ファンタジー?な歓迎会から2週間がたち、あれ以来僕は毎晩お酒を飲むようになった。
ますみ姉さんの隠れた能力を目の当たりにしたからね。
お酒で飲み勝てたらお付き合いできる…逆に言えば勝たないとお付き合いできない。
普通の告白じゃダメなの?って思ったけどダメみたい。
実際に何人もの人に告白されてたみたいだけど全部断ったんだって。
そう彩さんに教えてもらった。
なかには医学生や青年実業家なんていたらしい。僕とは月とスッポンだ。
やっぱりますみ姉さんって、人気あるよなぁ…昔からそうだったもん。
昔は生真面目だったから交際より勉強!って感じで断ってたもんなぁ。
大学に入ってから変わったんだね、ますみ姉さん。
……けど変わるにも程があると思うよ。なんでよりによって酒豪になんて変わったんだろ?
ハァ、またため息が出たよ。

僕は毎日のお酒飲み特訓の成果で少しづつだけどお酒が飲めるようになってきた。
ようやくビールを二本まで飲めるようにはなったけど、ますみ姉さんにはまだまだ遠い。
…遠すぎるよなぁ。
例えるなら竹ヤリで戦艦大和に戦いを挑むようなものかな?
それともライオンに素手で戦いを挑むつぶやき○ロー……どちらも絶望的だ。
冷静に分析した自分の立場にみょうに納得した……ハァ、気か滅入るなぁ。
おまけに同じ大学に入ったからといっても、いつも一緒にいれるわけじゃないしね。
…計算外だったよ。
昼間は講義が違うからなかなか会えないし夜はますみ姉さん、
バイト先のファミレスで働いていることが多いしね。
好きな時に会うって訳にはいかないみたい。
ますみ姉さんのファミレスの制服姿……み、見てみたい!写真貰えないかな?
う〜ん、近くにいるのに好きな時に会えないってのもツライんだな…
そういえば毎日ビール飲むのって結構お金かかるんだよね。
仕送りでどうにか生活は出来るけど…僕もバイト探そうかなぁ。

ますみ姉さんの高校の制服姿の写真を見ながら考える僕。壁、透けて見えないかなぁ……


ユウ君が引っ越して来てから2週間、こっちの生活にも慣れたみたい。少し安心ね。
それにしても私と同じ大学に来るなんて…ビックリしたわ。
勉強はあまり得意じゃなかったし、体も細くて今みたいな男の子の体じゃなかったしね。
『ますみ姉さん、ますみ姉さん』って、よく私を慕ってくれたユウ君。
私が家を出て行く日、涙を我慢してるユウ君の顔は今でもはっきり覚えてるわ。
寂しがりで気が弱くて、けどやさしい子。…フフッ、ほんとにかわいい子ね。
引っ越す時は私がいなくなったらどうなるのかと心配したけど…
引っ越しして正解だったみたいね。
私がいなくなった事で男の子として少し成長したみたい。
私が引っ越ししてから空手を始めたと知った時には『ユウ君が空手?』と驚いたし、
それと同時に雛鳥が巣立つような気がして少し寂しく感じたわ。
もう私の後ろをついてくるユウ君じゃなくなったのかな、と思ったけど…
やっぱりユウ君はユウ君ね。
今でもこんな私を慕ってくれるなんて……うれしいわ。
けどユウ君には、早くいい人を見つけて本当の独り立ちをしてほしいわね。
…フフッ、いい人って何よ?自分自身があの人を忘れられなくて一人なのに…バカみたい。
私よりお酒が強い人じゃないとダメなんて……ウソ。ただあの人を忘れられないだけ。
あの人の代わりを探してるだけ。諦めたはずなのに、忘れたはずなのに……
あんなにツライことがあったのに……忘れられない私。
フフッ、あれは天罰ね。親友を裏切ろうとした私への天罰。
あ〜あ、彩の恋人じゃなければなぁ…奪い取ったのにな。
どこかにいないかな?お酒が強く、やさしくて素敵な人。
…う〜ん、やっぱりお酒は譲れないわね。
こんなことだから彩に胸の中身はアルコールと言われるのね。

