(ば、馬鹿な…何かの間違いだ!こんな数値が出る訳が…もう一度だ!
……そうか、壊れているのだな?)
ふむ、壊れているのならこの数値も納得がいく。
試しに1キロのダンベルを乗せてみる…あれ?
あれだ、5キロのお米なら……あれれ?軽い物は正常な数値を指すのか?
ならば私が米袋を抱いて乗れば……さっきの数値よりも5キロ増えた。
ということは数値は正常なのか?
火曜日の夜、お風呂上がりの私は裸で米袋を抱き体重計に乗っている。
かなり間抜けな格好だ。
(米袋を抱くと5キロ分数値が加算された。
ということは体重計は壊れていないということなのか?
なら何故3ヵ月前の温泉旅行の時よりも3キロ数値が増えているんだ?)
………分かっている。あぁ、分かっているんだよ。認めたくないだけなんだ!
最近何故か食欲が出てきた。
以前は昼食はとらなかったが、今はおいしく頂いている。
朝のランニングもサボりがちだ。
近頃何故かいくら寝ても眠たくてたまらないんだ。
だから朝は八時過ぎまでベッドで惰眠を貪っている。
夜は十一時には眠るようになった。
九時間も睡眠を取るなんて…まるで私は子供だな。
フフフ…こんな生活をしていれば太るわけだ。
…ふ、太ってなんかない!断じて太っていない!
わ、私は平均よりも痩せていたからこのぐらいがちょうどいいんだ!……と思う。
それに体重が増えたからといって悪いことばかりじゃない。
胸は少し大きくなってブラがきつくなってきた。
次はEカップか…アキ坊、喜びそうだな。
ウエストは………………。
そ、それよりお尻もいい感じになってきたからアキ坊は喜んでいるしな!
うん、そうだな、そんなに気にしなくてもいいな。
体重が増えたといってもダイエットする前に比べたら1キロ増えただけだ。
少し安堵した私は最近好きになったオレンジジュースを飲み、寝ることにした。
やはり果汁100%は美味しいな、この酸味がたまらない。


「へっへっへっ…ダンナ、いい品手に入りましたぜ。どうです一つ?
あっしとダンナの仲だ、お安くしますぜ」
「先輩、お金なら貸しませんよ。それより今までに貸したお金、合計6万円返してください!」
「も〜橘君ったら、ケツの穴が小さいねぇ。アタシが大きくしてあげよ……じ、冗談よ、冗談!」
昼休み、いつものように仲之井先輩にお金をたかられた。
「だいたいなんでそんなにお金がないんですか!先輩無駄遣いしすぎですよ!」
先輩って仕事だけはかなり出来る人だから結構もらってるはずなんだけど…なんでいつも金欠
なんだろ?
「アハハハハ…今お金貯めてるんだよね〜。だから財布のヒモ閉めてるのよ。
ま、穴が開いてるからジャジャ漏れだけどね〜。あっはっはっは!ナイスギャグ!」
そう言ってお腹を抱え、笑い転げる仲之井先輩。どこが面白いんだ?
はぁ…なんなんだろうこの人は。黙っていれば綺麗な人なのに…可哀相な人だよなぁ…
「ちょっと橘君!何哀れみの眼差しでアタシを見てるのよ!
せっかくいい物売ってあげようと思ってたのに…売るのヤメちゃおうかな?」
「いりませんからヤメちゃって下さい。それより早くお金を返してください!」
「お代官様ぁ〜、ここは一つこれでご勘弁を…」
そう言って小さな紙袋を渡してきた先輩。
きっとこれを売ろうとしてたんだ。一体なんだろ?
袋の中を見てみる。小さな箱が入っていた。何が入ってるんだこれ?
どうせゲームセンターの景品かなにか……こ、これはぁ!!
「どう?気に入った?それはタダであげるけど…詳しい使い方は5千円で教えたげる」
ご、5千円?どうしよう?騙されるような気がするけど……どうしよう?
結局5千円を支払ってしまった。
けど対価に見合う分の情報を仕入れた!……と思う。
早速メグさんに試さなきゃ!今日こそは……メグさん覚悟して下さいよ!


