「へぇ〜、知りませんでした!saiって凄いんですね。彩さん、よく今まで秘密にしてましたね」
湧一さん、ホントにsaiを知らなかったんだ。まぁ、湧一さんらしいかな?
「ホントね。私にも秘密にしてたしね」
そうよね、いくら私達の仲でも言えないことの一つや二つはあるわよね。
「ますみさん?どうしたんですか?少し元気ないみたいですけど…」
「…少しのぼせちゃったみたい。さ、湧一さん、もう上がりましょ?」
はぁ〜、情けないなぁ。彩に秘密にされてたことがこんなにショックだなんて…
もちろん静馬さんは知ってたのよね?…悔しいわ。
「ますみさん…その…え〜っと…」
「?…湧一さん?どうし……」
もう、湧一さんもやっぱり男ね、お尻に湧一さんの元気なのがあたってるわ。
一緒に湯槽に入ったらやっぱりこうなるわね。
「ダメよ。赤ちゃんには今が大事な時だから…」
もう湧一さん、なんて顔してるのよ。しかたないなぁ〜
「SEXは出来ないけど…胸と口、どっちがいい?」
私の言葉に赤い顔で「胸です」と呟く湧一さん。うふふ…かわいいなぁ。
「あんっ、じゃ、胸で、んっ…してあげるわね…」
ホント、湧一さんって胸が好きなのね。
湯槽の中で後ろから抱き抱えてくれてる湧一さん。手は私の胸を揉んでいる。
「じゃ、湯槽のふちに座ってね?…うふふ、もうこんなにしちゃって…チュッ」
湧一さんを湯槽のふちに座らせて元気なアソコにキスをする。
「湧一さん…いっぱい気持ち良くなってね?」
「あっ、ますみさん、やわらかいです…うう、気持ちいいです」
胸で挟んでしごきながら間からでている湧一さんの先をペロペロと舐める。
カウパー液がいっぱい出てきたわ。
湧一さん、感じてるんだ…
「これからは毎日してあげる。朝は口で、夜は胸でしてあげるわ。だから…ね」
動きを止めて湧一さんを見上げる。
湧一さん、急にしごくの止めたから泣きそうな顔になってるわ。
「浮気したら…殺すから」
私の言葉に湧一さん、ビックリしたみたい。
「浮気なんて絶対にしません!僕にはますみさんしかいませんから!」
「…佐藤いづみはどうなの?湧一さんにちょっかいかけてるじゃない。ホントに何もないの?」
そう、佐藤いづみよ。湧一さんと同じ年に入学した私より一つ年上の女。
私と付き合う前の湧一さんと一度だけエッチなことしたみたいなの。
この女が湧一さんにベタベタと付きまとってるのよ!
「いづみさんは僕のリアクションで遊んでるだけですよ!
それにいづみさん、付き合ってる人いますしね」
えっ?あいつに彼氏なんていたの?あんな人格破壊女に?
「実はいづみさん、館長と付き合ってるんですよ」
「館長?館長って誰?私が知ってる人?」
あんな女と付き合うなんて…その人、頭壊れてるのね。
「池田館長ですよ。僕も初めて聞いた時はビックリしましたけど…館長は本気ですよ」
「えっ?池田館長って…あの池田さんのお父さまの?」
確か年令60才ぐらいじゃなかったかしら?…元気なのね。
「ええ、そうです。なんでも直樹先輩達の結婚式が付き合うきっかけになったそうですよ。
最近は毎日のように道場に来てますよ」
ふ〜ん、そうなんだ。遺産目当てかしら?あの女ならやりかねないわね。
「あ、あの、ますみさん…その…今のままじゃ生殺しなんですけど…」
「え?…あっ、ごめんなさいね。…こんなに大きくなって、もう我慢出来ないのね?
