「…もうあんな風には、触れないで下さいね‥?」
鷹耶の髪を梳きながら、クリフトがふわりと微笑った。
昨晩の手酷い扱いを悔いる鷹耶に、『心が見えない行為が何より苦しかった』と告げた後、
クリフトは微笑んで返したのだった。
そんなクリフトの想いに、しっかり鷹耶自身が反応を示す。
「え…? あっ―――!?」
クリフトが身内に広がる圧迫感に途惑う。
先程の行為後、鷹耶が彼の内に納まったままだったのだ。
「…悪い。なんか‥その気になっちまった…。」
バツが悪そうに苦笑った鷹耶が、小さなキスを額に落とす。
「‥まだお前の中に居たんだよな…」
そう続けた鷹耶がにんまりと笑んだ。悪戯っ子のような笑みにクリフトが退避ぐ。
「た‥鷹耶さん…? もしかして…?」
引きつったように問いかけるクリフトに、いつもの甘い笑みが返される。
「もう1回ヤラせて?」
「ええっ? ウソ‥でしょう?」
惑うクリフトに構わず、鷹耶が彼の首筋に顔を埋める。唇がゆっくりと鎖骨をなぞると、
胸元の飾りを捉えた。
「ち‥ちょっと、鷹‥耶‥ぁんっ‥。だ‥ダメ…っ。」
ねっとりとした感触が、彩づく果実を包み込む。なんとか彼を退けようとしたクリフトは、
熱く走る感覚に仰け反った。
「昨晩のお詫びにいっぱい感じさせてやるな。」
機嫌良さそうに笑う鷹耶が、口元とは反対の胸へ指を滑らせた。2本の指が固くしこった
突起をきゅっとつまみ上げる。
「あっ‥ん。鷹耶‥さん…」
…そんな[お詫び]はいらないです――と瞳で訴えてくるクリフトだったが。
色よく反応示してくれる彼は、鷹耶を増長させるだけであった。
「あ…はあ‥っ。」
緩く腰を回すと、クリフトが更に艶めいた嬌声を上げた。
「…苦しい?」
鷹耶が気遣うように声をかけた。クリフトは否定を示すよう小さく首を振る。
「…大丈夫‥ですけど。でも‥明日に差し支えて…あ‥っん‥」
「明日はどうせ情報収集に1日取られるさ。…お前は宿で休んでていいからさ。」
チロチロと舌を突起に這わせながら、鷹耶があっさりと話す。
「い‥いやですよ。こんな理由で寝込んだりしたく…ふ‥ぁ。た‥鷹耶さん‥っ。」
どうにか思い止めてくれないものかと、言葉を紡ぐクリフトだが、愛撫の手を緩めてくれ
ない鷹耶に、抗議めいた声を上げた。
「‥‥。大丈夫。オレが言い訳用意してやるからさ。」
ふっと部屋を見回した鷹耶が、ある物に目を止めるとにやりと笑んだ。
「だから。今夜はとことん付き合ってくれなv」
「ん‥ふぅ‥‥。」
身体を曲げた鷹耶の顔が間近に迫ると、ぎょっとするクリフトの反論を塞ぐよう唇が
重なった。口腔に滑り込んだ悪戯な舌先が、歯列を巡り裏筋を舐め上げる。
惑う彼の舌を絡めてゆくと、湿った音が暗い室内に融けていった。
「あ‥はあ‥っ。ああ‥っ‥‥‥!」
抽挿を繰り出す度に上がる音と水音を聞きながら、クリフトは熱をもった最奥に叩きつけ
られる飛沫を思った。鷹耶が同時に彼の下芯を戒めていた手を緩め上下させて来たので、
ほぼ同時に極めると、2人はそのままぐったりベッドに身を沈めた。
「はあ‥はあ‥。お前の声、本当色っぽくなったな‥。それに‥
そういう表情もなかなかそそられるぜ…?」 表情→かお
鷹耶がまだ息を荒げるクリフトに、そっと口づけた。
「か‥からかわないで下さい。もう‥‥‥」
頬に朱を走らせながらクリフトが微笑んだ。
鷹耶は彼の額にキスを落とすと、身体を起こしベッドを離れた。
「鷹耶さん…?」
クリフトが目線で彼の姿を追う。
サイドテーブルに移動した鷹耶が、ビンを手に取りベッド端に腰掛ける。
きゅっと浅く締めてあったコルク栓を外し、軽くビンを振った後、鷹耶が早速口に含んだ
「え…? あ‥うん…ふ‥‥‥」
クリフトの頭の脇に手を置いた鷹耶が身を屈めると、そのまま彼に口づけた。
温くなった液体が、舌を伝って彼の口内に流れ込んでゆく。
「‥ふ…コホ‥コホっ‥‥」
コクン‥と液体を飲み干すと、かあーっと喉から胃にかけて熱が生じ、クリフトがむせ
返った。
「た‥鷹耶さん、これ…」
「酒だよ。やっぱりキツかった?」
肩を竦めた鷹耶が、コクコクとビンの酒を煽った。
「んー、確かに強いかなあ‥。」
「鷹耶さん、それ‥お独りで飲むつもりだったんですか?」
クリフトが上体を起こしながら訊ねた。
「‥まあな。どーせ今夜は眠れねーと思ったからさ。」
「鷹耶さん…。」
「そしたら‥お前が俺の部屋に来て…。
…まさか、本当に入って来るとは思わなかったぜ?」
鷹耶がクリフトをそっと抱き寄せた。
「‥‥心配‥だったから。
