束縛
制服
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大学生になったわたしは、冬樹くんと付き合っていることを隠すこともなく、堂々と隣にいることができる。
今日もデートをしようと誘われて、二人で腕を組んで街を歩いていた。
「雪城くん、偶然だね」
前方から来た三人連れの女性が冬樹くんに親しげに話しかけてきた。
同じ大学の人のようだ。
彼女達の視線が、冬樹くんにくっついているわたしに向く。
強い視線が気になって居心地が悪くなり、冬樹くんの影に隠れるようにして俯いていた。
「その子、妹さん? これからどこかに遊びに行くの?」
一人の女の人が、おもむろに尋ねた。
少しも似てない上に、二人っきりで腕まで組んで歩いているのに妹だなんて、彼女の言葉に含みを感じたのは被害妄想?
言外にこんな子、恋愛対象外って言われたような気になってしまった。
「だったら、一緒に行こうよ。大勢の方が楽しいって」
彼女達は明らかに冬樹くん狙いの気配を持っている。
せっかくのデートなのに、一緒に行くなんてやだ。
わたしはオロオロして冬樹くんの返答を見守った。
「いや、悪いけど、彼女とデート中なんだ」
冬樹くんはにっこり笑ってわたしの肩を抱いた。
「妹じゃないよ、この子はオレの恋人なんだ」
相手の目を見てきっぱりと、冬樹くんは言ってくれた。
みんな意外そうな顔をしている。
わたしは美人じゃない。
背も低いし、足も太いし、頑張っておしゃれしても冬樹くんとは吊りあわないってわかってる。
でも、冬樹くんはわたしが好きって言ってくれてる。
他の人にどう思われても関係ないんだ。
顔を上げて、冬樹くんに寄り添う。
肩にまわされた彼の手が、わたしに勇気をくれる。
「そ、そうなんだ。意外に普通の子だね」
「うん、雪城くんの彼女って言うと、トップモデルか美人女優なぐらい綺麗なイメージがあったから驚いちゃった」
一人が取り繕うように笑顔を作ると、他の人も気まずさをごまかしながら相槌を打った。
それを聞いて、冬樹くんはおかしそうに笑った。
「普通が一番だよ。それに彼女の魅力はオレにしかわからなくていいの。オレって、独占欲が強いからね」
ここまで惚気られては、何も言えなくなったんだろう。
三人の女性は顔を見合わせて、落胆している。
「そういうわけで、もう行くね」
冬樹くんは手を上げて彼女達に別れを告げると、わたしを先へと促した。
「あ、うん、呼び止めてごめんなさい。またね」
女性達もそそくさと移動していく。
あっさり引き下がってくれて良かった。
ホッと息をついて、冬樹くんと腕を組みなおした。
わたしの口元が自然に綻ぶ。
冬樹くんの顔を見上げて、にっこり微笑んだ。
「さっきはありがとう。彼女だって言ってもらえて嬉しかった」
「彼女なんだから当たり前だろ。もう隠さなくていいんだ。春香はオレの恋人だって誰にでも言うし、言っていいんだ」
冬樹くんの言葉が、涙が出るほど嬉しい。
大好きだよ、冬樹くん。
誰に認めてもらえなくてもいいと思っていたけど、周りに認めてもらえるってこんなに嬉しいことだったんだね。
「さっきの彼女達には告白されたりもしたんだよ。恋人がいるって断ったんだけど、みんな容姿に自信のある子ばかりだから、火野の時と一緒で普通の子だと認めたくなかったんだろうね。嫌な思いさせてごめん」
「冬樹くんのせいじゃないよ、気にしてないから大丈夫」
強がって笑ってみせると、冬樹くんは困った顔でちょっとだけ笑ってくれた。
「春香は良い子だよ。一緒にいるとホッとする。春香の前でなら、オレは偽りの無い自分を曝け出せる。オレはやっぱりお前じゃないとだめだ」
「わたしだって冬樹くんじゃないと嫌だよ。他の人を好きになったりしないでね」
「ならないよ。春香だって目移りしたらどうなるのか、もうわかってるだろ?」
体で思い知らされたもの、忘れるわけがない。
冬樹くんのわたしへの執着は普通じゃない。
今度別れるなんて言ったら、監禁されて調教されちゃうかも。
そう考えると、冬樹くんて結構危険人物?
「うん、わかってる。浮気はしないよ」
わたしの返事に満足したのか、冬樹くんは晴れやかな笑みを見せた。
「それじゃあ、お互い納得したところで目的地に着いたよ」
たどり着いた建物はラブホテルだった。
ビジネスホテル風のシンプルな外装で、入るのにあまり抵抗がなさそう。
「ネットで見つけたんだ。いいサービスがあるんだよ」
冬樹くんは上機嫌だ。
どんなサービスだろう。
食事かな?
それとも備え付けの物が豪華とか?