うふふ、いいわよ。いっぱい…いっぱい出してね?」
胸の先端で湧一さんのアソコを刺激する。
…んっ、んん!感じちゃう…先輩の言う通りね、気持ちいいわ。
「どう湧一さん、気持ちいい?…ふふ、ほら、凄いわよ?」
見せ付けるように胸で挟んだアソコに唾液を垂らす。
…こんな事でホントに湧一さん、興奮するのかしら?
「はぁはぁはぁ…い、イヤらしい、凄くイヤらしいです!…あぁ、ますみさん!」
…ホントなんだ。先輩なんでも知ってるのね、やっぱり凄いなぁ…
「ま、ますみさん、そんなにしたら…もうだめで…あぁ!」
唾液で滑りがよくなったから攻めるスピードを上げたら、湧一さんもう限界みたい。
「出して…いっぱい出して!出すところ見せて!」
「で、出ま…あぁぁぁ!」
「湧い…きゃあぁぁ!」
ビュク!ビュクン!ドピュ!ドプ…ドクン…
もう、顔にかかったじゃないの!なんでこんなに元気なのかしら?
静馬さんはこんなに飛んでこなかったのに…
あ〜あ、髪にまでかかったのね、洗い直さないと…どうしたの、湧一さん?
「はぁはぁはぁはぁ…ま、ますみさん、もう一度いいですか?」
目が血走ってるわね…顔にかかったのを見たら興奮するってホントだったんだ、
先輩の言う通りね。彩にも教えないとね。
「かなえちゃん、少し時間いいかな?相談したい事があるんだけど…」
仕事が終わって帰ろうとしてるかなえちゃんを呼び止める。
「いいですけど…あたし、もう予備は持ってませんから。
場所教えますんで自分で買いに行ってくださいね」
「は?何言ってるの?」
「え?だってブルマ…フガガ!」
とんでもない事を口走ろうとするかなえちゃんの口を押さえて黙らせる。
「違うよ、それはそれで教えてほしいけど…今回は彩のことなんだ」
口を押さえたままロッカー室へ連れ込む。
「はが?はががほががひがが?」
「実は彩、最近ナーバスになってて…オレに嫌われると思ってるみたいなんだよ」
「はががひ、へがはがぎがひががひ」
「かなえちゃん、なにふざけたこと言って…ゴメン、口塞いだままだったね」
慌てて手を離すと睨まれた。
「はぁはぁはぁ…困りますよ先輩!
あたし直樹になら窒息プレイされてもいいですけど、先輩はイヤです!」
プイッっと横を向くかなえちゃん。…お前等どこまで行くつもりなんだ?
「かなえちゃん、冗談じゃないんだよ。
彩、今のままじゃホントに壊れるんじゃないかって…怖いんだよ」
「…なんで先輩に嫌われるって思ってるんです?
どう見ても捨てられそうなのは先輩なのに…
彩が捨てられるって思い込むようなことが何かあったんじゃないんですか?」
「何かあったって言われても思い当たるような……あっ!もしかしたら…」
あれか?昔、彩がオレに聞いてきた事があるけど…あれなのか?
「先輩、何か思い当たる事あるんですか?」
「多分な。…オレ、彩が中学生の時になんで彼女を作らないのかって、
聞かれた事あるんだよ」
「そんなのモテなかったからでしょ?」
「そうだけど…凹んじゃうから即答しないでくれない?」
うわ〜、かなえちゃん容赦ないな。
イ、イカン、昔を思い出したら泣きたくなってきた。
「先輩なに凹んでるんです!それより彩になんて答えたんですか?」
「え?ああ、『オレはカッコいい女としか付き合わないんだよ。かっこよくて強い女がタイプなん
だ。それ以外は眼中にないね』って言ったんだよ」
そう、適当な理由を作って誤魔化したんだ。
憧れてた女性ロック歌手のポスターを指差しながらそう言ったんだった。
作らないんじゃなくて、作りたいけど作れないんだよ、なんて恥ずかしくて言えなかったからな。
「…凄い言い訳ですね。先輩、選べる立場じゃなかったでしょうにね」
……かなえちゃんの言葉に泣きたくなってきた。
「でも、原因はそれでしょうね。確か彩って中学からギター始めたんですよね?
