「…ん。あれ‥‥‥?」

目を覚ますと、そこはキングレオに滞在中何度か訪れていた奴の隠れ家だった。

ぼんやりと周囲を見回しながら上体を起こす。

「気がついたか‥。」

隣室からピサロが器を手にやって来た。

「あ‥うん。‥‥なに?」

ベッドの傍らに立った奴が、器をついと差し出してくる。茶碗のような木製の器の中には、

毒毒しい液体が並々と揺れていた。

「飲め…薬だ。」

「薬…?」

「‥お前、毒にやられてるな?」

「毒‥? でもオレ‥そんな自覚ないよ?」

毒を受ければ解るもんだけど…

「ああ…人間は病‥というのだったな。発熱はキングレオと戦ってからだろう?」

「…うん。」

「奴の血を傷口に浴びたのが原因だな。」

「‥‥‥。どうして…?」

先程とは打って変わった物腰に戸惑いながら、オレは小さく絞り出した。

「…キングレオを倒した事‥怒ってるんでしょう? なのに…どうして?」

なんで薬なんて‥? …どうしてそんな穏やかに話しかけてくるの?

「…大した力もない勇者に倒されるなど、所詮その程度の器でしかなかった者だ。

 奴の為に揺らぐ感情など、端から持ち合わせておらん…。」

「でも…あんたはオレが邪魔で‥殺したいんだろう? だったら…」

「お前は呆れる程忘れっぽいようだな。…この躯は、私の所有だと言っておるだろう?

務めを果たせるよう調整せねば、愉しめぬではないか。」

やれやれ‥といった風情で言い出した台詞に、オレは大きく吐息をついた。

結局こいつは[ヤるコト]の方が、大事なんだ。

「…これ。全部飲むの? …本当に効く?」

トクトクと揺れる液体に目を移すと、嘆息交じりに訊ねた。…あんまり飲みたくないし。

「飲まずとも、1カ月もすれば治癒するぞ? 普通の人間なら半年は寝込むだろうがな。」

「…飲んだら?」

「貴様なら‥3日もあれば治癒するだろう。」

「…本当だな?」

「調合にミスがなければな。」

「…あんたが作ったの?」

オレの為…に?

オレはぎゅうっと目を瞑って、一気に毒毒しい液体を飲み干した。

うえ〜っ。目茶苦茶苦いよお‥‥‥‥



「コホ‥コホ。…ありがと、ピサロ。」

オレは空になった器を奴に返した。ピサロは器を近くの机にコトリと置くと、ベッドに膝

を乗り上げて来た。そっと差し出された手が、オレの髪を梳くよう滑る。

「ピ‥サロ…」

すうっと近づく整った顔。瞳を閉ざすと、しっとりと唇が重なってきた。

乱暴にされた事も、それ以前に抱えていた悩みも忘れてしまいそうな、優しい口づけ。

‥‥今だけ、忘れてもいいのかな?

