まるで深い樹海の―――クリフト
それはいつ気づいたのだったか‥
彼が迷い込んでしまった、深く暗い影を落とし広がる樹海の存在に。
明るく見えた彼の内面にある闇。
それが、こうまで深く巣食っていたとは‥‥
実際体感するまで及びもしなかった。
縋るよう伸ばされる腕(かいな)。
求めてくるその腕に応えて、幾度躯を重ねても、届かぬ場所に心を沈めてしまった。
抜け出す手だても見いだせない樹海。
ならば――
せめて繋いだこの手を離さぬように。
見失わぬように。
私は在ろう‥
「おかしな奴だな‥」
そう訝る魔王を巻き込んだのは。
深く広がる樹海に射し込んだ可能性を見つけたから。
「そうですか?‥そうかも知れませんね、実際。」
自嘲気味に微笑んで、魔王へ目を移す。
「けれど‥それだけ必死なんですよ。私の願いはソロの安寧ですから。
そのためならば、私情はこの際脇に寄せます。」
「‥私情‥な。」
皮肉げに微笑んで、魔王が吐息を落とす。
やがて、何か振り切ったように小さく首を振って場を離れた。
暗い窓辺へ目を向けて、独りごちるよう呟く。
「‥理解らぬな。」
それだけ言って、後は沈黙が室内を満たした。
前のお題と似てますが。
似たような会話が幾度かされたようです(苦笑)
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