きっと先輩にカッコいい女として、見てほしかったんでしょうね。
…ホントにカワイイ子ですね」
そ、そうなのか?彩、オレの為にギターや歌を始めたのか?
「強い女になるために格闘技も勉強したんでしょうしね。
…先輩のせいで彩、ああなったんですね」
彩…強い女の意味を間違えてるぞ。
「きっと彩、歌を辞める事でカッコいい女じゃなくなるから嫌われるって感じてるんじゃないんで
すか?多分、無意識でそう思ってるはずですよ。どうするんです?」
多分そうだろう。歌を辞めると決めたことで彩は今、オレに嫌われるかも?
という漠然とした不安に悩んでるんだろう。
だからオレに媚びるように…クソッ!
「…かなえちゃん、オレに出来る事なんて一つしかないよ。
…彩を好きでいることしか出来ないんだよ。
何を言っても…プロポーズをしても、今のままじゃあいつ、いつかきっとダメになる。
オレは彩を信じて待つしかないんだよ。
…あいつは強いんだ、きっと立ち直るよ。なんせ俺が好きな国生彩だからな」
オレに言葉に目をウルウルさせながら見つめてきたかなえちゃん。
なんだ?なんなんだ?
「先輩…プロポーズするんですね?ね、ね、どんな言葉です?なんて言うつもりなんですか?」
うっ…かなえちゃん、この手の話好きだからなぁ…けど秘密だ。
「それは……秘密だ。教えられないよ。あとで彩から聞いてくれない?」
「え〜?そんなぁ教えてくださいよぉ〜」
腕に抱きついてきたかなえちゃん。
胸…やっぱり彩よりあるよな、やわらかいなぁ〜。胸の感触を楽しむオレ。
その時ロッカー室のドアが開く音がした。
誰だよ、今、いいところなんだから邪魔しないで……
「コソコソコソコソと、いったい何をしてるかと思えば…
静馬ぁ〜、人の女に手ぇ出すとは…死ねや!」
…へ?鼻の下を伸ばしていたオレのアゴに衝撃が走った。
その瞬間…意識が暗転した。
「ま、ますみ!…それホントなの?」
久しぶりの彩の家での料理勉強会…と言う名の夜の報告会。
お風呂での事を教えたら身を乗り出してきたわ。
やっぱり食いついてきたわね、ホント彩って静馬さんの為に必死ね。
…負けてられないわね。
「ホントよ。湧一さんをなだめるのにその後2回も頑張ったんだから」
「2、2回?…妊婦になにさせてんのよ、あのバカ!…どうするますみ?懲らしめようか?」
彩、指を鳴らすのは止めなさいね。指、太くなるわよ?
「そんなことしなくて結構です!口と胸でしてあげただけだしね、浮気防止よ。
もっと搾り取るわよ?うふふふ…」
「そ、そうなんだ。…でも胸でされるって気持ちいいのかな?」
自分の胸を触りながら呟く彩。ちょっと優越感を感じるわ。
「いいと思うわよ?だって静馬さんも気持ちよさ……」
しまった!これは禁句だったわ!……うっ、彩、怖いわよ?
なんで何も言わずに立ち上がるの?
こ、こっち来ないで!
「これ?これで拓にぃを…こんなのが気持ちいいのかぁぁぁ〜!!」
ひ、んん!あ、ダメよ…あん!そ、そんなに揉まないで…ヤダ!
ブラに手入れないでよ!やん!
後ろに回りこんだ彩に直接胸を揉まれる私。
……うそ?ちょっと気持ちいい?なんで?
「こうかぁ?こうかぁ?奥さん、拓にぃにもこうされた…
ちょっと!なに変な顔になってんのよ!…こっちが恥ずかしいじゃないの」
ブツブツと文句を言いながら手を離す彩。
普通文句を言うのは私だと思うんだけど……
「ゴメンますみ。謝るから…もうしないから…そんな目で見ないでよ!