そんなことを考えながらビールを飲む私。やっぱり朝はビールね。目が覚めるわ。


「ユウ君バイト探してるんでしょ?紹介したいところあるんだけど、どうかな?」
渡りに船とはまさにこういう事なんだろうな。
バイト経験が無い僕にはなかなかバイトが見つけられなかったんだ。
そこにますみ姉さんから助け船。ますみ姉さんは困った時にはいつも助けてくれる。
僕にとってはスーパーマン…いや、女性だからスーパーガールかな?
話を聞くとテニスサークルの先輩の彼氏の実家が空手の町道場をやってるんだって。
そこでチビッ子に空手を教える人を探してるみたい。
ひと月に4万円と給料はあまりよくないんだけど、好きな空手でお金が貰えるならと二つ返事で
OKしたんだ。
もしかしたらますみ姉さんに男らしさを見せることが出来るかも…って下心があったのは内緒
だけどね。
ますみ姉さんからバイト先を紹介された次の日、さっそくその町道場に挨拶に行く。
何事も最初が肝心だからね。館長の名前は池田清正さん。五十五才になるんだって。
息子さんがサラリーマンになってから道場にあまり来なくなったと嘆いてた。
稽古をつけてもらったんだけど…歯が立たなかった。
見た目はちょっと背の高い普通のおじさんなのに、物凄く強い!
空手って奥が深いんだな…みょうに納得してしまった。
池田館長にはこれからも稽古をつけてもらえる事になった。嬉しい誤算だ。
稽古は面接試験も兼ねていたみたいで僕は合格したんだ。
腕はまだまだだけど突きや蹴りはきれいだから小さい子に教えるにはちょうどいい、と言ってく
れた。
これって褒められてるのかな?どうなんだろ?
道場には週に三日間、火木土と入ることになったんだけど…
よく考えたらますみ姉さんに会える時間が減る訳で…
かといってお金が無いのは困るし…
ハァ、一人暮らしって大変だなぁ…今更ながら実感したよ。
いつかはますみ姉さんと二人で暮らしたいなぁ…
…考えてても仕方ないか。うん、まずはバイトだな!
稽古をつけて貰えて体も鍛えれるし、お金ももらえる!…少ないけどね。
お金を貯めてますみ姉さんをデートに誘おう!
そうだ、いつまでもため息ばかりじゃダメだよね。よし!がんばるか!
がんばってお酒も強くなっていつかは飲み勝つぞ!……って無理だよなぁ。

ハァ…ますみ姉さんの事を考えるとため息だらけの僕。
この近くて遠い距離……どうにかできないかな?


「綾崎君はあれか、女はいるのか?」
第3土曜日の夕方、チビッ子に稽古をつけた後、道場を掃除してたら池田館長に聞かれた。
「い、いませんよ!ぼ、僕にはまだそんな余裕ないですから!」
と、突然何言い出すんだ、館長は!
「はっはっはっ、いや、悪い悪い。そんなに怒らんでくれよ。
しかし君位の年の頃には女の2、3人はいないとダメだろ?
いつからいないんだ?こっちに来てからか?田舎にはいるんだろ?」
そう言って小指を立てながら笑う館長。げ、下品な人だったんですね。
「こっちに来てからって……地元でもそんな人いませんよ!」
僕はますみ姉さん一筋だったから他の女性になんて興味がなかったんだ。
「だめじゃないか、なかなかのいい顔してるのにもったいないぞ。
そんなことじゃいざという時どうする?空手や喧嘩と一緒で場数だよ。
女を喜ばすには場数を踏まないとダメだぞ、綾崎君」
よ、喜ばすって、ば、場数って…僕の肩をバンバンと叩きながら笑う館長。
そういえば僕、あまりそういう知識がないぞ?
確かにそうだ、言われてみればそうだよね。このままだったらいざという時困るよね。
まぁ、その時が来るかは分からないけどね。っていうか来るのかなぁ…来てほしいなぁ…
そんな暗い顔した僕肩を館長は笑いながら叩いてきた。
「なに落ち込んどるんだ綾崎君。よし!君の歓迎をかねてワシがいいとこ連れて行ってやる!
この間、息子に聞いてからずっと行ってみたい場所があるんだよ。さっそく行くか、綾崎君」
ど、どうしよう?正直な話、興味はある。僕も男だしね。
けどなんだかますみ姉さんを裏切るような気がして…
「なにを悩んでるんだ、綾崎君。男ならどんとぶつかれ!」
僕は強引な館長の誘いを断れずに結局一緒に行くことにしたんだ。

ホ、ホントは行きたくないんだよ?け、けど何事も経験だし、しょうがないよね?


