32

 男が力を込めて、心の体内にイチモツが侵入しかかった刹那――
 凄まじい風が、心の目の前を薙いでいった。
 まるでフルスイングで振るわれたバットのような……否、それ以上の力を宿した何か。
 ちょうど、覆いかぶさっていた男の頭があった辺りを、それは通り過ぎた。
「……?」
 心は周りを見まわした。あの男が転がっている。
 目を見開いて笑顔を張り付かせたまま、ピクリとも動かない。
「――虫けらが」
 冷たい声。
 心は慌てて、声のほうを見る。
 影が立っている。スラリと背の高い影。
(……清十郎? ……違う…だれ?)
 清十郎ほどには、影の背丈は高くない。それに清十郎より、ずっとずっと髪が長い。
 ゆっくりと、影が近寄ってくる。
 まだ若い青年。いや、少年だ。体格こそ立派だが、おそらく今の心と同年代だろう。
 優しげな温かい眼差しで、心を見つめている。
「良かった。間に合った……久しぶりだね、心」
「……?」
(だれ? だあれ?)
 どうやらこの少年は、女の子の『心』を知っているようだ。しかし、心には誰だか分からない。
 まるで女性のように整った繊細な顔立ち、切れ長の目に黒い瞳、長い黒髪を無造作に垂らしている。
 全く違う別人なのだが、どことなく、男性だった頃の心に似ているような感じもする。
「!!――これは、あの男に?」
 そっと心の頬に触れて、顔中が精液まみれなのに気付き、少年は確認してくる。
 こくり、と心はうなずいた。
「そうか……ごめん、助けるのが遅れて、ごめんね」
 手に持っていた大きなコンビニ袋をおくと、少年は心を抱き締めた。
 壊れ物をあつかうように、そっとやさしく……
「少しだけ、待ってて」
 心を離すと、倒れたままでいる男に歩み寄っていった。
「天国……そんなに行きたいなら、一人で行くがいい」
 少年の目付きが、違う。
 先ほど心を見つめていたときと、別人だ。氷のように凍てついた、冷たい、感情のない瞳。
 少年は男の手を取り、引っ張りあげる。男の頭を、少しだけ宙に浮かせる。
 気分の悪くなるような鈍い音が響いた。
 見事な足刀で、少年は男の頭を蹴った。本当に、何気なく。
 軽く浮かされていた頭は、そのまま地面に激突し――潰れた。
 テコの原理を応用した、試し割りのトリック。
 人間の身体は意外なほど丈夫だが、同時に意外なほど脆い。
 頭蓋骨は、体重30kgくらいの子供が30cmほどのところから飛んで踏むだけで、あっさり砕ける。
 ほぼ間違いなく、男は即死だろう。そうでなかったとしても、このまま放っておけば死ぬ。
 くずかごにゴミを放るように、少年は男を投げ捨てる。
 真っ赤な血が、地面に広がってゆく。

「…あ…」
 心は声がでない。
 こんなにもあっさりと人間を壊すとは……
 少年は間違いなく、最初からあの中年を殺すつもりで実行したのだ。
 ふたたび少年の瞳は、心へと向けられる。あたたかい、優しい眼差しに戻っている。
 その眼差しで、少年に感じた恐怖が薄れていき、何故だか、とても安心しはじめてしまう。
 音もなく、彼は心のもとに歩み寄ってくる。
「いま、綺麗にしてあげるよ」
 そう言われて、ようやく心は今の自分の姿に思い至る。
 手足が萎えてろくに自由が利かないために、すでに自力で起き上がることもできない。
 それでも必死に、両腕で胸を抱えるようにし、太ももを閉じ合わせて『お花』を隠そうとする。
 心の様子を、少年は微笑んで見つめている。
 さきほどのコンビニ袋を探る。中から現れたのは、タオルとペットボトルのミネラルウォーター。
 真新しいタオルを水で湿らせながら、少年はいう。
「きっと必要だと思ってね。でも、このせいで助けるのが遅れてしまった。ごめん」
 わざわざ駅前のコンビニで、タオルと水を買ってきたということらしい。用意のいいことだ。
 濡れタオルを使い、精液で汚された心の顔を、そっとていねいに拭き取ってゆく。
「綺麗になったね……」
「…ん…」
 顔中の汚れをすっかり拭き取ったところで、少年は唇を重ねてくる。
 優しく、いたわるような口付け。
(!……どうして? 男に、キスされてるのに……いやじゃ、ないよ……あれぇ?)