……アタシそっちじゃないからね!」
む!なにそれ?人を同性愛者みたいに……うふふ、いい事思いついたわ。
ちょっと悪乗りしちゃおうかしら?
「はぁはぁ…ねぇ彩。…責任取ってよ。あなたがこんなにしたんじゃない。
責任取って気持ちよくしてよね…」
そう言って上着を脱ぐ私。うっふっふ、彩、凄い顔してるわね。
「さぁ揉んで…揉んで気持ちよくして…」
あ〜や、そっちに逃げても行き止まりよ?うふふふ、覚悟なさいな。
「ん、そこよ彩。もっと強く…ああ、気持ちいいわ。…あなた上手いわね、才能あるわよ」
リビングに響くますみの声。アタシが出させてる。実はアタシって結構上手いのよね。
「ここ?ここがいいの?…こんなに硬くしちゃって…我慢してたのね。
今日はアタシがいっぱいしてあげる」
こんなに硬くしちゃって…いっぱい気持ちよくなってね、ますみ。
「あ、彩?ちょっと痛いわ。…イタタタタ、あ、あんまり強くしちゃダメよ!」
「ちょっと痛いくらいがいいのよ。やっぱりあんた、肩こり凄いわね。
その胸は伊達じゃないのね」
今アタシは上半身ブラ一枚のますみの肩を揉んでいる。
ブラ一枚で迫って来られた時はビックリしたわ。
こんな古典的なことに騙されたとは…やるわね、ますみ!
「それにしても彩、なにが『アタシは拓にぃだけの物なんだから触らないで!』よ。
聞いてたこっちが恥ずかしいわ」
「ばっ…だってあんたが潤んだ目で迫ってきて怖かったんだから!…仕方ないじゃないの」
くぅぅ、くやし〜!…にしてもますみ肩こり凄いなぁ。大きい胸あると大変なんだ。
「彩、ありがとう。凄く気持ちよかったわよ」
「もういいの?じゃ、最後の絞めに…よっと」
ますみの細い首に後ろから手を回し、きゅっと絞め上げる。
「おまけのスリーパーよ。これは頚動脈を絞めて落とす技なの。
落ちる瞬間気持ちいいんだって」
アタシをハメた罰よ!苦しみなさい!
必死にアタシの腕をタップするますみ。
お?タップ覚えたんだ、さすがに物覚えいいじゃないの。
「ちょっと彩!最後の絞めって…ホントに絞めないでよ!」
「あっはは、ゴメンゴメン。ちょっとした冗談じゃないの。そんな怒んないでよ」
ますみと騒いでる時は最近感じてる嫌な不安…
拓にぃがいなくなるんじゃないかという不安を忘れる事が出来る。
「それよりますみ、あんたあれ飲んだ事ある?先輩の言う通り、すっごく喜ぶよ?」
「ええ!彩、あんなの飲めるの?よくあんな不味いの飲めるわね」
「やっぱりあんた飲んでないの?…愛が足りないわね。ふっ、勝ったわ」
「ちょっと!愛が足りないってどういう意味よ!私は湧一さんに全てを捧げてるのよ?
…もちろんお尻もね」
「げっ?ますみお尻でしたことあんの!どんな感じなの?
気持ちい……ゴメン、電話だわ。ちょっと待ってね」
うう〜、まさかますみがお尻でしてるなんて…拓にぃもしたいのかな?どうなんだろ?
そんな事を考えながら電話を取るアタシ。拓にぃかな?
『もしもし彩?落ち着いて聞いてね?今からそっちに静馬先輩連れて行くから。
静馬先輩、会社で倒れたのよ』
受話器から聞こえた先輩の言葉に目の前が暗くなる。
絞め落とされたらこんな感じなのかな?
遠くからますみの声が聞こえたような気がした次の瞬間…アタシの意識は暗転した。
(どうしよう…つい勢いで嘘ついちゃった。お尻でなんてしたことないのに…どうしよう?)
しまったわ…このままだと彩、間違いなく静馬さんに迫るわね。
嘘だとバレたら…どうしよう?
