マーヤ5

まったく人間界では大変な目にあったものだ。
学生寮の窓から差し込む朝の光。少し寒くなってきた自室での目覚め。
もうそんな季節か…
今なお火照った身体に心地よい冷たさを感じつつマーヤは夕べのことを思った。
雄介が眠りについているその間に、戻ったばかりの不安定な意識を保ちながら早々に自分の世界へと舞い戻ってきた。
下品なほど大きないびきをかいていたし、気づかれるようなこともなかったであろう。
雄介自身の願いもきちんかなえたことであるし、実に後腐れのない去り方であったな、と感想を抱く。
魔法界に帰還した後、言葉どおり身も心も疲れきっていたマーヤは自室につくなりベッドに倒れこんでしまった。
そのまま朝まで貪るように眠り続けてしまう。
こんなに深い睡眠をしたのは何年ぶりだろう。昨日は本当にいろんなことがあった…本当に。
キュン…
「あ、くっ…!」
全身が切なげに震えてしまう。思わず身体をよじれば雄介との記憶が頭を支配しはじめた。
慌てて頭を振り乱し、淫らな想いを吹き飛ばす。くそっ!まったく……たいしたことをしてくれたものだ!
きつく拳を握り締める。奴の顔など二度と見たくも無い。ふん、まあ、もう会うこともないだろう。
「ふぅ…」
そう思うと少し落ち着いた。
気だるげに首を捻り時計を見やる。小さいころ母からもらった大切な思い出の品だ。午前7時。起きなさい、と母の声を代弁してくる。
もう起きなければならないのか。まさか私が遅刻をするわけにはいかないからな。
生徒に憧れを向けられるような優秀な人間でも、やはり自らの寝床が放つ誘惑から逃れるのは難儀である。
1、2の、3…
心で合図を叫んで一気に巣穴から飛び出した。先ほどまでは心地よかったが今はちょっと寒い。
足の裏の冷たさから逃れるようにすかさずクローゼットの前に移動する。
(……?)
学園では普段から正装を義務付けられている。そのため予備もかねて何着か制服をしまっているのだが…一着足りないようだ。
しかしこの疑問はすぐに解決する。
「しまったな…」
昨夜あまりに疲労していたせいで人間界にいった正装のまま眠ってしまったようだ。
「う〜〜ん…」
ちょっと服にしわがよってしまっているが……大丈夫だろう。それほど細かいところなど皆も気にするまい。
ぱっぱっと肩の辺りのほこりを手で落とし、そのまま準備を進めてしまう。
鏡の前に立ち、一流の美容師ならば我先にその手に触れようとするであろう、その美しい黒髪にクシを通す。
男であったときなら自分の髪などいちいち気にもしなかった。過酷な修行の毎日においてそのような体裁など意味を成さない。
だが学園に通うようになり、周りの視線をいっせいに浴びる自分が髪型のひとつも整えられないようではだめであろう。
鍛錬の毎日で切るようなこともなかったためすっかり伸びてしまったこの髪をみれば、必死だったあのころを思い出さずにはいられない。
そして今度は女性として、その魅力の象徴として心身をともにしている。
今に至るまでの自分と今を生きる自分を語っているのだ。手入れが面倒くさいといえ、おいそれと切るようなことはしない。
いつものとおりポニーテールを形作る。長髪の人間にはこれが一番邪魔にならないと考えたからだ。
あまりたいそうなことをする気はないが、他人に不快を抱かせない程度のコロンを吹き付ける。
こんな小細工までして…女になったらなったでいろいろと大変だな
さすがに慣れてきたがそんな気持ちはぬぐいきれない。まぁ、外見は女なんだしな。
あとは簡単に終えてしまう。
最後にもう一度鏡の前にたつ。よしっ。これで大丈夫だろう。
む?ちょっと胸の位置がずれているな。ったく、これだけ大きいとよく揺れる。
両の乳房を手に取り位置を補正した。
ぶらじゃあ、だったか。雄介のいった補正機を思い出した。
反射的に彼に胸を弄ばれたイメージがよみがえってしまう。
「ええい!くそっ!」
そんなものなど即座に忘れてしまいたい。最悪の記憶だ。
しかし……今度は頭を振り回しても忘れられなかった…。
なにしろすべての元凶を目の当たりにしているのだ…。その身体に触れるまでしている。ふっくらとした感触…。
