欲張りな彼女

ぱんつ

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(side 知恵)

 ない。
 おかしいな、確かにあったのに。

 着替えに出そうと思っていたショーツが見当たらず、部屋中を探し回る。
 入っているはずのタンス。
 ベッドの下や、床に置いていた雑誌の下なども確認した。

 下ろしたてのお気に入りだったのに。
 どこに行ったんだろう?
 一昨日までは確かにあった。
 今日の着替えにと思ってタンスにしまったところまでははっきりと覚えている。
 それがないってことは、やっぱり……

 疑いたくはないけど、彼しかいない。
 あたしはため息をついて、別の下着を取り出してお風呂に行った。
 問い詰めるのは明日にしよう。
 素直に謝ればよし。
 白をきれば、返してくるまでえっちなしにしてやる。




(side 秀)

 知恵からメールがきた。
 優には内緒でウチに来て、なんて言われたら二人っきりでのえっちを期待するだろ、普通。
 学校が終わると急いで帰宅して、黒のTシャツとジーパンに着替え、喜び勇んで知恵の家を訪ねた。

 ところが知恵の部屋にお邪魔するなり、床に正座しろと指示された。
 文句を言おうと思ったけど、知恵の迫力に負けてしまい、きちんと膝を揃えて座ってしまった。
 どうしたんだ? ただごとじゃねぇぞ。

「あのね、秀ちゃん。怒らないから正直に言ってね」

 オレの正面の位置に知恵も正座して、真剣な顔でじっと見つめてくる。
 オレ、何かしたか?
 もしかしたら、元カノと喫茶店に入ったことがバレたのか?
 あれは復縁を迫られて断ってたんだ。
 最後の思い出にホテルで抱いてと誘われたが、我慢して断ったんだぞ。
 浮気なんかしてない、オレは無実だ!

「知恵、あれは誤解だ! オレはホテルには行ってないぞ! 確かに据え膳はもったいなかっ……いやいや、今のなし! とにかく、ちゃんと我慢したんだぞ!」
「何のこと? その辺のこと、もっと詳しく聞かせてもらいましょうか?」

 やぶ蛇だったらしい。
 オレは知恵に締め上げられて、言わなくても良かった元カノとの一部始終を話すハメになった。
 必死で浮気を否定すると、知恵は信じてくれた。

「その子と何もなかったって秀ちゃんが言うなら信じる。あたしが聞きたいのは別のことだよ。昨日、優ちゃんと一緒にうちに来たよね? その時、何か持って帰らなかった?」

 昨日は勉強しようって名目で、優と一緒に知恵の部屋に上がりこんだんだ。
 もちろんやることもやって満足した。
 持って帰った物?
 知恵の部屋の物をか?
 いや、雑誌もCDも借りてないぞ。

「何も持って帰ってねぇよ。それに借りるなら、いつも声かけていくじゃねぇか」
「嘘ついちゃだめ! 盗ったの、秀ちゃんでしょう! あ、あたしの、し……下着、返して!」

 は?
 下着?
 オレは一瞬、何を言われたのかがわからず、知恵を見つめた。
 知恵は口にした言葉の恥ずかしさでか、真っ赤になって涙目になっている。
 うおー、かわいい! ……って、腑抜けてる場合じゃねぇ!

「下着ってどっちだ? ブラジャーか? ぱんつか?」
「とぼけないで、下ろしたてのピンクのショーツ、赤いリボン型のアクセントがついているヤツに覚えがないとは言わせないわよ!」

 本気で覚えが無い。
 ぱんつ泥棒の嫌疑をかけられているオレだが、容疑者はもう一人いるじゃないか。
 どうして知恵は、頭からオレが犯人だと決め付けているんだ?

「昨日、優もここに来たんだ。それなのにオレだけ疑われるなんて納得できねぇ」
「優ちゃんは真面目だもん、下着泥棒なんてするわけない。いつもスケベなこと考えてる秀ちゃんの方が怪しい。ね、今なら怒らないし、黙っててあげるから返して」

 知恵は犯人はオレしかいないと断言した。
 ちくしょお、日頃の行いが悪いのか。
 でも、オレは無実だ。
 犯人は優だ。
 それをどうやって知恵の前で証明するかだが……。