 唇が離れるころには、もうすっかり心は安心しきっている。
「…だあれ? きみは、だあれ?」
 とろんとした瞳で見上げながら、心は少年に訊ねる。
 少年の表情が曇る。瞳に寂しげな色を滲ませ、心をきつく抱き締めると、耳元でささやく。
「ほんとう、だったんだね……君が、記憶を失くしたって」
「?……」
(記憶? 失くした?)
 心には何の事だかさっぱり分からない。
「いいんだ、君が無事でいてくれたから、もういい――会いたかった。この二ヶ月のあいだ、ずっと」
(……二ヶ月?)
 ちょうど女の子の『心』が高校をやめて、入院していたことになっている期間。
「僕もね、つい二週間ほど前に退院したところなんだ。もっとも僕は、病気でも何でもなかった……鉄格子と金網がついた窓から、毎日まいにち、外ばかり見ていたよ……君のことばかり考えていた。退院してすぐに、偶然こんなところで会えるなんて。嬉しいよ」
 よけいに少年のことが分からなくなってゆく。心は怖くなって、彼の腕の中から逃れようとする。
 あっさりと彼は放してくれる。
「僕は、龍鬼(たつき)。龍鬼だよ……何か思い出さないかな?」
 優しげな瞳で、真っ直ぐに見つめてくる。彼には心に対する害意など、欠片もないのが分かる。
「…たつき? タツキ? 分かんない、分かんないよ……」
 心は頭を抱えてしまう。龍鬼は『心』の知り合いなのだから、心には分かる訳が無いのだ。
 しかしいまの心は、そこまで考えが至らない。
「いいんだ、いいんだよ。大丈夫、大丈夫だから……僕は君の味方、君だけの味方だよ」
 ふたたび優しく抱き締めて、龍鬼はささやく。
「ボクの……味方?」
「そうだよ。僕は君の所有物(もの)。心…君を愛してる。愛しているよ」
「ダメ……ダメ。ボクには、環がいるから、ダメ」
「知ってる。全部わかっているよ。だから大丈夫。そのままの君でいてくれれば、それでいい……」
 龍鬼はまたも唇を重ねてくる。
 あらがうことなく、心はそれを受け入れてしまう。
 龍鬼の舌が口内に侵入して、心の舌に絡みつく。心の唾液を飲み下していく。

「さあ…」
 龍鬼は新たなタオルを取り出し、湿らせて、心の血塗れの胸に当てようとする。
 心は恥ずかしがって、胸を抱えて懸命に隠そうとする。
「いや……ダメだよ、触っちゃ、やだぁ……」
「大丈夫。何もしないから、安心して」
 心の頭を、そっと撫でてくる。
(…?…また、また…)
 力が入らない。まるで仔猫のように、心は為されるがままになってしまう。
「…ん…うん……」
 苺のように、耳まで真っ赤にして、いつの間にか心はうなずいてしまっていた。
 冷たいタオルが優しく押し当てられ、乳房のうえを滑ってゆく。
 繊細な心の肌を決して傷めないように、龍鬼は細心の注意をはらっている。
 しかし火照りきった心の身体には、その優しさがかえって酷なのだ。
 こみ上げてくる甘い衝動に、がくがくと全身を震わせながら、やっとの思いで心は耐えている。
「ひああ!! ダメぇええ」
 小さな蕾にタオルが触れた。その瞬間から堰を切ったように、心の瞳から涙がこぼれだす。
 ぽろぽろと止め処なく、涙はこぼれ続ける。
「ごめん。ごめんね……つらいんだね。可哀想な心、僕の心」
 龍鬼は手を止めて、心を抱き締める。
「……ハァ、ハァ…ハァ…ハァ」
 荒い呼吸をつづけながら、心も龍鬼を抱きかえす。
 たったいまその存在を知ったばかりの、この龍鬼という少年に、自分は何かを求めはじめている。
 そのことを自覚しながら、しかしそれが何なのか、心には分からない。
 だから、ただただ必死で、龍鬼にすがりついた。
「…ん、ん」
