「そっちはどうだ?上手くいってるのか?…そうか、ならいい。事は慎重に進めるようにな。
…こっちか?こっちはビックリする事の連続だよ。実は今、あのレイリア様が料理をしてるとこ
ろだ。ま、シーリス様と本条様に教えてもらいながらだけどな。
ああしてると歳相応の可愛さがあってなかなかいいぞ?
…浮気だ?おいおい、なんでオレがレイリア様に手を出さなきゃいないんだ?まだ12歳だぞ?
それにあんな子でもオレを拾ってくれた恩人なんだ、手なんて出せないよ。
お前の方こそ相川君に手を出すなよ?
…はははは!そうかそうか、じゃあ今度会うときまで我慢しとけ、メチャクチャに突きまくってや
るからな。
…はっははは!オレも我慢しとくよ、浮気なんてしないから安心しろ。ホントにお前はかわいい
なぁ。
…っつう!叫ぶなよ!耳がキ〜ンとして…ん?すまん、レイリア様が呼んでいる。あぁ、また夜
にでも電話するよ。
…そっちから切れよ。お前はそういうところが可愛いんだよ、見せるのはオレだけにしとけよ?
…はいはい、じゃ、後でな。…響子、愛してるぞ。…はっははは、じゃあな」
響子からの報告の電話を切る。さっそくメンバー全員に相川君からメールが入ったとのこと。
相川君…いくらレイリア様の命令といえど、君が哀れでならないよ。
さすがに美人探偵を3人雇い、響子と合わせて4人で君を見張らせているなんて思いもしないだ
ろうからな。
君はきっと有頂天になっている事だろう。なんせ4人の年上美人とメル友になれたんだ。
しかし残念な事に、君が送ったメールは逐一レイリア様に報告される。
…ホントに君が哀れだよ。

オレ、長尾尚道(ながお なおみち)の雇い主…レイリア・L・ラインフォード様。
今年で13歳になられる、金髪でカワイイ女の子だ。…外見はな。
個人資産は姉であるシーリス様をはるかに凌ぐ、5000万ドルを超えている。
シーリス様は投資などをして御自分で稼がれたみたいだが、レイリア様は違う。
響子を使い、稼ぎ出したんだ。
響子…榊響子(さかき きょうこ)、24歳。かなりの美人でスタイルバツグン。
そしてオレの恋人でもある。
今はレイリア様の命令で相川君を騙し、他の女が近づかないように監視をしている。
どうやって稼ぎ出したかというと…あれは一昨年の年末、
レイリア様が11歳になられた頃の事だ。
父親から一生分の小遣いだと渡された50万ドルを使い、
当時、個人で探偵事務所を開いていた響子を雇った。
そして響子にある事をさせて、大金を手に入れたんだ。
とある妻子ある人物に響子を近づけ、一度肉体関係を結ばせてその現場を写真に撮る。
あとはその写真をその人物に見せて買い取らせる。
昔からよくある強請りの手口だ。…相手が自分の父親じゃなければな。
そう、大金持ちである父親からお金を奪い取るために、レイリア様自身で計画したんだ。
以前に一度、何故自分の親にそんなことをしたのかを聞いてみた。
『シーリス姉さまみたいに投資をして増やすのなどというのは、メンドクサイですわ。
時間の無駄ですわね。せっかくすぐ近くにお金のなる木がありますのに時間がもったいないで
すわ。…長尾、何故そんなことに興味をもったのかしら?