気がついたら、オレは奴の背に両手を回していた。



「あ…っ。はあ‥‥‥」

露になった胸の突起を口に含まれ、ねっとりと舌が絡んでくると、甘い吐息がこぼれた。

さらさらの銀糸を掻き抱きながら、彼の愛撫に身を任せてゆく‥

圧し掛かる体重を受け止め、ベッドに沈んだ身体は、重なる体温が不思議に心地よく、

オレを安心させてくれる。

「ふ‥はぁ‥‥っ。」

脇腹から這う指先が、脚の付け根を辿ってゆくと、ぐいっと脚が開かされた。

ピサロは身体を膝の間に割り込ませ、彼の前に晒されてしまった秘所に指を忍ばせて来る。

「ん…はあ‥‥」

入り口を解すように弧を描き、ゆっくりと指が沈んでゆく。内壁に押し入ってくる指先の

感触に、ぞくりと躯が粟立った。

「‥先に達っておくか?」

滴る先端を指の腹で撫ぜ回しながら、ピサロが愉しげに訊ねた。

「ふぁ…っん‥。あ…焦らさないで‥‥」              
強求った→ねだった

触れるか触れない程度の接触を繰り返され、オレは確かな愛撫を奴に強求った。

薄く目を細めたピサロが、手を添え上下させてくる。込み上げる衝動感に、オレは小さく

悸えた。

「あ…っん。ああっ‥はぁ‥‥っ。やん‥‥」

達する直前にせき止められてしまった欲望。根元を抑え込んでしまったピサロは、口に含

み更に強烈な刺激を齎してきた。出口を失った奔流が躯の内を駆け巡る。

「あっ…ピサロ‥っ。お願‥‥ィかせ‥て‥‥‥!」

彼の長い銀髪を一房掴みながら、涙目で訴える。

「あ‥ああっ。はあ―――!!」

…もっと焦らされちゃうかと思ったけど。意外にもすんなりと、オレは昂ぶりを解放させ

て貰った。

「はあ‥はあ‥‥。ん‥‥」

どくり‥と奴の口内に弾けさせ、肩で呼吸するオレに構わず、ピサロが秘孔の探春を深め

てゆく。増やされた指が敏感な場所を掠めると、沸々と熱い衝動が渦巻きだした。

丹念に責め立てられ、熱い吐息がぽろぽろこぼれてゆく。

「あ‥ん…。ピサロ‥も‥来ていい‥から…っ。」

「もう足りぬのか…?」

口の端を上げひっそりと訊ねるピサロ。オレは、身体を曲げた彼の首に両腕を回した。

「ピサロが‥いい。だから…来て?」



きゅうっと抱き寄せながら強求るソロに、小さく笑んだピサロが応えた。

「ふあ…っ。はあ‥‥っん…」

瞬間、苦しそうに眉根を寄せたソロだったが、すぐに艶めいた声がこぼれ始める。

ゆっくりと馴染ませながら腰を使うと、甘く吐息が乱れていった。

「ピ‥サロ。」

口づけを強求るソロに、柔らかな面差しを浮かべたピサロが口づける。しっとりと重なっ

た唇の隙間から、そっと舌が忍び込ませると、歯列をなぞり口内を巡らせた。

やがて。絡まる舌が水音を立て、静かに離れていった。

「あ‥っん‥ぁ‥あっ‥‥‥」

本格的な律動を開始すると、ソロが背を弓なりに反らせ、彼の腕をぎゅっと握りしめた。

頬を紅潮させ喘ぐ表情が情欲に染まる。そんなソロに満足そうに微笑んでみせたピサロが、

彼の最奥に欲望を叩きつけた。

「あ‥ああ…っ―――!!」

それに連動したように弾けさせるソロ。彼は身体を弛緩させると、繋がりを解き隣に横た

えたピサロへと、ころんと身体を預けた。



まったりと微睡んだ時が静かに流れる。

荒い呼吸が整うと、オレは遠慮がちに声をかけた。

「…あのね。‥‥どうして‥今夜は怒ってたの?」

「‥‥‥」

オレの髪を梳いてた指先がぴたりと止まる。

ソロは彼の表情を確かめようと、小さく頭を上げた。

「…待たされた。」

「え‥?」

「常ならば、すぐに気づく貴様が‥今宵は違った。」

…オレがピサロに気づいたのは、クリフトと岩場を去ろうとした時だったけど…

その前から来ていた…?

「…いつから居たの?」

「貴様は‥独りで夜の海を眺めていた。」

‥‥それって。クリフトがやって来た所から見てたって事?

