我が愛しの女王陛下

第一章・宰相ロベール=マルトー

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 【2】

 邪魔者は全て下がり、リュシエンヌ様の寝室で二人っきり。
 薄物の夜着一枚になった陛下と、寝台の前で向かい合った。

「ベッドに入る前に口付けをしましょう。契りの儀式みたいなものだと思ってください」
「はい」

 素直でかわいい人だ。
 私の言葉を疑うことなく返事をする彼女に対して愛おしさが募る。

「目を閉じて、口は少しだけ開けて……」

 瞼を閉じたリュシエンヌ様の唇に、自分のそれを重ねた。
 ゆっくりと舌を入れて唇と口内を味わう。
 リュシエンヌ様は私の服を握りしめ、一心不乱にキスに応えてくれた。

「うん……、ぅ……、ぁん……」

 色気の混じる吐息をつく唇に欲情してしまう。
 幼い幼いと思っていたが、こうやって触れ合ってみれば成熟した大人の一面が垣間見える。
 体に押し当てられている胸の膨らみは、想像以上に育っていた。
 今夜、この人は私だけのもの。
 私が全て教えてあげよう。
 せっかくのチャンス。
 誰にもこの役目は譲れない。

「リュシエンヌ様。どうぞ、こちらへ」
「え、ええ」

 先ほどのキスで腰砕けになっているリュシエンヌ様を寝台に座らせた。
 頬にキスをして、首筋を伝って、鎖骨へと下ろしていく。

「…あ……、ぅあ……ん……。ロベールぅ……」
「大丈夫ですよ、私に任せてください。体の力を抜いて、じっとしていてくださいね」
「は、はい……」

 夜着は前開きで、裾まで分かれていた。
 腹の辺りまでボタンを外し、胸を露出させる。
 ぽろんとこぼれ出た大きな膨らみは、確かな張りと瑞々しさを保ちながら、リュシエンヌ様が身動きするたびに左右にユサユサ揺れ動いた。
 手の平で包み込み、先端の乳首を口に含む。
 舌でくすぐって嘗め回すと、リュシエンヌ様の体が小さく震えた。

「……やん…、あぁ、恥ずかしい……」

 大きな瞳を涙で潤ませ、リュシエンヌ様は真っ赤になって私の行為をやめさせようとした。

「やめて、ロベール。……わたし変なの、体の奥がむずむずして、おかしくなりそう……」

 私は彼女の手を取ると、その体を寝台に横たえた。
 リュシエンヌ様の上に覆い被さり、無防備に晒された肌に口付けていく。
 胸を揉み解して、指先で頂を捏ねる。
 その度にリュシエンヌ様は嬌声を上げて、身をよじった。

「ああっ……、やだぁ……、ぁあん……」
「声は我慢しなくていい、自然に出るものなんです。私の言うことが信じられませんか?」

 囁いて、耳朶を甘く噛んだ。
 リュシエンヌ様は情欲に濡れた瞳で私を見上げ、すがりついてきた。

「あなたのことを信じています。怖くないように、しっかり抱きしめていて」

 なんてかわいいことを言ってくれるんだろう、この人は。
 嬉しくなって抱きしめ返す。
 腰を引き寄せて、足下から夜着のボタンを外しにかかる。
 太腿の位置まで前を開き、手を滑り込ませた。
 右腕で彼女を抱き、左手で足をまさぐる。
 肉付きの良い腿に触れ、指で足の間にある秘密の場所を探った。

「あ、ロベール! そこは……っ!」

 僅かに湿りを帯びた布に、指先が触れた。
 布越しに撫で擦り、ゆるゆると刺激を送り込む。
 一度、その場所から手を離し、周りからじわじわ攻めていくことにする。
 再び太腿の位置から撫ではじめた。
 熱を帯びた肌が、汗をかいているのがわかった。
 私の息も興奮で上がってくる。
 下肢に熱が集まり出したのがわかったが、達するまでもうしばらくは時間があるはずだ。

「ロベール、怖いの……。熱くて、体が……」
「リュシエンヌ様、それでいいのです。体が感じるままに身を任せてしまいなさい。私が傍で見守っていますから」
「ぁあん……、やぁ……、ああああっ」

 リュシエンヌ様が声を上げて仰け反った。
 夜着の裾をめくって覗くと、股を覆っていた布がしっとりと濡れていた。
 愛液が溢れて、幾筋か腿を伝い落ちていく。
 扇情的な眺めにごくりと唾を飲み込んだ。

「リュシエンヌ様、動かないで。私がしてさしあげますから」

 リュシエンヌ様の下腹部を隠していた布を取り去り、足を開かせる。
 適度に生えた茂みは濡れて、割れ目から淫らな蜜が溢れていた。
 誘われるように、秘裂に顔を近づけ、舌を這わせた。

「あっ、……んっ…、はぁ……」

 私の舌が蜜で満たされた性器を弄るたびに、リュシエンヌ様は腰をくねらせて快楽を享受している。
 私の頭に乗せられた彼女の手が、救いを求めるように髪を乱した。

「ふぇ…、だめぇ……、ああああっ」

 リュシエンヌ様の下肢が大きく震えて、絶頂に達する。
 その証拠に、私が嬲っていた秘所から新たに多くの愛液が滴り落ちてきた。
 私は体を起こし、リュシエンヌ様を見つめた。
 呼吸をするたびに、上下する豊かな胸。
 夜着は大きく肌蹴られ、腰周りだけを隠す中途半端な覆いとなっている。
 残ったボタンも外して、邪魔な布地を全て脱がせた。
 栗色の艶やかな髪が、汗で濡れた体に幾筋か張り付き、妖艶な雰囲気を醸し出していた。