恐々彩を見てみる。え?顔、真っ青じゃない!
「彩?どうしたの?何があったの?」
私の言葉に返事もなく、その場に倒れこんだ彩。あ、彩?しっかりなさい!
『彩?どうしたの彩?返事なさい!』
(え?この声は…先輩?なんで先輩が?)
彩に駆け寄った私に聞こえたのは先輩の声。
彩が持ったままの受話器から聞こえてきてる。
「先輩?ますみです。彩になに言ったんですか?
彩に何かあったら…いくら先輩でも許しませんよ!」
彩の手から受話器を取り思わず叫ぶ。
私の親友になにかあったらいくら先輩であれ…許さない!
『彩に何かあったの?ますみ、あなたまで混乱してどうするの!少し落ち着きなさい』
先輩の言葉に我にかえる私。そうだわ、まずは彩をベットで寝かせなきゃ…
「す、すみません先輩。彩が急に倒れたもので…彩になに言ったんですか?」
そう、彩は電話に出るまで元気だった。
ところが電話に出たとたんに倒れた。きっとなにか言われたんだわ。
『そう、彩まで倒れたの。実はね、静馬先輩が会社でちょっとしたアクシデントで倒れたのよ。
今タクシーでそっちに向かってるから。
彩が起きたら気を失ってるだけだから安心してって伝えてね』
そう言って電話を切る先輩。静馬さんが倒れた?いったい何があったの?
それより彩を寝かせなきゃね。
あれは…彩?何故泣いている?これは…ああそうだ、これはオレが高校一年の時だな…
練習で頭を打って病院に運ばれた時だ…
この時に彩が初めて『もう怪我するような事しないで』って泣いたんだっけ…
この頃の彩はまだおとなしくて内気な子だったんだよな…
あれから何度泣かしたんだ?ゴメンな、彩…これからはお前が笑えるように頑張るよ…
彩…好きだ彩…愛してるよ……
ゴスッ!……ドコッ!……ゴンッ!…
「う、んん…っ痛ぅ…イテテテ。顎イテェ…な、なんで顎がこんなに痛いんだ?」
何かの音で目が覚めた。あれ?ここは…寝室?
おお!我が家じゃないか、いつ帰ってきたんだ?
それにしても顎が痛てぇ。これじゃあしばらくは硬い物食えないぞ。
「それにしても…さっきからゴンゴン何の音だ?」
なんか懐かしい夢を見てた気がするけど…それよりこれ何の音だ?
リビングから…だよな?なにが起きてるんだ?
恐る恐るドアを開け、リビングを見る。
そこには池田がうつ伏せに倒れていて、必死に立とうとしていた。
そこを彩が天龍源一郎並に顔面にケリを入れている。
その度に池田は倒れ、彩は池田が起き上がろうとするたびにケリを顔面に入れている。
「なんだ、彩が池田の顔面を蹴る音か…って、なんだってぇ!」
予想外の展開!なんで池田がオレの家で彩にしばかれてるんだ?訳が分からんぞ?
「あっ、先輩起きたんですね。大丈夫ですか?」
「か、かなえちゃん、落ち着いてる場合じゃないだろ?彩を止めないと…」
「静馬さん大丈夫ですか?彩、すごく心配してましたよ」
なぜか落ち着き払っているかなえちゃんにますみちゃん。
「オレは大丈夫だから彩を止めないと…って、何で二人ともオレの家にいるの?
っていうかなんでオレここにいるんだ?何時帰ってきたんだ?なんで池田がボコられてんだ?」
なにがなにやら訳が分かりません。
確かオレは…なにしてたんだっけ?
「はぁ〜、やっぱり先輩記憶飛んだんですね。まともに顎、殴られましたもんね。
先輩、直樹に殴られたんですよ。ロッカー室で先輩と話してたんですけど、
それを見た直樹が先輩があたしに手を出したって勘違いして怒ってね」
「オ、オレ池田にやられたの?…彩、オレがやるからどけ!…ってもう終わったのか」
彩の足元で動かない池田。
こいつ空手やってるから打たれ強いんだけど…やっぱり彩はすごいな、感動した!
