ただ、それだけのこと―――鷹耶
ある日。突然村が襲われた。
平和だと―――信じて疑わなかった世界が、一転して崩された。
ずっと一緒だと‥護っていくんだと――――そう信じてた女に護られて。
俺 独りが生き残らされた。
世界を救う勇者なのだから――――と。
そう託されて。
小さな村1つ。―――護りたかった女独り護れずに――?
世界を救う―――――?!
滑稽だよな‥‥
けど―――
それが彼らの願いなら、望みなら‥‥俺は幾らでもこの腕を血に染めよう。
憎いのは――俺からすべてを奪った存在。
だから。俺は戦う。
ただ‥それだけのために―――――!
だけど。
俺は知ってしまった。
そうやって『同じ想い』で戦い血に染める存在を‥
そう。同じ憎しみは、同じ悲劇を紡ぎあげてゆく虚しい連鎖なんだ。
俺は大切な人を護りたい。
あいつも、それは同じだった。
‥では。何が違う? どこで違った‥‥‥?
哀しい連鎖はどうすれば、失くせる?
『‥きっと。すべての人達が、大切な者を失うその愁さを、自らのコトとして
想像できるだけの優しさがあれば、無益な争い事などなくなるのでしょうね‥‥』
『憎しみが憎しみを呼ぶ連鎖となるなら、その逆だって築けるモノだと思いませんか?』
―――以前の俺なら。
そんな生っちょろい意見なんざに貸す耳など持たなかっただろう。
けれど‥‥‥
決して「綺麗ゴト」としてでなく、発せられた言葉だって理解るから‥
そんな世界を夢見るのも悪くない‥なんて、思えてしまう。
憎しみの中に身を置く辛さなんて―――
いやって程理解ってるから。
だから。
断ち斬れるモノであるなら、肉塊よりもずっと斬りがいがあるじゃないか!
勇者だから――――?
そうじゃない。
きっと、俺自身が楽になる為に―――
そう。ただ‥それだけのコトだ―――――
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