クリスマス番外編〜ソロ編〜  『サンタの贈り物』





「それは一体なんの呪いなのだ?」

エンドール。宿の一室。

ベッドの支柱にこの数日来括り付けられたままの不思議な物体を指し、ピサロが訊ねた。

実用的とは言い難い大きさの赤い靴下‥らしきモノ。

それはいつの間にかソロのベッドの脇で揺れていた。

「ああ、これ? ‥あのね、クリスマスイブにね、こうやって準備して置くと、サンタが

 プレゼント配ってくれるんだよ。ピサロ知らないの‥?」

怪訝顔のピサロに、にっこり笑ったソロが返した。

ピサロの渋面が更に深まる。

「知らん。‥お前は会ったのか?」

「ううん。何度か夜遅くまで待ったコトあるけど。いつも途中で寝ちゃってさ。

 でもね。朝起きるとちゃんとプレゼントが入ってるんだよ!」

「‥‥‥。」

「毎年ね、ちゃんとお願いしたプレゼントくれてね。オレ楽しみにしてたんだ〜!」

「‥‥‥‥」

クリスマスもサンタクロースも人間の風習として、聞いた事は確かにある。

だが…サンタのプレゼントとは‥親からの贈り物だと、そう聞いて居た。

「今年はさ、それどころじゃなかったから。すっかり忘れてたんだけどさ。

 ちゃんとカード持ってってくれたから、間に合ったんだと思うんだ。」

固まるピサロを他所に、ソロがウキウキ語る。

「…カード? 間に合った‥?」

何のことやら。不可思議な呪文を確認するように、ピサロが呟いた。

「欲しいプレゼントを書いたメモだよ。じゃないと、サンタだって困るでしょう?

 だからね、これに入れて置くの。そしたらちゃんと届くんだって。」

支柱に下げた靴下を軽く掲げて、ソロがにっぱり笑った。

「エンドールまで来てくれるか心配だったんだけど。ちゃんと無くなってたもん。

 すごいよね〜!」

…すごいのは、何の疑いもなく信じてるお前だろう。

などとは、思っても口にしない魔王さま。黙ってやり取りを見守っている同室の神官に、

スッと目線を送った。

含んだ瞳に魔王がガッカリ項垂れる。‥流石過保護者。子供の夢は壊せない‥か。



「何故ちゃんと説明してやらぬのだ?」

ソロが部屋風呂に向かうと、風呂から離れた部屋の片隅にクリフトを呼び込んだピサロが、

苦々しく口を開いた。

「楽しそうに思い出を話してるソロを見たらつい‥。まあ、良いじゃないですか。

 大体魔王さんだって、訂正しなかったでしょう?」

「それは‥少々混乱してだな。…私が伝え聞いた話では、ほんの子供のうちだけだと聞い

 たが? アレの存在を信じているのは。」

声を顰めながら、躊躇いがちに確認する魔王。

「‥まあ。私が知る限りでも、そうですね。私も伺った時には驚きましたよ。

 可愛らしいというか。危なっかしいというか‥」

にこにこと常と変わらぬ笑みで話す神官に、魔王が大仰な溜め息を落とす。

「…で。プレゼントのリクエストはなんだったのだ?」

サンタ宛のメモを抜いたのは彼だろうと睨んだピサロが、次の議題に移った。

「ああ‥それ。…うう〜ん。実はそれが悩みの種でして‥‥」

クリフトは初めて困ったような表情を浮かべ、ピサロに問題のメモを見せた。





「え〜!? ソロ兄ちゃん、来れないの?」

クリスマスイブをトルネコの家で‥とメンバー全員が招待を受けたのだが。

ソロとクリフト、ピサロの3人は、別に参加表明していた為、不参加を告げにトルネコ宅

を訪れた。トルネコの愛息ポポロは、久しぶりにソロと過ごせる今日をとても楽しみにし

ていたらしく、酷くガッカリ顔でソロを眺める。

「ごめんな、ポポロ。でもさ‥マーニャ達は来られるんだろ? きっと賑やかな夜になる

 よ。あ、そうそう。これ‥ささやかだけど。オレからポポロへプレゼント。」

気を取り直すようにと笑みを作ってソロが話すと、小さな包みをそっと差し出した

「‥今夜は無理だけどさ。もうしばらくここに滞在してると思うから。

 そしたら、ポポロとも遊ぶよ? な?」

「‥うん。約束だよ‥?」

不承不承‥といった面持ちで、ポポロが頷く。

「ああ‥約束。」

そういって。差し出された小指を絡め、約束の印を結んだ。

「きっとだからね‥!」

真剣な物言いに、ふわり微笑んだソロが頷く。

ポポロはやっと顔を綻ばせ、大きく手を振った。

それに送られるように、3人は場を後にする。

(‥ソロが来られない事だけが不服だったようだな。)