「リュシエンヌ……いえ、リュシー様。少し痛むかと思いますが、我慢できますね?」
「はい、我慢します」

 どこまでも従順に、信頼しきった目で彼女は私を見つめた。

 これは授業ではないんだがな……。
 苦笑するしかない。
 長年築き上げてきた私と彼女の関係は、婚姻を結んだとて変わらない。
 そもそもこの人に甘い恋愛関係を期待するのが酷なことなのだ。
 リュシエンヌ様は誰か一人を盲目的に愛することはない。
 その代わり、この国の民、全てを平等に愛することができる。
 豊かなこの国の大地のごとく、温かく我らを包み込んでくれる。
 そんな彼女であるからこそ、私は強く惹かれた。
 彼女を女にする栄誉を与えられたことは、この上ない幸運だ。

 私も衣服を全てを脱ぎ、彼女の上に跨った。
 大胆に足を広げさせ、指で秘口を探り、昂った分身を割れ目に挿入していく。

「……っ、ロベール……」

 恐れを声に滲ませて、リュシエンヌ様がしがみついてくる。
 震える華奢な体に片腕をまわして抱き寄せ、頬に軽く口付けた。

「……リュシー、あなたを愛しています。何も怖くありませんよ。私を信じてください」
「うん……、あぁ……っ!」

 挿入が進むたびに、リュシエンヌ様は苦痛のためか顔を歪めた。
 それでも悲鳴をあげることなく、私に抱きついて声を堪えておられた。

「んっ! ううっ」

 何度も浅く突いては繋がりを深くしていき挿入を果たした。
 動かず、息を吐いて彼女の髪を撫で、唇に口づけをした。
 思い焦がれた人と一つになった幸福に酔う。

「ねえ? 終わったの?」

 涙をいっぱい目に溜めて、リュシエンヌ様が問いかけてくる。
 我に返り、首を横に振った。

「申し訳ありません。後少しだけ我慢してください」

 ゆっくりと腰を動かす。
 彼女の中でぎゅうっと締め付けられて、昇天しそうになる。
 早めに出してしまった方が、リュシエンヌ様の苦痛を長引かせずに済む。しかし、もうしばらく繋がっていたいと身勝手な願いも湧いてくる。

「あっ……、ううっ……、うんっ……」
「ああっ、リュシー、リュシーっ!」

 敬称をつけることも忘れて、彼女の名を呼ぶ。
 咎められることはない。
 彼女は自分を至高の存在だとは思っていないからだ。
 誰よりも気高く、それでいて奢り昂らない、清らかな人。
 不遜な想いを抱いた我々をも優しく受け入れてくれた。
 民のためでもいい。
 あなたの愛を傍で得ることができるなら、私はどんなことでもしよう。




 あれから何度か褥を共にしているが、私と彼女の関係は相変わらずだ。

「どう? ロベール。気持ちいいですか?」

 ベッドの端に腰掛けた私の前にしゃがみこみ、リュシエンヌ様が具合を聞いてきた。
 彼女の夜着の胸元は大きく開いていて、形のいいふくよかな乳房が丸見えだ。
 その格好で私の剥き出しの肉棒を愛でている。
 舌先で舐めたり、口に含んだりと、実験するように私の感度を確かめつつ、様々な愛撫を試している。

「いいですよ。合格です」
「本当? 嬉しい!」

 ぱっと顔を輝かせて、リュシエンヌ様が飛びついてきた。
 素直で色事に疎い彼女は、私が言うことなら何でも信じてしまう。
 誰でもやっているのだと囁けば、疑うことなく実行する。

「ねえ、ロベール。他にはどんなことをするのですか?」
「そうですね。では、自分で入れてみますか? たまには男性をリードしてみるのもいいでしょう」
「はい、やってみますね」

 リュシエンヌ様は自ら夜着を脱ぎ、私の上に乗って足を広げた。
 いきり立つ私自身の上に、恐る恐る腰を落としていく。

「あっ、ああんっ」

 完全に繋がると同時に、彼女の腰が動いた。
 私は彼女の尻を掴み、柔らかい肉の感触を楽しむ。

「ほら、もっと腰を動かして。私を気持ち良くしてくださるんでしょう?」
「は、はい……」

 リュシエンヌ様は顔を羞恥に染めて、腰を動かす。
 弾みで乳房がぶるぶる揺れて、私の欲望を高めてくれる。
 尻を揉んでいた手を胸に移動させ、やわやわ揉んで乳首を弾く。

「ああっ、……やぁ…ぅはぁん……」
「かわいいですよ、リュシー」

 切なく喘ぐ彼女を抱き寄せ、互いに絶頂を味わう。

「……ぁああっ、あぁっ、あああああっ」

 リュシエンヌ様は私の上であられもない声を上げ、艶を帯びた仕草で更なる快楽を求めてくる。
 この姿を他の男の前でも晒しているのだと思うと、胸にじわりと嫉妬の感情が芽生えた。

「……ロベール。わたし、上手に……できた?」

 乱れた呼吸の合間にリュシエンヌ様が問いかけてくる。
 あれだけ乱れさせたのに、彼女はやはり教えを請う生徒のままだった。

 こんな関係も悪くない。
 あなたは私の愛しい妻で、かわいい生徒。
 もっと色んなことを教えてあげますから、夜を楽しく過ごしましょうね。

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