「シーリス…正吾にちゃんと謝ったの?いくらなんでもあれは酷いと思うよ?」
俊との記念すべき200回目のデート。今日こそは…絶対に決めるわ!
「ねぇ聞いてる?…はぁぁ、少しは僕の話も聞いてよ」
まずは第一のトラップ!『寄せて上げて詰めた胸での誘惑』作戦よ!
ドーピング上等!今日のアタシは2段階、レベルアップしているわ!
この作り上げたEカップの胸で、窒息させてあ・げ・る。
むに…胸を押し付けるように腕を組む。
どう?マヤと同じサイズまで作り上げたこの胸で、アンタを虜にして見せるわ!
「他にも健一と江口さん相手に暴れたって聞いたよ?女の子なんだから暴れちゃダメだよ。
もし怪我でもしたらどうするの?僕…そんなの嫌だよ」
くっ、胸の効果はないみたいね。それよりアタシのことを心配してくれるなんて…キュンとくるじ
ゃない!
アタシより少し背が高くなった俊の横顔を見る。……シュン〜〜!
「う、うわ!シーリス人前でなにす…んぷ!」
我慢できずに抱きつきキスをする。好き好き好き好き!だ〜いスキ!
記念すべき452回目のキス。そして今日こそは…始めて二人が結ばれる記念日になるのよ〜!
「ン…ンプ…ぷはぁ!はぁはぁはぁ、シ、シーリス!いい加減にしないと怒るよ!」
夢中でキスするアタシを無理やり引き剥がす俊。もう!なんでなのよ!
「僕、前から言ってるよね?こういうことって1回1回を大事にしたいって。
だから、ね、シーリス。もう無理にこんな事しちゃ嫌だよ?
シーリスだって僕に無理やりされたら嫌でしょ?」
「はぁ?アンタ何言ってんの?アンタにだったら無理やりも何もないわ!
いつでもウェルカム、OKよ!」
ここが勝負時ね!寄せて上げた胸をさらに二の腕で寄せて見せ付ける。
「アンタにだったら…どんな事をされてもいいわ。アタシ、あんたのものだから。
好きにしていいわよ」
…どう?どうなのよ!シーリス様、一世一代のセクシーアピールよ!
股間にキュンと来たでしょ?
さあ、抱きなさい!貪るように抱くがいいわ!
「シーリス…その胸どうしたの?すっごく違和感あるよ?」
…わっけわかんない!なんでそんなリアクションなのよ!信じらんないわ!
この絶世の美女でスタイルバツグン!
しかも個人資産10億円もあるアタシのアピールを無視!なんなのよ!
「僕は…普段のシーリスが好きだな。勝気で我が侭で、でも優しくて…そんなシーリスが大好き
なんだ。だから、ね。無理しなくていいよ。それに…巨乳好きじゃないしね」
ガ〜ン!しゅ、俊って胸にはこだわらない男だったのね。
今まで打倒マヤで努力してたアタシは何だったの?
バストアップ体操に費やした時間を返して欲しいわ。
とりあえずは…第一のトラップは失敗ね、悔しいけど。
けど、まだまだよ!次で決めるわ!続いて第二のトラップ発動!
『デートで歩き回ったら偶然ラブホの前!「疲れちゃった…アタシもう歩けないの」…そのままラ
ブホで休憩!』作戦よ!
さぁ、ベットの上で疲れ果て、アタシの胸に抱かれ眠るがいいわ!


「今日営業周りしてたら、ラブホ街から俊とシーリスの二人が出てくるの見たぞ。
シーリスがおんぶされてたということは…足腰立たなくなるまでやったのか。あいつ等すげぇな」
相も変わらずオレの部屋に入り浸っている桃子に話しかける。
…返事がない、無視を決め込んでいるようだ。って、やっぱり無視かよ!
ところで今日は何を読んでるんだ?おお!ファンタジー小説の『ロードス島戦記』か!これもよ
く読んだよな。
「なぁ桃子、それもテレ東でアニメ化されたことあるんだぞ、知ってたか?」
オレの問い掛けにも桃子は何も答えない。また無視かい!ま、もう慣れたからいいけどな。
「そういやお前とシーリスってなんで友達になったんだ?
お前等の性格って540度ぐらい違うだろ?」
そうなんだよ、前から不思議に思ってたんだ。
無口な桃子と武闘派シーリス、接点がまったくなさそうなんだよな。
性格なんて180度どころじゃなく、一週半ぐらい違うだろ?