「オレはやってない。オレは下着より中身が好きだ」

 きっぱりと宣言すると、知恵にぐーで殴られた。

「バ、バカッ! そんな恥ずかしいこと真顔で言わないで!」

 いてて、本気で殴ることないだろうに。
 オレは頬を押さえて、知恵に向き直った。

「今からオレんちに行こうぜ。家捜しでも何でも気の済むようにしろよ。疑われたままじゃ気分が悪い」

 オレは少し本気で怒っていた。
 信じてくれなかった知恵にもだが、疑われるような行動をしてきた自分自身にもだ。
 本気になったオレを見て、知恵の表情に迷いが生まれた。
 オレが動揺もせずに堂々としてるから、自分の推理に自信がなくなってきたんだ。

「う、うん。行く」
「それでオレの部屋じゃなくて、優の部屋でぱんつが見つかったらどうしてくれる? オレ、思いっきり傷ついたんだぜ。自分の彼女に下着泥棒扱いされたんだからな」

 疑われたダメージなんてそれほど大きくはない。
 だけど、ここで大げさに言っておけば、無実が証明された時にオレの立場が有利になる。
 珍しく頭を働かせて策を練った。
 知恵は気まずそうな顔でこっちを見ている。

「そ、その時はお詫びに何でもする。秀ちゃんの言うこと何でもきく」
「確かに聞いたぞ。忘れるなよ」

 オレはニヤリと笑い、知恵にするえっちなお仕置きを考えた。
 あんなことしてこんなこともと、いかがわしい妄想をして、期待に胸を膨らませた。




(side 優)

 ほんの出来心だった。
 秀がトイレに行き、知恵が飲み物を取りに階下に行ってしまうと、部屋に残ったのはボクだけとなった。
 その隙に、好奇心に負けてタンスを開けた。

 タンスには色とりどりの魅惑的なランジェリーが収まっていた。
 オーダーメイドのGカップのブラジャーは、単体で見るとカップの大きさがすごい。
 ショーツはかわいい系でまとめられている。
 ボクはついショーツを一枚手にとって広げてしまった。
 手触りのいいピンクの布地は下ろしたばかりなのか、色褪せても薄くもなっていない。

「これが知恵のお尻に……」

 鼻息を荒くして匂いを嗅ぐ。
 洗剤のいい香りがする。
 頬ずりすると、心地よい感触がした。

 うっとり悦に入っていると、誰かが階段を上がってくる足音が聞こえた。
 うわっ! タンスに戻している時間はない!
 とっさにショーツをズボンのポケットに押し込んだ。
 ドアが開いて秀が入ってくる。
 すぐに知恵も戻ってきて、ジュースを出してくれた。
 ま、間に合った……。
 だけど、その後は一人になるチャンスは訪れず、ショーツをタンスに戻す機会はなくなってしまった。

 そして、知恵のショーツは今ボクの手元にある。




「どうしよう……」

 ピンクの布地を広げたり畳んだりしながら逡巡する。
 このままこっそり返せれば一番いいのだが、すでになくなったことがバレている可能性がある。
 知恵に下着泥棒の変態として嫌われたくはない。
 いっそのこと秀の部屋に隠して罪を被せようかとまで思いつめたが、さすがにそこまで卑怯者にはなれなかった。
 知恵なら説明すれば許してくれるかな、……と、楽観的な方向に思考が傾いた。

 ついつい現実逃避して、手にしたショーツを眺める。
 知恵のぱんつ。
 むちむちの可愛いお尻を隠すお邪魔アイテム。
 中身も大好きだが、彼女を飾るアイテムも大好きだ。

「あぁ、知恵ぇ」

 彼女の身代わりにと思い、頬ずりした。
 ぱんつに。

 その瞬間、部屋のドアが開いた。
 家宅捜索に来た捜査員のごとく、部屋に踏み込んできたのは秀と知恵だった。
 ボクは驚きで静止した。
 だらだらと冷や汗を掻く。
 見られた。
 ぱんつに頬ずりしている現場を見られてしまった!
 ボクは終わりだ。
 さようなら、バラ色の両思い生活。
 おめでとう、秀。
 これで知恵はお前だけの彼女になるんだ。

 ショックでボクの意識は遠のき、パンツを頬に当てたまま、床の上に倒れ込んだ。




 (side 知恵)

 あたしは秀ちゃんと一緒に彼の家に行った。
 家の中に入るまで、あたしはまだ彼を疑っていた。
 秀ちゃんを信じたいけど、あの優ちゃんが下着を盗むはずがないと思い込んでいたからだ。
 おばさんは、今回も泊りがけでおじさんの赴任先に行っている。
 家には半月いれば良い方らしい。
 娘でもいれば別だが、残されるのは男二人だから安心しきって家を空けるのだと、前に優ちゃんが教えてくれた。

「足音立てるなよ。そーっと行くぜ」

 秀ちゃんの指示に頷いて階段を上る。
 優ちゃんの部屋のドアの前で聞き耳を立てた。
 中から優ちゃんの声がする。
 息が荒い?
 はぁはぁ悶えているような気配がする。
 う、まさか、一人えっちの最中?

