その7
そんな彼の表情に甘く瞳を眇めさせるオルガ。彼は内壁を広げるように蠢い
ていた指を引き抜くと、代わりに己を宛がった。
「んっ…く‥‥っ…」
指とは質量の違うソレが押し入ってくる感覚に、苦悶したように顔を顰めさ
せる鷹耶。
「キツイか…?」
「…だ‥丈夫‥だ。くっ…ぅ‥‥」
苦しげな表情のまま言う鷹耶の証にオルガが手を伸ばす。きゅっとソレを握
り込むと、ゆるゆると扱き始めた。
「ん…っはあ‥‥。」
与えられる快楽に縋ろうと、気をそちらへ向ける。強張った身体が緩められ
ると、オルガは慎重に腰を沈めて行った。
「ふぅ…は‥っん‥‥‥」
ビリビリと走る熱い衝動に、鷹耶が大きく仰け反った。
「あっ‥あ…んんっ‥」
短い嬌声を零していく鷹耶。オルガは満足そうに笑むと、敏感な場所を容赦
なく責めたてた。湿った水音が艶かしい声と混ざり合う。
「んあ…っ‥‥はあ‥‥んん‥‥‥」
少しづつ馴染ませた秘所の奥までオルガは到達すると、身体を曲げ彼の唇を
奪った。貪るような口づけが別の水音を立ててゆく。
「んふ…。あ‥‥オル‥ガ…すげ‥熱い‥‥‥」
「ああ…俺もだ。‥お前ん中、すげー熱い‥ぜ…」
掠れるように漏らすオルガ。彼は愛おしげに鷹耶の顔に貼り付いた髪を漉き
上げた。
「…なあ。動いても平気か?」
艶を孕み訊ねる彼に鷹耶が頷く。オルガは小さく額にキスを落とすと、様子
を覗いながら律動を開始した。
やがて。最初はどこか苦しげな顔を浮かべていた鷹耶だったが、少しずつ嬌
声を零し始めた。艶めいた声が薄明かりの先にある闇に吸い込まれていく。
「あ…っ。はあ‥‥はあ‥‥ん‥‥っ俺もう…」
「…いいぜ。達っちまえよ。今度は邪魔しないからさ。」
ふふふ…とからかい混じりの声が、鷹耶の耳元に届いた。
熱に染まった瞳で、鷹耶は彼の背に両腕を回し、ぎゅっとしがみつく。
「ん…っ。ああ‥‥っ。」
達した開放感から身体の力が一気に抜けたのか、鷹耶はそのまま身体をベッ
ドに沈ませてしまった。
「俺もそろそろ達かせて貰っていいか?」
オルガはベッドに身を委ね、荒く呼吸をする彼にそう断ると、激しく突きた
てて来た。容赦なく穿たれるその場所から、再び熱い衝動が込み上げてくる。
「あ…。くっ‥‥ぅんっ‥‥‥はあ…オル‥ガぁ…」
解放の余韻に浸る間もなく引き込まれる熱に、不服そうな瞳を鷹耶が向けた。
潤んだ瞳は色を滲ませ、彼の男を刺激してくる。オルガは口の端を上げると、
噛みつくような口づけを奪った。
「…鷹耶。‥悪りいけど、このまま達かせて貰うぞ。」
「…え? あ‥はあ‥‥。…っく。ああっ‥‥‥」
急速な動きに彼自身も促され、奥まった場所に叩きつけられる欲望の証を感
じながら、弾けさせた。
「はあ…はあ‥。」
「…大丈夫か‥?」
ぐったりとした身体をベッドに投げ出したまま、オルガが声をかけた。
「…何?」
声を出すのすら億劫そうに、鷹耶が聞き返す。
「‥いや。そーいやお前病人だったんだよな‥って、思い出してさ。」
「何を今更…」
もうカウントすら忘れる程貪った後じゃないか…と、鷹耶が呆れ気味に苦笑
んだ。
「まあ。そーなんだがな。お前があんまり可愛いから、ついついねだられる
と応えたくなっちまってさ。」
「あんた‥目がおかしいんじゃねーの? なんだよ、その「可愛い」って。」
「可愛いさ。そーやってムキになる所とかさ。」
オルガは愉しそうに笑むと、汗で額に貼り付いた彼の前髪を掻き揚げた。
「なんか‥熱吹っ飛んじまったようだな。身体拭いてやろうと思ったけど、
これだったら浴室で汗流してやろうか?」
彼の額にそのまま手を当てると、そう続け鷹耶を覗った。
「ああ‥。その方がいいな。…でも、いいのか?」
世間はすっかり寝静まった時間だろう‥と、鷹耶が聞き返す。
「余程大きな音でなきゃ問題ねーさ。防音だしな。」
「…ふ〜ん。」
「じゃ、ちょっと待ってろ。湯加減確かめてくるからさ。」
オルガはベッドを降り、さっとズボンを身に着けると、彼に声をかけた。
「‥‥! オルガ。待てよ、俺も行く。連れてけよ。」
疲労した身体をぎこちなく引きずるように、鷹耶がベッドから離れるオルガ
に手を伸ばした。
「鷹耶‥。仕方ねーな。ほら…」
オルガは苦く笑んだ後、シーツで彼を包み抱き上げた。
「手貸してくれれば歩けるって‥。」
「まあまあ。まだ腰辛いだろ‥? 無理すんなって。」
「…誰のせいだよ?」
「俺かな。だから責任とって運んでやるって言ってんだろ?」
苦く言う鷹耶にしれっと答えると、彼は鷹耶を抱えたまま浴室に向かう。
「‥仕方ねー。使ってやるよ。」
諦めたように零すと、彼はオルガの首に手を回した。
「はいはい。せいぜい使ってくれや。」
あくまで不本意である事を強調したがる鷹耶に笑んで応えるオルガ。
先程までの色に染まった彼とのギャップが、なんとも好ましく映っているの
だと、知るよしもない鷹耶だった。
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