「た、拓にぃ?…ヒック、ヒッ…拓にぃ〜!」
オレの顔を見て泣きながら抱きついてくる彩。肩が震えている。
「ゴメンな、心配かけたみたいだな。…もう大丈夫だから心配すんな!」
「ヒッ、グスッ、ホント?大丈夫なの?もう痛くない?」
オレの顔をなでながら涙目でオレを見上げる彩。こ、これはカワイイな…
「二人の世界に入ってるところ悪いんだけど…彩、これで許してあげてね。
直樹にも悪気はなかったんだからね。
まだやり足りないって言うのなら…あたしが相手をするわよ」
ニッコリほほ笑むかなえちゃん。
手には何故かフライパンが…なんでフライパンなの?
「静馬先輩、ホントに大丈夫ですか?先輩が気絶した後、大変だったんですよ?」
かなえ先輩が静馬さんに説明している。
その間も彩は静馬さんにべったりとくっついてる。
「直樹の誤解を解くのも大変でしたし、彩に連絡したらショックで彩も倒れるし…」
彩、いったいどうしたの?なにか様子が変よ?
私と二人で話してる時はそうでもなかったのに…どうしたのかしら?
「気絶した先輩連れてきたら、彩が『先輩、いいですよね?』っていきなり直樹を蹴り倒すし…」
なぜそんな顔で静馬さんを見てるの?…なぜそんな不安げな顔しているの?
「あれだけボコボコにしたんですからもう許してあげて下さいね?」
ホントに彩、どうしたのかしら?まるで何かに怯えてるみたい。
「ねぇ彩、あなたさっきから様子が変よ?いったい何があったの?
まるで何かに怯えてるみたいよ?」
「ますみ!あなた黙ってなさい!」
え?なんで怒られるの?あたし何か変な事言った?
「……アタシが…怯えてる?ますみ…アンタ何言ってんのよ!
なんでアタシが怯えなきゃならないの?
アタシはそんな弱い女じゃないわ!アンタとは違うのよ!」
彩……こんな弱々しい姿、初めて見るわ。いったい何に怯えてるの?
あなたには助けてもらってばかり…今度は私が力になるわ!
「先輩、静馬さん…彩と私、二人きりにしてもらえませんか?」
「…そうね、それが一番いいかもね。…彩、ますみはあなたに全てを打ち明けたわ。
あなたも…あなたがますみと友人でいたいなら…全てを打ち明けなさい。分かったわね、彩」
そう言って彩の肩を叩いて先輩は外に出て行った。
「彩、オレも外に出てくるわ。…何があろうとオレはお前が好きだからな」
静馬さん彩を抱きしめて囁いてる。
「じゃ、ますみちゃん…彩を頼んだよ」
静馬さんも出て行った…これで私達だけね。
さあ彩…何があったか話してもらうわよ?
先輩達が出て行き、しばらく時間が経ってから彩が重い口を開いたわ。
「ふ…ふふふ…笑っちゃうね。…なにが強い女よ。…なにがカッコいい女よ。
…アタシ、情けないよね」
「…いったいどうしたの?何があったの彩?」
俯いてる彩の顔からは涙が落ちている。
「アタシが歌、歌うの辞めたら…きっと嫌われちゃうんだ。拓にぃに嫌われちゃうよ…」
そっと彩の頭を抱きかかえる。…彩、震えてるわ。
「何故嫌われると思ってるの?私には静馬さん、彩にベタ惚れしてるように見えるわよ?」
「だって拓にぃ、カッコよくて強い女が好きだって言ってたもん…」
はぁぁ〜…まったく何言ってるの?自分では分からないのかしら?
