く。どうやらラティアスは回復したようだ。 「ええ。」 「・・・でお前が倒れてたところに連れて行って欲しいっていうのはどういうことな んだ?」 「別に。ちょっとに気になっただけよ。」 「あっそ。」 「それよりちょっと寒くない?」 「え?」 「私、寒いんだけど・・・。」 「おいおい。今日は例年より随分暖かいって聞いたけど。」 「そう?」 ラティオスがラティアスの身体を見ると、凍えているのが良く分かる。 「・・・中止にするか?」 「・・・。」 「黙ってても・・・。」 そうラティオスが言いかけたときだった。 ラティアスの身体が、ラティオスにもたれかかってきた。 「お、おい・・・。」 ラティオスが言った。 「!」 ラティオスはこれ以上外にいるのは危険だと思った。 「戻ろう・・・。」 ラティオスは、ラティアスを抱き、戻って来た。 それからまた3日。ラティアスの身体の様子を調べるために、ラティアスは検査入 院をした。 「結果は?」 ラティオスがイザクのポケモンセンターのラッキーに聞いた。 「実は・・・。」 ラッキーは深刻そうな顔をした。 ラティアスの容態はかなり危険だということをラティオスは知らされた。ほぼ全て の病気に対する抵抗力を失い、健康ならば何ら問題のない病気にすらかかってしまう というものであった。 「・・・。」 ラティオスは絶句した。 「治る方法は?あるのか?」 ラティオスの問いかけに、ラッキーは首を縦に振った。 「治ることは・・・。」 しかし、ラッキーの答えは決して良い知らせではなかった。しばらく、設備の整っ たセミノ地方のポケモンセンターでの長期の入院が必要だということを知らされた。 セミノ地方ならこのイザクよりは暖かい。いきなりジョウトやカントーでは暑すぎる のか。 どうやら、あの時にラティアスの身に何かがあったということは間違いなさそうであ る。 「僕は・・・僕はついて行けるのか?」 ラッキーは、ラティオスに対し、首を横に振った。 「何故・・・何故だ!」 ラッキーによると、無菌状態による治療、リハビリがラティアスには必要だという ことだった。それに付き添うことは出来ない、と。 「ラティオス・・・。」 マッスグマが言った。どうやらこのやりとりを近くて聞いていたらしい。 「それでも僕はついていけないって言うのか!?」 ラティオスが言う。 「ラティオス・・・。止めろ・・・。」 マッスグマはラティオスに手をかけた。 「!マッスグマ・・・。」 「ラティオス・・・。僕は君がラティアスの事を本当に大切にしてることくらい知っ ている・・・。」 「だ、だったら何故止める?僕はラティアスが・・・。」 「心配なんだろ?」 「当たり前だ。」 「それなら待ってやれよ。ラティアスが治って帰るのをさ。・・・ラティアスは今ま でずっと君がいなきゃ殆ど何もしてこなかった。だから、見守ってやるんだ。セミノ とかいう遠くの地で頑張るラティアスを。」 「・・・マッスグマ・・・。」 次第に、ラティオスの目には涙が溜まり始めていた。 「信じられないのか?」 マッスグマが聞く。 「ラティアスを信じられないのか?」 「ま、まさか・・・。」 「じゃあ問題ないだろ。見送ってやれよ。今日にも出発らしいから。・・・ただし、 笑顔でな。」 「・・・。」 ラティオスは返事が出来なかった・・・。 しばらくして、船が出発するとの話を聞き、ラティオスは外に出た。 「お兄ちゃん・・・。」 硝子を隔てて、ラティオスはラティアスの姿と声を確認した。 「ラティアス・・・。・・・ま、待ってるからな。僕はここで。」 「うん。」 ラティアスの瞳から、涙がこぼれた。ラティオスは必死になって涙を堪えた。 「じゃあね、待っててね!」 「ああ!」 別れは出会いの始まり・・・。ここで使うべき言葉ではないが、ラティオスは待ち 続けた。 どれくらいのときが経ったろうか。実際は1ヶ月と経っていない。しかし、ラティ オスにとってはその時間がまるで永遠のように感じられた。 ラティアスは帰ってきた。そう、前よりも元気になって。 もう二度とこんな思いはしたくない、そう思いながら、ラティオスは帰ってきたラ ティアスを抱きしめた。 「お帰り・・・。」 ラティオスが呟く。 「ただいま、お兄ちゃん。」 まるで、長い間会っていなかったような恋人同士のようだった。 北の、イザクと言う名の地で起こった出来事・・・。この地にある石碑には、こう 書いてあった。 「いざく、其の名は出づ、来から成る也。すなはち、一度去りても復戻りたることを 意味す。」 現代風に言うと・・・ 「イザクの名は、出る、来るからなっている。つまり、一度去ってももう一度戻るこ とを意味する。」 誰が作ったのか。それはもしかすると、ラティオス、ラティアスの父母、いや、その 祖先なのかもしれない・・・。 最果てのラティアス 完 ♪あとがき♪ 作者(ベイリーフ♀)「どうも皆様。ベイリーフ♀です。こちらでは初めてになりま すね。小説を投稿しようと思ったのは・・・まぁ理由なんてありません(おい)。こ ちらのページにおいても私の小説を読んでいただけたらなぁ・・・なんて軽い気持ち です。ちなみに、私は別のページで半年ほど前から小説をやってました。この話も、 その別のページに載せて頂いた短編小説なのです。で、そのページの管理人さんにも 連絡をして、こちらに・・・というわけなのですね。はい。一応今は受験勉強中とい う理由のもと小説作りを休止しています。受験終わったら・・・。この先はご想像に お任せ致します。」 |
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