「…あの男には、随分と気を許しているようだな?」

「え‥だって、クリフトは神官で‥今回何度も熱出して、迷惑かけてたから…」

「それだけか?」

「それだけだよ。大体クリフトにはちゃんと、好きな女の子居るんだから。

 なんでもあんたを基準にするなよ。それに‥‥‥」

オレはコテンと頭を奴の胸に預けると、吐息の後続けた。

「それに…オレだって‥あんたと以外‥こんなコト出来ないし…」

さらりとオレの前髪を掻き上げるピサロ。手のひらを額に押しつけると、彼が小さく嘆息

した。

「…また上がってしまったな。」

「うん‥。でも平気…」

「少し眠ってろ。…まだ時間はある。」

「うん‥‥」

優しく梳いてくる手を心地よく思いながら、オレはすうっと寝入っていった。





‥ふわふわと浮遊感に包まれたのは、なんとなく判っていた。

夢の中で、奴の声を聞いたような気もする―――



はっと目を覚ますと、そこは船の中にあるオレの部屋だった。

いつのまに戻ったのか、オレは自分のベッドで眠っていた。

トントントン…階段を降りる音が耳に届く。足音はそのまま部屋の前で止まると、かちゃ

り‥と扉が静かに開いた。

「ソロ‥。昨夜はこちらで休んでいたのですか!?」

クリフトがほう‥と吐息をつきながら、安心したように話した。

「あ‥うん…。ごめん‥心配させちゃった?」

「…また昨夜も発熱してしまいました?」

額から落ちたらしい濡れタオルを拾い上げたクリフトが、心配そうにソロを覗き込んだ。

「‥‥うん、ちょっと…。」

「頼って下さってもよかったのに。」

「ありがと…。でも、それほどでもなかったから‥さ。」

「…朝食は召し上がれそうですか?」

微笑み返すソロに、彼も微苦笑した後やんわり訊ねた。

「…もう少し休ませて貰ってからで、いいかな?」

「ええ。皆さんには私から伝えて置きましょう。」

「…ごめんね。頼むよ。」



遠退く足音を聞きながら、オレは静かに瞳を閉じた。

深く息を吐ききると、コツンと手の甲を額に当てる。…熱はとっくに下がっていた。



「…解んないよ‥。」

…あいつの正体も。オレの気持ちも。…どうしたら‥いいのかも‥‥

―――嫌われてるかも

乱暴にされてるコトより、そう考えてしまったコトの方が苦しくて‥哀しかった。

だけど…

所有だからって。わざわざ薬まで用意してくれるのって‥

―――キライだったらしないよね?

そう思ったら‥なんだか嬉しくて。…暖かくなったんだ。



…いつかは戦わなければイケナイ敵――だとしても。

今はまだ…戦いたくないんだ。

失くしたく…ないんだ―――



だってオレは―――



オレの心が皆を裏切って在る罪悪感を覚えながら、いつしか夢の中に迷い込んでいった。





2004/4/11




あとがき

そろそろ甘甘路線から脱しよう・・・と意気込んで始めたのに。
結局、なんか甘いお話に移行しちゃいました(><;
どうもソロは、散々迷う割に、ぴーサマ前にすると、彼中心に思考が巡ってしまうようで・・
すでに私の予定裏切って行動し始めてます☆
ぴーサマも、こじつけ好き(?)なお方で・・・(^^;
なんか今回お薬まで自ら調合ですか?←進化の秘法研究に携わってるので、それなりに造詣深いらしい。
実際部下である所のキングレオを倒されたコトより、ソロに面倒な負担強いて逝ったコトのが
腹立だしかったりします(^^; ←だってねえ。変な弱みで隙だらけになったら余計な虫が・・・・
今回ぴーサマが怒ってたのは、その「変な虫」になりかねない存在への嫉妬ゆえ・・です☆
ソロはそれが「ヤキモチ」から来てるとは認識してないようですが。(あまりにしょっちゅうなので)
近付く者は男女問わず良い顔しない彼に、慣れてしまった様子(^^;
けれど。自分の内にある感情には、どうやら行きついた模様・・・?

次回は多分、サントハイム編。
とゆー訳で。ここまで読んで下さった方、ありがとうございました(^^/

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