 抱き締めてしばらくすると、心がもじもじしていることに、龍鬼は気が付いた。
「どうしたの?」
「お、おしりが……おしりが、へん…おかしいよぉ」
「おしり……? 見せてごらん。もしかしたら、あの男が何かしたのかも」
「いやだよ……恥ずかしいもん」
「お願いだよ。心配なんだ。心配でたまらないんだ。何もしないから、ね?」
 真剣な表情で、龍鬼は心にせまる。いやらしさなど、微塵も感じられない。
 黒く澄んだ瞳で、真っ直ぐに見つめてくる。
「見るだけだよ? ちょっとだけだよ?」
「約束するよ」
 心は両手で『お花』を覆って隠している。
 龍鬼は膝裏に手を沿えて、ゆっくりと肢を左右に開き、じっと、心のアヌスに視線を注いでいる。
「そんなに、じろじろ見ないで……恥ずかしいよ」
「ごめんね。でも、でも、心配なんだ」
 龍鬼は少しづつ、顔を近づけてくる。彼の表情は真剣そのものだ。
「う、ふう……う、うあ…」
 彼の吐息がかかって、心はくすぐったい。
「どうなの? おかしい?」
「よく、分からないけど……多分、大丈夫かな。少し、充血してるね」
「ねえねえ、もういい?」
「ちょっとだけ、待ってくれるかな? ……触るよ?」
「え? ひぁあ!」
 龍鬼の指先が、ちょんっとアヌスに触れた。
 ざわざわと、心の内側で何かが騒ぎ出す。
「心? どうしたの?」
「んあ、な、なんでもないよ……なんでも、ないよぉ」
「…? もしかして、気持ちいいの?」
 ふうっと、吐息をふきつけてくる。
 心の身体が、びくんっと跳ね上がる。
 龍鬼は円を描くようにくりくりと、指先でアヌスを弄ってくる。
「ああ…う、ううぁ、うあ、うあぁん」
「やっぱり、そうなんだね? 気持ちいいんだね?」
「ダメ、いやだよ……さわっちゃいやぁ! 約束したのにぃ……」
 龍鬼は心を抱き締めてしまう。そのまま耳元で、ささやく。
「心…おしりのムズムズを、止めてあげるよ」
「え?」
 龍鬼は心の腰を抱きかかえると、股間に顔を近づけていく。
「甘い香りがするよ……君の香り、『あの時』と一緒だ、変わらないね。愛してるよ、心」
「なに? 何するの? なにする気だよぅ……」
 まさか彼も? 嫌な予感がする、少しづつ心の顔に『怯え』が、『不安』がうかびあがってくる。
「……やめて、やめろよ! さわるな、さわるなぁあ!!」
 龍鬼は微笑むと、無言で舌をのばし、愛液をすくい取る。
「う、ううん…う、う、うあ」
 すくい取った愛液を、舌先でアヌスに塗りつけてゆく。
 ――ぺちゃ ぺちゃ ぬちゅり ちゅる ちゅる――
 何度もそれをくりかえして、アヌスの周りを愛液まみれにしてしまう。
「ねえ、ねえ……どうして、こんなことするんだよぅ……どうするのぉ?」
 先ほどの男と同じようなことをしている。心の不安は確信へと変わりはじめる。
「…………」
 龍鬼は答えずに、舌をアヌスにねじり込む。
「ひゃあ!? いやぁ、いやぁあん! ダメぇ、ダメだよぉ」
 先ほどの男と違って、龍鬼の舌は少しづつ丁寧に、心のアヌスをほぐしていく。
 体内を味わうように、本当にゆっくりと時間をかける。
 甘いしびれが身体の奥からあふれはじめ、不安を包み込んで和らげていってしまう。
「うう、ううん…あ、あふぅ、うふぁあ……ん、んんぁあ」
 龍鬼の頭を抱え込んで、心は腰をくねらせる。
「おしり、おしりぃ……たつきぃ、おしりがぁ…おしりがぁ」
 とろとろと止め処なく、愛液が滲み出してくる。アヌスの周りまで、自然に垂れてきてしまう。
 ――にゅる にゅる ぷりゅん にゅぷ にゅぷ っくにゅうぅ――
 それをアヌスの内部まで、龍鬼は塗り込んでゆく。
「準備ができたよ。すぐに楽になれるからね」