わくわくしながらついていく。
ちょっと考えればわかるはずだった。
冬樹くんの性癖を満足させるサービスなんて一つしかないことを。
部屋に入ってすぐに、注文したサービスの品も届けられた。
嬉々として冬樹くんが手にしているものを見た途端、わたしは部屋の隅に逃げた。
「な、何で、そんなものが……っ!?」
「これが目当てのサービスだよ。これを見つけた時は運命を感じたね」
冬樹くんが手にしているのはセーラー服だ。
目当てのサービスとはコスプレ衣装のレンタル。
夏服をイメージしているのか、半袖セーラー服に襞のついた紺のスカート。
揃いのスカーフは結ぶとリボンになる仕様で、見た目はかわいい。
かわいいけど……。
「やだぁ! わたし、大学生なんだよ! 絶対似合わない!」
「似合うって! オレが保証する! さあ、着るんだ!」
服を持って冬樹くんが飛び掛ってくる。
ベッドに押し倒されて、服を剥ぎ取られていく。
下着姿にされて、今度はセーラー服とスカートを着せられる。
スカーフも手早く結ばれ、年増の女子中学生(?)が完成した。
いやぁ、恥ずかしい!
部屋には姿見もあったけど、とても正視できない。
スカートは短くて、大根みたいな足が丸見えだ。
上着の生地は薄くて、ブラジャーは透けてるし、胸のラインもはっきりわかる。
「似合うよ、すごくかわいい」
興奮で上気した顔で、冬樹くんが囁く。
ホントかなぁ?
頬や唇にキスされながら、半信半疑で褒め言葉を聞いていた。
冬樹くんは自分も着替え始めた。
こちらは自前で、黒のスラックスに白い半袖のシャツ。
学生服のイメージなんだ。
夏服セーラー服に合わせた服を持ってくるなんて、セーラー服が冬服だったら、中学の時のガクランを引っ張り出してきてたのかな。
「ねえ、冬樹先輩って言ってみて」
甘えた声で冬樹くんがねだる。
「どうしたの急に?」
「穂高や夏子がちょっとだけ羨ましかったんだ。オレも一度でいいから、春香に先輩って呼ばれたい」
冬樹くんは冬樹くんだ。
先輩とか後輩なんて意識したことなかったな。
今日はそういうプレイがしたいってこと?
彼の意図を察したわたしはイメージプレイに付き合ってあげることにした。
今日のわたしは冬樹くんに想いを寄せる後輩だ。
そう考えると、新鮮な気持ちになってくる。
彼に告白する女生徒の気持ちにシンクロすると、わたしもドキドキしてきた。
「冬樹先輩。わたし、ずっと先輩のことが好きでした」
いつか、誰かが告げていたと思われる言葉。
冬樹くんは彼女がいるんだって言って、告白は全て断る。
わたしも断られちゃう。
不安で胸が張り裂けそう。
冬樹くんはすごく優しい目でわたしを見つめ、囁くように返事をくれた。
「オレも桜沢のことが好きだった。告白は先にされちゃったけど、こちらこそ、ぜひオレと付き合って欲しい」
「冬樹先輩、嬉しい!」
わたしと冬樹くんはすっかり自分達が作り上げたシチュエーションにのめり込んでいた。
わたしは起き上がって冬樹くんに抱きつき、しっかりと受け止めてもらう。
「春香って呼んでいい?」
「もちろんです、先輩」
こんなやりとりも、先輩後輩だからできること。
幼なじみだといつの間にか呼び名が定着してたもんね。
「春香」
「冬樹先輩……」
口付けを交わして、再びベッドに倒れこむ。
冬樹くんの手が、太腿を撫でて、ショーツの中へと伸びてくる。
「あ、先輩、だめ……」
「優しくするよ。ほら、素直になって」
ブラのホックが外されて、セーラー服の中に冬樹くんの手が入ってきた。
解放された膨らみが、冬樹くんの手で揉み捏ねられる。
徐々に上着がめくれ上がってきて、胸に部屋の空気が触れた。
「ん…あぁ……、やぁ…ん……」
わたしの両足の間に冬樹くんが体を進めてきた。
片手で秘所を触られているので足を閉じることもできず、裸の胸を晒していじられている。
制服でこんなことしたことがなかった。
ここがもし学校の中だったらと思うと、さらに興奮が高まってくる。
冬樹くんも同じ考えに到ったのだろう。
くすっと笑うと、わたしの耳に新たなイメージを吹き込んだ。
「ここは学校の保健室だよ。先生は外出中だけど、いつもどってくるかわからない。春香は大好きな先輩とえっちの最中だ。声を出したら誰かが入ってくるかもね」
ホテルの部屋が、一瞬で消毒液の匂いがする白い空間に変わる。
ああ、だめ。
人が来る。
見つかってしまう。
「せ、先輩。ここじゃ嫌ぁ……」
冬樹くんの服を掴んでお願いする。
でも、冬樹くんはわたしの乳房を舐めると、ショーツの中を探っていた指を秘裂へと進めた。
「ん、ぁ……っ!」
声を抑えて喘ぐ。