「…一度喧嘩したの。大喧嘩。…結局はマヤが勝ったわ」
おお!珍しく質問に答えてくれたぞ!…ってあのシーリスと喧嘩した?
結局はマヤちゃんが勝ったって?
「よく分からんが…喧嘩して仲直りしてからの友達ってことか?」
コクンと頷く桃子。なんだ、コイツも青春らしいことしてたんだな。
「そうか〜、喧嘩したんかぁ。あれか?やっぱ喧嘩は河川敷でやったのか?
夕日をバックに最後はがっちりと握手をして友情を確かめあったんだな?
最後にマヤちゃんが勝ったってことは三人で喧嘩したのか?」
フルフルと首を振る桃子。
「違うのか?桃子とシーリスがケンカして、最後にマヤちゃんが勝つってのがよく分からんが…
ま、いいや」
冷凍庫からカリカリ君を一本取り出す。
「ほい、面白い話を聞けたお礼だ。これでも食えよ」
嬉しそうにほお張る桃子。アイス一本でここまで喜ぶとは…近頃の女に見習わせたいな。
なぁにが「ヴィトンのバックがほしい〜!」だ!キャバ嬢のくせに生意気だ!
2,3回店で会っただけでなんでそんな高いもんあげなあかんねん!アホちゃうか!
あれ?そういや桃子とこんな話をしたのは初めてだな。
「お前とこんな話をしたのは初めてだな。いい機会だからもっと話し合うか?
オレ等って結構長いこと一緒にいるけど、あんまりお互いの事知らないからな」
オレの提案に、目をまん丸にして驚く桃子。こうして改めて見るとやっぱり可愛いいな。
「まずは言いだしっぺのオレからな。
え〜、名前は江口翔馬、歳は30歳。最終学歴は府立高校卒の高卒だ。
サラリーマンで営業をやってる。彼女は……。趣味はだな、スポーツ観戦かな?
主に野球や格闘技をよく見るな」
食い入るようにオレの話を聞く桃子。そ、そこまで真剣な顔をされると照れるな。
「で、今年の春に社命でこっちに来た訳だ。
そこで隣に住む健一と知り合い、お前等と知り合った。
ま、最初はこんなとこかな?はい、次は桃子の番だぞ」
「……彼女は?そこが抜けていたわ」
よりによってそこに食いついたのか…勘弁してくれよ。
「言わなきゃダメ?」「ええ、ダメよ」
即答する桃子。おいおい、なんでそこまで食いつくんだ?
「くっそ〜…分かったよ、教えてやるよ!…右手だ。オレの恋人は右手だよ!
理由は聞くなよ?泣いちゃうから。
何故右手が恋人か知りたかったらマヤちゃんにでも聞くんだな。それより次はお前の番だぞ」
「マヤに聞いたら分かるの?…分かったわ、マヤに聞くわ」
納得がいかないのか小さく首を傾げていた桃子は、そう言って本に目を落とす。
おいおい、オレだけに話させるなんて許さんぞ!
「桃子、今度はお前の番だろ?さっさと話せよ」
「…私はいいわ。話すの苦手だから」
「だからだっての!お前なぁ、いつまでも苦手ですむ問題じゃないぞ?
お前もいつかは絶対に社会に出るんだ。
それまでにきちんと話して、自分の意思表示を出来るようにならなあかんぞ?」
そう、実はこれが目的なんだ。桃子は口下手で話すのが苦手だ。
今は周りにシーリスやマヤちゃん達がいるからどうにかなってるが、社会に出るとそうはいかな
い。
今のままでは社会に出ても対応できず、エライ目に遭うのは目に見えている。
なら今のうちにきちんと社会に出れるようにしてやるのが大人の役目だ。
う〜ん、オレって大人してるな!
オレの言葉に小さく頷き、ポツリポツリと話し出した桃子。
いいぞ、その苦手な事を克服しようとする最初の一歩が大事なんだ。
後でもう一本、カリカリ君食わせてやるからな。


はぁぁぁぁ〜…俊のばかぁ。なんで抱いてくれないのよぉ…
アタシ達、付き合いだしてから一年も経ってるのよ?
ラブホの前で疲れたとウソをついたアタシを、おんぶで家まで送ってくれるなんて…はぁぁぁ。
なんの為の勝負下着だったと思ってるのよ!けど…俊の背中って結構大きかったなぁ。
「…リス!ねぇシーリスどうしたの?ストローでずっと空気をブクブクと吐いてるけど何かあった
の?」
へ?あっといけない!作戦会議中だったわ!