 龍鬼はズボンのチャックを開けて、イチモツを取り出した。それはどんどん膨れあがってゆく。
 清十郎とほぼ同じくらいの、長大なモノだ。先ほどの中年男の、貧相なモノとは比べ物にならない。
「――!? たつき?」
 心に対して、ずっと微笑を絶やさなかった龍鬼の表情が、初めて歪む。
「ごめん、ごめんね。本当はこんなこと……君を汚したくない。だけど、だけどもう我慢できないんだ。だからせめて、君の処女だけは……守りたい、守るから、だから、だから」
 つらそうで、哀しそうで……何かに必死で耐えようとしながら、耐え切れなくて救いを求めるような、本気で思いつめているのがありありと分かる……それでいて、愛する人と思いを遂げられる喜びを、隠そうとしても隠し切れないのがひしひしと伝わってくる、そんな狂気に近いものが垣間見える表情。
 心を軽々と抱え上げて、アヌスにイチモツを当てる。
「いくよ」
「ひぃ?! あ…ああ、やっ…いや、いやぁあああああああ!!」
 ぬちぬちと音を立てて、イチモツがゆっくりと侵入して行く。
 ――ぬちゅ くにゅん にゅぶ にゅ にゅ――
 先ほどの男のモノとは比べ物にならないほど太く長い、龍鬼のイチモツ。
 周りの皮膚ごと押し込まれるそれを、心のアヌスは驚くほど柔軟に飲み込もうとする。
「痛い? 痛いかい? 大丈夫?」
 慎重に、そして焦らすように、本当にゆっくりと龍鬼は心を下ろしてゆく。
「…違う……痛くない…ひっ、でも違うのぉ! ダメなの……はぅ、おしり、違うよ…へん」
 何だか良く分からない感覚が、下腹部にじんわりと拡がっていく。
 重たく強く、そして鈍い、輪郭のはっきりしないものが、心の内側に生まれて拡がりはじめる。
「う、うぅ? …ううん、うあ、うぁあ……はぁ、う、ひぅ?!」
 アヌスがようやく、亀頭を完全に飲み込んだ。
 ――にゅぶん にゅ じゅりゅ にゅち にゅち ぷりゅ――
 張り出したカリが引っかかる一番きつい部分だが、龍鬼はわざわざそれを引き戻しはじめる。
「痛くは……ないんだね? どんな感じがするの?」
 柔らかい肉襞は太いイチモツに絡み付いて、一緒に引き出されそうになってしまう。
 にゅぷんっと、イチモツが抜き出される。まるでいま、アヌスから生まれ出でてきたかのようだ。
 カリにまとわりついて引き出された部分が、すぐさまもとに戻る。ぬちゅりと愛液が糸をひく。
 ふたたび周りの肉を巻きこんで、イチモツが突き立てられていく。
 ――ぎぢゅ ぎぢゅ ぶりゅん ずにゅ ずにゅう――
「あ……あ、ああ…」
 強くて重たい、良く分からない感覚は、心の体内でどんどん大きくなる。
 しつこく何度も出し入れされる亀頭による刺激が、それの輪郭を少しづつはっきりさせてゆく。
「気持ちいいよ、心のおしりはキツくて、たまらないよ。僕は、とっても気持ちいいよ。心は? 心はどうなのかな?」
 はっきりとは分からない、心にはある種の『熱』と『圧迫感』として感じられた。
 『圧迫感』がどんどん大きくなって、お腹のなかをいっぱいにしてしまう気がする。
「わかん、ない…おしり分かんない……おしり……あったかいよぉ…あったかくなって、溶け、ちゃう……うぅあ! ひふぅ、ぴっ!!」
 『熱』はそんなに熱いというわけでもなく、ぬるくて温かい程度のものに感じられている。
 しかしアヌスを何度も擦りあげられると、擦られた部分が溶けてしまうような気がして、怖い。
 心のおしり―アヌス―は指や舌で軽く触れられるだけで感じてしまうほど敏感であり、心自身も、女の子になってからのこれまでの経験で、そのことを自覚している。
