5

 抗う間もなく令の口内にセネアの舌が入り込んで来る。
 令にとって人生初めてのキスだったのだが、それはあまりに暴力的な接吻だった。
 セネアの舌は貪るような荒々しさで令の口内を蹂躙し、舌同士を絡み付かせる。
 経験のない令には抵抗することが一切できなかった。されるがままにその行いを許した。
 しばしの長い時間接吻に興じたセネアだったが、ようやく唇を離したかと思うと令の顔を両手で押さえてじっと見入った。
「可愛いわ。令の顔……」
 セネアはうっとりと呟き、そしてまた蹂躙を再開する。
 しかしもう令には逆らおうという意思は僅かにも残っていなかった。
 まるで魔法にでもかけられたかのように頭がぼんやりとし、なすがままにされる。
 なにしろ令にはこれまで自慰以外の性的経験がなかったのだ。
 今目の前で展開されている光景は、そんな令にとってはあまりに強い刺激だった。
 そして随分と長く感じられた時間の後、セネアようやく満足げに顔を上げた。
「はぁ……はぁ……」
 ようやくその接吻から解放され、令は荒い息で呼吸を整える。
 そんな令の仕草を艶のある笑みで見下ろしながら、セネアは自分の服に手をかけた。
「あ……。」
 令は自分の腰の上に座りこんだセネアが一枚、また一枚服を脱いでゆくのを瞬きもせずに見つめていた。魅入られたかのように視線を外にずらす事ができない。
 そしてその下から現れたのは、もう完璧とも言える肢体だった。
 美しい顔から豊満な胸に、細くくびれた腰、流れるようなラインの手足。
 肝心なところが嫌味にならない絶妙な大きさで脹らみ、それでいて要所はきちんと引き締まっている。
 もし美の女神がこの世に存在するなら、それはこんな感じなんじゃないかと令は漠然と思う。
 だが皮肉にも彼女は女神ではなく、それどころか相反する存在だった。
 しかし彼女の正体が何であれ、この肢体を見て思わない者はいないのではなかろうか?
 そう、”抱きたい、犯したい”と。
「あらあら、随分と物欲しそうな目で見るのね。」
 突然セネアに言われ、令ははっと我に返る。
「私を……抱きたい?」
 妖艶な笑みでセネアは令に問いかける。セネアの問いは明らかに令の考えていた事への指摘だった。
 そう、令はセネアの体が少しずつ露わになるたびに自身の男としての感情が脹らむのを感じていた。
 今すぐセネアに襲いかかりたい、自身の男根を彼女の秘部に入れたいと。
 セネアはおそらく令がそんな思いでいる事を知っていながら、確信犯で質問したのだ。
 何故なら今彼女は悪戯を考えている少女のような笑みでこちらを見ているから。
 その意味する事は簡単だ。当然の事だが今の令には決してそれを行う事ができないのだ。
「そう……今の令は女の子ですもの。可愛い可愛い女の子。だから……」
「せ…セネアさん!?」
「だから私に抱かれるの……女としてね!」
 セネアは令の胸に手を伸ばし、その豊かな双球の丘を揉み始める。
 それに合わせるように舌で乳の乳首に愛撫を開始した。
「はひぃッ! セネアさん止め……っつああああぁ! ひぃああああぁ!」
 初めての他人からの性的刺激を受け、令は激しく叫び悶える。
 まだ自慰の余韻が残っている胸を撫でられ揉まれるだけでも耐えがたいのに、舌による愛撫という未知の刺激が令の体に未体験の快楽を送りこんできた。
「令ったら胸だけでこんなに可愛い声出して……やっぱり淫乱なのね。」
「そ…そんな事……なぁ、ひゃうッ! や、やめ…ああああああぁ!」
 自慰の時と同じように令は必死に声を押さえ快楽を否定しようとする。
 しかしセネアの絶妙な愛撫の前にそれは自慰の時以上に無駄な抵抗だった。
 −こ、これじゃ本当に女じゃないか! ぼ、僕は……僕は違う!−
「やあああぁ! あ、あああ――――ッ!」
 令は必死に心で抵抗する。だが体はそんな令の心をあざ笑うかのように甘い声を出す。
 体を動かして愛撫から逃れようとしても、どうしても力が入らない。
 なんとかしないとと思えば思うほど、令の男としての心は追い詰められて行った。
 しかもまだ攻められているのは胸だけだ。つまりこの先は……
 びくんっ!