「アキ坊、急に来るなんて珍しいな、いったいどうしたんだい?」
お土産の苺を受け取りながらアキ坊に聞く。
最近になって苺が好きになった。
今までこんなに美味しいものを食べていなかったとは…何故か損をした気分になった。
しかし連絡もなく訊ねてくるなんて…ま、だいたいの理由は分かるがね。
「どうせ君のことだから…このスケベ。…ん、この苺はなかなか美味しいな。
このすっぱいさがたまらないな」
お土産の苺を頬張りながらアキ坊を観察する。何か言いたげな表情だ。
「メグさん…その、したい事があるんですけどいいですか?」
「…お尻はダメだぞ。あれは、その…なかなかいいんだが、
次の日は痛くて椅子にも座れないんだ。
椅子に座れなければ仕事にならないからな。それ以外なら…君の望むことは何でもするよ」
恥ずかしい話なんだが…温泉旅行でアキ坊に初めてをあげてから、何回かしている。
その度に失神するほど感じてしまっている。
お尻で失神するなんて…私はヘンタイなのか?
「いえ、今日はお尻でしません。…いや、ある意味お尻に入れますけど、
これを使いたいんです!」
そう言ってカバンから小さい透明の箱を取り出したアキ坊。
「これは…ピンクローターか。アキ坊、こんな物を用意してくるなんて…
やはり君はスケベだな!ま、私もローターはキライじゃないから別にいいが…
あまり小道具に頼るのはいただけないな」
ローターか…久しぶりだな。七見によく使われたものだ。
そういえば私を抱いたナンパ男の中にも使うものがいたな。……今考えるとゾッとする。
いくら淋しいからといって見ず知らずの男と寝るなんて…ホントに私は馬鹿だな。
この事を知りながら、よく私を好きでいてくれるもの…んん?アキ坊、何故私を睨む?
「前に誰かに使われたんですね…ちくしょ〜!」
「わっ!ちょっとアキ…あん!ダ、ダメ…シャワーを浴びさ…んん!」
玄関で押し倒された私。ご、強引だな…たまにはこういう展開も悪くな…ひゃん!
部屋着のホットパンツを脱がされて下半身裸にされた私。
アキ坊は私のアソコにむしゃぶりついている。
舌が私をなぞるたびに背筋を快楽が走り、声が出る。
アキ坊によってもたらされた快楽で思考がふやけてきた時、
何かの機械的な振動音が聞こえてきた。
何の音だろう?そう思った瞬間…お尻のなかに異物が入ってきた。
「ひゃ!アキ坊ダメェ!ぬ、抜いてぇ!これ凄すぎ…ああ!」
お尻のなかに入ってきたローターは激しく振動しながら私を攻める。
アキ坊は私の抗議を無視しながらアソコの小さな突起を吸い上げる。
中に入れた指で一番敏感な所を擦ってくる。
アキ坊の激しい攻めに、もう何が何やら分からなくなった。
アキ坊のが私に入ってきた瞬間までは覚えているのだが…
気が付いた時はベッドの中だった。