鷹耶さんずっと様子がおかしかったし…。その‥ちゃんと休めているのかなって…。
でも‥‥。やっぱり部屋へ入るのは、勇気がいりましたよ?」
「クス‥そうだな。随分と部屋の前で悩んでいたよな。」
「え…?」
「お前がやって来たのは、すぐ判ったからな。扉の横でずっと、どうするのか窺っていた
んだ。気配を潜めてね。…お前じゃなかったら、とっくにぶち切れて、部屋へ引きずり
込んでたぜ?」
ニッと鷹耶が強気に笑んでくる。
「ま‥今のところ、お前以外と遣る気はねーけどな。」
「鷹耶さん‥。」
ふわりとキスが落とされて、クリフトが頬を染めた。
「あ‥あの…、それで‥もうお酒は必要なくなったのでは、ないんですか?」
話題を変えようと、クリフトが鷹耶の持つビンに目を移す。
「ああ‥これ? まあ。別にもう、飲まなくてもよかったんだけどな。でも‥‥」
くいっと酒を煽った鷹耶が、クリフトに口づけた。
口移しに飲まされた酒をコクンと飲み込むクリフト。
「クリフトも少しは飲んだ方がいいかな…ってね。」
「な‥なんでですか?」
「俺が一晩中お前に酒を付き合わせた結果、お前が酷い二日酔いになる予定だからさ。」
「なんですか、それ?」
「明日起きられない理由。なかなか名案だろ?」
鷹耶がニマニマ笑いながら、ぐーっと酒を煽る。
「まあ、大部分俺が引き受けるから、ほろ酔いくらいに付き合えよ。」
「そ‥そんなコト言ったって。このお酒、随分強いですよ? これ以上はもう‥‥」
「え…もう効いてるの? ‥そういや。お前今日はあんまり食ってなかったな。」
随分青い顔もしていたし…と思い出したように続けた。
鷹耶はそっとクリフトの頬に手を添えると、額を押し付けた。
「…もしかして。気分悪かったりする‥?」
気遣うよう、柔らかな声音で訊ねた。
「いえ‥。それはないですけど。流石にアルコールの回りは良さそうで‥‥」
クリフトが苦笑した。
「酔って眠っちまったら、続きが出来ねーしな。」
鷹耶は浅く嘆息すると、ビンをサイドテーブルに置いた。
「つ‥続きって…鷹耶さん?」
「ほら…明日休む口実も出来たコトだし。疲労気にせず励めるワケだ。
やっぱりここは…がんばってみようかと。ねv」
「が‥がんばらなくていいですってば。本当に立てなくなっち‥ゃ…あん‥‥‥」
慌てて鷹耶から離れようとしたクリフトだったが、背を向けた途端後ろから抱きすくめら
れてしまった。腹から胸へと滑った指先が、きゅっと突起を摘まみ上げる。悪戯な手先は、
下方にも滑り、中心をしっかりと捕まえてしまった。
「た‥鷹耶さん…っ。」
「こっちもゆっくり可愛がってやってなかったからな。今度はたっぷり…な?」
耳朶を甘噛みしながら、鷹耶が艶を帯びた声で囁きかける。
クリフトはぞくん‥と躯を悸わせた。
「ふふ‥。結構元気みたいじゃん。」
鷹耶の手の中で質量を増した花芯を撫ぜ上げた彼が笑んだ。
「だ‥だって‥‥あっ‥。あん…ダ‥メ。」
滴りを塗り込めるよう蠢く指先が、彼の熱を瞬く間に上昇させ、甘い吐息がこぼれた。
「焦らさず達かせてやるからさ。リクエストがあれば言えよ。」
「リクエスト‥って。そんな…ふ‥ぁ。んっ…ち‥ちょっと‥‥‥」
しっかりと彼を背から抱きしめながら、鷹耶が手淫をさらに続けた。
着実にポイントをついてくる手が、クリフトを高みへ導いてゆく。
甘やかな吐息をぽろぽろとこぼすクリフトが、やがて昂ぶりを解放した。
「あっ‥はあ―――!!」
くったりとその身を鷹耶に委ねるクリフトが、心地よい疲労感を覚えながら微睡んだ。
「…あの‥さ。」
鷹耶がぽそりと呟いた。色めいた声音が、暖かな吐息とともにクリフトの耳に届く。
「お前の中…挿入ってもいいか?」
つ‥と肩口から腹へ降りる指先が、ヘソの回りで弧を描いた。
「俺も…欲しくなっちまってさ。駄目‥か?」
下芯を弄っていた指が奥の蕾みを辿ると、つぷりと忍ばせてくる。
「鷹耶‥さん…。どうせ…駄目と言っても退かないクセに…。」
クスリ…仕方がないとでも言いたげに、クリフトが苦笑った。
「‥分かるか?」
顔を向けて来たクリフトに、鷹耶が笑んで返す。
「分かりますよ。‥いいですよ。そのかわり‥‥」
クスクス笑ったクリフトが腕を伸ばすと、鷹耶の顔を自分へと寄せた。
「言い訳の方は任せましたからね? 責任‥取って下さいよ?」
「了解…」
ゆるやかに甘やかな夜は更けて行った―――
2004/5/18
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