傷跡―――鷹耶 時折その傷跡は血を流す。 昏い心を呼び覚まし、静かに流れ出す――― 残酷な光景に荒む心が沸々と湧いて、荒ぶる心が制御を失う けれど… そんな俺を心から案じたように。 その傷跡を、真新しい傷口のように見つめる痛々しい眼差しに‥ 穏やかな感情が芽生え始めた――― 優しい空の青をした瞳が、俺をまっすぐに見つめる。 自分が怪我でも負っているかのように。 切なげに眉を寄せて。 抑えられぬ憤りのままに、傷つけた時もあった。 けれど。 それでも、差し伸べられたその腕は、いつも俺を包んでくれた。 今はまだ、俺を苛むこの傷が、いつか癒えたと思えたら‥ それは紛れもなく、お前の功績なんだぜ。 隣で深く眠る彼の柔らかな髪を梳りながら、俺は心の奥で話しかける。 いつか‥それを伝えられる時があれば良いのだけど‥ 今の俺には遠い道のりでしかなかった――― |
2007/8/12 |
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