(メグさんのだいぶ濡れてきた…そろそろ頃合いかな?)
玄関でメグさんを押し倒した僕は、ホットパンツをはぎ取って口で攻めている。
暴れるメグさんの太ももを力で押さえ、舌を這わす。
「あっ、んん!アキぼ…いい!もっと…くぅ…ああぁ!」
メグさん、もうぐちょぐちょだ。感じすぎて僕の顔に押しつけてきてるよ。
もうローターいらないんじゃないの?
……そうだ!先輩が言ってた応用編ってやつを試してみるかな?
ローターにゴムを被せて、と。…舐めながらはやりにくいな。…よし、準備できた。
確かこれをメグさんのお尻に入れながら攻めたらいいんだよね?
動くのかな?試しにスイッチを入れてみる。…おお!動いた動いた!
こんな感じで動くんだ…メグさん、他の男にこれで攻められて…ちくしょー!
メグさんが他の男にローターを使われているところを想像してしまった僕。
悔しさのあまり一気にお尻にねじ込んでしまった。
「ひゃ!アキ坊ダメェ!ぬ、抜いてぇ!これ凄すぎ…ああ!」
す、凄い…メグさんの腰がビクンビクンと痙攣しているよ。
…スイッチ強にしたらどうなるんだ?カチッ
「ああー!アアあぁア!ひ、ひぐぅ…ひゃぁぁ!」
う、うわ…体中が痙攣してるよ、メグさんってお尻が本当に弱いんだね。
このまま舐めて…攻めてやる!
じゅるる…ちゅば…レロレロ…じゅるるる!
アソコの突起を舐め転がしながら指を入れ、Gスポットを掻き出すように攻める。
メグさんからはどんどん愛液が溢れてきて床を濡らしている。
…ダメだ、もう我慢できない!
「メグさんいいですよね?…入れます!」
感じすぎて返事の出来ないメグさんに、すでに全開になっている僕のを突き刺して腰を振る。
「あ…きゃあああ!…あ…あがぁ…んん…ん……」
入れた瞬間に体を反り、大声をあげたメグさん。
しかし僕はそれどころじゃなかった。
入れるとメグさんの中は、僕のを抱き締めてくれるように締め付けてくる。
引き抜こうとするとそれを嫌がるようにさらに強く締め付けてくる。
おまけにお尻に入れたローターの振動が僕のにも届いて…だ、ダメだ!気持ち良すぎる!
ぐちゅ…ぐちゅ…ぐちゅ…ぐちゅぐちゅ!…うう!
ドピュ!ドピュドピュ!…ドクン…ピュ…
辛抱たまらずにメグさんの中で大量に射精してしまった…
な、なんて気持ちいいんだ…最高だ。
たった五回動かしただけなのに…もう一回ぐらい、いいよね?
「メグさん…まだいけますか?いいですよね?…メグさん?ちょっとメグさん、大丈夫ですか?」
僕の問い掛けにも時折痙攣するだけで、返事がない。
メグさん、失神しちゃったんだ…
え?ってことは…お尻じゃなくて、前の方でも…イッたんだよね?
僕が…ついに…メグさんを…僕ので………イカせたぞ〜〜!!
うお〜!ついにやったぞ〜!
思えば長い道程だったなぁ…メグさんに気持ち良くなってもらおうといろいろ勉強したもんね。
その努力のかいがあって、こうしてメグさんが…あれ?メグさんまだビクビクしてる。
メグさんをここまでイカせるなんて僕も結構やるように…
ロ、ローターだ!スイッチ切るの忘れてた!
慌ててスイッチを切る僕。メグさんの様子を見ると、グッタリしてる…どうしよう?
と、とりあえずはベッドに運ばなきゃね。


