「…ただ、さ。1つだけ‥気になる事があるんだけど。…正直に答えてくれる?」
クリフトの胸に顔を埋めて、声のトーンを落としたソロが呟くと、顔を上げまっすぐ瞳を
交わした。真剣な眼差しに、クリフトが神妙に頷いて返すと、ソロは続ける。
「どうしてオレのコト…抱かないの?」
「え…?」
「最近さ、なんだか避けてるでしょ。…もう、そういうの興味なくなったの‥?」
求めれば応じてくれるが、彼からのアプローチが思い出せなくて、『想い』の変化が気に
なり始めたソロが、不安な瞳で見つめた。
「…困りましたね。」
今にも泣き出しそうな顔で見つめられて、クリフトは盛大なため息を吐いた。
「大きな戦いを控えているので、自制してただけなんですけど‥。
実は信用ないんですね、私も…」
「だ‥だって。最近のクリフト見てると、ピサロに遠慮してるのかな‥って。なんか一歩
引いてるってゆーか‥。このまま、離れて行っちゃうんじゃないか‥って、オレ…」
「約束したでしょう? ずっと側に居ますよ‥と。」
辛そうに俯く顔を上げさせて、額を合わせたクリフトが柔らかく言い聞かせる。
「それとも‥躰で示さないと、納得してくれませんか?」
クス‥と耳元で色めいた囁きを落として、クリフトが耳朶に唇を寄せた。
「‥ん。納得‥しない…」
「‥仕方ありませんね。途中で待ったは聞きませんよ?」
そう微苦笑したクリフトが、ベッドにソロを横たえさせた。
圧し掛かるようシーツに縫い止められると、濃厚な口接けが降りて来た。唇をそっと舐め
た後滑り込んだ舌が、彼のそれに絡みつき翻弄して来る。
「んっ…ん…ふっ…ぁ‥ん‥‥っ、く…ふ‥‥」
息継ぎすら侭ならない口接けを享受するソロが、ゾクゾクと肌を震わせる。
「ふ‥はあっ‥はあっ…」
口接けを解いたクリフトは、首筋から鎖骨へとキスを落とし、ソロの上着の裾から差し入
れた手をゆっくり滑らせていった。
「あっ…は、ん…あっ…あ‥」
忍び込んだ手の親指で、尖りを押し潰されると甘い声が上がり、背が撓った。その浮いた
背を包むようにもう片方の手が滑り込んで、柔らかな羽根の感触を確かめるよう手のひら
に納まって、さわさわ撫ぜられると、ソロの息は更に乱されてしまった。
「はう‥それっ…ダ‥メっ‥ああっ‥ん…」
身悶えるソロに構わず、器用に上着を取り去ったクリフトが彼の躰を俯せに返すと、ゾク
ゾク悸える背中に口接けを落とし、先程とは反対の翼を手のひらで包み込んだ。
「もう‥痛みはなくなったのでしょう‥?」
やわやわと揉み込むようにしながら、クリフトが耳元で囁く。
「はっ…あん‥そ‥だけど。でも‥暴走は‥しちゃうんだもん…」
「ふふ‥みたいですね。
ココが敏感な時は、全身過敏に反応してくれるんですよね、ソロは。」
小さな翼をきゅうと突っ張らせ、ぷるぷる悸える彼の白い背に花弁を散らしながら、クリ
フトはソロの服を剥いてゆく。
「ね‥クリフトもだよ。」
覆い被さってくるクリフトにそう声を掛けると、彼は一旦躰を起こし、衣服を脱ぎ去った。
「オレ‥こうして触れ合うのが一等好き。」
両腕を伸ばしたソロが、再び覆い被さって来たクリフトの背を抱くように手を回す。
ぴったりと肌を密着させると、安堵の吐息を漏らしたソロだったが‥
「ひゃ‥ん…」
頓狂な声が思わず上がってしまった。
「あっ‥あん…クリ‥フト? あっ‥ん…」
悪戯な手が腰から双丘を辿り、窄まりへ到着すると、早速暴いて来て。ソロは上擦った声
を上げながら、クリフトを窺った。
「言ったでしょう‥? 待ったは聞きません‥て。」
「ふ‥んっ‥ん‥‥あっ…」
ニッと口元で笑んだ後、クリフトは唇を重ねさせた。クチュ‥という水音が立つ度、指が
蕾みを押し開いて沈んでゆく。
「あっ‥はあっ…。あ‥ん…」
横向きのまま片脚を大きく曲げられて、更に大胆に指が内奥で蠢いてくる。
ビクビクと跳ねる躰から、悪戯な侵入者が去ると、曲げられていた膝を掴まれ、割り開か
れてしまった。背をシーツに預ける形になったソロが、脚の間に躰を入れたクリフトの動
作を見守る。
「あの…」