いつもの喫茶店でいつも通りの江口攻略作戦会議。
けど今日はいまいち気分が乗らないの。もちろん桃子の恋は応援するわ!全力でね!
けどね…アタシの恋がうまくいってないのよねぇ〜、はぁぁぁ〜。
「いったいどうしたの?さっきからため息ばかり。山薙君となにかあったの?」
「な、なんにもないわよ!ただちょっと疲れてるだけ。ゴメンね、心配させちゃったみたいね」
そう、なんにも無いのよね。キスは今日までで476回してるわ。ただ…ね。はぁぁぁ〜。
「…江口さんが言ってたわ。シーリスと山薙君がラブホガイから出てきた。
シーリスがおんぶされてたから足腰立たなくなるまでやったのか、すごいなって。
…ラブホガイって何?シーリスは山薙君と足腰が立たなくなるまでいったい何をしたの?」
っだぁぁ〜〜!江口さんに見られてたの?あのダメリーマン、なんで桃子に話すのよ!
「と、桃子、それはね、え〜っとね…ラブホっていうのはホテルの事。
ラブラブな二人が入るホテルなの!」
「そ、そうそう!でね、2日ぶりのデートでアタシ張り切っちゃって、ちょっと疲れちゃったの。
で、ホテルで少し休憩をしてたの。でね、帰りに俊が疲れてるアタシをおんぶしてくれたのよ!」
マヤと二人でちょっと強引な言い訳をする。…ホントはホテルなんて入らなかったんだけどね。
アタシも頑張ったんだよ?アタシがいくら疲れたって言っても、俊は『あとちょっとで駅だよ』
なんて言っちゃうしさ。挙句はおんぶで家まで送ってくれるなんて…優しい俊、大好き!
「もう!桃子が変なこと言い出すから、シーリスが昨日の事思い出して変な顔になっちゃったじ
ゃないの!」
「…シーリスの顔は変な顔。思い出し笑いをすると変な顔になる。中学生から変わらないわ」
でも…なんで抱いてくれないんだろ?アタシってそんなに魅力無いのかなぁ…はぁぁぁ〜。
「はいはい!シーリス、思い出し笑いは後でしなさいね、今は桃子のことよ。
すっごい進展があったんだから!」
……へ?ウソ?進展あったの?
アタシは進展なんてなかったのに…なんで桃子にあるのよ!


「と、桃子、それホントなの?進展ってなにがあったのよ!」
…ちょっと待って。今までのパターンから想像するに、きっとカリカリ君を貰ったのね。
進展があったってのは、多分ソーダ味からコーラ味に変わったとかじゃないの?あまり期待は
出来ないわね。
そんなアタシの考えを打ち砕いた桃子の言葉。
「…プレゼント貰ったの。大きな熊のぬいぐるみ」
赤く頬を染めて嬉しそうに話す桃子。
はいはい、カリカリ君美味しかったんで…え?ぬいぐるみを貰ったの?
「お…おおお!すっごいじゃない!食べ物以外のプレゼントって初めてじゃないの?
おめでとう!」
凄い凄い!今まで桃子が貰ったプレゼントは…主にカリカリ君。
そんなのぜっったいにプレゼントじゃないわ!
それがいきなりぬいぐるみとは…いよっしゃ〜!作戦会議の成果よ〜!
「でもなんで急にプレゼントくれたのかしらね?ねぇ桃子、なにか理由があるの?」
バカね、マヤ。それは江口さんがついに桃子に恋心を抱いたからに決まってるじゃない!
「…誕生日プレゼント。遅れてすまんなって言ってたわ」
「はぁ?アンタの誕生日って…7月でしょ?とっくに終わってるじゃん」
アタシの問いかけにコクンと頷く桃子。く…カ、カワイイじゃないの。
「…江口さんがお互いの事あまり知らないから、お互いの事を話そうって言ってきたの」
ははぁ…それで桃子の誕生日がとっくに過ぎてたのを知ってプレゼントを渡したって訳ね。
でもそれって…桃子に興味が出てきたって事よね?
マヤもアタシと同じことを考えたのか目を輝かせてるわ。これは…あと一押しじゃないの?
「桃子!畳み掛けなさい!一気に行くのよ!今が攻め時よ、一気に攻め落とすのよ!」
興奮のあまりに桃子の両肩に手を掛けて、ガクガクと揺らす。いける!絶対にいけるわ!