知り合いがいなくなるのは悲しいものですわ。それが例えどんくさいあなたでもね』
ニッコリと微笑みながらそうおっしゃった。
レイリア様の言葉にオレは恐ろしくなり、震えてしまったよ。…まったく恐ろしいお方だ。
けどそんなレイリア様にも弱点がある。
まず一つ目はシーリス様。
レイリア様は自分の父親でさえ道具としか見ていないのに、シーリス様には頭が上がらない。
というかシーリス様が大好きなんだ。
シーリス様が好きな人を追い、日本に住む事になった時は『お姉さま行かないで』と号泣したぐ
らいだ。
今日だってこんなに嬉しそうなレイリア様は久しぶりだ。
次がシーリス様の御友人の本条様。
シーリス様に会うために初めて日本に遊びに行かれた時、
レイリア様がワガママを炸裂さしたんだ。
久しぶりにシーリス様と遊んでもらえて嬉しかったんだろうな、
いつもにも増してのワガママだった。
そこにいたんだよ、本条様が。…オレは自分の目を疑ったね。
あのレイリア様が泣きながら『ゴメンなさい、もうしません』と謝り、お漏らししたんだからな。
さんざんお尻を叩かれて可哀想なぐらいだったよ。
シーリス様は視線をそらして助けようともしなかった。
後で聞いた話では、シーリス様もかなりスゴイ説教をされたことがあり、
本条様には頭が上がらないらしい。
現に昨日は二人とも本条様に説教されて…人間あそこまで非情になれるもんなだな。
おっと、こんなこと考えてる場合じゃない、早くレイリア様の元に行かねば。
慌てて厨房へと駆けつける。中からは美味しそうな匂いが。
どこかで嗅いだことがあるような…これって何の匂いだったっけ?



「長尾、遅いですわよ!頭が足りないだけじゃなく、動きまで遅いとは…
ホントに使えないですわね」
私を待たせるなんて長尾のくせに生意気ですわ。
「レ・イ・リ・ア・ちゃん?ちょっと口が悪いんじゃないのかな?
日本ではそういう子はね、プチッと…」
そう言いながら私の目の前でキュウリをポキッと折るマヤお姉さま。
ひ、ひぃ!指は逆には曲がりませんわ!お姉さま、許してください!
「あ、あの、レイリア様?…本条様、レイリア様はいったいどうされたんでしょう?
シーリス様も震えてますし…何かあったのでしょうか?」
無理ですわ!首が一周するところを見たいと言われても、絶対に回りませんわ!
「ホントいったいどうしたんでしょうね?
昨日は二人とも、とっても元気な声で騒いでたんですよ?」
どうしたもこうしたもありませんわ!
マヤお姉さまが昨日…ひぃ!お、思い出しただけで寒気が!
「はいはい、二人とも!姉妹揃っていつまで震えてるの?
何があったか知らないけど、早くしないとお料理冷めちゃうわよ?」
何があったか知らないって…マヤお姉さま、恐ろしいですわ。
…冷めちゃう?そうでしたわ!恐怖のあまり忘れてましたわ!
「長尾、あなたにこのお料理を味見をしてレビューをして欲しいんですの。
光栄に思いなさいな、このお料理、私が作りましたのよ?さ、味わってお食べなさいな」
私が作った肉じゃがを見て、目を丸くして驚く長尾。ふふふ、喜びなさいな。
私があなたごときにお料理を食べさせてあげるなどと二度とはない幸運ですわよ?
「ど、毒見ですか?」
…毒見?どういう意味なのかしら?
「食べれるから安心しなさいよ。マヤとアタシがしっかり教えて作ったから大丈夫よ」
シーリス姉さま、何を安心するんですの?
…長尾、何をホッとした表情してるんですの?ムカつきますわね!
「で、ではいただきます。…ん?こ、これは…ホントにレイリア様がお作りになったのですか?
信じられません!この肉じゃが、ちゃんとした料理になっている!しかも美味いです!」
そう言ってがつがつと勢いよく食べだした長尾。…なにか気に障る褒め方ですわね?