躰の中心が晒されて、いたたまれない面持ちで躊躇いがちに声を掛けると、フッと微笑が
返って来た。
「ここも‥いっぱいいっぱいみたいですけど。こちらを優先させて下さいね‥」
張り詰めた中心の先端とちょんと突いた後、蟻の戸渡りを滑った指先が窄まりを指した。
解されたその入り口につぷ‥と入り込んだ指は、更に入り口を広げるよう回転し、重ねた
指を同時に差し込んで来る。
「ふ‥あっ…あっ‥ん…はあ…」
いつもより性急に感じる行為だが、それが返って煽ってるのか、内壁がひくんと熱を待ち
侘びるよう蠢いて。熱を孕んだ喘ぎをソロはこぼした。クリフトは重ねた指を幾度か旋回
させると、あっさり引き上げ、代わりに猛った屹立を綻んだ蕾みに押し当てた。
「まだ少しキツいかも知れませんが…」
「平‥気…だと思う。いいよ…来て…」
一言断って来るクリフトにソロがふわりと微笑む。それに応えるようクリフトも笑むと、
ゆっくり身を沈め始めた。
「ふ…ん‥っく‥‥‥」
難関を越えてしまうと、後は割とスムーズに彼を迎え入れたソロは、身内に納まる熱杭の
熱さと存在感に、満たされる想いでいた。
「ね‥大丈夫だったでしょう…?」
全て納めきったクリフトに甘えるよう手を伸ばしたソロが、ふふ‥と笑んだ。
「ええ‥。じゃ‥遠慮なく行きますね。」
背を抱かれたクリフトがソロに小さく口接けて、上体を起こす。膝の裏に当てた手で脚を
割り開いたと思うと、宣言通り遠慮ない抽挿が開始された。
「え‥わっ。あっ…ん、ち…っ、ああっ‥‥」
いつもは睦言めいたやり取りを優先しているクリフトの性急な行為に、ビックリ眼を開い
たソロだったが。身内に納まる熱杭の齎す感覚に、すぐ気持ちが持っていかれてしまう。
「ふあ…っ、ああっ〜〜〜〜」
せき止められていた熱を、彼と同時に放出させて、ソロはくったり躰をベッドに沈ませた。
「はあ‥はあ‥。流石に‥もう限界かも…」
四肢を投げ出すようにしたソロが、隣に俯せに横になったクリフトに息も絶え絶えこぼす。
「すみません‥加減効かなくて。」
自嘲気味に笑んだクリフトが、申し訳なさそうに謝った。
「‥いいけどさ。避けられていた理由分かったし。知らずに煽ったの、オレだもん。」
ふふ‥と口元に笑みを浮かべて、ソロはクリフトと瞳を交わした。
「いつものいっぱい甘えさせてくれるクリフトもいいけど。余裕ないクリフトも、オレ好きだよ。
なんかいっぱい愛されてるんだな‥って。ひしひし伝わってさ‥」
「愛してますよ…ソロ。」
汗で額に貼りついていた翠の前髪を掬い上げて、クリフトがふわりと微笑んだ。
「オレも…大好きだよ、クリフト‥」
ゆっくり近づく彼へ微笑むと、唇がそっと重ねられた。
「ああ、お帰りなさい、ピサロさん。」
夕刻。静かに部屋へと戻って来たピサロを、クリフトが出迎えた。
「ああ‥。ソロはどうかしたのか?」
昨晩クリフトが使ったシングルサイズのベッドで眠っているらしい姿を認めて、ピサロが
神妙な面持ちで訊ねた。
「あ、いえ‥別に‥‥」
言いかけたクリフトが、背後で人の動く気配を覚え振り返った。
「う〜ん…。あれ‥ピサロ、お帰りなさい。」
気持ち良さそうに上体を伸ばしたソロが、戸口に立つ青年の姿を見つけほわりと笑んだ。
思いがけない笑顔で迎えられたピサロが面食らったように一瞬固まったが。それは隣のベッ
ドの側で作業していたクリフトも同様だった。それは久しぶりに見た明るい笑顔。
「ああ‥ただいま。何か‥良い事でもあったのか?」
ツカツカと彼の元へ向かうピサロが、不思議そうに訊ねる。
「え‥どうして?」
「苦手な天界へ行った後の割に、元気そうだからな。」
「‥嫌なコト思い出させないでよ。」
あっ‥と思い出したように、ソロはムスっと口を尖らせた。
「‥ふん、神官絡みか…」
側に立ったピサロは、目敏く鎖骨に赤い花片を見つけて嘆息した。頬にさっと朱を走らせ
て、ソロがハラハラピサロを見つめる。
「…えっと。怒ってる?」
「何故‥?」
「なんとなく…」
「今更だろう。それに‥最近構ってくれないと、淋しがってたろう?