 そんな繊細で柔らかい部分に、自分の手首ほどもあるイチモツをいきなり突き立てられて、恐れを感じないわけがない。
 しかも相手はいちど助けてくれたはずの、いっとき信用しかかった人間―龍鬼―なのだ。
 幼く『戻って』いる心にとって、この仕打ちは裏切り以外のなにものでもない。
 アヌスへの『刺激』があまりに強すぎて、心の脳は処理しきれずにいる。初めて貫かれる『恐怖』と、龍鬼の裏切りに対する『怒り』がそれに相まって、幼く『戻って』いる心は完全に混乱している。
 ――じゅにゅ ずにゅ ずにゅう ずにゅん ぶにゅうう――
 イチモツを腸壁に擦りつけるように、深く一気に貫いて、すぐさま引き戻す。
「ひっ……う、うう…はぅ、ふ……ふぅ」
「どうしたの? 心…心?」
 心の意識はすでに『飛んで』しまっている。
 見開かれた虚ろな瞳には、もう何も映ってはいない。ただぽろぽろと涙を流すだけだ。
 つくりものじみた美貌は表情を失って凍りつき、身体は弛緩するでも硬直するでもなく、文字通り、『まるで人形のように』身じろぎもせず止まっている。
 それでも突き上げられる『刺激』に対して、身体は反応しつづける。
 荒い呼吸が、短い悲鳴のように心の口から発せられるたび、アヌスはきゅうっきゅうっと締まって、柔らかな肉が龍鬼のイチモツを包み込み、絡みつく。
 快感など欠片も感じていないのに、腸壁にイチモツが擦りつけられるたびに愛液があふれだして、アヌスの方へとながれ伝ってイチモツに絡み、二人の接合部分をぐちゃぐちゃにしていく。
 それはもはや身体を壊されないための、単なる『防御反応』にすぎない。

「心、心……う、心、心、心…」
 龍鬼は心のようすがおかしいことに、とうに気がついている。
 けれど心への思いが爆発している彼は、行為をやめることができない。
 なにより、心の身体が与えてくれる圧倒的な快楽が、龍鬼を虜にして放しはしない。
 犯しているはずの龍鬼のほうが、心の身体に翻弄されているのだ。
 ――ぬにゅう ぬにゅう にゅくん にゅぶ にゅぶ――
 無我夢中で、彼は心を貫きつづける。
「心、心……素敵だよ、愛してる」
 イチモツを根本までスッポリと挿入したままで、腰の動きを少しおさえ気味にする。
 身体を窮屈に折り曲げて、龍鬼は心と唇を重ねる。
 差し込まれてきた龍鬼の舌へと、心の舌は絡みついてゆく。まるで、すがるものを求めるように。
 ――ぴちゅ ぴちゃぴちゃ くちゅ ぺちゃ――
 自ら舌を絡みかせて龍鬼を翻弄しながらも、意識のない心は分泌される唾液を飲み下すこともできず、口中から溢れ出させている。
「う、うう……ん、んぁ……あ」
「可愛いね、赤ちゃんみたいだよ」
 心の口の両端から流れ出す唾液を、龍鬼は舌先で舐めとっていく。
 そのまま首筋へと舌を這わせてゆくと、ピクリっと、心が反応した。
「心…心」
 覆いかぶさるように身体を折り曲げて、乳房まで舌を這わせていき、小さな蕾を口に含む。
「うぅ……ふ、ふぁ…?」
 おぼろげながら、心の意識は帰ってくる。
「いや…いやぁあ……ぬいて、ぬいてぇ! あん…ぬいてよぉ、ぬけえ! ぬけよぉ! うぁ…」
 刺し貫かれたままで、じたばたと暴れ出す。
 ろくに力の入らない手足で、イチモツを引き抜こうと躍起になってもがいている。
 しかし、とうぜん抜くことが叶うわけもなく、あと数センチ腰を浮かせば抜ける、というところで、心の肢からはくたりと力がぬけて座り込み、ふたたび深々と貫かれる。その繰り返しだ。
 ――にゅくにゅくぅ にゅにゅ にゅう っぢゅぶうう―― 
 龍鬼は腰の動きを止めているのに、よけいに激しく体内をかき回されることになってしまう。
(あれ……あれぇ? あ、あ…あれぇ?)