「はい、メグさんミネラルウォーターです」
「あ、ありがとう。ちょうどノドが乾いてたんだ、いただくよ」
「ははは、メグさん大声出してましたからね。そりゃノドも乾きますよね」
…む?
「体は大丈夫ですか?ちょっとキツク攻めすぎたみたいですから…失神さしちゃいましたしね」
…むむ?
「いやー、メグさんのイク瞬間の顔って可愛かったですよ?」
…むむむ?
「僕も腰を振りすぎて疲れちゃったから一緒にベッドに入っていいですか?
百回もピストン運動したから疲れちゃいましたよ」
「……君は少し調子にのってるな。確かにアソコでは初めてイカされて失神してしまった。
それは認めよう、凄く気持ち良かったよ。しかしだな…」
アキ坊、少し天狗になったようだな。その天狗の鼻をへし折ってあげよう。
「それはローターのおかげだ。ローターをお尻に入れるなんて…このヘンタイ!
しかも…百回だと?嘘はいけないな。特にすぐにバレる意味のない嘘はいけない」
私の言葉に動揺を隠せないアキ坊。このさい力関係をはっきりさせておかないとな。
「君は私の中に出してくれたんだね、うれしいよ。記憶にないのが残念だ。
しかしだね、このあふれ出てきた精液の量から察するに一回だけだね?
君は百回もピストン運動をしたと言っていたが、本当なのかい?
前回までの平均がやっと10回に到達した君が、急に百回は信じられないな…
なんなら今からもう一度試してみようか?君も一度ではもの足りないだろう?
嘘じゃないならローターなどに頼らなくても私を満足さしてくれるはずだ」
私の容赦ない問い詰めに、土下座をして謝るアキ坊。
「土下座をするくらいなら何故嘘を吐く?
以前から私は君が早漏でもかまわないと言っているだろう?
愛する君に嘘を吐かれて私は気分が悪く……」
な、なんだ?本当に吐き気がしてきた。
う、うぷ…気持ち悪い、吐きそうだ。
「ぐす、ゴメンなさいメグさん。確かに嘘を吐いてました。
ローターなんか使わなくてもメグさんがイケるように努力しますから……メグさん?
どうしたんですか?顔色悪いですよ?大丈夫ですかメグさん!」
「う…ダメ、吐きそう…アキ坊どいて!」
心配して覗き込んでくれていたアキ坊を押しのけトイレに駆け込む。う、うぇぇ…
便座を抱くように座り込み、吐いてしまった私。
アキ坊、イチゴが傷んでいたんじゃないのかい?
恋人になんてものを食べさ…うぇぇぇ…
う、うう…気持ち悪い。
アキ坊、よくも私に変な物を食べさせ…うぇぇぇぇ…

結局その日のうちに体調はよくならず、アキ坊を抱き枕にして眠る事にした。
アキ坊に抱きしめられていると不思議と気分もよくなってくる。
…君にはヒーリング機能が付いているのかい?
私は変な物を食べさせられたお返しに胸をアキ坊に押し付けるようにして眠りに付く。
もちろんブラは着けていない。
フフフ…アキ坊、大きくなっているな。
一回しか出してないから、君には辛抱たまらないだろう。
仕返しだよ、今夜は我慢しなさい!…私だって物足りないんだからな。


「メグさん…メグさん!起きて下さい、朝ですよ。…大丈夫ですか?気分はどうですか?」
次の日の朝、アキ坊に起こされた…ショックだ。
今までアキ坊に起こされたことなどなかったのに…ショックだ。
アキ坊が部屋に泊まってくれた次の日は、私が優しく起こすのが通例となっている。
朝食を作り、アキ坊が仕事の日ならばお弁当も作る。
で、準備が出来たら優しく起こす。
大抵はおはようのキスで起こすのだが…時々元気なアキ坊を頂くこともある。
寝ているアキ坊のを咥えてあげると、女の子みたいな声で喘ぐのでとても楽しいものだ。
そんな私の些細な楽しみを奪うとは…アキ坊のくせに生意気。
だいたい今何時なんだい?
………8時だと!わ、私が寝過ごしたのか!
「す、すまないアキ坊!寝過ごしてしまった!
…朝食の準備も何も出来ていないんだ、ホントにすまない!」
アキ坊はすでにスーツ姿になっており、もう出社の準備も終えているみたいだ。
「そんな気にしないでくださいよ。それよりメグさん、体の具合はどうですか?
なんなら今日は会社を休んで一日看病しましょうか?」
アキ坊が私を一日看病してくれる?…そそられる話だな。
お粥をフーフーして食べさせてくれたり、おでこで熱を計ってくれるのかい?
そして汗をかいた私の体を優しく拭いてくれて…そのまま……ゴクリ。
「くっ…非常にそそられる提案だが…断るよ。私は子供じゃないんだ、君は仕事に行きなさい。
それにもう体調も良くなった。ただし…今晩はお見舞いに来るように!
お土産は…そうだな、痛んでいない苺がいいな」
「分かりました、イチゴを買って来ます!…けど病院には行ってくださいよ?
特にメグさんは体が資本なんですからね、分かりましたか?」
「君に言われるまでもない!それよりアキ坊、早く出ないと仕事に遅れてしまうぞ?
頑張って働くように…チュッ」
いってらっしゃいのキスをしてアキ坊を送り出した私。
ま、まるで新婚夫婦みたいだな。