寧ろ良かったじゃないか。」
ぽむ‥とソロの頭に手を乗せて、ピサロが小さく微笑んだ。
「‥気づいてたんだ。」
「お前は不安を溜め込む癖があるようだからな。気にもかけるさ。」
どんなきっかけで、ソレが爆発するか判らないと、ピサロが複雑そうに微苦笑する。
「えへへ‥。ありがとう…ピサロ。」
そんな彼の労りに、大事に想われている事を感じて、擽ったそうにソロは笑んだ。
つい‥とピサロの顔を引き寄せて、頬へキスを落として、ベッドから出る。
「皆ももう戻って来てるのかな? 夕飯食べたらミーティングして。作戦とかも詰めない
とね。いつ連絡が来ても動けるようにさ。」
ソロが身支度を整えながら、クリフトとピサロに話しかける。
3人はそのまま部屋を出て食堂へと向かった。
その晩それぞれの1日を報告し合った後、デスパレスの見取り図を元にその攻略について
幾つか具体案が示された。それをたたき台に、明日の午後にまた集まる事を決め、その日
は散会となった。
「ふわあぁ‥。なんか戦ってるより疲れたなあ…」
食堂を出ると、大きな欠伸をこぼしながらソロがぼやく。
それぞれがメンバーに引き留められてしまい、散会から大分経ってようやく食堂の退出が
適ったソロが疲れた顔でこぼすと、脇に立つクリフトが続いた。
「まあ、普段はあまりこういった作戦立てして戦闘に臨みませんからね。城の構造や兵の
配置等‥詳しい方の助言を得られるというのは有り難いですけれど。」
「うん。地下牢に捕らえられているって言うピサロの部下が協力してくれたら、更に心強
いしね。…まあ、人間にすんなり力貸してくれるかは微妙だけどさ…」
クリフトに応えながら、ソロは反対隣に立つピサロへチラっと視線を向けた。
「まあ‥な。こればかりは、直接交渉して見ぬ事には読めぬな。私は既に魔王ではないか
らな。奴らにしたら、私とて裏切り者だろう。」
「ピサロ…」
「そんな顔するな。私は己の信念に従って動いているだけだ。」
「‥うん。」
ぽむ‥と頭に置かれた手の温かさに、ホッと顔を和ませて、ソロは小さく頷いたが。
敵対していたはずの勇者と、曾ての魔王‥ピサロが手を組んで居る事の複雑さを、改めて
思うソロだった。
間近に迫った邪神官との決戦。
あの魔界から帰還し、ピサロという仲間を得て過ごした冒険の日々も僅か。
長いようで短かった日々だったが、様々なコトが大きく変化した。
それはソロだけでなく、ピサロもまた同様だったのだろう。
その先の未来は分からないけれど。
ヒトと魔族の関係も、変わっていけたらいいのに‥
そんなコトを過らせて、窓の向こうに広がる星空を祈る思いで見つめるソロだった―――
2009/8/26
|