館長が連れてってくれたのはセクキャバってとこだった。なんの店なんだろう?
「か、館長、僕こういう所初めてで何がなにやら分からないんですが」
黒いスーツを着た店員に通された店の中は暗くてミラーボールが回っている。
マイクで何かを喋っているけど音楽がうるさくてあまり分からない。
「おう、ワシも初めてでよく分からん。言っただろ綾崎君、場数だよ場数。
一緒に場数を踏もうじゃないか!」
一人ずつ座るように分かれたシート席。
僕は席に案内される時にこの店がどんな店かを知ったしまった。
席に案内される時に通路を歩くと、他のお客さんが何をしているか丸見えな訳で…
上半身裸の女の子と抱き合って、む、胸をくわえたり、キスしたりしてる!
ど、どうしよう……ぼ、僕、場違いだよね?横の席に座った館長を見る。うれしそうだ。
(ああ〜、なんでついてきちゃったんだろ?…帰りたいよ)
心の叫びも空しく、女の人が僕の前に立つ。し、下着姿だ!
暗くてよく分からないけど結構若い人みたい。
「いらっしゃ〜い!ミカで〜っす。ちょっとごめんね」
そう言って僕の膝の上に抱き合うように座った。…ええええ!
「お兄さん、飲み物ビールでいい?」
僕の首に両手を回して聞いてくるミカさん。訳も分からず頷く僕。心臓がバクバクしてる。
店員さんが持ってきてくれた缶ビールを落ち着くために一口飲もうとする。
「あはは、そう焦らなくてもアタシが飲ませてあげるわよ」
そう言って口に含み、ぼ、僕にキスしてきた!
「ふぐ!ん、んん!…ゴクゴク…ごくん」
く、口移しでビールを飲ませてくれた!う、うう…初めてのキスだったのに…涙が出てきた。
「どう?美味しかったでしょ?って、どうしたのよ!何で泣いてるの?」
そんな僕の様子に気づいたミカさん。慌てて聞いてきた。
「ぼ、僕…今のが始めてのキスだったんです。す、好きな人いるのに…う、うう…」
うつむいて肩を震わせる僕。
「え?ええ!そ、そうなんだ…ならなんでこんな店くるのよ」
当然の質問だよね。僕は来るようになった経緯を話した。
「ふ〜ん、いざという時の場数を積む為にって無理やり連れてこられたんだ…
確かに自分の男がヘタだとテンション下がるわよね…
よし!アタシがレクチャーしてあげよっか!」
そういってブ、ブラを外して僕の頭を抱きかかえてきたんだ!
(い、イヤだ!やっぱりイヤだ!か、かんちょ〜助けてくださ〜い!)
もがきながら横を見ると、館長すでに女の人の胸に顔を埋めてる。
……ま、ますみ姉さ〜ん助けて〜!
「ほら、暴れないの!…アン、乳首に当たって気持ちいいじゃない。ほら、早くくわえなさいよ…
優しくしないと嫌われちゃうぞ」
そう言って顔に胸を押し付けてきた。…や、やわらかい…
「うふふ…君かわいいからお姉さんがいっぱい教えてあ・げ・る・ね?…チュッ!」

耳元で囁くその言葉に僕の頭はしびれて来た……やっぱりイヤだ!た、たすけて〜!


今日は第3土曜日。私があの人と会える数少ない日。
会えるといっても彩と3人で食事するだけ。
2人が付き合う前から続いてる食事会。けど私には凄く大事な日。
以前はよく彩と二人で家に遊びに行ったりしたけど、
2人が同棲しだしてからはあまり行ってない。
お邪魔虫にはなりたくないしね。
繁華街での3人での食事は楽しかったわ。
この時だけは彩も私があの人に甘えるのを許してくれる。
フフッ、ユウ君がこんな私を見たらビックリするだろうな…そんな事を考えながら店を出る。