ぐちゅぐちゅとショーツの下からやらしい音が聞こえてくる。
冬樹くんがショーツを脱がして、びしょ濡れになったそこにまた指を入れてきた。
「本当にやめて欲しい?」
冬樹くんは意地悪だ。
わたしは腰をくねらせておねだりするしかない。
「やめないで……ください……。先輩の…欲し…い……」
指が抜かれて、力も抜ける。
冬樹くんはわたしの膝を抱えて持ち上げると、正面から入れてきた。
「あ、ああっ!」
小刻みに揺すられて、快楽に苛まれ、声を上げた。
わたしの中を出入りしている冬樹くん自身は、いつもと同じなのに違う人のみたいだ。
「冬樹…せん…ぱ……」
「ん? 何…春香?」
どっちも荒い息を吐きながら、会話をする。
わたしはぎゅっと彼に抱きついた。
「先輩が…好き……。冬樹先輩…、大、好き……」
クライマックスに向けて早まる腰の動き。
先輩、先輩と呼ぶたびに、中にいる冬樹くんが大きくなっていく錯覚がした。
それに応じてわたしのあそこも締まって、冬樹くんを締め付ける。
「すご…い締まっって……、も……だ、め……」
冬樹くんも喘いでいる。
ふいに口を唇で塞がれた。
冬樹くんの舌がわたしの口内に入り込み、上でも下でも深く繋がり、求め合った。
イク寸前、呼吸が解放される。
「あっ、ああんっ、冬樹せんぱぁい、イッちゃ……う……。ぁあああああっ!」
最後は本能に流されて叫んでいた。
冬樹先輩と保健室でえっちなんてすごいことしちゃった。
わたしはすっかり、後輩の桜沢春香になりきって、冬樹くんと絶頂を迎えた。
少し眠ってから目を覚ますと、冬樹くんがセーラー服を着たわたしの体を撫で回していた。
おっぱいやお尻が布越しにむにゅむにゅ揉まれてくすぐったい。
「冬樹くん、まだしたりないの?」
「うーん、このむっちり具合がたまらなくて」
肉付きのいいお尻を撫で擦り、胸に顔をすり寄せてくる。
「どうせ、太ってるわよ!」
ちょっとムッとして払いのけようとしたら、冬樹くんは振り上げた腕を素早く避けて抱きついてきた。
「そうじゃないって、グラマーだって言ってるんだよ」
抱かれて優しく囁かれると、あっさり陥落。
冬樹くんには敵わない。
「なら、許してあげる」
仲直りの印しにキスをした。
角度を変えながら、唇を重ねる。
「んはぁ……」
たっぷりキスして大きく息を吸う。
ベッドに体を投げ出すと、壁に備え付けられている服掛けに目が行く。
そこには目を疑うものが掛けられていた。
「ふ、冬樹くん、あれ……」
幻であることを願いながら、指をそちらに向ける。
冬樹くんはそれを見て、満面に笑みを浮かべた。
「春香が寝ている間に、追加で頼んでおいたんだ」
服掛けにぶらさがっているのは紛れも無く体操服。
冬樹くんは立ち上がると、体操服を持って戻ってきた。
上は白で縁取りは赤、揃いで赤のブルマがついている。
「写真もいいけど、生で見るのが夢だったんだ。オレの夢の実現のために協力してくれ!」
「変な夢を持たないで! ちょっとこっち来ないでよ!」
ブルマを持って、鼻息を荒くして迫ってくる冬樹くん。
冬樹くんに憧れて恋をしている人は、彼のこんな性癖を想像もしていないだろう。
容姿も性格も能力も完璧な理想の男性。
そんな人、この世のどこにもいないんだよ。
これを欠点に数えてもいいのかわからないけど、王子様と変態のギャップを乗り越えて付き合えるのはわたしぐらいな気がする。
「春香、お願い……」
端整な顔を近づけられて、至近距離で囁かれると弱い。
首の辺りに息がかかって、ぞくぞくと体が震えた。
「ぁ……、う…わかった…、わかったからぁ……。着ればいいんでしょう?」
渋々了承した途端、冬樹くんが顔を輝かせた。
わたしは仕方なくベッドから下りて、セーラー服を脱いで体操服に着替えた。
冬樹くん待望のブルマを履くと、さっそく抱きつかれた。
「ありがとう、春香! これで、いつ死んでもいい!」
死なれては困るんだけど、そんなにブルマに未練を残していたとは思わなかった。
夢が叶って良かったね。
「じゃあ、脱いでもいい?」
「だめ」
あ、やっぱり。
ベッドに戻って、再びプレイ開始。
「体操服なら体育館の倉庫かな。春香はマットの上にいるんだよ」
暗い体育館倉庫で、こっそりえっち。
設定したシチュエーションに入り込み、わたし達は遊び始める。
冬樹くんの性癖に付き合っているうちに、わたしまで目覚めてきてしまった。
実はちょっぴり楽しかったりするので、これからはとやかく言えないかも。
でも、普通のえっちも好きだから、コスプレはたまにして欲しいな。
END
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