さてと…アキ坊には嘘を吐いたようで悪いが、今日は病院に行っている場合じゃないんだよ。
実は駅前のパチンコ店がグランドオープンするんだ。
かなりの出玉が期待できるから行かないとな。
優先入場券は貰ってあるし、今日の営業時間は朝10時から夜7時までと確認もしている。
アキ坊が部屋に来る前に帰って来れるし…なにより今月の稼ぎが悪いから休んでいる場合じ
ゃない!
正直な話、まだムカつきはあるのだがこの位は我慢しないとな。
今日は短時間で収支が期待できるスロットを打つかな?
いや、釘が期待できるからお気に入りのエヴァにするか?
それともこれから店が力を入れるであろうスーパー海物語かな?
う〜ん、迷うな…贅沢な悩みだ。ま、店に行ってから決めるとするか。
開店まで並びながら打つ台を決めることにした私。
しかしどの台にするかなんて考えている場合じゃなくなってしまった。
優先入場者の列に並ぼうとした時、たばこの臭いを嗅いでしまったからだ。
パチンコ店だからほとんどがたばこを吸う人ばかりで、吸わない人が珍しいくらいだ。
私は吸わないので、パチプロになった頃はかなり苦労した。
しかしもう慣れたので煙は気にならない…はずだった。
今日は何故かたばこの臭いに気分が悪くなり、また吐き気がしてきた。
な、何故だ?何故今さら急にたばこの臭いがダメに…う、うぷっ…
く、くそぅ…今日はアキ坊の言う通りに病院に行くしかないのか…
せっかくのグランドオープンだったのに…ううう…気持ち悪い…
結局吐き気には勝てずに病院に行くことにした。無念だ…

病院で医者に症状を説明し、診断してもらったのだが……
なにが『おめでとうございます』なんだ?