「彩、その条件…そのままあなたに当てはまるわよ?」
「……アタシもそう思ってた。だってそうなるようにアタシ、頑張ったんだよ…
いろいろ努力したんだよ?頑張って拓にぃの好みの女になったつもりだったのよ…」
抱きしめながら震えてる彩の髪を優しくなでる。
「でもね…saiを辞めるって決めてから…怖いの。どうしようもなく不安なの…
もしかしたら拓にぃ、アタシじゃなくて…saiを見てたんじゃないかって。
歌を歌ってるアタシ…saiが好きなんじゃないかって。
普段のアタシなんかなんとも思ってないんじゃないかって。
そう考えだしたら怖くて…不安でたまらないのよ」
そうだったのね…彩にとってsaiは強くてカッコいい女のイメージだったのね。
そのsaiを辞めるって事は強くカッコいい女じゃなくなる…そう考えてるのね。
でもね彩、それは違うわ。あなたはsaiなんかより強くて素晴らしい女性なのよ。
「…彩、私ね、前から考えてる事があるの。
これはまだ湧一さんにも話してない二人だけの秘密よ?」
私の言葉に顔を上げる彩。
「私ね、いっぱい子供生みたいの。実はもう名前も考えてるのよ?
長女はね…『かなえ』。次女はね…『彩』。そう、あなた達の名前よ。
あなた達みたいに育ってほしいの。
あなた達みたいに強くて…やさしい子に育ってほしいの…」
(ア、アタシの名前を子供につけるの?ええ?な、なんでアタシなの?)
相談に乗ってくれてたますみが突然言い出した子供の名前。なんでアタシなの?
「ま、ますみ?なんでアタシなんかの名前を?…きっといい子に育たないわよ」
「あら?彩、自覚してたのね。…確かにお転婆で手のかかる子になりそうね」
幸せそうにお腹を撫でながら話すますみ。
「でもね…お転婆でもきっと優しくて、とても強い女の子になると思うの。
私はそんな子に育ってほしいのよ。彩、あなた達みたいに育ってほしいの。
どんな事があっても友人を助けるような強くて…優しい子にね」
ますみ…けどアタシはもう強い女じゃ…
「彩…私はあなたに2度救われてるわ。
1度目はあなたから静馬さんを体を使って奪おうとして…失敗した時。
2度目は…私が静馬さんとの子供を流産した事をあなたに告白した時。
あの時、彩がなんで1人で我慢するのって顔を思いっきり叩いてくれた事…一生忘れないわ」
ま…すみぃ…
「あの時にあなた達…先輩と彩がいなかったら私、
流産したことに耐え切れずに…もう一度自殺したと思うわ。
ねぇ彩、あの時私を救ってくれたのは…私の顔を思い切り叩いてくれたのは…あなたなのよ?
歌手のsaiじゃなく国生彩っていうプロレス好きでお酒が弱く、少し胸が小さくて気の強い…
私の無二の親友のあなたが…国生彩が救ってくれたのよ?
あなたはね…国生彩はね、私にとってはsaiなんかより強くてカッコいい女性なのよ!
だから彩、自信を持って!じゃないと…生まれてくる子供に彩おばさんって言わせるわよ?」
「ま…すみぃ…ア、アリガト…ますみ、有り難う…アタシ、頑張る!
あんたの子供に恥ずかしくない名前になるように…アタシ頑張るから!」
有り難うますみ!あんたのおかげで頑張れる気がするわ!けどね…
「でも…彩おばさんはないんじゃないの?」
「うふふ…そう呼ばれたくなかったら頑張んなさいな」
「はん!言われなくても分かってるわよ!
まずは…saiを完全に卒業するわ!…そうよ卒業ライブよ!」
「彩、完全復活ね!それでこそ私の好きな国生彩よ!」
「…前から思ってたんだけどあんたってレズの要素あるわね。
行くならアタシじゃなく先輩に行ってよね」
「あら?私は彩がいいのに……ぷっ、っくくく!」
「ぷっ、あっはっははは!」
まさかこんな風に笑いあえるなんて思ってもなかったわ。…ありがとうますみ!
あなたの子供の名前に恥じないように…アタシ頑張るわ!