「あぁ、知恵ぇ」

 あ、あたしの名前、呼んでる。
 嬉しいより、恥ずかしくて耳を覆った。
 秀ちゃんが動いて、ドアノブに手をかけた。
 ドアを勢いよく開く。
 やだ、待って!
 見たくない!

 そうは思っても、見てしまうのが人情と言うもの。
 あたしは見てしまった。
 探していたあたしのショーツに頬ずりしている、理性的で真面目なはずの優ちゃんの姿を。

 優ちゃんはあたし達の姿を視界に捉えるなり動かなくなった。
 その後すぐに、ばったりと倒れて気絶したけど、ショーツはしっかりと握り締めて離さなかった。
 犯人は秀ちゃんじゃなかった。
 優ちゃんもスケベだったことが証明されて、あたしは何ともいえない気分になって、その場にへたりこんだ。




(side 秀)

 運良く優が犯人だという決定的な現場を押さえることができて、オレの疑いは晴れた。
 優は知恵にバレたショックで気絶している。
 しかし、優のヤツ、何やってんだ。
 こそこそ、ぱんつ盗まなくても、実物は見放題で触り放題なのに。

 オレは優を抱え上げて、とりあえずベッドに転がした。
 脈は正常だし、呼吸もしてるし、寝かせておけば大丈夫だろう。
 気絶していても優はぱんつを握り締めている。
 取り上げるのは諦めて、入り口で放心している知恵に近寄った。

「どうだ、犯人はオレじゃなかったろ? よくも疑ってくれたな」

 わざと怒ったフリをして見下ろすと、知恵はびくっと肩を揺らせて縮こまった。

「ご、ごめんなさい……」

 バツが悪そうに俯いて頭を下げている。
 オレは知恵を立たせると、自分の部屋に連れて行った。

「お詫びに何でも言うこと聞くって約束したよな?」
「う、うん」

 知恵が不安そうな顔で見つめてくる。
 オレの方が背が高いので、自然に知恵は上目遣いとなってしまう。
 計算された仕草でないだけ余計にそそられるじゃねぇか。

「服を脱げ、下着も全部だぞ」

 ストリップを命じると、知恵は顔を引きつらせながら、もそもそ服を脱ぎだした。
 オレはベッドに腰掛けて、その様子を眺める。
 知恵は下着姿になると手を止めて、オレの方を向いた。

「下着も脱ぐの?」
「おう」

 許す気のないオレに観念したのか、知恵は背中側についているブラのホックを外した。
 肩紐を腕から抜くと、Gカップのでかい乳がぶるんとこぼれ出た。
 ショーツを脱ぐ動作に入ると、オレの大好きなおっぱいが揺れまくって目が釘付けだ。
 いつもは辛抱できなくて、オレ達が服を脱がせてばかりだったから、こうやって焦らされるのもたまにはいいな。

「ぬ、脱いだよ」

 視姦されて感じているのか、知恵は赤くなって俯いている。
 何度体を重ねても、恥じらいを失わないところがいい。

「こっちに来てオレの服を脱がせろ」

 今日はオレから動く気はない。
 知恵にご奉仕してもらって気持ちよくなるつもりだ。

 オレは黒のTシャツとジーパンを身につけているだけだ。
 下着を含めても、脱がせるのに手間はかからないはずだ。
 知恵はまず上から脱がすようで、Tシャツの裾に手をかけた。

「秀ちゃん、腕上げて」

 そのぐらいの協力はしてやってもいいか。
 指示にはおとなしく従っておく。
 脱がせるためにはどうしても密着しなければならず、体に知恵の乳が押し付けられるたびに頬を緩めた。

 上半身が終わると下半身に行く。
 知恵はズボンのジッパーを下ろすのをためらっていた。
 脱がされてばかりで、脱がす経験は皆無なのだ。
 オロオロとオレの顔と股間を往復する視線が、彼女の動揺ぶりを教えてくれる。