ぽつり‥と、隣を歩く神官に魔王がこぼせば、

(そうですね。‥まあ。ポポロもソロ贔屓激しいですから。)

と苦笑混じりに返される。

これから行く訪問先にも、同じようなソロ贔屓な子供たちが待って居るだろう事が容易に

察せられて。密かに吐息を落とす魔王さまだった。



教会が運営している小さな孤児院。

ちょっとした縁を持ったそこへ、3人はやって来た。

「わあ〜い。ソロ兄ちゃん、いらっしゃい!!」

戸口にシスターと共にやって来た少年が、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。

その声を聞きつけて、わらわら子供たちがやって来た。

「みんなすっかり元気になったよね。」

集まって来た子供たちの頭を撫ぜてやりながら、ソロが笑みを浮かべる。

初めてここを訪れた時は、大半の子供たちが病に臥せっていた。

「うん、もう全然だよ! お兄ちゃんたちがお薬取って来てくれたんだもんね!」

「いっぱいあったからね。町の人にも配ったら、すごく喜んでたんだよ。」

「そっか。よかったな。」

笑顔で報告してくる子供に笑んで返す。

3人はシスターに案内され、食堂へと通された。



モニカ姫の差し入れだというケーキは美味しかったし。他にも件の折に世話になったとい

う町の者からの差し入れもいろいろあって。それは賑やかなクリスマス会だった。

ソロの周りはもちろん、クリフトやピサロの側にも、常に子供たちが群がって、常とは違

う一時に燥いで回る。



『おじさん』呼ばわりされた魔王が苦い顔を浮かべる場面もあったが。

概ね平和に1日は過ぎて行った――



すっかり夜が広がり、子供たちが就寝の時刻を迎える頃。

ソロ達は名残惜しげな子供たちに見送られ、帰路に着いた。

「すごいみんな喜んでくれてたね。行って良かった‥!」

宿へ向かう道中。ソロがにこにこと今日の感想をこぼす。

「そうですね。ソロのプレゼントもとても喜んで貰えてたようですし。」

今日は終始笑顔を浮かべるソロに、クリフトも優しい笑みを返した。

「うん。ささやかなモノだったけどさ。持って行って良かったよ。

 ピサロもさ。一緒に付き合ってくれてありがとう。結構懐かれてたんじゃない?」

反対隣の彼へと目を移して、ソロが言葉を続けた。意外にも、小さな女の子に人気だった

ピサロだ。子供相手‥というコトで寛容になるのか、不思議と静かに相手になっていた。

「‥さあな。お前の周囲が一番賑やかだったぞ?」

小さく肩を竦めて、返すピサロだが。機嫌が結構良いコトは2人に伝わっていて。ソロは

クリフトと顔を合わせると、クスリ‥微笑んだ。

さあ‥と通り抜けた風が冷たい空気を運んで、ソロが身震いする。

「‥やっぱり夜は冷えるね。」

「そうですね。なにか降ってきそうな空模様ですし‥」

そう言って、クリフトが曇天の空を仰いだ。それに倣うように、ソロも顔を上げる。

「…あ。」

厚い雲が少し明るく見える‥そんな風に思いながら、闇を見つめていたソロが、小さく声

を上げた。クリフト・ピサロの目が一斉にソロへ移り、次いで視線の先へと移動させる。

「‥雪だ‥‥!」

「‥本当ですね。ホワイトクリスマスですか‥」

ハラハラと舞い降りてくる白い粒に、クリフトも口元を和らげる。

「…本格的に降り出す前に、宿へ入った方がよくないか?」

足を止めてしまった2人に、魔王が進言した。ソロは一応病み上がりなのだ。

「それもそうですね。‥あ、そうだ。」

クリフトはずっと抱えていたままの包みを解き出した。

その間にも、雪は次々落ちて来て。うっすら白く彩られてゆく。

雪から庇おうと、ピサロが外套でソロを覆ってやるつもりで動くのと、クリフトが荷を取

