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すっかり衣服を剥かれたソロは、大きく開かされた脚の間に躰を入れた魔王に屹立を。
背後から彼を抱き込むように居るクリフトにぷっくり色づいた飾りを捉えられた。
甘い囁きが耳朶を食みつつ繰り返される。下穿きを降ろされた時には、すっかり元気になっ
ていた幹をピサロが面白そうに触れ、唇を寄せていた。
言葉をなさない喘ぎがぽろぽろこぼれてゆく。
その間、息を継ぐのすら侭ならぬソロが、必死に熱の放出を懇願していた。
しっかり根元を抑えたままの口淫は、気持ち良さを通り越して、甘い拷問のように感じら
れる。今夜は本当に余裕ないのに…
「最初から飛ばし過ぎると、ソロが大変でしょう?」
そんな言葉を落とされて、焦れた愛撫が躰中に施されてゆく。
ソロは渦巻く灼熱にただただ翻弄されていた。
「ふ‥ぁ‥‥‥っ。ああっ‥‥」
「…本当に余裕なかったのだな。」
クスリ‥と鈴口で笑われて、ソロがびくんと躯を悸わせた。やっと訪れた遂精だったが、
まだ足りぬとばかりにそこは蟠る熱を帯びていた。ふわっとかかる息にすら、ゾクンと
感じてしまう。
「やん‥だからっ‥言ったの‥に…。はあ‥っ‥」
まだ滴る蜜口に再び舌を這わされ、侭ならない呼吸の合間に非難めいた声を上げる。
漸く迎えられた絶頂に、ソロがほう‥と艶めいた余韻に浸る間もなく、樹液を潤滑に指が
秘所へと滑った。蟻の戸渡りを辿った指がつぷっと差し挿れられる。
「あっ‥ん‥‥、そっちは‥焦らしちゃ‥嫌だか‥らっ‥‥」
「ソロはせっかちですね…」
クス‥と耳元に艶やかな声音が届くと、差し挿れられる指が増えた。
「あっ…ふ‥ぁ。クリ‥フト…?」
驚いたように目を開いたソロが、振り仰いで彼を凝視めた。ふわり微笑んだ彼が、唇を塞
ぐ。濃厚な接吻の間も秘所を蠢く指達が好き勝手蹂躙してくる。
「はあ…っ。ああ…ふ‥っく‥‥‥」
唇が解放された時には、内奥に蟠った熱流にすっかり浮かされていた。
「ね…もう平気‥だからっ。早く…っ‥ねえ‥‥?!」
「…今宵は私が先に貰うぞ。」
クリフトへ強求るよう縋るソロに苦い視線を送った後、その先にある神官へ目を止め、
魔王が低く主張した。クリフトが目を細めソロへと微笑む。
「ソロ、彼も大分余裕ないようですよ?」
そう囁かれ、ソロが正面にある魔王へ目を移した。
「…ピサロ。」
そっと伸ばした手で銀の髪を一束掴む。指の間をサラサラと滑らせながら、ソロはぽつん
と呟いた。
「‥‥欲しい?」
ひっそりと訊ねられ、魔王がふっと表情を和らげる。「ああ」と答えると、ソロは泣き笑
いのような顔を浮かべた。
「オレも‥‥!」
両腕を彼の背へ回すと、口接けが降りた。
ほんの少し冷たい躰とは逆に熱い口内へと招かれて、暫く睦み合った後、銀糸を紡ぎなが
ら解放された。そのまま腰を取られ、躰が沈む。
両肩がシーツへ降りると、ずん‥と一気に貫かれた。
「ふあ‥っ、ああ‥‥っ。はあ‥んっ‥‥」
待ち侘びた熱杭に穿たれ、ソロの背が撓る。すっかり蕩けていた蜜壷は、躊躇なくそれを
受け入れ、その熱を歓迎していた。
「あ‥ああっ‥‥熱‥いよ‥‥‥」
「…私もだ‥っ…」
逃さぬとでも言いたげに絡みついてくる内奥に、余裕を奪われたよう、ピサロが吐いた。
「‥ぁ…んっ‥‥ピ‥サロ‥‥はあっ‥」
欲望を迸らせ、ソロが甘い吐息をこぼす。抽挿のリズムが速められると、ぽろぽろ短い喘
ぎが部屋を満たした。
「あ‥ああっ‥‥」
遅れて最奥へと叩きつけられた欲望に、ソロが安堵の吐息を落とす。
ぽやんとした瞳をゆっくり開くと、視界にクリフトの姿があった。
ふわりと微笑まれて、ソロも笑みを返す。それからふと至ったように、頭を反らし、彼を
窺った。
「クリフト…」
そっと手を伸ばし、間近にある彼の膝へと触れると、腕をついて躰を反転させた。
クリフトの膝の間に躰を沈めたソロが、眼前にそそり勃つ彼へ口接ける。
「ソロ…」
「‥させて…」
そう申し出たソロは、そっと手を添え熱棒を口に含んだ。
全部を含めない彼だったので、尖端を舐め含んだ後、幹に唇や舌を這わせ、愛しむよう包
んでいった。
「ソロ…っ‥‥‥」
「気持ちいい…?」
「ええ‥‥っ…」