「ねぇん、橘くぅ〜ん…綺麗な先輩と美味しい御飯食べに行かない?
今ならもう一人、カワイイ女の子が付いてくるわよ?
なんなら3P…いや、保科さんも入れて4Pなんてどう?
もちろん保科さんに入れるのはア・タ・シ……じょ、冗談だってば!暴力はんた……ゴンッ!」
仕事が終わり帰り支度をしている僕に、
無駄口を叩いてきた仲之井先輩の頭に拳骨を落とす。
これで少しは頭の中身がマシになってくれたらいいんだけど…はぁ、先輩の相手も疲れるよ。
「橘君にいじめられたぁ〜!セクハラだぁ、訴えてやる!
…訴えてほしくなければ御飯おごってちょ〜だい?」
はぁ?何言ってるんです?これがセクハラなら先輩なんているだけでセクハラだよ!
「セクハラで訴える?先輩、寝言っていうのは寝てるときに言うものなんですよ?
知ってましたか?」
「橘君ノリ悪いね、なんかあったの?…ローターで失敗でもした?」
「失敗なんかしてません!大成功でしたよ!…ってなに言わせるんですか!
それより先輩、また金欠なんですか?いいかげん僕にたかるの止めて下さいよ」
最近金欠に磨きがかかってきた先輩。一体何にお金を使ってるんだろ?
「だってしょうがないじゃない、りょーちんの手術にはお金がかかるんだから…」
「え?七見が手術って…なにか病気にでもなったんですか?」
そうなんだよね…先輩、まだ七見と関係があるんだよね。
…七見、今は女装が趣味なんだって。
もうまともには戻れないんだろうな…天罰だよね。
「りょーちんがね、『妊娠できないのはアタシが男だからだわ!
アタシ……女になる!』って言い出したのよ。
りょーちん…性転換手術するのよ。アタシの為に…アタシの子供生むために手術するのよ!」
涙目で力説する先輩。うわ〜、聞いて損したよ…
「へえーそうなんですかよかったですねーじゃあぼくかえりますね」
「なにその棒読みなセリフ?普通、感動するところよ?橘君って冷たいのね〜」
「僕はまだ先輩の相手してるだけマシですよ!
…それより先輩、どこかいい果物屋さん知りませんか?」
「なになに?りょーちんへのお見舞い?あははは、まだ入院してないからそんなのいいわよ〜」
笑いながら手を振る先輩。
なんで僕が七見なんかにお見舞いあげなきゃなんないんだよ!
「違います!お見舞いはお見舞いですけど、メグさんです!
…メグさん体調崩してるんですよ。メグさんのリクエストがイチゴなんですよね。
最近イチゴが大好きになったと言ってましたからね」
そうなんだよね、最近になって好きなものが変わったみたいなんだよね。
「ふ〜ん、保科さん風邪でもひいたの?……ああ!橘君、無茶な攻めでもしたんでしょ!
ダメよ?女の子は優しく扱わなきゃね。…教えてあげよっか?
や・さ・し・い・攻め方を…五千円でね」
………ゴクリ。優しい攻め方?ど、どうしよう?
…五千円かぁ、それぐらいなら出してみようかな?
「なぁ〜に真剣に悩んでんのよ、橘君ってエッチィねぇ。
…ところで保科さん、どんな具合なの?」
「な、悩んでなんかいませんよ!お金出してまでそんな情報買うわけないじゃないですか!」
また先輩にからかわれてしまった…真剣に考えてしまった自分に腹が立つよ!
「メグさんの具合なんですけど、急に胸がムカムカしだして吐き気が治まらないみたいなんです
よ。体が熱っぽいって言ってましたし…やっぱり風邪ですかね?」
「……ねぇ、保科さんってもしかして最近食べ物の好み変わったりした?
脂っこいのがダメになったとか?あと臭いに敏感になったりとかは?」
「え?…ああ、そういえば何故かとんこつラーメンが食べれなくなったって言ってましたね。
臭いは分からないですね、何で知ってるんです?」
僕の言葉に何故か「やっぱりねぇ…」と頷いてる先輩。
何がやっぱりなんだろ?
「橘君…多分だけどね、君、とんでもない事しちゃったね。
…クソ〜!橘君に先越されちゃったよ〜!クヤシ〜!!」
………え?なにが先越されちゃったの?僕、何したんだろ?
「悔しいけどこれ、プレゼント!…負けてらんないわ!
さっそくユウちゃんとりょーちんをいじめなきゃ!」
そう言って僕に何かを渡して走っていった先輩。
まったく騒がしい人だよね…ところでこれ、なんなんだろ?
渡されたものを見てみる…妊娠検査薬?
なんでこんな物…………うぇぇぇ?そ、そうなのか?