「拓にぃ…今までゴメン!ウジウジしててアタシ鬱陶しかったよね?
…アタシがsaiを引退したら拓にぃのタイプの女じゃなくなるかもしれないけど…
アタシはアタシだから!拓にぃの事が大好きなアタシだから!
…だから、その…一緒にいていいかな?」
彩!立ち直ったのか!…ますみちゃん、ありがとう!
「当たり前だろう?オレが好きなのはsaiじゃなく、国生彩って言う気の強くて我が侭な女なんだ
よ!」
「拓にぃ…ありがとう、愛してるわ!」
抱き合うオレ達。よかった…ホントよかった!
「はぁ〜、これで一件落着ね。ますみ、あんた何言ったの?」
「それは…彩と二人の秘密です!…まぁそのうち分かると思いますよ?」
「二人とも…迷惑かけてゴメンな。今度なんか奢るよ」
彩を抱きしめたまま二人に感謝する。ホントにありがとうな!
「別にいいですよ。カワイイ後輩の為ですから、先輩として当然ですよ。
…あ、そうだ。あれ、言い忘れてましたね」
あれ?なんだあれって?なにかあったっけ?
「彩、あなたが中学のときに聞いた静馬先輩の好みのタイプってあれ嘘よ。
強くてカッコいい女がいいなんて、モテナイ男の悲しい言い訳よ」
うっ!なんでキツク言うのかなぁ…オレのハートが傷つくだろ?
「……ホントなの?拓にぃそれホントなの?」
「ん?まぁホントだよ。お前にモテナイから女と付き合ってないとは言えな…がふっ!」
股間に走る衝撃!な、何故に金的を?
「あんたのその嘘のせいで…アタシがどれだけ苦労したか。…どれだけ悩んだか。…死ね!」
金的で前かがみになっているオレの両腕を脇から手を回し、
オレの背中で固定して頭を足の間に入れる。
これは…タイガードライバーか?よし!それなら受身でなんとかなる!
彩は両腕をロックした状態でオレを上に持ち上げる。
ヘタに逆らったら肩が外れるので逆らわず流れに任せる。
あれ?これはタイガードライバーじゃ…ない?
ま、まさか…WWEスーパースターズ、トリプルHの必殺技『ペディグリー』か!
ま、待て彩!これは受身が取れな……ゴスン!!
「先輩、迷惑かけてすみませんでした!」
「彩、ライブするって張り切ってましたよ?saiの卒業ライブだって言ってました」
「え?ライブするの?あたしにチケット頂戴ね?ね、ね、絶対よ?」
「あたりまえですよ!あ、そうだ、今から歌の練習がてらにカラオケでも行きませんか?」
「いいわね。ますみも行くでしょ?今日は奢ってあげるわよ」
「もちろん行きますよ。御馳走になりますね、先輩!」
「じゃ、行くわよ。彩、ますみ!」
「「ハイ、先輩!」」
「なぁ静馬…お互い悲しい立場だよな。…愛ってなんなんだろうな」
俺はピクリとも動かない静馬に話しかける。かなえ…俺を置いて行くなよ…
「けどよかったな。彩ちゃん完全復活じゃないか。…ホントによかったのか?」
この惨状を見るととてもそうは思えない。
「せめて毛布か何か掛けてやれよ…食らってみて分かったが彩ちゃんのケリって凄いんだな。
最初のは見えなかったぞ」
だからコイツ、俺の蹴りを捌くの上手いのか。コイツ、毎日が実戦か…
「さてと…かなえ達が帰ってくるまでもう一眠りするかな?
おい、またベット借りるぞ?…って聞こえないよなぁ」
俺は床で伸びたままで動かない静馬に毛布を掛けてベットに入る。
今日はいろいろあったな。まぁ終わりよければ全てよし!だな……終わりよかったっけ?
首を捻りながら目を瞑る。静馬、彩ちゃん、もうケンカすんなよ?
俺は絶対に無理な願いを祈りながら眠りに付いた。
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