血染めの夢(Bloody Dream)―――アレス




「‥懐かしいな。」

ひっそりとした呟きが、古びた剣に落とされた。

深緑の髪の青年は、苦いものを見るようそれを眺め、佇んでいる。

その剣は、がっしりとした幹に這う蔦に護られるように、刀身をすっかり隠してしまっていた。

「‥また、俺に付き合ってくれるか?」

そう声をかけて、柄へと手を伸ばした青年に応えるように。

剣は仄かな光を帯びて、蔦を僅かに退かせた。

すんなりと刀身を引き抜いた彼が、目線の高さまでそれを上げて、鈍い輝きを纏う剣を見つめる。

「‥もっと休ませてやりたかったんだがな。そうも言ってられねーらしい。

 本当に…面倒なコトだがな‥」

どこか自嘲めいた微笑で嘆息すると、腰に差してた鞘へと剣を納めた。

剣を護っていた樹木を見上げ、そっと幹へ触れる。

「‥ありがとうな。また騒がしくなるが。見守っててくれ。」

さわり‥風とも違う揺らぎに葉が音を立て、はらりとひとひら舞い降りた。

「‥サンキュ。じゃ…行くな。」

託されたその葉の重みに苦く微笑んで、その巨木を振り仰ぐ。

血染めの夢が揺り起こされて、ひんやりしたモノが背筋を抜けていった。


それは‥遠くて近い過去―――

けれど‥‥


目を閉ざし、ゆっくり瞼を開いたその瞳が、何かを吹っ切ったように凛と煌めいた。


―――絶対に遂げて見せる!!


誓いを新たに刻み込んで、青年は緑の中へと消えて行った。








2007/11/19

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ちょっと判りにくいかも知れません(++;
アレスの背景とか詳しく語るとネタバレしちゃうかな‥と。
実はこのお題、3月頃にほぼ完成させながら、本編をサイトに載せてない時点で
こちらを先行UPするわけにも行かず‥
ぐずぐずしてたら、うっかりなくしてしまったファイルを発掘したモノだったりします(^^;
パソコンの検索機能って、すごいですよね〜!

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