昨日はこれを雄介に力いっぱい握り締められて…。めいっぱい舐められて…。乳首も吸われて…。
それで思いっきり感じてしまった自分…。
これはそんな気持ちいい部分なんだ。今手で掴んでるこれは…。
雄介の愛撫…。思い知らされた感覚。
むにゅむにゅ
自然と自分の胸をこねまわしてしまう。
「あ……」
声が出てしまった。よほど気分がノッたときでも自分で愛撫して声なんてでなかったのに
それが今はこんな簡単に刺激を受け入れてしまう。朝から私は何をしているんだ…。
でも、手の動きが止められない。止めたくないのだ。
「あ、ああ……」
なんて気持ちいいんだろう。こんなに柔らかくて、大きくて。どうして今までもっと触ってこなかったんだろう。
ムニュゥゥゥ
「んはぁ…」
夕べと同じような声。自分の声。絞るように揉みしだかれたあの時の…。
服の上からだけど手の動きが直に触られたように感じる…。
私の身体はどうしてしまったというのだろう。昨日までの自分とは明らかに違う。こんなに素直に受け入れてしまうなんて…。
「ああ、気持ちいい…」
言ってしまった。夕べに続いて今日も。しかも自分ひとりの行為で。
「気持ちいい……気持ちいい」
何度も口に出る。とても自然に。想いを声に出す度に自分の身体がたまらなくなる。
乳房が痛い。痛いほどに強く…。それも…たまらない刺激。
「はぅぅ…くふぅ」
胸をいじっていた片手がいつしか下半身へと至り…下着へと吸い込まれる。
なんの躊躇もなく秘部にたどり着いた指先…。しとどに溢れた愛液が絡みついてくる。
たくましい肉を飲み込み、男の味を知ってしまった蜜の巣。情熱的な快楽をもたらしてくる素敵な器官。
そっと人差し指をクレヴァスにあてがった。
(なにをしているんだ、私は…。自分で指なんて…そんなもの入れられるか!)
ズプゥ…
「ん、はっ!」
ゾク…
身体が全くいうことをきいてくれない。股間の内側で感じる一本の指から気持ちいい薬がいっぱいに溢れてくる。
「んん…はぁ……だ、だめ…」
(指一本なんかじゃ…)
女の自分がいかに淫らな要求をしているのか、そんなことにも気づかなかった。
ただ、欲しい。性転換により得たこの素晴らしい器官に指をおもいきり挿入したい。
「さ、三本くらい…」
雄介のはもっと太かっただろうけど、自分でするなら今はそれが限界だ。
ヴァギナに指をあてがい、挿入しやすいよう少し両脚を広げる。息をゆっくりと吐き出しながら…
ググッ…
股間を押し込まれる感触。そして先ほどとは違う圧倒的な侵入。
「ううっ……」
苦しい…。まだこの『股間に侵入される』感覚には慣れられない。
ズズ……
そのまま進めると少し狭いところがあった。もっと素晴らしい感覚を得られるのはこの奥なのだ。おかまいなしに力を入れる。
ズ、ズニュゥゥゥ……
「が、がぐっ!!!!!!」
(ま、まさか…こんなにはやく…!?)
あえぐ以前にその一突きで達してしまった。立っていられずガクンと膝をつき、そのまま背後に倒れこむ。
ジ〜〜〜〜〜〜〜ン……
3本指を深く膣に突き入れたままで、持続する女の快楽を楽しんだ。何も考えられない。
「う、うう…」
続けて今度は入り口付近、尿道の少し後ろを鉤爪状にした指で力いっぱい押し上げる。
ゾワ……
「!!!!!!!!」
二度目の絶頂。声も出ない。呼吸さえも不可能に至る。
股間を掴んで宙に吊り上げられるような感覚。背を弓なりに、秘部を天に突き上げる。
大量にあふれ出た女の汁がポタポタと床にしたたる。
なんといやらしい絵なのだろうか。こんなところを他人に見られたりすれば万事休すである。
グポ…
引き抜いた指で栓が取れたように膣内にたまっていた愛液が溢れ出した。
「あ、ああ……」
意味のない言葉しか出ない。この官能的な余韻を今は楽しんでいたい。
一度男を受け入れただけでこれほど女という自分はかわるものなのか…。
なんと流されやすいのか、このマーヤという人間は。
「き、気持ちよかった…」
だが、不思議と落胆は生じない。そんな気持ちは微塵もなかった…。笑みさえこぼしながら…。

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