(まずい…まずいぞ。これは非常にまずい。一体どうすればいいんだ?)
病院から帰ってきて、私はずっと悩んでいる。アキ坊にどう切り出せばいいんだ?
病院での診察の結果…妊娠。衝撃のあまりに立ちくらみがした。妊娠3ヶ月だそうだ。
妊娠するなんて身に覚えが……いや、ありすぎるな。
とくに3ヶ月前というと…温泉旅行か。
そういえばあの日は安全日でもなんでもなかったな。
出発の朝には生で中に出してもらって…次の日の夜は3回もおねだりしたんだった。
その日はお尻にも4回出してくれたし…ホントにアキ坊は絶倫だな。
フフフ…そんなのを相手にしているのだから妊娠もするわけだ、納得だな。
……納得したところで現実が変わるわけでもなし、問題はこの子をどうするか、だ。
お腹を撫でながら考える。愛するアキ坊との子供だ、是非生みたい。
しかし…計画的に出来た子供じゃない。
…私の我が侭をアキ坊は許してくれるのだろうか?
もしおろせと言われたら…そんなことが出来る訳がない!
この子には何の罪もないんだ!
私が一時の快楽に溺れた為だ。…責任は取ろう。
もし…万が一おろせと言われたら…別れよう。
そしてこの子を育てていこう。
そう、愛するアキ坊と別れたとしても…もう私は一人じゃないんだ、この子がいるんだ。
フフフ…まだ妊娠しただけなのにこんな気持ちになるなんて…『母は強し!』だな。
母さんも私を妊娠したときはこんな気持ちだったのかな?今度電話して聞いてみよう。
そんなことを考えお腹を撫でていたら玄関ドアが勢いよく開き、
アキ坊が転がり込むように部屋に入ってきた。
何をそんなに慌てて……何故君はおもちゃの箱を持っているんだい?
「はぁはぁはぁ…メ、メグさん!に、妊娠!はぁはぁ…これで、妊娠です!」
私に向けて手を差し出しながら、息も絶え絶えで話しだしたアキ坊。
いったい何を言っているんだい?
訳が分からな…何故君が妊娠を知っている!
アキ坊が差し出している手を見てみると…妊娠検査薬が握られていた。
「…知っていたのかい。それはもう必要ないよ、3ヶ月だそうだ。…君と私の子供だ」
お腹を撫でながら話す。
「私は生みたい。いや、絶対に生むつもりだ!
…たとえ君がおろせと言っても必ず生むと決めた」
「生んでください!僕と結婚してください!」
「ああ分かっている。いきなり妊娠したといわれてもどうしていいか分からないのだろう?
君が嫌なら私一人で育てる、迷惑はかけないつもりだ。
お金で迷惑を掛けるつもりもないから心配はいらない。
だから生まして欲し………ちょっと待て。アキ坊、君は今なんと言った?」
幻聴か?幻聴なのか?私の耳がおかしくなっていなければ、今確かにアキ坊は…
「何度でも言います!僕と結婚してください!ぜっったいに子供、生んでください!」
やはり結婚して欲しいといったのか。
ふむ、幻聴ではなかったのだな……なんだって!

こ、これはいわゆる…プロポーズ、なのか?…ええ?ぷろぽーずぅ?


「お、落ち着きなさい、アキ坊落ち着け。君は結婚というものを分かっているのかい?
あ、あれだ、結婚というのはだな、え〜と…植物に例えると、おしべとめしべがだな…」
「メグさんこそ落ち着いてくださいよ…ププッ、なんなんですか、おしべとめしべって」
ぐぅ…笑われてしまった。
私を笑うなんて…アキ坊のくせに生意気!
「ふ、ふん!私が妊娠したからといって、別に君が責任を感じる事などないんだ!
…これは私が望んだ事なんだよ。だから無理に結婚など言わなくてもいい。
この子は私が責任を持って育てる、だから君は一切気にしなくてもいい!」
「なに意地をはってるんです?ダメです!一人で育てるなんて認めません!
だいたいメグさん、一人で育てるといっても生活費はどうするんですか?
妊娠中にパチンコなんて赤ちゃんに悪いですよ、絶対にダメですからね!」
ぐぅぅ…痛いところを突かれてしまった。
「それはだな…ええとだな…なんとでもなる!そう、いざとなったら風俗にでも…」
「何言ってるんですか!冗談でもそんな事言わないで下さい!
…そうだ、就職先ならありますよ?」
怒られてしまった…ま、確かに今のは私が悪い。
んん?就職先があるだと?
「アキ坊、何故もっと早くに教えてくれない!で、その就職先とはどんな所なんだい?
事務職?それとも接客業かい?」
「え〜と、そんなに目を輝かされても困るんですけど…サービス業になるのかな?」
「ふむ、サービス業か…他人との接触はあまり得意ではないのだが、贅沢は言えないな」
「仕事内容は…そうですね、家族の為に毎日御飯を作ったり掃除をしたり、
子供をあやしたりするんです。メグさん…橘家に就職しませんか?」
…そんな事だろうと思っていたよ。
ふふふ、これが本当のプロポーズという訳か。
「で、夜のお勤めもあるというわけだな?まったく君は…そこまで私と結婚したいのかい?」
「うう…そ、そうですよ、悪いですか?好きな人と結婚したいのは当たり前です!」
「まったく何を開き直っているんだい?
…で、その橘家に就職したら給料はいくら位もらえるのかな?」
「ええ?え〜とそれはですねぇ…ん〜と…3食昼寝つきって事で!…ダメですかね?」
「…もちろん溢れんばかりの君の愛情も付いてくるんだね?」
「当たり前です!就職したら絶対に損はさせません!」
はぁ〜…アキ坊に子供を拒否されたらどうしよう?なんて悩んで損をしたな。
「ふぅ〜、仕方ないな。そこまでいい条件を出されたら就職するしかないな。
ただし!…浮気はいけないぞ。私は妊娠中だから君の性欲を満たす事が難しい。
かといって浮気をしたら…そうだな、私の父さんに連絡して…あとは分かるな?」
「……ゴクリ。え、ええ、剣道、柔道、合気道、三つ合わせて10段のおじさんに…
説教されるんですね?」
「ただの説教じゃないぞ、物凄い説教だ。それにアキ坊、おじさんじゃないぞ。
…これからはお義父さんだ、間違えないようにな」
私の言葉に凄い勢いで頷くアキ坊。
そんなに首を振っていたらムチ打ちになってしまうぞ?
「アキ坊、私を…いや、私達を幸せにしてほしい。…うん、結婚しよう。3人で幸せになろう」
「いよっしゃぁぁぁぁ〜〜!!」
私の返事に飛び跳ねながら喜ぶアキ坊。
そんなアキ坊を見ながらお腹を撫でる。
ふふふ…君は幸せ者だな。
生まれてくる前からこんなにも愛されているんだよ?君と早く会いたいな…
せっかちな君のお父さんは、もう玩具まで買ってきているんだよ?
私達3人で幸せになろう…愛しているよ。


