まるで深い樹海の―――クリフト

それはいつ気づいたのだったか‥

彼が迷い込んでしまった、深く暗い影を落とし広がる樹海の存在に。

明るく見えた彼の内面にある闇。

それが、こうまで深く巣食っていたとは‥‥

実際体感するまで及びもしなかった。

縋るよう伸ばされる腕(かいな)。                     

求めてくるその腕に応えて、幾度躯を重ねても、届かぬ場所に心を沈めてしまった。

抜け出す手だても見いだせない樹海。

ならば――

せめて繋いだこの手を離さぬように。

見失わぬように。

私は在ろう‥



「おかしな奴だな‥」

そう訝る魔王を巻き込んだのは。

深く広がる樹海に射し込んだ可能性を見つけたから。

「そうですか?‥そうかも知れませんね、実際。」

自嘲気味に微笑んで、魔王へ目を移す。

「けれど‥それだけ必死なんですよ。私の願いはソロの安寧ですから。

 そのためならば、私情はこの際脇に寄せます。」

「‥私情‥な。」

皮肉げに微笑んで、魔王が吐息を落とす。

やがて、何か振り切ったように小さく首を振って場を離れた。

暗い窓辺へ目を向けて、独りごちるよう呟く。

「‥理解らぬな。」

それだけ言って、後は沈黙が室内を満たした。












前のお題と似てますが。
似たような会話が幾度かされたようです(苦笑)

2007/1/6

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