私とあの人の出会いは先輩の紹介。
2人でした食事会で、いいなぁと思ったのが始まりだったわ。
その時に彩の知り合いで以前から相談されていた恋の悩みの相手だと知ったの。
友人の想い人だと知った時は諦めようとしたけど…ダメだった。
彩を裏切ってまで私の物にしようとしたの…お酒に酔ったあの人を騙して抱いてもらってね。
私、初めてだったから絶対に責任取ってくれる…そう考えて。
けど、あの人は彩のことしか考えてなかったの。
…あの人、私とエッチした事で後悔しかしなかったわ。
それを知った私は彩に全てを告白した…好きな人と友人、一度に2人無くすのを覚悟してね。
けど、彩は…私のために怒ってくれた。
『ますみとエッチして後悔してる?アタシの親友をバカにしないで!』ってね。
恋人は出来なかったけど本当の親友が出来た…そう、私はそれで満足したはず。
でもなぜあの人のこと忘れられないのかしら?あんな事があったから?…違うわね。
…あの人が彩と別れたりしたら、きっと私はあの人を軽蔑するわ。
……私は彩と付き合っているあの人が好きなのかしら?
…自分の事ながらよく分からないわね。
自分で言うのもなんだけど乙女心って複雑なのね…

そんなこと考えながら2人の後をついて歩いていたら彩が話しかけてきた。
「ねぇますみ。あれって綾崎君じゃないの?いいの?あの子、あんなとこから出てきたよ」
指差した先を見ると確かにユウ君だった。
けどあの子が出てきたビルは……いわゆる風俗ビルというものだった。


「いや〜綾崎君、実に楽しかったな。いや実に勉強になった、わっははは!」
笑いながら僕の肩を叩く館長。僕は肩を落としたままだ。
「んん?どうした綾崎君。いい子がつかなかったのか?」
「違いますよ!落ち込んでるんです!好きな人がいるのにこんな事しちゃって…う、うう…」
また涙が出てきた。
「わはは、安心しろ綾崎君!風俗は浮気には入らんぞ、そう法律で決まっておる!」
「そんな法律聞いたこと無いですよ!次からは一人で行ってください!」
肩を叩く館長に凹む僕。
ハァ、なんで断れなかったんだろ?…けどやわらかかったなぁ。
…ますみ姉さんはもっと凄いんだろうなぁ。
「ユウ君!こんなとこで何してるの!」
うわぁ!ごめんなさい!もう変な想像しません!
……って、なんでますみ姉さんがここにいるんだよ!
「ダメじゃないの!こんなイヤラシイとこに来るなんて…
あなたには早すぎるわ!分かったの、ユウ君!」
そう言って僕の耳を引っ張るますみ姉さん。イタタタ、ごめんなさい、ますみ姉さん痛いです!
「おお、静馬君!久しぶりじゃないか!元気にしてたか!」
肩を叩きながらますみ姉さんと一緒にいた男性に話しかける館長。あ、彩さんもいるんだ。
あれ?静馬?どっかで聞いたことが……イタタ、それより耳が取れそうだよ。
「ご、ごめんなさいますみ姉さん!もうしません、許してください!」
ひたすら謝る僕。そんな僕を見て館長が笑いながら話しかけてきた。
「綾崎君。君、そんな事じゃダメだぞ。ここにいる静馬君を見ろ!
こんなにかわいい彼女がいながら息子と一緒に風俗に行くツワモノだぞ?
君も男ならこうならないといけないぞ!わっははは!」
次の瞬間ますみ姉さん耳を離してくれた…あれ?静馬って人、顔が青くなったぞ?
「静馬さん…今の本当ですか?」「拓にぃ…ホントなの?」
詰め寄る2人に後ずさる静馬って人。

…あ!思い出した!静馬って人、確か彩さんの彼氏だ!
…ってことは、これって…まずいよね?