「ふふふ、よかったわねレイリアちゃん。男の子ってね、女の子が作った肉じゃがには弱いの
よ。これを相川君にも作ってあげたらきっと上手くいくわよ」
マヤお姉さまの言う通りね。これは使えますわ。
がつがつとハシタナイ食べ方で肉じゃがを食べる長尾。
品がないですわね、恥ずかしいですわ。
けど…なんなんでしょう?長尾の食べてる姿を見てると凄くうれしいですわ。
これがもし健一様だったら…はぁぁぁ、早く食べて欲しいですわぁ。

ここは私と健一様が二人で住む、小さなお部屋。
親の反対を押し切っての駆け落ちしての生活。
部屋にはテレビもなく、お布団も一組しかございませんの。
私は狭い厨房で一生懸命に愛をこめて、健一様に御飯を用意するんですの。
出来上がったお料理は、小さいテーブルを挟んで二人仲良く食べるんですの。
『レイリア、とっても美味しいよ。
こんな美味しい料理を作ってくれる嫁さんをもらえたなんて…おれ、幸せだ』
口いっぱいに肉じゃがを頬張りながら、満面の笑みで私を褒めてくださる健一様!
『健一様…嬉しいですわ!どんどんお食べになってくださいませ!』
私は嬉しくて嬉しくてたまらないんですの!
『あぁ、頂くよ!食後のデザートも楽しみだしな』
『デザート…でございますか?今日はなにも用意できませんでしたの』
私はデザートを用意していなかった事に気づいて、少し落ち込みますの。
けど健一様はそんな私の手を取って微笑んでくださるの。
『何を言ってるんだ?あるじゃないかここに。少し早いけど、デザートを頂くよ』
そう言って健一様は…私を押し倒すんですの!
そして私は…体の隅々まで余すことなく全てを健一様に食べられてしまうんですわ!
あぁ…満足していただくまで、私の体が持ちますかしら?それだけが不安ですわ。
「…レイリアちゃんどうしたの?
緩みきった顔をして…まるで中学時代に山薙君のことを考えてたシーリスみたいよ」
「ええ!アタシこんなのだったの?マヤ、それはないでしょ?」
「ふふふ、やっぱり姉妹なのね、あなたにそっくりよ。
シーリスも山薙君の事考えてたらこんなだったのよ?」
「うげえ、アタシこんなだったんだ。これじゃバレバレじゃないの」
あぁ…健一様ぁ、レイリアはお口に合いましたか?美味しかったですか?
いくらでもお代わりして下さいませ!

健一様との愛の営みを想像してうっとりとする私。子供は最低4人は欲しいですわ。



「健一、メールの返事どうだった?やっぱり届かなかったのか?」
榊原さん達との合コンをした次の日、正吾が気になったのか話しかけて来た。
「ふっふっふっふ…全員から返事が返ってきたんだよ!
アイアムプレイボ〜イ!モテモテだぜ〜!」
いや〜、オレって年上キラーだったんだ。どおりで同学年にはもてないはずだ。
「そうか…で、なにを買わされる事になったんだ?壷か?英会話テープか?」
「おいおい正吾、お前なに言ってるんだよ。嫉妬か?嫉妬してるのか?
プレイボーイ相川に嫉妬してるんだな?
すまんなぁ、オレがプレイボーイすぎて女性が見逃してくれないらしい。
もてない君たちには分からない悩みかな?ぐわっはっはっは!」
「健一、有頂天だね。けどいいの?このことレイリアちゃんが知ったらやばいんじゃないの?」
俊も嫉妬か?嫉妬してい…そ、そういやそうだ。レイリアがこのこと知ったらどうなるんだ?
「た、確かにまずいな。いやいや、おれはレイリアと何の関係もないんだ!
別に何しようがおれの勝手だろ?」
「危ないと思うぞ〜?レイリアちゃんが知ったら、嫉妬に狂って何をするか分からないぞ?」
嫉妬に狂うって…ありえるな。今度はなにをされるんだ?
前は盗聴器。その前は毎日毎日ラブレターが届いたんだった。
しかも便箋10枚に書かれてたんだ。メチャクチャに怖かったな。
毎日だぜ?毎日便箋10枚も書かれたラブレター送られてみろよ…ホントに怖いから。
「正吾の言うとおりだと思うよ。レイリアちゃん、健一の事がホントに好きだからね。
もうレイリアちゃんを彼女にすればいいんじゃないの?
健一ってロリコンだし、ちょうどいいと思うよ?」
コラ俊!人をロリコン扱いするな!おれは変態じゃない!