「わ、分かったわ。攻めればいいのね?どう攻めるの?…何を攻めたらいいの?」
アタシが揺らしすぎたのかフラフラしてる桃子。
ゴメン、興奮しすぎたわ…ってアンタなに言ってんのよ!
思わずマヤと顔を見合わせる…はぁぁぁ〜。
二人同時に肩を落としてのため息。今さら分かったわ。江口攻略の一番の難問は…桃子ね。
マヤもきっと同じことを考えてるわ。…こんなのどうしたらいいの?
桃子はそんなアタシ達の苦悩を知らずに小首をかしげてこう言った。
「…ねぇマヤ。右手が恋人ってなに?」
フリーズするマヤ。…は?なんのこと?桃子ってばいったい何を言ってるの?
おそらく質問の意味を理解してるマヤの様子から考えるに…きっと、とんでもない質問なのね。
「江口さん、右手が恋人って言ってた。…ねぇマヤ、右手が恋人って…なに?」
江口さんの恋人が右手?……ボケリーマンがぁ!いったい桃子になに教えてんだぁ!
アタシは桃子をマヤに押し付け、ボケリーマンを殴りに行く事にした。


昨日は桃子と初めてお互いの事を色々と話した。
オレと知り合ったあとに誕生日を迎えていたなんて…そん時に教えろよ!
ま、ぬいぐるみを買ってやったら、思いのほか嬉しかったみたいだし…OKだろ?
……今のうちにあいつ等にしてやれる事は、出来る限りしてやりたいからな。
「江口さんボ〜ッとしてどうしたんすか?」
遊びに来てた健一の声で我に返る。
「ん?少し考え事してたんだよ。ガムのCMで『お口の恋人』ってあっただろ?
あれを『お口が恋人』にしたら自分のを咥えてフェラしてるヤツの事になるのかなって考えてた
んだよ。男子たるもの、一度は挑戦するよな?セルフフェラを」
「あ〜、やるやる!おれも中学の時は毎日ストレッチして体を柔らかくしようと頑張ってました
よ」
「オレが毎日やってたのはストレッチじゃなくてヒトリエッチだけどな!はっはっは!」
ピンポーン!ピンポンピンポンピンポンピンポーン!
オレが一ヶ月間考え抜いた必殺の親父ギャグを炸裂させた時、チャイムが鳴った。
おいおい、誰だよこんな情熱的な押し方をするやつは?
健一に見に行かせようとすると勢いよくドアが開く。あれ?シーリスじゃん、珍しいな。
「こんのダメリーマンがぁ!桃子になに教えてんだぁ!」
……なんで?え?ええ?なんで怒ってるの?ねぇなんで?
怒りのシーリスを確認した健一は窓から逃走、オレはその迫力で動けない。
「ま、待て、落ち着け、何のことかさっぱり分からんのだが?
オレ、桃子に変なこと言ったのか?」
あれか?ブラのサイズを聞いたからか?いや、あれは桃子が勝手に言い出したんだ。
しかしあの桃子がCカップだとは…着やせするタイプなんだな。
「すっとぼけてんじゃないわよ!なぁにが右手が恋人よ!変なこと教えてんじゃないわよ!」
「は?あれは軽い冗談じゃないか、何でそこまで怒るんだ?」
…オレにとっては真実なんだがな。
「冗談?アンタねぇ、桃子は素直な子だから本気にするでしょうが!この…ボケリーマン!」
気合一閃!シーリスの右拳が、顎を目掛け飛んできた!
ガシッ!それを片手で受け止める。いつもなら殴られてやるが、今回はちと違う。
「素直な子だから本気にする?ちょっとした冗談を信じてしまうってことか?
言われてみれば確かにそうだ。でもな、前から思ってたんだがそれってかなり危ないんじゃな
いか?世の中悪いやつなどそこら中にいる。
もし桃子がそんな奴等の口車に乗って、騙されたらどうするんだ?
はっきり言って桃子は、女としてかなりのレベルだ。性格も今時珍しく、素直でいい子だ。
そんな桃子を世の中の男共がこのままいつまでもほっておくとは思えん。
寄って来る男共の中に、そんな悪い奴等がいたらどうするんだ?
もし桃子がそんな男共の口車に乗ったらどうするんだ?
友達なら何故いろいろと教えてやらんのだ?
危ないと知りながらそのままほっておくのは見捨ててるのと同じだぞ?
お前は本当に友達なのか?ただ隣で笑ってるだけなら赤の他人でも出来るぞ?