り出すのはほぼ同時で。ピサロは彼が手にした品を見、場を譲った。

「ソロ、濡れると風邪引きますから‥」

ふわり‥真白なフード付きケープがソロの頭部をすっぽり覆った。

「‥クリフト。これ…?」

ぼんやり空を見上げていたソロが、不思議顔でクリフトを見る。

「少々の雨や霧でしたら、これで凌げるそうですよ。これから向かう洞窟は、やたらと起

 伏に富んだ場所でしたしね。

 …大した物ではありませんが。私からのクリスマスプレゼントです。」

「‥ありがとう、クリフト。オレ‥嬉しい。プレゼント一遍に2つも貰っちゃった‥」

ソロが感動に涙ぐんで、そう呟いた。

「2つ‥?」

「うん。…言ったでしょう。サンタに願い送ったんだって。」

「ええ。」

願いの中身を知るクリフトとピサロが、顔を見合わせた。互いに何の事かと首を捻る。

「…あのね。‥ほら‥‥‥」

降りしきる雪を受け止めるように、手のひらを上向けるソロ。

「雪‥ですか?」

コクン‥とソロが肯定を示すよう頷いた。

「ソロの願いは雪だったのか‥?」

ピサロも困惑気味に問いかける。

「うん。‥あのね、雪が降るとね、寒いでしょ? そうするとね…自然と身を寄せ合って

 暖を取ろう‥って思うから。寄り添える誰かが居るコトを発見するでしょ?

 だからね…淋しくなくなるかな‥って。…そう思ったの‥」

こつんと身を預けて、ソロがピサロに寄り添う。すっとその身を更に引き寄せられて。

ソロは小さく微笑んだ。



「ソロ‥これは私からの贈り物だ。」

宿の部屋に落ち着くと、ピサロが懐に忍ばせてた包みを彼へ差し出した。

「え‥ピサロも? わあ‥開けていい?」

余程意外だったのか、目を丸くしたソロが嬉しげに破顔する。

了承を得て、ワクワクと中身を取り出したソロが不思議顔を浮かべる。

キメラの翼を象った、小さな金細工に紅の玉がはめ込まれている品。…装飾品だろうか?

「これ‥飾り?」

「‥いや。魔法道具の一種だ。

 一度だけだが‥移動呪文の役目を果たす。どこに居ようとな。」

「へえ‥! すごいね、それ。ありがとうピサロ。クリフトも、ありがとう。

 オレ‥すごく嬉しい…!」

大事そうに、貰ったプレゼントを胸に抱き寄せて、ソロが小さく肩を震わせる。

やがて顔を上げると、目元に滲んだ滴を拭って、笑顔を見せたソロが2人へ微笑んだ。

「オレもさ…何か用意したかったんだけど。子供たちの分で小遣い全部使っちゃってさ。

だから‥ね‥‥‥」

感謝の気持ちを込めて、ソロがそれぞれの頬にキスを贈る。

「‥ごめんね。芸がなくてさ。」

「いいえ、そんなコト‥」

申し訳なさそうに紡ぐソロにふわりと微笑んだクリフトが、口を開きかけた時、ノックが

届いた。

首を傾げつつ、クリフトが戸口へと向かう。

はたして。扉の向こうに立って居たのは、宿の主人だった。

「夜分にすみません。先程戻られた時に渡し忘れてしまったので‥」

そう謝って、主人はなにやらきれいにラッピングされた包みを彼へと手渡した。

「お連れのお嬢さんから言付かった品です。では‥確かにお渡ししましたよ。」

軽い会釈の後、主人は階下へ足を向けた。

短い礼を述べたクリフトが、そっと扉を閉ざす。

渡された荷を不思議そうに眺めると、リボンにカードが添えられていた。

「それなあに、クリフト?」

ベッドサイドへ戻って来た彼にソロが興味津々問いかける。

「ソロ宛‥みたいですよ。はい‥どうぞ。」

ベッド端に腰掛けていたソロに、クリフトが包みを渡した。

「オレ…? なんだろう‥?」

受け取ったソロが挟まっていたカードを開く。

差出人はどうやら女性陣一同‥らしい。落ち着いた文字はミネアだろうか?