ただおれは胸が大きくなくてもイケルだけであって、ロリコンではない!…と思う。
確かにレイリアは可愛くて、おれの初恋の子に瓜二つだ。しかしこれとそれとは違うだろ?
…けどあと5年もすれば、シーリスみたいな美人に成長するやもしれん。
いやいや、あと5年っておれ25歳になってるじゃん。それまで童貞はイヤだっての。
………あれ?もしかしておれって、童貞のまま20歳を過ぎちゃったの?
「…ねえ正吾、健一なんか固まっちゃったよ?どうしたんだろうね?」
「どうせレンタルAVを返し忘れたかなんかだろ?」
ま、まずいぞ。これはまずい。
このことをこいつ等に知られたら何を言われるか…これは死ぬまで隠し通さねば!
「ところで健一、榊原さん達からのメール、何が書いてあったんだ?」
ナイスだ正吾!いい話題をふってくれた!
「それがな、今度遊びに行きましょうって書いてあったんだ。全員のメールにだ。
これって二人でってことだよな?おれ、全員から狙われてるよな?
いや〜、モテル男はツライよな!おれの童貞、絶体絶命のピンチだな!ぐわっはっはっは!」
どうだお前等!これがおれ様の実力だ!目指せハーレムだ!ハーレム!
「いやいや、二十歳越えてるのに童貞なお前が絶体絶命なピンチだぞ?」
「健一って20歳で童貞でロリコンで変態なんだね。…人間って強い生き物だよね。
こんなでも生きていけるんだから。ちょっと感動するよね」
「…殺してくれ。いっそおれを殺してくれぇぇぇ〜〜!
童貞で何が悪い?おれが何か悪い事でもしたのか?」
頭をかきむしり叫ぶおれを無視して話す二人。
「俊、このなぞなぞ分かるか?
問題です。捨てることができても拾う事ができない物ってな〜んだ?」
「ははは、そんなの簡単だよ。答えは、健一!じゃなかった、童貞!」
「その通り!童貞は捨てれても拾う事はできないからな。わっはっは!」
…殺してくれ。いっそのことおれを殺してくれぇぇぇ〜〜!!



「レイリア様、榊からの報告で、相川様は全員と会う約束をしてきたそうです。
いかがなさいますか?」
シーリスお姉さま達は今、外にお買い物へと行っている最中。
ですから今しか指示を出せませんの。
「いかがもなにも、最初からの計画通りに健一様の好みのタイプを調べるようにしなさいな。
何度同じ事を言えば分かるのかしら?何のためにタイプの違う4人を集めたか分かってます
の?ふぅぅ…少しは頭を使いなさいな。でないと榊にフラれてしまいますわよ?」
ホントに使えない人ですわね、ホントにお馬鹿さん。
私が揃えた4人の女。一人はお姉さんタイプ。これは榊にしてもらってますの。
後の3人は雇った探偵さんに演じていただいてますのよ。
不思議ちゃんにぶりっ子さん。それに真面目で優等生タイプ。
どれが健一様の好みなのかはっきりさせて、
それを私が演じれば…二人の愛は完璧になりますわ!
今までさんざん調べてきたんですけど、なかなか分かりませんでしたの。
これは長尾が無能だったのもありますわ。けど健一様の好みが一定してませんの。
どうにか4タイプまで絞り込んだんですけど…健一様、恋多き人ですわ。
でもしているのは偽りの恋ばかり。
真実の恋は一つだけ…早く運命の相手、レイリアを抱いてくださいませ!
ふぅ…愛する人の好みに合わせるのも大変ですわ。けどそれもこれも全ては健一様のため。
はぁぁぁ、健一様ぁぁ、レイリアは寂しゅうございます。
早くあなたの胸で眠りたいですわ。はぁぁ、健一さまぁぁ…愛していますわぁ。
「レ、レイリア様、そ、その、私と榊が付き合っているとどこでお知りになられたんですか?」
私がフラれると言った事に青い顔して尋ねてきた長尾。あなたはウソがヘタですわね?