 イチモツを引き抜こうとして、体内の肉とこすれ合うたび、不思議な感覚が心のなかを奔っていく。
 とくにイチモツが出ていこうとする時が、なんというか、
(気持ち、いい…?)
「い、いやぁだぁ…ぬけ、ぬけよぉ……あ、あ? ぬいてぇ、ぬいてよぉ……う、う、うぅ?」
 何か『イケナイコト』をしている気がして怖くなり、心はうわ言のようにくりかえす。
「心、いま、いますぐ、ぬいてあげるから、だから落ち着いて、じっとしておくれ――う、うあ」
 心が逃れようとするたびに、龍鬼のイチモツは柔らかな肉の管に絡みつかれ、締め付けられ、擦られる。
 喩えようもなく柔らかな肉が吸い付き、きゅうぅっと締め上げてくる。
 それは、あまりにも甘美な責苦。
「やだぁ、やだぁ…ぬいてぇ、くるよ…くるよぉ、ぬいてよぅ……きちゃうよぉ」
 心の耳には、龍鬼の言葉など届かない。
 ――んにゅにゅう にゅ にゅう ぎぢゅ ぶにゅううぅ――
 言うことを聞くわけもなく、身体をゆり動かしつづける。
「お、お願いだよ、動かないで……すぐ、すぐにぬいてあげるから、心、動かな――あ、うあ!」
 耐え切れずに、龍鬼は心の体内へと精を放ってしまう。
「?!……う、う?」
 心の動きがピタリと止まる。
 自らの体内に、何かがぶちまけられたことは、すでに感じている。
 とてもあたたかくて、ドロドロした、何か。
「う、う…あ、なに…したの?」
 ぶちまけられたものが何なのか、本当は『知っている』筈なのに、『分からない』心。
 茫然とした表情で、龍鬼を見つめている。

「ごめん。ごめんね、心。いますぐ、抜いてあげるから――」
 ぬちゅり、ぬちゅりと少しづつ、ゆっくりとイチモツが引き抜かれていく。
 二人の体液が混ざり合って白く濁ったものが、イチモツに絡んで、てらてらしている。
 もう少しで完全に引き抜かれようという、その瞬間、
「ぬくなぁあ!!」
 心の左拳が、龍鬼の顔めがけて放たれる。
「くっ!」
 ギリギリでかわした龍鬼の右こめかみが、ごく浅く切り裂かれた。
 女の子の『心』の動きではない、男の―格闘士としての―心の動き。
 そのうえ、親指を立てて目を狙ったサミング(目潰し)パンチだ。
 攻撃の手は止まない、さらに右のボディブローが、左わき腹へと突き刺さる。
「メッ! ぬいちゃ、だめぇ!」
「心?」
「うごけ! うごくの、うごかないと、め!」
 つづけて掌底が何発も、ペチペチと叩きこまれる。
「心…いいの?」
 こくりと、恥ずかしそうに心はうなずく。
「もう、少し…なの……」
 あとちょっとで、おしりに感じる『なにか』が分かりそうな、そんな気がする。
 だから、ここでやめられたら、抜かれたら、嫌だ。
(いや、いや、やめちゃ、いや…なんか、ヤダ)
「心」
 思いが届いた、そう考えた龍鬼は、心を抱き締めようとする。だが、
「いやっ!! たつき、きらい」
 ぐいっと顔を押し退けられた。
「え? 心、どうして?」
 心はそっぽを向いてしまう。
「たつき、きらい。いたずら、するから――でも、でも……ちんちん、すき……」
 顔を真っ赤にして、目を潤ませながら、消え入りそうな声でいう。
「……心…分かったよ。君のいうとおりに、するよ」
「うん。うごいて、うごいて…もっと、もっと」
 心はみずから腰を動かし始める。

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