お前はそれでいいのか?桃子との付き合いはそんなもんでいいのか?」
一気にまくし立てるオレ。そんなオレを見て驚くシーリス。
そりゃそうだな。こいつ等の前では始めて見せる、江口翔馬大人バージョンだからな!


「いきなり文句を言い出してすまんな、驚いたか?けどな、お前もそう思うだろ?
シーリス、このままじゃ桃子は近い将来にとんでもない目に遭うぞ?お前、分かってるのか?」
「……まさか江口さんにこんな説教されるとはね。シーリス様も落ちたものね」
ふぅ…と軽くため息を吐くシーリス。その表情は特に怒った様子も無い。
はぁ〜、よかった…デカイ事言っときながら、内心激怒されたらどうしようかとビビッてたんだ
よ。
「確かに江口さんの言うとおりだわ。アタシ…多分、マヤもきっと分かってたと思うの。
言われて初めて気がついたけど、きっと私達は桃子には今の桃子のままでいてほしかったの
…素直な桃子のままでね。
きっとあの子が変わっていくのが嫌だったんだと思うわ。
アタシ達が変わっていくのにあの子だけそのままでいてほしいなんて…いったい何様のつもり
よ」
俯きながら呟くシーリス。
やべぇ、落ち込ませてしまったのか?そう思った時顔を上げ、オレを見ながらこう言った。
「そうよね…あの子も変わらないとね。いつまでも今のままじゃダメよね!
…ねぇ江口さん。女の子が一番変わる時ってどんな時か知ってる?」
ん?妙な質問だな。そんなもん答えは簡単だ、あれの時に決まってるだろ?
「ははは、そんなもん分かってるよ。アレだろ?衣替えの季節だ…ハングホォ!」
み、鳩尾殴るなよ…ゲロ吐いちゃうぞ?
「やっぱアンタはバカだわ!女の子を全然分かってない!
一瞬でもアンタを尊敬しかけた自分が嫌になるわ!」
はぁぁ〜、と盛大にため息を吐き肩を落とす。衣替えじゃないとなると、まさか…処女喪失?
「…今、変なこと考えたでしょ?答えはね…恋をした時よ。
女の子は恋をすると劇的に変化するの」
シーリスの口から想像しなかった言葉が!
けどそれも一理あるな、確かにそうだよな。女は恋をしたら綺麗になるって言うもんな。
「ねぇ江口さん、桃子を口説いてみない?アンタだったら桃子を任せてもいいわ。
桃子を変えたいんでしょ?口説き落として『オレ色に染めてやる!』ってのをしてみれば?」
「アホか!12も歳が違うんだぞ?それにオレはな…お前のほうが好みなんだよ」
「は〜い残念でした!アタシはすでに売り切れで〜す!」
オレの冗談にあっかんべーと舌を出すシーリス。
この小さなカワイイ舌で舐めてもらってるのか。俊め…今度いじめたる!
「分かってるよ。そういやお前、この間ラブホ街から俊におんぶされて出てきたろ?
足腰立たなくなるまでSEXするんなら泊まっていけよ。お前、超大金持ちなんだからさ」
そう、コイツはオレからしたらとんでもない大金持ちだ。
なんでも中学時代に親からこれから一生分の小遣いだと5000万円貰ったらしい。5000万渡す
親もすげぇな。
それを株式投資で増やしていき、今や個人資産10億円!
会社が潰れたらオレをバター犬で雇ってくれないかな?
けどコイツは俊一筋だって話しだし…そもそもそんな職があるかい!って話だな。
そうだ、いい機会だからコイツにSEXで事故が起こらないように忠告してやるか。
「そういや、お前等SEXの時はちゃんとゴムは着けてるのか?
俊の事だから病気は大丈夫だと思うが、子供が出来たら大変だぞ?
それとゴムはホテルの備え付けを使っちゃダメだぞ?悪戯で穴を開けてる場合があるからな。
オレ、それで一度エライ目にあったんだよ。まぁセーフだったからよかったけどな」
コイツ等ってシーリスが足腰が立たなくなるまでの激しいSEXをしてるんだよな?
チクショウ、羨ましいぜ!オレにも女がいれば毎日失神させて…あれ?
オレの言葉に俯き、肩を震わせるシーリス。い、怒りで震えてるのか?ヤ、ヤバくないか?