午前6時、起床。二人を起こさないようにそっと布団から起きる。ん〜、まだ眠いな。
今日のお弁当は何を作ろうか…ふむ、夜のサインの厚焼き卵を入れるとしよう。

午前7時、二人を起こす。御飯は家族揃って食べることが我が家の決まりだ。

午前7時40分、修太を学校に送り出す。
最近はクラスでウサギを飼っているらしく、その世話の為に毎朝早い時間に登校している。
ま、それは口実だけどね。本当は飼育委員の女の子と話すためだ。
修太はクラスメートで飼育委員の彩ちゃんがお気に入りらしい。
残念な事に彩ちゃんには将来を誓い合った男の子がいるとのこと。
彩ちゃんのお母さんから聞いたから間違いない。
小4で親公認のフィアンセがいるとは…生意気。

午前7時50分、主人に行ってらっしゃいのキス。修太がいないからゆっくり出来る。

午前8時、キスを終了し、主人を仕事に送り出す。これからが私の本格的な仕事だ。
掃除洗濯に取り掛かる。修太の机の下から30点のテスト用紙を発見する…説教確定。
主人の部屋からは仲之井さんから送られてきたであろうDVDが出てきた。
…今夜は4回ほど頑張ってもらうとする。
仲之井さんは『性転換男の処女喪失!』というDVDで監督デビューをし、活躍している。
あっちの世界が水に合っているみたいだ。ま、私にとってはどうでもいいことだが…
そうそう、驚いたことに彼女はまだ処女だそうだ。

午前9時、掃除終了、続いて洗濯に取り掛かる。

午前10時、洗濯終了。これにて午前の仕事は全て終了した。
友達の家に遊びに行く事にする。

午前11時から午後3時、同じマンションの友達の家でプロレスを見せられる。
ま、いつもの事だ。
おかげで最近プロレスが面白いように思えてきた。一度見に行くとするかな?

午後16時、夕食の準備のためスーパーに買い物に行く。
今晩のおかずはウナギと山芋にしよう。

午後16時30分、スーパーの帰りにパチンコ店の前を通る…が、ふと立ち止まってしまった。
懐かしいな…この店の中には昔の私みたいに、パチンコで生活している人がいるのかな?
……さ、早く家に帰って夕食の準備をしないとな。
少し伸びをして家路へと急ぐ…幸せ溢れる我が家へ。


私の名前は橘恵。職業は主婦。…最近二人目が欲しいな、と思い始めたところだ。



『私の仕事』  終




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