「なんだ‥?」

「‥うん。なんかね、女の子たちが、オレの快気祝いを兼ねたクリスマスプレゼントだ…

ってくれたんだ。」

側へ寄り訊ねて来るピサロに、カードの文面を読んだソロが答えた。

「ほう…」

「オレ…彼女達の分も用意出来てないのに。いいのかなあ‥?」

「構わぬだろう。何を寄越したのだ?」

「あ‥うん、見てみる。」

そう言って、ソロは持っていたカードを脇に置いた。

リボンを解き、包装された紙を丁寧に解いてゆく‥

はらり…開いた包装紙にぶつかって、カードが落ちた。

気づいたクリフトが、すぐに拾い上げる。落ちたカードは2枚。どうやら重なっていたら

しい。クリフトは、ふ‥と2枚目の文字を目で追った。

『ずっと同じ寝間着で飽きたでしょう? 新鮮さを第一に選んで見ましたv

 きっとソロに似合うと思うわvv』

丸みがかった文字で書かれた文…恐らくマーニャの筆だろう。

「…ほう。ユニークだな。」

ほんのり感心孕んだ声音に、ふと顔を上げると、途惑いと苦味の混ざった表情のソロが、

中から出て来た服(寝間着)を広げていた。

「…これ。誰かのと間違えてるんじゃない‥?」

女物‥のようにしか見えない、フリルたっぷりのネグリジェ‥クリーム色した優しい白の。

「ね? 間違えたんだよね‥?」

彼の前に佇む2人に、縋るような目を向けたソロが同意を求める。

「…意外に似合うかも知れんぞ?」

フッ‥と口元を上げるピサロに、膨れたソロがクリフトへ目を移した。

「‥えっと。非常に申し上げにくいのですが。間違えた訳ではないようですよ?」

望む答えでないと知るクリフトが、苦笑交じりに返答する。

そして。2枚目のカードを彼へ差し出した。

それに目を通したソロの肩がふるふる震え出す。

覗き込むように文面を窺ったピサロが、ひっそり微笑を漏らした。

「『新鮮さ』‥って。オレ、そんなもの別に求めてないし…!

 悪いけど‥気持ちだけ貰って、これは明日返そう。女物なんて嫌だもん。」

「まあまあ。貴族の間では、こういったタイプのスタイルが、男性にも好まれてるといい

 ますから。一概にそうとは…。本当にソロに似合うと思いますよ?」

プンプンと話すソロを執り成すように、クリフトが微笑む。

「うそだあ‥。ただ単に、面白がってるだけでしょ?」

訝るソロが目を座らせた。すっかり疑惑の眼の彼に、クリフトが吐息を落とす。

「‥まあ。それも有りますけど。…でも。本当に可愛いと思いますよ?