「立つから、早く下ろせよ」

 腰掛けていた体勢から、立ち上がる。
 知恵は跪き、緊張した面持ちでジッパーを下げた。
 ズボンを下ろされると、青系統の柄物のトランクスが現れる。
 意を決したのか、知恵はトランクスもずり下げた。
 オレは下ろされた衣服から足を抜いて裸になった。

「今日は知恵がオレを満足させるんだぞ。さあ、始めろ」

 何をしろとは言わなかった。
 ベッドで寝転んで待っていると、知恵が上に跨ってきた。

「秀ちゃん、疑ってごめんなさい。嫌いにならないで」

 しゅんと項垂れて、知恵がキスしてきた。
 オレは思わず彼女の背中に腕をまわして抱き寄せた。
 嫌いになんてなるはずがない。
 失恋したと思い込み、わざと冷たくして離れて何度も忘れようとしたけど、オレの気持ちは変わらなかった。
 これだけは断言してもいい。
 オレは死ぬまで知恵のことを好きでいるって。

「……んっ……、はぅむ……、ん……」
「ぅん……、知恵…、好きだ……」

 ぴちゃぺちゃ唾液の音を混じらせながら舌を絡めた。
 呼吸の合間にオレが好きだと囁くと、知恵は微笑んだ。

「お詫びに秀ちゃんが大好きなこといっぱいしてあげる」

 そう言うと、知恵は起き上がって下へとずれていった。
 小ぶりのメロンみたいな膨らみを持ち上げて、オレの股間に当てる。
 乳首がぐいぐい太腿に押し当てられて、興奮ですぐにオレのイチモツは立派になってきた。
 知恵はそれを胸で挟むと、寄せて上げる動作で刺激してくれた。

「うはぁ、いい。知恵のオッパイたまんねぇ」
「秀ちゃん、そんなにいいの? じゃあ、あたしもっと頑張る」

 さらに先端が稚拙な舌使いで舐められた。
 フェラまで追加なんて大サービスじゃねぇか。
 こんなご奉仕してもらえるのも、ぱんつ泥棒をした優のおかげだな。
 あいつも知恵のぱんつで満足しただろうし、おあいこ、いや、本人に相手してもらってる分、オレの方がいい目見たわけか。
 優越感に浸って満たされる。

「あたしも濡れてきちゃったみたい。秀ちゃん、舐めて、お願い」

 濡れ濡れの秘所が目の前に来る。
 いわゆる69の体勢になり、オレは知恵の蜜を味わった。
 オレの欲望が高まっていくにつれて、知恵のそこも受け入れの準備を整えていく。

「しゅ…う…ちゃ……、入れて…も、いい……?」
「い、いいぞ、来いよ」

 艶を帯びた知恵の誘いに一も二もなく頷く。
 知恵は再びこちらを向くと、騎乗位の体勢をとった。コンドームを被せて準備をするのも、今日は知恵の役目だ。
 避妊具をつけたオレ自身の上に、知恵がゆっくりと腰を落としていく。
 狭い内部に圧迫されて、オレ自身がさらに昂った。

「うお、いいっ!」
「あぁっ、秀ちゃん! あんっ!」

 知恵とオレは繋がりがもたらした快感に痺れて叫んでいた。
 オレの上で知恵が腰を振って導いてくれる。
 目の前で揺れまくっている胸を掴んで揉んでやると知恵の中がぎゅっと締まった。

「あぁあんっ、だ、めぇ……、そんな……、んぁああっ!」
「ぅあっ……、くっ……、ああっ」

 知恵の腰を掴んで絶頂を迎えた。
 甲高い鳴き声を上げて、知恵も達する。
 ぐったりと倒れこんできた彼女の体を受け止めて、出し切って元に戻っていくオレ自身を抜いた。

「はぁ……、秀ちゃん……、これで許してくれる?」
「ん? ああ、もう気にしてねぇよ。オレが無実だってわかってくれたんなら、もういい」

 快く許してやると、知恵は嬉しそうに笑った。
 起き上がってゴミ箱にコンドームを捨てて戻ると、彼女と仲直りのキスを交わした。




(side 優)

 冷やりとした感触で、ボクは目覚めた。
 額に濡れタオルが置いてある。
 あれ?
 あ、そうだ。
 ぱんつに頬ずりしている現場に、秀と知恵が踏み込んできて、知恵にあんな変態な姿を見られたショックで気絶したんだ。

 うわああん、もう終わりだ。
 知恵に嫌われた。
 ぱんつの誘惑に負けて、一生を棒に振ってしまった。

 横向きに寝転がって背中を丸めて縮こまり泣き伏す。
 誰かが背中を擦っている。
 秀だろう。
 いいんだ、慰めてくれなくても。
 下着泥棒のボクなんか放っておいて、お前は知恵とラブラブしてりゃいいじゃないか。

 やけくそになっているボクの耳に、意外な人の声が聞こえた。

「優ちゃん、どうしたの? どこか痛いの?」

 背中を擦って気遣ってくれていたのは知恵だった。
 嘘?
 どうして?
 愛想尽かして帰ったんじゃないの?