に、逃げ道は…ベランダにはさっき逃げていった健一がいてこっちを見ている。
ニヤつきながら、窓を開くことができないように手でしっかりと押さえつけている。
きっとオレがベランダに逃げ込めないようにしているんだな。…オレが生きてたらお前を殺す!
しかし、半殺しを覚悟したオレに聞こえてきたのは怒声ではなく…シーリスの嗚咽だった。


「ひっ、アタシ、魅力ないのかなぁ…ぐす、色気ないのかなぁ…ぐすっ」
ヒック、ヒックと肩を震わせ泣き出したシーリス。ど、どうしたんだ?
オレ、なんか変なこと言ったか?と、とりあえず…落ち着かすためカリカリ君食わせるか。
冷凍庫からカリカリ君を取り出しシーリスに渡す。
「これでも食って少し落ち着け。落ち着いたらなんで泣いたか話してくれ」
小さく頷きカリカリ君を食べるシーリス。
桃子用にストックしててよかったな。こんな風に使うとは想像しなかったぞ。
シーリスが泣きながらカリカリ君を食ってる間に、ベランダの窓に鍵をかけ、健一が覗かないよ
うカーテンを引く。
お前はそこで死ね!朽ち果てるがいいわ!
しばらくするとカリカリ君で頭が冷えたのか、少し落ち着いたシーリスが口を開いた。
「実はね…俊にまだ抱いてもらってないの。
付き合いだして一年も経つのに…初めてをもらってくれないの」
普段のシーリスからは創造もできない弱々しい顔。
それより信じられんのが俊だ。こんないい女を一年もほったらかしとは…ホモか?
「う〜ん、なにか俊なりの理由があるんだろうな。まさか…キスもまだなのか?」
それだったらホモ確定だ。オレは今後一切、俊に近づかん!
「はぁ?そんなのぶっちゅぶちゅしてるわよ!今までで476回、キスしてるわ!」
胸を張るシーリス。お?元気になってきたな。それでこそシーリスだ。
って476回?アホかお前等!
「お前等やりすぎ!唇腫れちまうぞ?
しかしそこまでキスしときながらSEXしない理由が分からんなぁ。
う〜ん…アイツってムードを大事にしそうだからな。
なにか大事な記念日に迫ってくるんじゃないのか?
いつも俊がキスを迫ってくる時はどうなんだ?」
「はん!そんなのラブラブムードの時に決まっ…て?………う、うわぁぁぁ〜〜ん!」
う、うをををを?ご、号泣?なんで号泣するんだ?なんでだ?ワケわからんぞ!
とりあえず号泣してるシーリスを落ち着かせるために、カリカリ君を食わせることにした。

「しゅんから、ひっ、キス、うっく、5かいしか、ひっ、嫌われてるぅぅ〜〜!うわぁぁぁ〜ん!」
ダメだ、カリカリ君じゃ泣き止まん。聞き出せた単語をあわせて考えるか。
『しゅんから』『キス』『5かいしか』『嫌われてる』
う〜ん、最後の嫌われてるはシーリスがそう思ってるだけだろうから削除だな。
じゃあ『しゅんから』『キス』『5回しか』の三つか。普通につなげたら『しゅんからキスを5回しか』
だよな?
う〜ん……いや、まさか『しゅんからのキスは5かいしかない』なのか?
いや、まさかそれはないだろ。さっき400回ぐらいキスしたって威張ってたじゃないか。
一応聞いて見るか?
「なぁシーリス。もしかしたら俊からのキスって400回のうち、5回だけなのか?」
号泣しながら頷くシーリス。うっそ、そうなのか?そりゃあキツイよな。
400回のうち5回だけって…ありえんなぁ。普通は男のほうからもっとするだろ?
しっかし…分からんなぁ。なんで俊はシーリスをそんな扱いするんだ?
一年付き合って5回しか相手からキスしてこなかったらシーリスじゃなくても不安になるぞ。
しかしなぁ、今までオレがこいつ等を見てた感じでは、俊もシーリスに惚れている。
ベタ惚れのはずなんだ。
初めて一緒に遊びに行った時、シーリスを足元から舐める様に目で犯してたら、俊から殺気を
感じたもんな。
だからおっかしいんだよなぁ、なんでだ?う〜ん…一か八か、試すか。
ベランダの窓を開け、外で聞き耳を立てていた健一に耳打ちをして指示を出す。
健一はオレの意図を理解して頷き、玄関から出て行った。
さて…と。江口翔馬『ヤクザな』大人バージョンで頑張るかな?


                                                             


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