 ね、魔王さん?」

「そうだな。どうせ他に見る者はないのだ。折角だから、試してみろ。」

「う…でもぉ‥‥‥」

「でしたら‥我々へのクリスマスプレゼントとして、着て頂けませんか?」

「え…?」

「成る程。それは良いな。」

「な‥。…なんで‥‥‥?」



結局。2人がかりで言い包められたソロは、不承不承贈り物を身に纏った。

わざわざ脱衣所に持ち込んでの着替えを、のろのろながら終え、部屋へと戻る。

「…ね? 変でしょう‥?」

即座に着替えられるよう戸口に張り付いたままのソロが、遠慮がちに口を開いた。

「いえいえ‥。やっぱりよく似合ってますよ?」

「ああ‥。確かにこれは『新鮮』だな‥。」

にやっと人の悪い笑みを浮かべたピサロが、スッと間近に立った。

「へ‥変だもん、絶対‥!」

上から下へと流れる視線を感じたソロが顔を背けて吐き出す。

「十分似合ってると思うがな‥。」

言って、ピサロがソロを抱き上げた。

「な‥っ、ん‥‥‥っ…」

抗議は唇に飲み込まれ、ソロはあっさりと抵抗を止めた。

熱のこもった口接けがその情熱を直に伝えて来たから‥

「はあ…、も‥ズルい‥よ‥‥‥」

欲望を煽る口接に、しっかり火を灯らせてしまったソロがクタリ吐き出した。

したり顔のピサロが口の端で微笑んで返して、3台並んだ真ん中のベッドへとソロを横た

わらせる。その彼の脇に腰を下ろしたピサロが、すっ‥と翠髪へ手を伸ばした。

「お前の仲間が、時折語るガーデンブルグの思い出話‥そう大袈裟でもなかったようだな。

たかが衣装と‥馬鹿にしたものでもないものだ。」

「でしょう? 元々華のある子と思ってましたけど。あの時は驚きました。」

ピサロとは逆サイドに腰掛けて、クリフトがソロへ微笑みかけた。

「もぉ‥クリフトまで。みんな面白がってただけじゃん…」

「そんな事ありませんよ。‥この贈り物も、よく似合ってて可愛いですよ?

 ね、ピサロさん?」

赤い顔を顰めて言うソロに、クリフトがにっこり答え、彼に同意を求めた。

「ああ。ちゃんと似合ってるぞ。サイズも丁度良さそうだしな。」

「も…いいよ。2人ともそんなジッと見ないでよ‥」

照れた様子でふいと顔を横向けて、真っ赤なソロがこぼす。

「折角の贈り物だからな。じっくり見分させて貰ってから賞味しようかとな‥」

口の端を上げて紡ぐピサロが、頬骨へ降ろした指をゆっくり滑らせた。

首筋を降りた指先が柔らかな布の上、前ヨークのカーブを辿るよう滑る。

くすぐるような感触だけを残し離れてしまうそれを、物足りなげな眸のソロが追う。

「‥そう煽ってくれるな。今宵は少々歯止めが効きそうにないというのに…」

情欲を孕んだ瞳に、喉の奥で苦笑ったピサロが口にした。

子供たちに懐かれまくってたソロでさえ、内心に嫉妬を覚えていたピサロだ。

それに加えて。思いがけないソロの姿を目の当たりにし、最早エンジン全開、いつ走りだ

しても不思議はなかった。

ソロが臥せってからずっと、体力の落ちた彼を気遣っていた魔王だったが。

今夜は少々自信がない。惑う彼の気持ちを余所に、ソロがふわり微笑んで返した。

「別に今更‥。もう本当に躰は大丈夫だから‥。…いいよ?」



ソロのOKが出たコトで。その晩は久しぶりに濃厚な夜になってしまった。

最初苦い顔をしていたソロも、結局彼女曰くの『新鮮さ』に絆された部分も多々あって。

[女の格好]に抵抗はあっても。どうやら[可愛い]と称させるコトは嫌いじゃなくて。

たまに‥だったら、まあいいかなあ‥などと。

翌朝、もう返す訳に行かなくなった寝間着を見て小さな吐息を落とした。



窓の外は一面真白な雪景色。

音を吸収する雪に覆われた街は、昼間と思えぬ静けさが広がり、しんしんと降り積む雪だ

けが舞い踊っている。

こんな日に、暖かく過ごせる大切な人が側に在る――

それがなんだか嬉しくて。

ソロは顔を綻ばせた。



――やっぱりクリスマスは特別なんだ。



そんなコト思って。

今年もサンタクロースに感謝いっぱいなソロだった。




2006/12/25



あとがき

クリスマス直前。ふと思い浮かんだネタだったので。
忘れないうちにと書き綴ってみました。
当初は、教会でのクリスマス会の様子や、ラストのえっち辺り(笑)
もうちょっと書き込む予定だったんですけど。
それやると激しく間に合わなくなりそうだったので割愛です。

しかしまあ。ソロってば、サンタさん信じているんですね!
ソロの村の人はもちろん。結局今年も誰も告げなくて。
竜の神よりサンタへの尊敬の方が篤いかも知れませんソロってば(^^;

ちなみに。
ソロが願ったのは‥”淋しい子供がありませんように”‥だったとか。
それを受けて。クリフトが提案するカタチで、教会の子供と過ごすコトを
決めたらしい。(もちろん。魔王さまとの協議の結果です)

一応お話は、ソロ達がみんなと合流してしばらく後‥って感じですが。
番外編ですので。本編に入るかは未定。

それでは。
ここまでお付き合い下さった方、ありがとうございました!

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