上目遣いに覗うソロに、上ずった声でクリフトが答えた。
「…あっ‥ん‥‥‥」
それを嬉しげに見た彼が、更に奉仕を続けようとすると、秘所に指が突き立てられた。
振り返ると、彼の腰を支えたピサロがにやりと笑む。
「気にするな。続けろ。」
「‥‥‥‥」
少しだけ考え込むような貌を浮かべたが、ソロは再び正面を向くと、行為を再開した。
硬度を増した熱杭の鈴口から滴る樹液をぺろっと舐める。そのまま猫の仔のように幹へと
伝うそれを舐めとっていった。
「…ふ‥ぁ‥‥‥っ、ぅ‥ん…」
徒な指が内部を弄ぶよう巡ってくると、そっちに気を取られたよう喘ぎがこぼれた。
抗議をしようと振り返りかけたソロを、クリフトの手が止める。目だけで彼を見ると、
そっと頭を撫ぜられ声がかけられた。
「‥続けて。」
柔らかく促され、コクっとソロが頷く。半分後ろに気を取られながらも、ソロは昂ぶりに
口を寄せた。
「あっ‥もう――」
息を乱したソロが堪らずと彼を離し、声を上げた。
「もう‥なんだ?」
「‥‥ピサロが…欲しい‥っ。」
「…いいのだな?」
コクっと頷くソロに笑味を浮かべ、引き抜いた指の変わりに己を宛てがった。
「ふ‥あ‥‥っはあ‥‥‥」
遠慮なく腰を進められ、ソロの背が撓る。
灼熱が内奥を満たしてゆく感覚の心地よさに酔うソロに、もう1つの昂ぶりが止まった。
それを躊躇なく銜え込む。熱に浮かされながらの口淫は、より大胆さを増しクリフトを
煽った。グッと張り詰めたそれが欲望を吐き出す。口で受け止めたソロが噎せながらも、
喉を鳴らし嚥下した。
「‥ソロ。」
躰を引いたクリフトが、そっと彼の顎を取る。
濡れた瞳が交わされると、2人の間から笑みが浮かんだ。
「…あ、ん…っ。」
ピサロにグイっと躰を引かれ、彼の膝に乗る体勢へと移される。より深まった繋がりに、
ソロが一瞬顔を顰め、艶やかに啼いた。
「はあ‥っ、ふ‥‥‥」
微笑んでそれを見たクリフトが、彼の頬を手のひらで包み口接ける。
間近でピサロが苦い顔を浮かべたが、黙認を決め込んだのか、代わりに‥とばかりに腰を
支えていた手をゆっくり滑らせた。
深まる口接けに合わせるように、胸へ辿り着いた指が飾りをきゅっと摘まんでくる。
湧き上がる甘い吐息を飲み込みながら、ソロは濃密な繋がりに満たされた。
「はあっ‥はぁ…はぁ‥‥‥」
すっかり息の上がったソロが蕩けた瞳でクリフトをみつめる。
「クリフトぉ…オレ‥‥‥」
甘えた声で縋るようなソロに、ふわりと微笑んだクリフトが唇を耳元へと寄せた。
「本当に‥可愛いですね、ソロは…。いいですよ、そのままで…」
軽く口接けると、クリフトが躰を折った。
穿つリズムに合わせて揺れるソロの欲望を手に取り、唇を寄せる。
とろとろ溢れる蜜を舐め取ると、口腔へと招き入れた。
「あっ…ん‥ん‥っふ‥‥ああっ‥‥」
躰中の血液が熔岩に変わったんじゃないか‥そんな錯覚すら覚え、ソロは滾る熱流に身を
焦がした。身内に蔓延った様々な杞憂を払うかのように…
幾度目かの迸りを受け止めた後、ソロはそのままスウ‥と眠りに落ちた。
「…すっかり熟睡してますね。」
クスリ‥笑いながら、クリフトがソロを覗った。
「‥取り敢えず。そのままではなんですから、浴室先に使っていいですよ。
ソロは頼みます。」
彼を抱き込んだままの魔王へそう声をかけ、クリフトがベッドの始末を引き受けた。
かなりな惨状に、クリフトが頭を抱えながら、片付け始める。
魔王はそれを横目で眺めつつ、ソロを連れ浴室へと向かった。
「‥‥‥」
ぐっすりと眠るソロを湯船へ浸からせ、躰を清めてやる。
濡れた翠の髪をそっと梳ると、彼と繰り返された逢瀬の夜が思い出された。
あの頃も、先に意識を飛ばしてしまうソロを、こうして面倒見ていた。
唯一…素の感情のまま接触する事を許された、限られたひとときとして――
躰をさっぱりさせたピサロが浴室を出ると、情事の名残を留めるシーツ類をまとめたクリ
フトが、う〜ん‥と唸っていた。
「‥なにをしている?」
「ああ‥ピサロさん。いえ‥取り敢えずこれは外してしまったのですが…。処分しちゃう
訳にも行きませんし…」
不自然でしょう‥とクリフトは苦笑した。
「そういうものか‥? ならば…」