 次の瞬間令の体に電気が走り腰が大きく跳ねた。
 令の思った正に”その先”、セネアは令の秘部に手を伸ばしたのだ。
 セネアは左手と舌で胸を愛撫しながら、右手で令の秘部をなぞるように刺激する。
 秘部からはぴちゃぴちゃと令自身の愛液と手の触れる卑猥な音が聞えた。
「やっ……だ、駄目! そ、こ…はぁあああああッ!」
 秘部への攻めが追加された途端、令の快楽のカーブが大きく跳ね上がった。
 愛液がとめどなく出て尻の方まで流れているのがわかる。いくら心で否定しても止まらない。
 しかもそれは白くて匂いも強い”本気の証”だった。
 令は自身の体をもって、今自分が女としての喜びを受けている事を宣言したようなものだ。
 −違う! 違ううぅぅ!! 僕はそんなんじゃない! これは違うんだ!−
 もはや何の確証もないただの強がりが、令の唯一の心の拠り所になっていた。
 だが肉体はどんどんその快楽に蝕ばまれてゆく。限界がいつかは訪れる。
 が、突然それが中断された。令の意識はまた静かに引き戻される。
「……?」
 いつのまにか涙の溜まった眼で令はセネアの方を見る。当のセネアは令の上から腰を上げ、再びベットの上に腰を下ろしたところだった。そして……
「……!? せ、セネアさん!」
 セネアは令の両足を手で押さえて開脚させると、顔を令の秘部に近づけた。
 それは、先ほど令の胸を執拗に攻めていた刺激が令の1番敏感な場所に向けられるという事。
 令はある種の恐怖で足を閉じようとしたものの、セネアの両腕でしっかりと止められてしまった。
 そして抵抗できない令を尻目に、セネアの舌がぴちゃりと令のクリトリスに触れる。
「はふッ! ひゃあああああ―――ッ!」
 舌の刺激は予想を遥かに上回る快楽を令の肉体に刻み込んだ。たまらず令は絶叫する。
 指では決して再現する事ができない甘い甘い刺激だった。
 ともかく受身の立場で一方的に攻められるというのが男の心を持つ令にはどうしようもなく恥かしかった。
 しかも今も無理矢理恥かしい姿勢を強要され、秘部を見られ、攻められているのだ。
 さらにそれに抗うこともできずに一方的によがり狂う自分。これ以上ないぐらいの羞恥だった。
 だがその羞恥が快楽のカーブをさらに加速させる事を令は知らなかった。
 ゆっくりと絶頂に向っていたはずのそれは、セネアの舌でのクリトリスへの攻めと令の羞恥で急速に加速する。
「ああああぁッ! イク! もう駄目…止め……て下さああぁぁ! あああーッ!」
「令ったらもうイクのね。いいわよ、遠慮せずにイってしまいなさい!」
「やあああぁあ! そんな、いきなり激しくしな……あッ! ひゃあああッ!」
 それまでやんわりとした刺激を令に与えていたセネアの下が突然激しく令を攻めたてる。
 唯ですら快楽に対する経験のない令には、それに抗う手段はもう何も残されていなかった。
「やあッ!イク! あ……あああああああぁぁぁ―――――ッ!!!」
 自慰の時と同じように頭の中で光が爆発し、全身を駆け巡る快楽に令は絶叫する。
 そして波が引くように静かにそれがおさまってくると、体がドサリとベットに沈み込んだ。
 消え去りそうになる意識を必死に押さえながら、令は肩で呼吸をして息を整える。
「ずいぶんと良かったみたいね。やはり令には淫乱の気もあるのかしら?」
 セネアの言葉に反論する気力もないほど、令は脱力していた。
 自慰で経験済みだったとはいえやはり女の絶頂は令にとって予想を上回るものだったからだ。
 信じられない快楽の余韻に浸りながら、令は漠然とこのまま寝られたら幸せだと思った。しかし……
「じゃあ、前座は終わり。当たり前だけどセックスはここからが本番……令だってわかっているでしょう?」
 セネアの言葉を令はすぐに理解できなかった。ぼんやりとした頭をなんとか彼女の方に向ける。
 −本番って……確かに男と女ならセックスは……でも今は…−
 女同士であれば、それを繰り返す事は可能でもこの先は無いはずだ。そういう道具が無くもないが……。
 疑問をうつろな頭で考える令を余所に、セネアが自らの秘部に手を当て何かを呟く。
 そしてその手をゆっくりと上に上げると、そこには先ほどまで確かに存在しなかったものがあった。
「な……なに…それ…!」
「魔の秘術よ……クリトリスを肥大化し擬似的な男根を作り上げるもの。」
 確かにそれは本来の男のものではなかったが、その形はあきらかに男根を模していた。
 だがそれ以上に、令はそれの意味する所を予感し戦慄する。
「ま、まさか! それで僕を……!?」
 愚問だった。この状況下でそれ以外の意味があろうはずがない。
 咄嗟に見を引こうとしたもののイッたばかりの体では力が入らず、その上セネアにがっちりと腰を掴まれる。
 足の間に体を割り込まれ、令は足を閉じて抵抗する事すらできなくなった。
「いやだ……いやだあぁぁぁ! お願い、それだけは! それだけは止めてえぇ!!」
「嫌よ。言ったでしょう? 貴方は私に抱かれるの。女としてね。」
 セネアは叫び懇願する令の言葉を冷たく否定し、その肉棒を令の秘部の入り口にあてがう。
「大丈夫、痛いのは破瓜の時だけ。貴方には抱え切れないほどの女の喜びを上げるわ。」
「そ……そんなのいらない! やめ…止めて下さい!!」
「一度これを知ればもうそんな気は起きないわ。自慰の絶頂なんて子供騙しだという事を、真の女の喜びというものを教えてあげる……!」

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