「ふぅぅ〜、ホントに無能ですわね。今、知ったんですわ。
あなたが今、付き合っていると教えてくれましたわ。
こんな簡単な誘導尋問に引っかかるなんて無能すぎますわ。
気をつけて下さいな、分かりましたか?」
ガックリと肩を落とす長尾。あなたのその姿、見飽きましたわ。
「さ、いつまで落ち込んでいますの?私の下に働かない役立たずはいりませんわよ?
お姉さまたちが帰ってくるまでに、昨日の分の健一様のお写真を提出しなさいな」
慌てて写真を持ってくる長尾。はぁぁ、私は何故こんなのを雇っているのかしら?
長尾から手渡された写真をチェックする。
………なんなんですの?これはいったいなんなんですの!
「長尾!この写真はいったいどういうことですの!
この健一様の肩によりかかっている女はなんですの?
私の健一様にこのようなハレンチなことを…長尾、この女の情報の全てを洗い出しなさい!」
手渡された写真には、こともあろうか健一様の肩に汚い頭を乗せている女が!
…私を敵に回すとは、いい度胸をしていますわね?
あなたの人生を惨めな一生にする事をお約束しますわ。
「ちょ、ちょっと待ってください!この女は相川様を監視させるために雇った探偵でございます。
この写真の状況は健一様と仲良くなる為の策と思われますが?」
「なんですって!雇われのくせに健一様に手を出そうなどと…長尾!
この女の家族、親戚、友人の全てを洗い出しなさい!」
うふふふふ…私の健一様に手を出そうなどと考えてる女は壊してあげますわ。
どうやって壊してさし上げましょうかしら?
そうねぇ、悪い男にはまって体を売って貢ぐなんて…なんですのこれはぁぁぁ!
「長尾ぉぉぉぉぉ!この写真はなんなんですのぉぉお〜!
私もまだまともに握った事のない手を握るなどと…きぃいぃぃ〜!」
先ほどの女とは別の女が健一様の手を握っている!
き、きき、汚い手で触るんじゃありませんわ!
「レ、レイリア様!落ち着いてください、これは作戦です!
レイリア様が考案なされた作戦ではありませんか!」
「うるっっさい!あああ!この女も健一様に寄りかかって!
こっちの女は胸を見せ付けて誘惑を!長尾ぉぉぉぉ!こいつ等全員消しなさい!
一切の痕跡も残さず今すぐにこの世から消し去りなさいぃぃ〜!」
写真を全てビリビリに破り捨てる。こいつ等絶対に許しませんわ!
「お、落ち着いてください!先ほどから申してますように、
この者たちはレイリア様の命により相川様に近づいた者たちです。
今後いっさい近づかないように指示しますので、消すなどと物騒な事を仰らないで下さい。
それにこの胸を強調してる女性は榊ですよ?榊がレイリア様の命に背くなどありえません!」
んふぅ〜!んふぅ〜!んふぅ〜!…榊?長尾の言うとおり、よく見てみるとこれは榊ですわね。
胸を見せ付けるようにして健一様と話している女性。
うん、これは確かに榊ですわね、なら安心ですわ。
長尾の言うとおり榊が私を裏切るなんてありえませんわ。
榊はわたしを敵に回そうなどと考えるほど馬鹿じゃないですわ。
「レイリア様、今回の作戦を中止にしチームを解散、榊をこちらに呼び戻します。
それでよろしいですね?」
当たり前ですわ!いったい誰ですの、こんなずさんな計画をたてたのは?
…いや、榊は健一様の近くに置いておいたほうが何かと便利がよさそうですわね。
「榊のみを残して解散させなさい。
もちろん榊には健一様と必要以上仲良くならないようにと念を押してくださいな。
…それと雇われの薄汚いメス豚に今後一生健一様に近づかないと約束させなさい。
もし約束を破って近づくような事があれば…長尾、あなたのお仕事ですわよ」
やっと役に立つ時がきましたわね。こういう時の為に長尾を雇ってたんですわ。
うふふふふ…ヤクザさんに追われて半殺しになっていたところを助けてあげた恩、
しっかりと返してもらいますわ。
「わ、分かりました。とりあえず榊に状況を説明し、計画を中止するように指示を出します。
その後、榊は相川様の周辺で待機。これでよろしいですね?」
「ええ、そうしてちょうだい。ところで長尾、榊とは上手くいっているのかしら?
