「すげ…指に絡んで来るぜ、お前の中…。」
「やっ‥。た‥かやさ‥っんなコト…ああっ」
確実に増やされた指が奥まった場所をぐるりと回すと、躯が大きくしなった。
熱を持った内壁が、出入りを繰り返す彼の指先を次第にもどかしく感じてくる。
クリフトは「はあ…」と熱のこもった吐息をこぼした。
枕に顔を埋めながら、着実に上がって行く息が艶を帯びてゆくのを止められない。
「あ…やぁ‥。鷹‥耶さん…焦らさない‥で‥‥‥」
潤んだ瞳で肩越しに彼を見たクリフトが、甘い吐息交じりに懇願した。
一番感じるポイントを微妙に外し蠢く指は、時折そこを掠めるだけの抽挿を繰り返し、
彼の欲望を煽り立てた。一度達った躯は、敏感に彼の愛撫を受け止め、躯の最奥に熱流
を走らせる。
「俺が‥欲しい…?」
熱っぽく訊ねる鷹耶に、クリフトは躯を悸わせると、小さく頷いた。
「‥お‥願いですから。もう‥‥‥」
甘く疼く内壁の熱をどうにかして欲しくて、クリフトは自然と腰を揺らめかせた。
鷹耶は沈めていた指を一気に引き抜くと、そっと猛る塊を入り口に押し当てる。
「あ…はあ‥‥‥」
熱い塊が押し入って来る感触は、苦しさを伴ったものの、その先に待つ快楽を知る躯は
待ち焦がれたように呑み込んでいった。
ゆっくりと穿ってくるソレは、彼の敏感な部分を擦りあげると、一旦身体を退かせ、再び
突き上げた。
「あ‥っ、あん‥‥。はあ‥‥‥」
艶めいた嬌声に満足げな笑みを浮かべながら、鷹耶は慎重に身体を沈めて行った。
「お前の中‥すげ‥いいぜ。」
うっとりと肩口に頭を寄せた鷹耶が囁く。びくん‥と身動ぐクリフトに、悪戯な彼の指先
が熟れた突起を弄った。
「あっ…ん。ああっ…はぁ‥‥‥」
交互に突起を弄くられ、甘い吐息がぽろぽろこぼれてゆく。
「そろそろ動いても平気か‥?」
そっと訊ねる鷹耶にコクンと頷き返すクリフト。
ゆっくりと抽挿が開始されると、クリフトは息を乱しシーツをきつく握りしめた。
徐徐に艶を孕ませてゆく吐息と共に、ほおって置かれた彼自身も頭を擡げてゆく。
そのまま熱を放出させたいクリフトが身震いしたのとほぼ同時に、鷹耶が彼の中心に手を
伸ばした。きゅっと根元を押さえられて、放たれなかった欲望が熱く躯を巡る。
「や…。鷹耶さん‥なに‥を‥‥‥」
不満そうに抗議するクリフトに、艶然と微笑んで返すと、
「一緒に達こうぜ?」
と身体を曲げ耳元に口を寄せて甘く囁いた。
その声にすらゾクンと感じてしまったクリフトは、吐き出せない欲望に眉根を寄せる。
その後は、本格的な律動を開始した鷹耶にとことん翻弄され、クリフトは引っ切りなしに
喘がされてしまう羽目となった。
内壁を擦られる感触は、ゾクゾクと身内の欲を煽ってゆく。
特に敏感な部分に触れられる度、電流が体内を走り抜けるような感覚は、強烈な快感を彼
に刻み込んで行った。
やがて。大きく退いた楔がぐっと捩り込んで来るのと同時に、戒めを解かれたクリフトは、
躯の最奥に叩きつけられる飛沫を思いながら、自らも欲望を吐き出した。
「はあ…はあ…。」
ぐったりとベッドに身体を沈めたクリフトから自身を引き出すと、鷹耶もその隣に仰向け
に寝転んだ。
クリフトがぼんやりと横へ向けた顔で彼の姿を見つめる。
満足そうなその横顔に、クリフトはふうわり微笑うと、そのまま瞳を閉じた。
―――鷹耶さんがまだシンシアさんを忘れられなくても。
僕で満たせるモノがあるなら、それはそれでいいのかも知れない。だって‥‥‥
僕もまた‥鷹耶さんに享受されてる想いがあるのだから。
今は‥‥それで…いいや‥‥‥‥‥‥
すう‥と寝息を立て始めたクリフトに気づいた鷹耶が隣へ視線を移した。
「クリフト…」
静かに身体を起こすと、すっかり寝入ってしまった彼に苦笑いをし、そっと髪を梳いた。
ベッドからそっと抜け出し、湿らせたタオルでさっと身体を拭き、服を着込む。
彼を起こさぬように部屋を出た鷹耶は、タライに水を張って再び部屋に戻ると、水を魔力
で暖め湯に変えた。
彼の身体を湯に潜らせたタオルで丁寧に拭い、後始末を終えると、慣れた手つきでシーツ
を取り替え、寝着を着せる。
鷹耶自身も身体をしっかり清めると、寝着に着替えクリフトの隣へと潜り込んだ。
深い眠りに就く彼の寝顔を眺めながら、鷹耶はひっそりと嘆息する。
そっと彼の柔らかな髪に触れると、指を絡ませ静かに離れた。
―――本当に欲しいのは、多分‥‥‥
でもそれを言ったら、この関係すら崩れそうな気がして。怖い。
今…欲しいと思えるのは、クリフトだけだ。
俺を置いて逝ってしまった彼女のコトは。確かに忘れられないけれど。
過去の想いはあの日に止まってしまったモノだから。
辛くあっても、大切な想いだったから。
この気持ちは変わらないだろう。
けど‥‥‥
俺は生きているから。
今を、未来を、共に歩む『誰か』を求めてしまう。
それを彼に求めてしまうのは、彼にとって不幸なだけかも知れないのに。
初めに望んだのは、ただ…安らぎだった。
そして。やたらと己を過小評価したがる彼に自信を持たせたかった。
それが‥‥
こんなにも愛おしくなってしまうなんて。
「クリフト…」
額に小さなキスを落とし、俺は瞳を閉ざした。
触れる肩から伝わる温もりが、優しい眠りへ誘う。
いつか手放せなく予感を覚えながら、俺は深い眠りに落ちていった。
2004/6/17
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