「おお!修羅場だ、修羅場!綾崎君、見てみろ修羅場だ!わっははは!」
か、かんちょ〜、楽しんでる場合じゃないと思うんですが……
「おお!殴った、殴った。殴ったぞ綾崎君!わっははは!」
うわ!彩さん容赦なく殴ったぞ!こ、怖いよ…
震える僕。そんな僕を見てますみ姉さん話しかけてきた。
「ユウ君。私ね、エッチな店はあなたにはまだ早すぎると思うの。
ユウ君も男の子だから行きたいって気持ちは分かるわ。
けど二十歳までは我慢しなさいね…分かった?ユウ君」
「おお!絞めとる、絞めとる!フロントスリーパーだぞ綾崎君。わっははは!」
ますみ姉さん……言葉は優しいけど目が怖いです。これは本気で怒ってる顔だ。
「ご、ごめんなさい!館長が僕の歓迎会だって連れてきてくれたんです!
イヤだって言ったけど断れなくて…ごめんなさい!もうこんな所、二度と来ません!」
頭を下げる僕。こういう時は素直に謝ったほうがいいんだよね。
ヘタに言い訳するとますみ姉さんもっと怒るんだ。
「……そう、歓迎会だったの。けどね、イヤな時はイヤって言えるようにならないとダメよ?」
「おお!落ちたぞ、落ちた!落ちてしまったぞ綾崎君!わっははは!」
優しい顔に戻るますみ姉さん、やっぱりますみ姉さんにはその顔が似合うよ。
「ゴメンネ、ユウ君。よく話も聞かないで叱ったりして…許してね」
「おお!蹴っとる、蹴っとる!落ちたところを蹴り上げとるぞ綾崎君。わっははは!」
そう言って引っ張られた耳を撫でてくれるますみ姉さん。…き、気持ちいい〜!
「ううん、僕こそいつも心配ばかりかけて…ますみ姉さん、いつもありがとう」
「おお!とどめだ、とどめ!馬乗りでとどめさしとるぞ綾崎君!わっははは!」
頭を下げる僕。そうだ、いつも心配ばかりかけているんだ。
こんなことじゃお付き合いなんてまだまだだよ。
「ユウ君…フフッ、そんなこと言える様になったなんて、少し大人になったのかな?」
「おお!動かん、動かんぞ!動かなくなったぞ綾崎君。わっははは!」
うおお!ますみ姉さんに大人になったって言って貰えたぞ!まぁ少し大人に、だけどね。
けどこれは僕にとってはかなりの前進だ!
「彩、そっちは終わったの?……終わったみたいね」
…いつの間にか静馬って人、ボロキレになっている。
それを見たますみ姉さんはおもむろに携帯をかけ始めた。
「あっ、先輩ですか?ますみです。今日池田さんは一緒なんでしょか?
…そうですか、隣にいるんですね。
実はですね池田さんと静馬さん、2人で風俗に行ってたみたいなんですよ。
…ええ、池田さんのお父様がそうおっしゃってましたので間違いないと思います。
…はい、静馬さんは彩により制裁済みです。
…そんな、先輩の役に立つのは後輩としてあたりまえですよ。
…ええ、また情報が入れば連絡しますね。
…ええ、彩にも言っておきますね。では先輩、失礼します」
携帯を切って微笑みながら彩さんに話しかけるますみ姉さん。
館長の息子さん、どうなるんだろ?……こわいよぉ。
「彩、先輩が池田さんの事で何かあったらすぐ電話するように、だって」
「いつも通りでしょ?分かってるって。それよりこれ、車まで運ぶの手伝ってよ」
そう言って転がるボロキレを指差す彩さん。……彼氏、なんですよね?
「ユウ君、車まで運ぶの手伝ってくれる?」
ニッコリ微笑むますみ姉さん。そんなの怖くて断れるわけないですよ。
「いや〜楽しんだ、楽しんだ。面白かったな綾崎君。また来ような!わっははは!」
僕の肩を叩きながらそう言って、館長帰っていった。……もうイヤです。

僕はピクリともしない静馬さんを担いで車まで運んだ。生きてるのか?
「じゃ、ますみに綾崎君、またね」
そう言って彩さん、爽やかな笑顔を残して車に乗りこみ帰っていった。
……服に返り血が付いてましたよ。
「じゃ、ユウ君。私たちも帰ろっか?」
ほほ笑むますみ姉さん…かわいいなぁ。
その笑顔を見て僕はやっぱりますみ姉さんが一番だと確信する。
家に帰ったら早速お酒の特訓だ!今日は3本は飲むぞ!
ハァ、先は遠いよなぁ、またため息が出たよ。
…けど凹んでても仕方がない!がんばるか!
僕はますみ姉さんの後を歩きながら気合を入れた。

僕達の関係はほんの少しづつだけど前進してる。
そんな感じかな?そうであってほしいなぁ…





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