ピサロは怪訝そうにしながらも、ツカツカ歩み寄ると、丸められたシーツ類に火を付けた。
丸々灰へと変え、よし…とばかりに頷く。
「宿の者には、誤って煙草を落としたとでもすればよかろう。」
「…まあ、いいですけど。では‥ピサロさんの責任という事で。」
説得力に欠いてるな‥と内心思いつつ、提案者に被せる事でクリフトは妥協した。
「何‥?」
「私は煙草は嗜みませんし。ソロも同様ですので。」
「…ふん。で‥これは今夜は使えぬな。」
中央のベッドを指し、ピサロが突き放すよう話した。
「そうですね。」
「コレは私が預かるぞ。」
腕の中のソロを示し、ピサロが主張する。
「構いませんけど‥風邪は引かさないで下さいね?」
そうにっこり笑うと、彼はソロの分の着替えを差し出した。
「なんなら、私が着せますけど。」
渋面を浮かべる魔王に、神官がにこやかに話す。
結局、手際の悪い魔王を見兼ねて、クリフトも手伝う事となった。
「…貴様が何を企んでるのか、さっぱり読めん。」
ぽろっとピサロが思いを吐露した。
「企むだなどと…。私は‥ただソロが可愛いだけですよ。
ぐだぐだ溜め込んでしまうより、発散させた方が心にも躰にもいいでしょうしね。」
すっかり夢の人と化しているソロの髪を梳きながら、クリフトが微笑んだ。
「今夜はゆっくり休ませて上げて下さいね。」
そう残し、彼は浴室へと消えて行った。
しばらくその背を眺めたピサロが、スウスウ寝息を立てているソロへと視線を移す。
穏やかな寝顔は、それを覗うピサロの心を和ませた。
フッと小さな微笑が浮かぶ。優しく細められた眸に、愛しい者だけが映っていた。
「ん〜よく寝た。」
翌朝。随分陽が高く昇った頃。ようやく目を覚ましたソロが「う〜ん」と伸びをした。
「…随分ゆっくりだったな。」
背中に声が掛かって、ソロがビックリと振り返った。
「ピサロ‥!? あれ‥オレ、昨晩‥‥‥」
1つベッドに居る事に惑いつつ、ソロが昨晩の記憶を辿る。
「おはようございます、ソロ。」
「あ‥クリフト。おはよう。オレ…」
「昨晩の事、覚えてません?」
「…覚えてる。」
ソロが頬を染め上げ答えた。
「なら良かった。お腹空いたでしょう? 食事‥行きませんか?」
「あ‥うん。…ねえ、アレ、どうしたの?」
隣のベッドから消え失せてるシーツ類に目を止め、ソロが訊ねた。
「ああ。昨晩あの後、ピサロさんがうっかり煙草の火を落としてね。
消し炭になってしまったんですよ。」
にこやかにクリフトが説明する。それを真に受けたソロが眉を上げピサロを見た。
「え…ピサロって、煙草なんか吸うの? 知らなかった…」
クスクスとクリフトが笑う。ピサロは苦い顔を浮かべ、ソロにうんざりと告げた。
「‥お前は、こいつの言う事を鵜呑みにし過ぎだ。」
「え‥違うの? え…?」 理由→わけ
理由解らずに、ソロがおろおろ2人を窺う。ピサロはくしゃりと彼の頭に手を置くと、
フッと笑んでみせた。ドキンとソロが頬に朱を走らせる。
「そんな顔してると、襲うぞ。」
言いながら、ぽかんとする彼の顎を取り、しっかり唇を寄せた。
「ん…ピサロ‥」
「‥まだ足りぬか?」
「ば‥馬鹿、違うよ。もう‥早く朝ご飯食べに行こう。」
ぐい‥と彼を押し退けて、ソロが切り替えるよう促した。
さっさとベッドから抜け出し、着替え始める。
(…あれ? そういえば…誰が服‥着せてくれたんだろう?)
ふと‥服を着替える手を止め、ソロはきれいに清められた躰をそっと抱いた。
目だけで後方を窺えば、何やら和んだ様子で語っているクリフトとピサロの姿が映る。
昨晩の事はしっかりと記憶に残っている。
多分‥あんまり普通じゃないかも知れないけれど…
でも。すごく大事にされて…満たされていた。‥‥倖せ‥だった。
いつか…
旅が終わって、独りになっても‥
大丈夫かも知れない――
そっと肩へ触れ、その少し下に蟠る違和を思った。
ソレがいつかは解らないが。
遠くない未来、その時は訪れるだろう。
出来得るならば、旅の仲間と共にあるうちは…今のままで居たい。
そんな事を願いながら、祈るようその瞳を閉じる。
瞼の裏には、青空に融ける白い翼が浮かんでいた――
2006/4/8
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