穏やかな殺意―――クリフト(ソロ編) 誰にも語ったコトなどなかったが‥ 実は密かに抱いたコトが幾度もあった。 そんな思いを抱える自分が、神職に就く矛盾を思いながら‥ 反面それでも良いモノなのだ‥と、冷めた自分をみつめていた。 護りたい‥と初めて思った姫の力になれる‥それもまたあったのだろう。 ただ‥それだけだった。 信仰心は他人のそれより薄い自覚はあった。 「オレ‥勇者失格だよね。」 幾度となくこぼされた力ない呟き。 故郷の村を滅ぼした張本人であり、勇者の天敵とも云える魔族の王 ――そんな彼に恋心を宿らせて、ソロは苦しんでいた。 そして。 思いを断ち切れないでいたソロは、自ら心を閉ざそうとまで考えた。 それほどまでの想いならば‥ 無理に捨て去らずとも良いのに… そんな想いと共に、湧き上がってくる情。 この腕の中で。 無防備に眠る姿は愛おしく、何よりかけがえなく映る。 その正体を自覚した頃。 春の日差しのような心地よい温もりが いつしか身内に宿らせていた穏やかな殺意を消していた――― |
2007/3/9 |
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