 がばっと起き上がると、本物の知恵がいた。
 瞬きして確かめる。
 知恵は心配そうにボクの顔を覗き込んだ。

「熱とかはないみたい。人が気絶するところって初めて見たから心配で。病院行く?」
「あ、ううん。大丈夫みたい」

 逃避行動の一種だったのだろうか。
 ボクは意識を失って、途中から眠っていたようだ。

 知恵は怒っても呆れてもいない。
 いつもの態度で接してくれている。
 不思議そうな顔をしているボクに、知恵も気がついた。

「優ちゃん、あたしに嫌われたと思った?」

 ボクが頷くと、知恵は苦笑した。

「驚いたけど、あのぐらいで嫌いになんかならないよ。優ちゃんが下着を欲しがったのはあたしのだから何でしょう? 気絶しても離さないほど欲しがってたなんて知らなかった」

 う、うーん。
 反論したいけど、できない。
 曖昧に笑ってごまかすと、知恵がボクの首に腕をまわしてくっついてきた。

「下ろしたてのショーツだったけど、優ちゃんにあげる。あたしだと思って大事にしてね」

 知恵からの積極的なキスにボクも応えた。
 ああ、良かった。
 知恵に嫌われてないんだ。
 ボクの人生はまだ輝いている。
 おまけにぱんつも手に入って、思わぬ収穫だ。
 これからは気をつけよう。
 あんな思いはもうしたくない。

 ボクが気絶している間に、秀と知恵はたっぷり抱き合ったらしいけど、泥棒の罰ということでボクはさせてもらえなかった。
 仕方ないので、今日は罰を受け入れてキスだけで我慢した。




 (side 知恵)

 あれから数日後、あたしはまたショーツを探して家捜ししていた。
 今回なくなったのは、優ちゃんにあげたショーツと同じデザインで水色のヤツ。アクセントのリボンは青だ。
 昨日も優ちゃんと秀ちゃんが部屋に来ていた。
 まったくもう、一枚だけじゃ足りないの?
 ため息をついて、あたしは翌日に犯人である彼を呼び出した。

「怒らないから返して。二枚もいらないでしょう?」

 優ちゃんを床に正座させて、子供を宥めるような口調で問い詰めた。
 でも、優ちゃんは無実を訴えた。
 今回は自分じゃないと言う。

「信じてよ、本当にボクじゃないんだ。犯人は秀だよ、あいつが一人になった時があったじゃないか」

 あたしは優ちゃんと一緒に彼の家に行った。
 前回と同じ状況に嫌な予感がする。
 秀ちゃんは家にいるみたいで、玄関に靴があった。
 足音を立てないように、こっそり二階へと進んでいく。

 秀ちゃんの部屋の前で耳を済ませると、興奮しているような息遣いが聞こえてきた。
 優ちゃんがあたしに開けるよと目で合図を送ってくる。
 あたしが頷くと、彼はドアを開けた。

「げっ! 知恵! 優っ!」

 中にいた秀ちゃんは、仰天して声を上げた。
 彼はベッドで横になって水色の布を頬に当てていた。
 それは間違いなく盗まれたあたしのショーツだ。
 兄弟揃って同じことしないでよ。
 あたしは白い目で、二人を睨んだ。

「だ、だってよぉ。優が持ってるの見てたら、オレも欲しくなったんだ。それでちょうど一人になった時にタンスを開けたら、これが目に付いて……」

 言い訳している秀ちゃんを前にして、肩を落とす。
 結局、優ちゃんも秀ちゃんも、どっちも同じぐらいスケベだってことだ。
 わかってたつもりだったけど、ここまでとは思わなかったな。

 でも、やっぱりあたしは二人が大好き。
 今回は許してあげよう。
 それだけ彼らがあたしを好きだって、証明されたわけだしね。


 END

INDEX

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