あなたがしっかりしないとたとえ榊といえど、健一様の魅力にメロメロになるかもしれませんわ」
いくら榊といえ、間違いが起こらないとは限りませんわ。
危険の芽はどんなに小さくても摘み取っておかないと安心できませんわ。
「は、はぁ、最近は二人きりになれず、機嫌をとるのに苦労しています」
頭をポリポリと掻く長尾。
「情けない男ですわね〜?仕方ないですわね、これで何かプレゼントでも買ってあげて機嫌を
取りなさいな」
お財布の中から適当にお札をつまみ出し、長尾に渡す。
「あ、ありがとうございます。…うお!こ、こんなに頂いてよろしいんですか?」
ふぅ〜、たかだか数千ドル程度で慌てる大人は無様ですわね〜。
「今日はもういいですからさっさとプレゼントを買いに行きなさい。
早くしないとお姉さまたちが帰ってきますわ」
お金を握り締め、頭を下げて部屋を出て行く長尾。
長尾ごときにプレゼントを貰っても嬉しいものなのかしら?榊は男の趣味が悪いですわ。



「ねぇ正吾、健一いったいどうしたの?
つい2,3日前はプレイボーイって騒いでたのに、なんで死にそうな顔してるの?」
「なんでも年上キラーの健一は、全てのお姉さんにフラれたんだと。
今、連絡がつくのが榊原さんだけらしい。
榊原さんにも、彼氏から送られてきた指輪を見せられて惚気られたって血の涙を流してたな」
「ふ〜ん、よかったね。ヘンな物買わされなくて。
てっきり何か買わされたのかなって思ってたよ」
…お前等、おれを慰める気ないだろ?普通そういう話は、本人の目の前でしないんだよ!
「お前等なんなんだよ〜、冷たすぎるぞ?友達なら慰めてくれよぉ〜。
じゃないとこの間おれの部屋でAV見たことを、メールでシーリスや本条に…」
「大丈夫だって!お前ならやれる!やり遂げれる!絶対にいい人見つかるって!なあ俊?」
「そ、そうだよ!なんで世の中の女性は健一のいいところが分からないのかなぁ?」
メールされたくないのか、慌てて慰めてくれる二人。
友人ってのはありがたいぜ!ありがたすぎて泣けてきた。
しかし上辺だけの慰めだが少しは心が癒された。…おれ、かなり打たれ強くなってるな。
「あ、メールで思い出したけど、シーリス達が帰ってくるのと一緒にレイリアちゃんもこっちに遊
びに来るんだって。シーリスからのメールに書いてあったよ。
健一にすごく会いたがってるんだって」
…ぬぁに?マジで?レイリアがこっちに来るの?イ、イヤだぞ?イヤだからな!
「健一よかったな、これでお前も彼女持ちだ。
あんなカワイイ子に好かれるなんて羨ましいぞ?この色男!」
お、襲われる、今回こそは襲われてしまう!
この間は江口さんの件があったからどうにか帰ってもらえたが、今回はやばい。
かなりやばい。
どうする?どうしたらいい?前にみたいに薬で眠らされたら何をされるか分からん。
前は一緒のベッドで寝ただけだったけど、今回は…犯される。おれ、きっと犯されちゃうよ〜!


おれはこの時想像していなかった。
1年以上会っていなかったレイリアが、おれの初恋の人そっくりに成長していたなんて。
そしてそんなレイリアを見ておれは気がついてしまった。まだ初恋を引きずっている自分に。
…どうしたらいいんだ?今さらこんな気持ちに気づくなんて、どうしたらいいんだよ!





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